ポール・マッカートニー Live@東京ドーム 2017.4.30 感想

2017年4月30日(日) @東京ドーム

ポール、もう来るの?

昨年末の紅白での「日本へ行くよ」宣言を受けて。
え、もう来るのか。と思った。
2015年に来たばかりなんだし、新しいツアーになったんだから、もっといろんな国へ行って、こなれてから、またゆっくり来てくれればいいなと思ってたので、間隔短すぎ、と。
新しいツアーになっても、そんなに驚くほどセットリストは変わってないから、あんまり嬉しくないというかなんというか。
まあ、ちょっと冷静だったわけだ。

だけど、来日する間隔短いと言っても、あんまり悠長になられたら、ポールも歳を取るわけで、そしたら、いつライヴをこなせなくなる状態になるかわからないので、やっぱり来てくれるのはありがたい、来るのなら観に行く、と。
2015年の来日公演は、僕にとっては嫌な思い出となってしまったので、そのリベンジも込めて、今回は「行かない」という選択肢はなかった。

チケットはどうやって獲る?

問題は、チケットをどうやって確保するか、だ。
ストーンズのライヴを「参加席」で観て、参加席のコスト・パフォーマンスの良さに虜になった僕。
もうすでに何度も書いているけれど、参加席は素晴らしい席。
S席なのに、アリーナ後方だったり2階席だったりするのに比べたら、参加席はステージにかなり近いし、角度的に見えにくい部分はあったとしても、スクリーンはちゃんと見えるから何の問題もなくて、それでいて格安の値段、というのがいいんだ。
18000円のS席よりもずっといい席が10000円くらいで買えちゃう穴場なのだ。
だけど問題は、参加席は、ライヴ直前になるまで売り出されない事。
過去の例を見ると、ライヴ5日くらい前にならないと売り出されない。ヘタしたら出ない。
でもまあ、たぶん当日券扱いでは出る。
だから、第1希望は参加席をゲットする事なんだけど、ライヴギリギリまでチケット確保できない状態ってのが精神衛生上良くないんだ。最悪、チケット手に入らなくて観られない、なんて事になったらと思うと恐怖で震える。
なので、今回は、早目にチケットを確保する事にした。
S席を申し込んでも2階席、なんて事はザラにあるので、だったら最初から悪い席、と割り切って、安いB席で申し込んでみよう、と。それで抽選で当たれば、それが運命だな、とね。

そんな訳で、早々にB席を確保できたので、気持ちは安定していた。
やはり、参加席に対する未練はあったのだけれど、驚いた事に、結果的に今回は、チケットぴあなどでの前売りで参加席が売り出される事はなかった。
これにはいささかビックリ。
なので、ああ、B席獲っておいて良かったな、と。
参加席が出るのを待ってたら、不安な気持ちのまま当日を迎えて、チケット持たないままドームに足を運ぶ事になっている所だった。
でも、結果的には、当日券扱いで、現場では参加席の発売はあったんだけどね。しかも今回はなんと6000円という破格の値段。
これはすごいよ、お得だよ。
しかも、開演直前に行っても余裕で買えてる感じ。
やっぱり参加席はいいなあ...と思ったんだけど、チケットを確保していたからこそ、ライヴ当日まで安心して気持ちを盛り上げる事ができたし、ポールが来日してからのこの1週間のメディアやネットでのお祭り騒ぎにも参加できた。
そういうの込みでのチケットだな、と思う事ができた。

肝心のセットリストはどうなる?

で、僕にとってはポールが観れればそれだけでいい、とは思えなくて、やっぱり肝心なのはセットリスト。
大好きな曲をやってくれなくては困るのだ。
昨年始まったこのツアーのセットリストを見ると、大好きな「Letting Go」を演ってくれている!別の日を見ると、「Junior’s Farm」を演ってくれている!
おおお、と盛り上がるも、この「Letting Go」と、「Junior’s Farm」は日によって交互に演奏されているようで、そうじゃないんだよポール、交互じゃなくて、両方とも聴きたいんだよ...と思っていた。
でも、この分なら、日本公演でもどちらかは聴けるのかな...と期待する事にしていた。

そして始まった日本公演。
僕はセットリストとか、事前情報を掴んでおきたいタイプなので、ネットでできるだけ情報をチェック。
そしたら、東京ドーム初日の27日のセットリストを見て驚愕。
なんと、「Letting Go」と「Junior’s Farm」を2曲とも演った!!
そうだよ、それがいいんだよ!
と思うのも束の間、29日のセットリストを見ると、「Save Us」と「Jet」に差し換わっていて、「Letting Go」と「Junior’s Farm」は両方とも外されている!怖い!
27日を観に行ってたら狂喜してただろう。29日を観に行ってたら落胆してただろう。
それでは、僕が行く30日はどうなるのか。
この2曲は日替わりで差し換え対象の曲だという事がはっきりした。
僕の理想は「Letting Go」と「Junior’s Farm」両方とも聴ける事だけれど、両方ともとなると、27日とまったく同じとなるので、それはあまり考えられない。たぶん最終日は組み合わせを変えてくるはずだ。かなりの確率で「Jet」を演りそう。という事は「Letting Go」と「Junior’s Farm」、聴けるのはどちらか、という事になりそう...。
そんな予想がつき、期待よりも不安の方が大きくなる。

ライヴ当日。会場へ。グッズも買う

ライヴ当日は、予定より早く目が覚めてしまった。あともうちょっと寝ててもいい...と思ったんだけれど、目が冴えてしまって二度寝できない。
いつもは、グッズなんて目もくれない僕なんだけど、今回は、いいなと思えたグッズが見つかったので、珍しく買いたい、と思った。
昨年、ブライアン・ウィルソンのライヴを観に行った時に、すごく好みのTシャツを見つけたんだけど、グッズなんて買うつもりなかったから、お金にも余裕なかったし、諦めてしまったんだ。だけど、後になって、やっぱりあれはカッコ良かったなあ、欲しかったなあ、と、買わなかった事を今でも後悔してる。
だって、ちょっとばかり高くても、その時にしか買えないんだもの。後じゃ手に入らないんだもの。
だから、今後は、いいと思えたものはやっぱり買おう、と思う様になったんだ。
でも、グッズ買うには、何時頃行けばいいのかわからなかった。
いつも、開演時間間際に会場に行くと、グッズ売り場は長蛇の列で、はたしてこれは開演前に間に合うのか?って感じだったから、いつから、どれくらいの時間並べばいいんだ、と。
Twitterでチェックすると、グッズ販売は11時からなのに、10時頃にはすでに200人くらい並んでて、東京ドームホテルの方まで列が出来ている、という情報が流れていた。
これはかなり並ばなくてはならなそうだな、と覚悟し、早く起きれた事だし、という事で、予定より1時間早く会場に向かう事にした。

午後1時ちょっと前、東京ドーム到着。
グッズ売り場は...ガラガラだった(笑)。
ちっとも並んでないの。
余裕で目当てのTシャツとタオルが買えちゃった。

久し振りにWINSで馬券を買う

2時間くらい並ぶ覚悟で来たのに、嬉しい肩透かしで、ヒマになってしまった。
ベンチが空いてたので、1時間ほど本を読んだり腹ごしらえをしたりして。
で、実はやる事はあった。
この日は競馬、天皇賞が行われる日だったのだ。
いつものようにネットで馬券を買って、家に帰ってからビデオで観ても良かったんだけど、なんせ東京ドームの隣にはWINSがある。
東京ドーム周辺をウロウロしてたら、誰かがレースの結果を口にしているのが耳に入ってくる可能性が高い。
レースを見ずに結果だけ知らされてしまうというのは最悪なので、そんな事にならないように、レースの時間にはWINSに行って、生でレースを観た方が賢明だと思った。
で、いつもは家でネット馬券を買ってるけれど、久々に生の馬券を買う事にした。
僕の本命はシュヴァルグランだったんだけど、直前で勘が働き、「リスクマネジメント」だと、サトノダイヤモンドとのワイドを追加購入。
で、シュヴァルグランはよくがんばったけど2着。
10年以上1番人気は勝ててないジンクスのあるレースだったんだけど、1番人気のキタサンブラックが勝つという、10年に1度の事が起きたので、これはもう仕方ない。
でも、追加購入した分が功を奏して、マイナスにならずに済んだ。競馬はトントンなら勝ちなのだ。
それにしても、かなり久し振りに生馬券を買っての競馬観戦、かなりドキドキした。
普段は家でネットで馬券買って1人でTVでレースを観ても、ほとんどドキドキなんてしないのに、ちゃんと生の馬券を持って、人混みの中でレースを観ると、こんなにドキドキするものなのか、と驚いた。
競馬を始めて毎週競馬場へ通ってた頃の興奮を思い出した。

ブログ仲間の友人たちと会う

最近のライヴでは、普段ブログなどでお世話になっている方に会えたりする事が楽しみの1つなんだけど、この日は大忙し。
まずはfmbmrtjd-mmkkaiさん。
fmさんはこの日は武道館で行われる家入レオのライヴへ行かれるとの事だけれど、ポールも好きなので、東京ドームにグッズを買いにいらっしゃるという。
なので、急遽メールを送ったら、ちょうど時間が合いそうだったので、お会いする事となった。

お次は、最近Twitterで知り合ったNORIさん。
NORIさんとはもちろん初めてお会いしたのだけれど、想像してた通り、とても真面目で誠実な方だったのでひと安心。
まだビートルズやポールは聴き始めたばかりという、ポール初心者と言える方なんだけれど、とても真面目に音楽に向き合っている姿に好感が持てて素敵。
きっと今回のライヴで初めて耳にする曲も多いんだろうな。ある意味羨ましい。

最後はryoさん。
ryoさんとは1番最初に今日会う約束をしたのに、1番最後に会う事となり、待たせてしまって申し訳なかったのだけれど。

お3方ともいい人で、こういういい人に巡り合えるネットの力って凄いなあと改めて思った。
僕が若い頃は、こんな事って考えられなかったからね。
1人孤独にライヴに行って、1人で盛り上がるしかなかった。
でも今はこうしてライヴ前の興奮を共有する事ができる。
いつまでも尽きる事のなさそうな音楽談義。

東京ドーム入場。のんびりしすぎて焦った

てな訳で、ライヴ前にいろんな事がありすぎて充実感一杯でひと仕事終えた感覚。
ライヴの前にすでに疲れちゃったから、心配も大きくなる。
最近の大きな悩み。
ライヴ中に眠くなってしまう事だ。
きっと座って観る事となるだろうし、早目に起きてしまったし、慌ただしくて疲れたから、これは今日もかなりの確率で眠くなってしまうんじゃないか、と...。

開演時間は6時30分、との事だったけれど、前日までの情報をTwitterなんかで見ると、30分押したとか45分押したとか言ってたので、どうせ7時過ぎなきゃ始まらないでしょ、と思っていた。
それでゆっくりトイレなんかにも行っていた。

僕の席は、2階1塁側30列8番。
2階の最後方と言っていい。ステージの丁度真正面ではあるのだけれど、ポールからは1番遠い場所だな。
しかし、場内は暗くなってるし、思った以上に自分の席が見つからなくて焦った。ネットでだいたいの位置は確認してたし、普段、座席を見つけるのは得意な方だと自負してたのに、今回はわからなかった。
椅子の番号がどこに書いてあるのかわからないし、どこの階段を昇ればいいのかわからないし。東京ドームの座席って、こんなにわかりにくかったっけ?
ほとんどの人は既に着席してるし、かなり焦ったので、仕方なく係員さんに訊いたりして、ようやく自分の席にたどり着く事ができた。

ライヴのスタート

そしたら、僕が席について5分とたたないうちにポール登場。
6時55分だった。
30分以上押すと思ってたから、想定してたより5分も早かった。危ない所だった。やはりのんびりしすぎてはダメだな。反省。
座席には、サイリウムが貼り付けてあって。
本編最後の「Hey Jude」の時に、みんなで光らせましょう、とのポールには内緒の企画。
2013年公演の最終日でやったのと同じだな。またやるんだ。
とにかく、ライヴは始まった。

01. A Hard Day’s Night
02. Junior’s Farm
03. Can’t Buy Me Love
04. Jet
05. Temporary Secretary
06. Let Me Roll It
07. I’ve Got A Feeling
08. My Valentine
09. Nineteen Hundred And Eighty-Five
10. Maybe I’m Amazed
11. We Can Work It Out
12. In Spite Of All the Danger
13. You Won’t See Me
14. Love Me Do
15. And I Love Her
16. Blackbird
17. Here Today
18. Queenie Eye
19. New
20. The Fool On The Hill
21. Lady Madonna
22. FourFiveSeconds
23. Eleanor Rigby
24. I Wanna Be Your Man
25. Being For The Benefit Of Mr. Kite!
26. Something
27. Ob-La-Di, Ob-La-Da
28. Band On The Run
29. Back In The U.S.S.R.
30. Let It Be
31. Live And Let Die
32. Hey Jude
(Encore)
33. Yesterday
34. Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Reprise)
35. Get Back
36. Hi, Hi, Hi
37. Golden Slumbers
38. Carry That Weight
39. The End

ポールが登場して、拳を突き上げるポーズをとるも、まず思ったのは、「ちっちゃい...」。
さすが最後方席。ほんと豆粒ゴマ粒みたいで、肉眼で観るのはかなりキツい。スクリーンに頼らざるを得ない。ほんと、技術の進化でスクリーンがあって良かった。

オープニングは「A Hard Day’s Night」
始まってすぐに思ったのは、「音、悪い...」だった。いや、悪いと言うか、そもそも音量小さくて、よく聴こえないのだ。東京ドームの音響は良くないのは承知してたけど、ここまで音が聴き取りにくかったのは初めてだ。やっぱりこれもB席の弊害か?高い席が良い音に聴こえるように合わせてあるのか?
いや、でも、東京ドーム全席S席、という場合もザラにあるから、そうとは言い切れないだろう。別に安い席だから悪い音、というのでもなさそうだが。
ジョンのイメージの強いこの曲で始まるというのは、僕はあまり歓迎しないんだよなあ。ポールを観てる、って実感が湧きにくいから。ジョンよりも歌い方がソフトだし。

注目の2曲目、何が来る?
「Junior’s Farm」だ!
僕は大拍手。しかし、僕の周りの人の熱気がサアーッと冷めていったのがわかった。手拍子も途中で止めてしまう始末。どうやらこの曲を知らない人がほとんどのようだ。
僕は念願叶って生で聴けて興奮してると言うのに。
ポールのグルーヴィーなベースに、弾きまくるギター・ソロ。いい意味で単調なリズムがたまらない。
良かった、これが聴けて。

「Can’t Buy Me Love」は好きではない曲なので、ノー・コメントで。
と思ったけど、やはりこの曲は人気があって、周りが盛り上がってるのを聴いてると、こちらも楽しくなってくるから不思議だ。これがライヴの魅力か。

さてさて、注目の4曲目。
念願叶って「Letting Go」が来るのか、それとも「Jet」か...と、ドキドキする暇もなく、ドラムのエイブが、曲が始まる前にハイハットでリズムを作っていたので、ああ、このリズムは「Jet」だな、とわかってしまった。
まあね、「Jet」も好きな曲なんだけどね、でも既に何回も聴いた事あるし、レアな「Letting Go」が良かったんだよ...。
でも、やっぱり予想通りの差し換えだった。
聴けたのは「Junior’s Farm」で、聴けなかったのが「Letting Go」。
まあ、どちらか1曲を選べと言われたら、「Letting Go」はライヴ盤(『Wings Over America』)でいつでも聴けるので、ライヴ・ヴァージョンを聴いた事のない「Junior’s Farm」の方が聴けたんだから良かったのかな。
それにしても、僕の周りの客、「Jet」でもそんなにノッてなかったぞ。みんな「Jet」さえも知らないのか?

お次は「Temporary Secretary」
思いっきりテクノなフレーズで始まるこれをライヴで演っちゃうんだから驚きだよね。『McCartney II』は迷盤だと思ってるんだけど、そんな中からセレクトするとは。
おふざけな曲だから、演ってるポールも楽しそう。今までなんとも思ってなかった曲でも、「てんぽらーりっ、せくれたーりっ」って、耳に残っちゃって、自然と口ずさんじゃってる自分がいる。だんだんお気に入りになりそう。

「Let Me Roll It」
これはもう、たぶん大勢の人が思ってると思うんだけど、「聴き飽きたよ(笑)」。
どんだけコレが好きなんだ、ポール。

前曲のギター・フレーズを引き摺る様な形で始まったのが「I’ve Got A Feeling」
これは、ビートルズのヴァージョンと些か違った印象で聴こえたなあ。
よりブルージーになったのはいいんだけど、これはジョンのパートとの絡み具合が好きな曲だから、ジョンの声が聴こえない、ってのは痛手なんだよな。

奥さんに捧げた「My Valentine」
きっと、今の奥さんと離婚しない限りはずっと歌い続けそう。
まあ、しっとりとして好きな曲だけど。
スクリーンには、お馴染みとなったジョニー・デップとナタリー・ポートマンのMVが映ってた。

次の曲が始まる前に、両手でウイングスのポーズを作る僕。隣の人はそれを「なんだろう?」的な目で見てたけど。
それはもちろん、「ウイングス・ファンに」とポールが言って始まる「Nineteen Hundred And Eighty-Five」だから。
これはドラマチックで刹那的で大好きな曲だから、ライヴで演ってくれるのは嬉しい。これは何度聴いてもいい。

「Maybe I’m Amazed」
これは、出だしのポールのヴォーカルが危うかった。2小節くらい音程取れてなかった。ハラハラした。
昔はさほど好きではなかったけど、今はこの熱い思いが伝わってくるこの曲が大好き。

ベース、エレキ・ギター、ピアノと、楽器を様々持ち替えて、ここからはアコギ。
「We Can Work It Out」
日によっては、ここで「I’ve Just Seen A Face」だった時もあったみたいだけど。
この曲では、やっぱりサビでジョンのパートを歌って、ポールとハモる快感に浸れるのがいい。

次は、「大昔の曲をやるよ。初レコーディングした曲だ」と言って、「Love Me Do」を演るのかと思わせといての「In Spite Of All the Danger」
これは『Anthology 1』に入ってた曲らしいのだけど、『Anthology 1』をあまり聴きこんでない僕にはまったく記憶になく、どんな曲なのかわからないまま挑んだのだが、サビの「オーオーオオ」というコーラスがキャッチーで印象的なのですぐに憶えられた。
終わったと思ったら、「オーオーオオ」のコーラスをポールがみんなに歌わせて、慣れたところでまた演奏が再開するという演出。
なので、これは予想外に良かった。思ってもいなかった展開だった。あとで調べてみたところ、ポールとジョージの共作という、非常に珍しいものらしい。

「どんな風に曲を作るのか?とよく聴かれるけど、こうやるんだ」とポールが言って、アコギをつま弾いて始まったのが「You Won’t See Me」
ビートルズでのアレンジと違って、アコギでの優しい感じが心地良かった。
ここではジョンとジョージのコーラス・パートを歌って悦に入る僕。

次の「Love Me Do」が始まった時の周りの大歓声と言ったら!
みんなこの曲がそんな好きなのか??おいおい、「Love Me Do」だよ。僕にとっては凡曲の...。
でも、ここで気付いた。僕の周りの人の反応を見ていると、大歓声が上がるのは、ビートルズの有名曲ばかり。しかも、よく考えたら、みな『1』に収録されているものだとわかった。
おそらく、僕の周りの人は、ビートルズのCDは『1』くらいしか持ってないけど、どうやらポールが来るらしいから、試しに行ってみようか、的な人が多かったんじゃないか、と思われる。
この反応を見ていると、そうとしか思えない...。
となると、俄然僕は、周りの人が知らない曲でポカーンとしている時に張り切って、大きな手拍子をしたり、リズムを取ったり、拍手をしたり、と、ポールを盛り上げよう、という気になってしまったのだった。
アリーナ席とかはポールの大ファンで溢れていて、そんな事はなかっただろうけど、2階席の最後方なんて、こんな反応だったんですよ。

ジョンの大活躍ぶりが強烈な印象のアルバム『A Hard Day’s Night』だったけど、「And I Love Her」を生で聴くと、ああ、ポールだってこんないい曲書いてたじゃないか、と気付かされる。

まだまだアコースティック・コーナーは続く。
舞台がせり上がっていく「Blackbird」
難しいスリー・フィンガー・ピッキングをやりながら高い所に上がっていくのは怖くないのだろうか。

ジョンに捧げる「Here Today」

「NEWアルバムの曲だよ」と言っての「Queenie Eye」「New」
NEWアルバムと言っても、もう3年以上前にもなるわけで...初めて聴いた時はいい曲だと思ったし、2013年公演の時は興奮したけれど、今はもう新鮮味薄れちゃったから、あまり嬉しくなかったなあ。
これだったら、リイシューされたばかりの『Flowers In The Dirt』からの曲を演ってくれた方が、どれほどタイムリーで嬉しかった事か。
どうして『Flowers~』の曲演らないんだよ...やっぱりポールはファンの気持ちをいまいちわかってない。

ほのぼのとしているようで、どこか寂しい「The Fool On The Hill」

叩くピアノ、声を潰して歌う弾けっぷりがたまらない「Lady Madonna」

新曲だと言って披露された、リアーナとカニエ・ウェストとのコラボ曲「FourFiveSeconds」
僕は、こういう若手アーティストとのコラボって興味なかったから(純粋なポールの曲が聴きたいのだ)、実は初めて聴く曲だったんだけど...やっぱりコラボ曲だからなのか、ポールらしさというものがあまり感じられず、印象に残るものではなかったな。

これも、イントロのカウントでなんの曲かすぐわかる「Eleanor Rigby」

「今回初公開の曲」と言ったので、おおっ、最終日にサプライズか!?と一気に期待したのだけど、始まったのは「I Wanna Be Your Man」でガックリ。

「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」は、とにかく間奏での照明演出が、煌びやかな曲のイメージに合わせていて、その世界観に浸れる。
この交錯するレーザービームは、アリーナ席からは堪能できないだろう。

ウクレレでジョージに捧げる「Something」
これを最初に演り始めた時は、ウクレレ演奏だけだったけれど、途中からバンド演奏が加わる構成にヴァージョン・アップされてから、ひときわ見応えのあるものになった感がある。
ラストでスクリーンに映し出される写真は涙モノだよ、との情報を得ていたのだけれど、2階後方最上段の席からは、角度が付いていてステージ後ろのスクリーンは下半分しか見えず、ジョージの写真の口元しか見えなかった。
なんでも、ポール、ジョージ、リンゴの3ショットも映ったとかで...これがまったく見えず、感動する事はできなかったのが残念。

「みんなで一緒に歌いましょう」と言って、とにかく楽しかったのが「Ob-La-Di, Ob-La-Da」

「Band On The Run」が始まった時の歓声も凄かった。みんな待ってました、って感じだった。今や「Jet」よりも人気があるのかもしれない。
スローなバラードで始まり、サスペンス調の間奏、ブライアンが素早くアコギに持ち替えるのを見届けてからの明るくポップな展開。いつ聴いてもドラマチックな名曲だ。

ジェット音が鳴り響いての「Back In The U.S.S.R.」

前曲までの盛り上がりを、半ば強引に静める「Let It Be」

これまたスリリングな「Live And Let Die」
これはホント、『007』にピッタリの音楽だなあ、と思う。
で、僕はお馴染みの爆音&火炎放射がわかっていたので、そのタイミングで耳を塞いでいたのだけれど、周りの人は、爆音がするたびにいちいちビックリしていて面白かった。

よし、次はあれだな、と、僕はサイリウムを取り出したんだけれど、周りの人は誰も用意してない。
で、ポールが「Hey Jude」を歌い始めた途端、みんな慌ててカバンを漁ってサイリウムを取り出したりしてて。
みんな、事前にセットリストとかチェックしてないんだなあ、って思った。
僕の周りの人は、特にポール初心者が多そうだったから、余計にそうなんだろうけど。
で、このサイリウム企画は良かった。
前回は「Yesterday」の時にやったけれど、今回の「Hey Jude」の時の方が、揺れるサイリウムの光が雰囲気に合ってたし、ずっと良かった。
ちなみに、前回は赤色のサイリウムだったけれど、今回は水色。色も今回の方が綺麗だった。
ふと天井を見上げると、『THANK YOU PAUL』や『JAPAN LOVES YOU』の文字が。この文字は、ちょうど僕たちの頭上あたり、つまり天井の隅の方に浮かび上がってたので、これに気付いたお客さんは少なかったのではないだろうか。まあ、これはポールに見せるための文字なので、お客さんが気付かなくても、全然構わないんだろうけど。でも、粋な事するな、と思った。ポールはこれらのサプライズ企画、ちゃんと気付いたのだろうか。
で、大合唱となるコーラスは、以前は人によって「NaNaNa」だったり「LaLaLa」だったり「DaDaDa」だったりしたけれど、今回はずいぶん「NaNaNa」に統一されてきたように思う。いい事だ。
「ダンセイダケ」「ジョセイダケ」「ミンナデ」。
この大合唱による一体感がポールのライヴのハイライトだ。
そして、本編が終了。

ここからはアンコール。
イギリスと日本の国旗を振りながらの再登場。
まずはポールがアコギ1本で「Yesterday」
あっという間に終わる。

お次は跳ねるように「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Reprise)」
以前はこの曲から「The End」になだれこむパターンもあったけど、今回はそうではないので、これまたあっという間に終わる。

「Get Back」
ここは日替わりメニューだったらしく、「Birthday」だったり「I Saw Her Standing There」だったりした。この日は「Get Back」。
聴きながら、そうだよポール、また日本に帰って来てくれよ、と思った。

ここで、なんかモタついている。
ポールが、「機材に問題がある」とかなんとか言い出して、何事かと思ったら、「実はゲストが来るんだ」と言ったから、ストーンズのライヴに布袋寅泰が登場した様に、誰か有名ミュージシャンがやってくるのか!?と思ったら、出て来たのは誰??
どうやら、今日のライヴを観に来た一般人の女性たちでした。
ポールがいろいろと話しかけるんだけど、大観衆の前での緊張だったり、英語が聞きとれなかったりとかで、結構グダグダなやりとり(笑)。まあ、微笑ましかったけれど。

で、そんな一般女性たちをステージ上で踊らせての「Hi, Hi, Hi」
意外に盛り上がってたと思う。

そしてこれがほんとに最後のアビイ・ロード・メドレー「Golden Slumbers」「Carry That Weight」「The End」
このメドレーで締める構成は大好きなんだけれど、特に「You Never Give Me Your Money」のフレーズが出てくる所はグッと切なくなったなあ。ああ、これで終わりだあ、と。
で、エイブのひと際パワフルなドラム・ソロが終わり、ポール、ラスティ、ブライアンのギター・バトルが始まったところで、僕は席を立つ。
今日は始まるのが早かったので、帰りの電車の時間の心配はなさそうだったけれど、最後まで観てると退場時は混雑してしまってなかなか前へ進めず、やっぱり電車の時間が気になってしまうので、混雑する前に退場しよう、と。
でも、一応階段で、ポールが姿を消す所まで見届けた。
ポールは「マタアイマショウ」と言ってくれたけど、本当に、マタはあるのか?
こうして、9時40分、ライヴは終了した。

前回の悪い思い出を払拭できた、素晴らしいライヴ

なんといっても、眠くならなかったのが嬉しかった!
いろいろあった日だったから、疲れて眠くなってしまうだろうと覚悟してたけど、全然平気だった。
周りのお客さんの反応が鈍かった分、頑張ろうと張り切ってたのが良かったのかもしれない。
ライヴは、アーティストの歌を聴くものであって、お客さんが一緒になって歌ったりしたら周りの人は迷惑だ、と思っている僕だったけれど、今回は、僕もポールと一緒になって結構歌ってた。まあ、大きな声でなければ問題ないな、と思った。

90年代以降のソロ・ライヴで、ポールがビートルズ・ナンバーを大量に歌い出した時は、自分が作って歌った曲なんだから、それも当然と思っていたのだけれど、近年は志向も微妙に変化してきていて、今回でも「A Hard Day’s Night」「I Wanna Be Your Man」「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」「Something」など、ポール自身が歌ったわけではない、作ったわけではない、他のメンバーの色が濃い曲を歌う様になってきている。
これは、ポールが「自分の曲だから歌う」、と言うよりも、「ビートルズを歌い継いでいくのは自分しかいない」という覚悟の表れなんだと思う。
初めは、わざわざジョンの印象が強い曲を演らなくても、他にポール自身が作ったいい曲がたくさんあるんだから、そっちを歌ってほしい、と思ったものだけれど、今は、ビートルズを背負っていく覚悟を明確にしたポールの心意気に感服している。

セットリスト的には、「Letting Go」と「Junior’s Farm」両方とも演った27日が僕にとってはベストだった。ああ、27日に行きたかった。羨ましい。
でも、27日は仕事の都合上、選択肢にはなかったので、これはもう運だと考えるしかない。2曲とも聴けなかった29日じゃなくて良かった、と考えるしかない。
まあ、素晴らしいライヴを堪能できた今となっては、そんな贅沢な事は言いません、もうどうでもいいか、って気はしてきてるんだけどね。

だから、今回のライヴは良い思い出になった。
前回のリベンジを見事果たせた。
充実した1日となった。

それにしても、昨年末の紅白での「日本に行くよ」宣言からあっという間だったなあ。
また次があるといいよね。

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