佐野元春 Live@LINE CUBE SHIBUYA 2025.10.28 感想

45TH ANNIVERSARY TOUR

2025年10月28日(火)@LINE CUBE SHIBUYA

45周年記念ツアー後半、東京公演

僕は基本的には、同じツアーのライヴは1回観ればいいやと思ってるのですが。
それでも、佐野さんは特別な存在だし、しかも今回は45周年記念ツアーということで、関東圏で行けるところは複数回行きたいな、と。
もちろん、スケジュールの都合と、チケットが手に入れば、でしたが。

それで7月、運良く、初日の埼玉公演を観ることが出来ました。
その時の感想はこちら。
それは、1回観ればもういいや、というものではなく、何度観てもテンションが上がるだろうな、何度でも味わいたいなと思える、大満足のものでした。

そんな45周年記念ツアー。
意外にも、東京公演は、LINE CUBE SHIBUYA 1公演のみ。
キャパは約2000人です。
東京なのにこれだけですよ?
ちょっと、少なくない?
最近の佐野さんの人気を軽く見積もってませんか?
大丈夫?

不安ではありましたが、僕はなんとか無事にチケットをGET。
ファンクラブ、ありがたや。
でも、最近、佐野さんに興味を持った若い人や、昔聴いてて再び注目することになった人たちが、うまくチケットを手にすることが出来たのか。
ファンの裾野を広げるという意味で、需要と供給のバランスはどうだったのか。
ちょっと疑問が残る東京公演ではあります。

ライヴ当日。会場へ

初日公演から、あっという間に約4ヶ月。
10月末のライヴ当日を迎えることになりました。
お天気はとても良く。
ハロウィンを間近に控えた渋谷の街は相変わらずでした。

僕は、2日前のオアシスのライヴの疲れが残っていて、やや体調に不安が。
このまま今日も全力で盛り上がったら、きっと後で体調を崩すだろうなあという確信が。
でも、目の前にライヴがあるならば。
そのチケットを持っているのなら。
自重して行かない、なんて選択肢はありえないわけで。

せっかく渋谷に来たんだからと、1時間半ほどdisk unionを巡ってお買い物。
それから会場を目指し、到着したのはちょうど開場時間の18時頃でした。
入場待機列は、建物の裏側まで伸びていて。
こりゃ、だいぶ待たされるかなと思ったのですが、想像以上にスルスルと進み。
かなりスムーズに入場することが出来ました。
この会場でこんなにスムーズだったのは初めてです。
何が違うんですかね(笑)。

入場しても、すぐには自分の席に着きたくなかったので、エレベーター前のソファに座って時間潰し。
しばらくして、ふと顔を上げると、混雑している人々の中に、見たことのある女性が。
あっ、音楽評論家の能地祐子さんだ!
てことは、隣にいる男性は...。
やっぱり萩原健太さんだ!
このご夫妻の姿は、今までもブライアン・ウィルソンとか、いろんなライヴで何度も見かけてきました。
お二人とも、佐野さんに関する文章をたくさん書いてこられた親交の深い方々なので、今回のライヴにもやっぱりいらっしゃいましたか。
サイン頂きたいところだけど、色紙や書籍を持ってきてないし。
握手して頂きたいところだけど、コロナ禍以降、そういう接触はどうも憚れるし。
仕方なく、しばらく目で追って、スルーいたしました。

ここで30分以上、ボーッと人の波を見て過ごします。
1人で来てる人。友人と来てる人。家族と来てる人。
SNSでの知り合いと会っていると思われる人たちもいました。

そして、開演10分前になったので、トイレを済ませ、フロアに入ります。
僕の席は1階11列37番。
かなり前の方の席です。恵まれてると言えるでしょう。
ただ、通路からは遠い、列の真ん中の方の席だったので、気持ちとしてはそれほど嬉しくありませんでした。
周りの人に囲まれるプレッシャーで、体調が悪くなったりしないか不安があるのでね。
でも、開演前の時点では、体は疲れているけれど、それほど気分は悪くなく、これなら、最後まで不安なく楽しめるんじゃないかなあ、って。

ライヴのスタート

BGM、ビーチ・ボーイズの「God Only Knows」が流れ終わると、ちょうど開演時間の19時。
客電が落ち、スクリーンには佐野さんの45年を振り返る映像が流れ始めました。
音楽は「再び路上で」「リアルな現実 本当の現実」などのスポークン・ワーズ楽曲。
ビートが心地良い。
そして、コヨーテ・バンドのメンバー、その後に佐野さんが登場。

01. Youngbloods
02. つまらない大人にはなりたくない
03. だいじょうぶ、と彼女は言った
04. ジュジュ
05. 街の少年
06. 欲望
07. 自立主義者たち
08. 君をさがしている (朝が来るまで)
09. 誰かが君のドアを叩いている
10. 新しい航海
11. レイン・ガール
12. 悲しきレイディオ
(Intermission)
13. さよならメランコリア
14. 銀の月
15. 斜陽
16. 愛が分母
17. 純恋(すみれ)
18. La Vita é Bella
19. エンタテイメント!
20. 水のように
21. 大人のくせに
22. ニューエイジ
23. スウィート16
24. サムデイ
25. 明日の誓い
26. 約束の橋
(Encore)
27. スターダスト・キッズ
28. ソー・ヤング
29. アンジェリーナ

「Youngbloods」
黒のスーツでキメて、ジャズマスターのギターを抱えた佐野さん。
ピアノのイントロを合図に、クールなビートが唸ります。
それはまるで深く地中に潜っていくような感覚の、骨太のサウンド。
佐野さんは力を入れ過ぎず、サラリと歌ってます。
スクリーンには、新旧2つのMVの映像が交互に映し出されていきます。
1985年の佐野さん、2024年の佐野さん。
そして目の前に、2025年10月28日の佐野さん。
「♪ 鋼鉄のようなWISDOM」の辺りからスピード感が増していって。
観客の手拍子にも熱が入ります。
今日もライヴが始まった。

「つまらない大人にはなりたくない」
明るく飛び跳ねるようだった「ガラスのジェネレーション」から、姿勢を低くしてエネルギーを溜めるような新しいアレンジへ。
前曲に引き続き、ポップかつクール、そして重たいビートが2曲続きます。
このような方向性のアレンジが、コヨーテ・サウンドを象徴しているとも言えます。
「♪ Hello city lights」に合わせてパン・パパンと手拍子。
「♪ 答えはいつもミステリー」と歌いながら、?マークを空中に描く仕草の佐野さん。
「♪ ひとりぼっちのドアを」の後は、大声で「ノック!ノック!ノック!」と歌いながら拳を突き上げる観客。
そうやってアクションしながらも、徐々に徐々にエネルギーを溜めていって、ここだ!という瞬間。
ラストの佐野さんのシャウト「♪ つまらない大人にはなりたくない」に合わせて、観客も大合唱。

MC。
「今日はどうも集まってきてくれてありがとう」
「今夜は東京。戻ってきた、って感じ」

「だいじょうぶ、と彼女は言った」
冒頭2曲から一転して、虚ろなサウンド。
目に見えない何かが怪しく宙を舞い、圧力がかかって身動きが取れない感じ。
金縛りにあい、再び自由を得られるまで待つしかない、どこか諦めの境地にも似て。
佐野さんはアコギを優しく弾いています。
前半、小松さんはスティックを持たず、タンバリンを叩いていました。
「ジバッパドゥ」が呪文のように聴こえて。
魔法が解ければ、希望のブランニューデイが見えて、穏やかな気持ちになりました。

「ジュジュ」
佐野さんは赤のストラトを抱え、タンバリンを叩きながら歌います。
このポップなシャッフル・ビート。
ダウナーだった前曲との差、コヨーテ・サウンドの振れ幅の大きさを感じます。
スクリーンには、80年代風ポップ・アートな映像。
歌詞も表示されていて、それを見てるとつい口ずさみたくなります。
「♪ ジュジュとはうまく踊れない」と歌ってるけど、この曲なら誰もが自然に踊れています。

MC。
「どうもありがとう」
「コヨーテ・バンドは今年20周年を迎えました」
「HAYABUSA JET I、聴いてくれた人も多いと思います」
「嬉しいことに評判が良くて、調子に乗ってIIも作っちゃいました」
「今夜はたくさんの曲を演奏するので楽しんでってください」

「街の少年」
イントロのドラムとスライド・ギターから、すべて心を持っていかれます。
サビで「♪ ダウンタウンボーイ!」と、拳を上げて大合唱する観客。一段と熱くなりますね。
「♪ ここにも一人、あそこにも一人」で客席をあちこち指差す佐野さん。
あれ?今、僕の方を差してくれた?
Cメロ「♪ ボーイフレンド ガールフレンド」のところでも一気にヒートアップ。
転げまわるように叩きまくるドラムに心拍数が上がり、バンドの一体感のある演奏に爽快感。
「♪ シャラララララ」のところでは手拍子も大きくなり、会場内がひとつに。

「欲望」
佐野さんはキーボード卓に座って。
ここで、観客も座りました。
じっくり落ち着いて耳を傾けよう、というところでしょうか。
ただ、最前列のド真ん中にいたお客さんが1人だけ立ったまま。
そして、曲のグルーヴに合わせて、ずっと下を向いて踊ってたんです。
最前列のド真ん中ゆえ、かなり目立っていて、まるでステージ上のダンサーさんみたいな趣きも。
曲の後半では、ステージの後方でミラーボールが光り出しました。
演奏のビートも強くなり、一気にダンスフロアになったみたいです。
あれ?
でも、そう考えると、この曲は座って観るんじゃなくて、踊ってた方が良かったんじゃないか?
もしかしたら、最前列で踊ってる彼の方が正しかったのではないか?
体が疼く。
どうしたらいいんだ?
Rescue Me!
そんな気持ちになってきました。

「自立主義者たち」
今までも「インディビジュアリスト」は、いろんなアレンジで披露されてきましたが、このコヨーテ・ヴァージョンは、ますます怪しい雰囲気を纏いました。
歌詞にもある「Cool walking」を追求したアレンジと言っていいかもしれません。
再び立ち上がった観客は、それぞれ思い思いに体を揺らしています。
佐野さんの「♪ Big fat mama said」に応えて、「♪ シャラ・ラ・ラ・ラ!」と観客が大合唱。
不気味なのに興味津々に聴き入ってしまうオルガンの音。
スタンド・マイクで歌ってた佐野さん、途中からハンド・マイクに持ち替えて、熱が入ります。
深沼さんの妖艶なギターも耳から離れません。

「君をさがしている (朝が来るまで)」
佐野さんはジャズマスターを抱えて、ワイルドでブルージーなロックへと変貌したこの曲のギター・サウンドに厚みを加えます。
スクリーンには、UFOから宇宙人の映像。
朝が来るまでどころか、宇宙の果てまで探しに行くということでしょうか。
「♪ イエー、イエー、イエー!」と段階的に盛り上がると、観客の手拍子が大きくなったのが間奏。
その中で深沼さんのギター・ソロが光ります。
瞬間的にテンションが上がる曲ではなくて、ジワジワと、グツグツと何かを煮込み続けているようなサウンド。
ポップ・ロックが得意なのがコヨーテ・バンドですが、こういう裏の顔もある、って感じですかね。

MC。
「いい感じ?」
「この会場は5年振りだそうです」
「ここが渋谷公会堂と呼ばれてた頃から、何度も演奏してきた場所です」
「暑い夏から始まったツアーも、冬の気配がしてきました」

「誰かが君のドアを叩いている」
冒頭のマンドリンの音は、誰かが生で弾いてるのか?と目を凝らしてみましたが、どうやら同期の音のようです。
佐野さんが「冬の気配」と言ったからか、寒さで少し体が引き締まった時のような気分。
でも、「♪ 光のなかに 闇のなかに」と大合唱ですぐに熱くなります。
スクリーンには、『SOMEDAY』『フルーツ』『THE SUN』など、今までのアルバム・ジャケットの画像の世界観をイメージした映像が映し出されます。
この曲は『HAYABUSA JET II』に入る予定の曲で、新しいコヨーテ・ヴァージョンとなりますが、派手なホーンの代わりをピアノが担ってるくらいで、原曲のアレンジとそれほど大きく変わった印象はありません。
ただ、Cメロ、「♪ 太陽 溶けた空に高く」のところ、佐野さんの歌と演奏のキーが違って聴こえるんですよね。ちょっと気持ち悪い。
「♪ シャラララ」で元に戻るのだけど、これは初日の埼玉公演の時にも感じたことでした。
録音された正式な音源ではどうなってるのか、『HAYABUSA JET II』のリリースを待ちたいと思います。

「新しい航海」
佐野さんは黒のグレッチに持ち替えて。
スクリーンには、オレンジと黒のボーダーのダウンジャケットを着た異星人が歩いてる様子が映し出されています。
航海と言っても、海だけじゃなく、大地、果ては宇宙まで、それは遥かなる旅。
そう、人生は旅だと教えてくれてるようで。
一歩一歩、自分の足でしっかりと前へ進むんだとでも言うような、力強い曲のリズム。
藤田さんのソロは、クレイジー・ギター!という感じ。
そしてラストは佐野さんがハーモニカ・ソロ。
アドリブで吹き鳴らしていきます。
この曲も『HAYABUSA JET II』収録予定の曲ですが、大きなイメージの違いはありません。

MC。
「嬉しいです。どうもありがとう」
「それでは次の曲は、HAYABUSA JET IIに入れる曲」
「見せかけばかりの世の中で、あの子だけがリアル」

「レイン・ガール」
佐野さんのギターは赤のストラト。
ポップなのに、どこか穏やかな感じのサウンド。
元々そういう方向性の曲でしたが、コヨーテ・バンドにはピッタリということで選んだのでしょうか。
Cメロ「♪ 楽しいときにはいつも」の佐野さんのシャウトと、その後ろの「パッパウー」というコーラスが楽しく、コヨーテ・バンドらしい。
ラストは「♪ ラララララ~、ラ~ラ」と、頭上での手拍子と大合唱。

佐野さんが渡辺さんに合図を送って。
「悲しきレイディオ」
心ときめくピアノのイントロが流れると大歓声。
そして、観客が「ヘイ!ヘイ!」と気合いの声。
さらに、サビでは「♪ レイディオ!レイディオ!」の大合唱。
ここ、1番力が入るとこです。
「♪ 心はいつでもオーバーヒート」の後、ステージ前方へ出てくる佐野さん。
昔はここでスライディングを見せたりしてましたが、膝の手術もしたので、それはもうムリです。
ただ、前に出て来てくれる心意気だけでも。
3番では「この素晴らしい渋谷の夜!」と叫んで大歓声。
さらに、「ゴーゴーゴー!」と煽って、観客の「♪ レイディオ!レイディオ!」の大合唱の声が大きくなります。
この疾走感。
この爆発力。
冒頭からフルスロットルで駆け抜けました。

「15分後に戻ってきます」と言って、第1部終了。
休憩時間です。
初日の埼玉公演では休憩は20分だったのですが、今回は15分です。
この時間を持て余す人がいないように、スクリーンには佐野さんが一問一答形式で答えたインタビュー映像、題して『山中湖は寒かった』が流れます。
観るのは2度目ですが、佐野さんのウィットに富んだ答え、自由に歩き回る愛犬ゾイくんの映像はとても和みます。
この映像が10分くらいで、それを含めての15分の休憩時間、ちょうど良かったのではないでしょうか。

スクリーンには砂漠の上に不気味な雲が流れていく映像。
アルバム『今、何処』の不穏な「OPENING」サウンドが流れる中、バンド・メンバーが現れます。
続いて現れた佐野さんは赤のシャツとグレーのジャケットにお召替えしてました。

「さよならメランコリア」
佐野さんはキーボード卓に座って。
冒頭、佐野さんが歌い始めるタイミングで異音。
見ると、深沼さんのギターにトラブル発生のようでした。
この曲はギターが肝でもあるので、トラブルが解消するまでの間は、やはりどこか物足りないサウンドでしたね。
佐野さんもちょっと心配そうで、歌いにくそうにも見えました。
でも、割とすぐに解消してひと安心。
後は、ここから巻き返すぞと、水を得た魚のように、深沼さんがギターを弾き倒してました。
で、この曲は、休憩時間からの流れで、観客はみんな座ったまま聴いていたのですが、僕の隣の席の人は立ち上がってしまったんです。
客席前方エリアで立ち上がったのはその人だけ。
ガンガン盛り上がる曲でもないので、その人がポツンと1人立ってるのはちょっと目立ってましたね。
と思ってたら、その隣の友人がスッと立ち上がって。
友人を1人だけにさせないぞという気持ちが見えて、ああ、いい人だなあと思いました。
そして、静かな闘志を燃やすこの曲。
曖昧なままでも魂ぶち上げていくのは、意外と簡単なことなのかも。

「銀の月」
「メランコリア」が終わったら、やっぱり聴きたくなるのがこの曲。
観客は再び総立ち。
ポップなピコピコ・サウンドに導かれ、佐野さんも立ち上がってジャズマスターを抱えます。
一心不乱に突き進むビート。
それに合わせて飛び跳ねながらの手拍子。
決して悲観的にはなりません。
ラストの深沼さんの、突き抜けるような高音から、唸りを上げる低音まで、ドライブ感一杯のギター・ソロに痺れます。
ラストはスクリーンに【jump into metaverse】の文字。

MC。
「休憩時間のインタビュー映像、観てもらえましたか?」
「ゾイ!」
「僕の友達」
「犬と過ごす毎日は楽しいです」
「ゾイは僕より賢くて、ちょっとファニー」
「いい感じ?」
「それではアルバム今、何処からもう1曲聴いてください」

「斜陽」
第2部序盤の『今、何処』コーナーから「クロエ」が消えました。
そして、最近追加されたばかりなのがこの曲。
急遽セトリ入りしたものにしては、スクリーンには太陽の映像と歌詞が映し出され、しっかり作りこまれていました。
佐野さんはアコギを弾きながら、少し寂しげに歌います。
「♪ 君の魂 決して無駄にしないでくれ」というメッセージ。
改めてこの曲をこのタイミングで歌う意味を考えてしまいました。
深沼さんと藤田さんの息の合ったギター・アンサンブルも素晴らしかったです。

MC。
「こうして見ると、会場のファンの皆さんの年齢層が上がりましたね」
「でも、キッズもいる」
「そんなキッズたちに、この曲を歌いたいと思います」

「愛が分母」
ホーンの音色で派手に盛り上がるのもいいんですが、ホーン無しのコヨーテ・サウンドでシンプルに跳ねるスカのリズムもいいものです。
その軸になるギター・ワークは、深沼さんがカッティング、藤田さんがフレーズを担当。
でも、深沼さんがソロを弾く時は藤田さんがカッティングにと入れ替わるんです。
佐野さんはスタンド・マイクで「♪ 踊りたい」と軽快に歌います。
サビは「♪ あーいが、ぶんぼっ!」と大声で大合唱です。
間奏は、渡辺さんのオルガンの音色が心地いい。
2度目の間奏は藤田さんもソロを弾きます。
佐野さんはタンバリンを叩いて、終始にこやか。
そして、「カモン!」と煽れば、「♪ Say Yeah!」と観客の大合唱でフィニッシュ。

「純恋(すみれ)」
冒頭の佐野さんのビシッと決まったポーズのカッコ良さ!
ピンク色の照明に照らされて、何度観てもホレボレします。
恋することは戸惑うけれど、素晴らしいことだよと若者に訴える名曲。
そして、遠き日々に思いを馳せる中高年のファン。
ただ、スクリーンを観ると、スキンヘッドで裸の男の人がアングラ舞踏。
そして、その前で佐野さんも妖しく踊るという。
なんだか、歌詞の内容と映像のギャップが。
これはちょっと意図するところがわからない(笑)。

「La Vita é Bella」
イントロのオルガンの音を聴きながら、小刻みな手拍子。
「♪ 君が愛しい 理由はない」に、深く感じ入る。
いつ聴いてもフレッシュなサウンドで、人生が良い方向に開けていくような希望を感じさせます。
佐野さんは「♪ 朝は誰にでも訪れる」のところからハンド・マイクに切り替えて、ステージ前方へ出て行きます。
間奏での手拍子が俄然盛り上がりました。
それに呼応して、小松さんのドラムの爆裂な音!
ラストは、深沼さん、藤田さんに加え、高桑さんまでステージ前方に出て来てステップを踏みながら演奏。
終了後、高桑さんが人差し指を立ててから後ろに振り向いて行ったのがカッコ良かったです。

MC。
「デビューして45年、コヨーテ・バンド結成から20年」
「お陰様でツアーもソールドアウト、嬉しいです」
「今日はトランプ大統領が来ていて、少しザワついてます」
「トーキョーのみんな!シブヤのみんな!」
「もっとロックしよう!」

「エンタテイメント!」
佐野さんがエピフォン風ローズウッドのギブソンのセミアコをかき鳴らします。
エンターテイメントの素晴らしさ、大切さを畳み掛けるようなロックンロール・サウンドで。
ああ、楽しいなあ、幸せだなあと実感します。
間奏で、深沼さん、藤田さんのギター2人が一斉に前へ飛び出してくる時の迫力!

「水のように」
佐野さんのギターは黒のレスポール。
ポップで軽快なビートが清々しいロックンロール。
スクリーンには水や波の映像。
コヨーテの「気にしない」とか「ひるまない」とか「かまわない」といったコーラスの言葉が、ポジティブでとても大切なような気がします。
水が流れるように、ありのままに、自然に。
常にそんな風な気持ちで日々を暮らせたら。
「元気で」という佐野さんからの言葉を胸に。
ラストのジャジャーン!と決める演奏、バンドの一体感、ライヴ演奏の醍醐味を感じましたね。

「大人のくせに」
やや大味でワイルドなロックンロール。
ギターを外した佐野さんは、スタンド・マイクに向かってタンバリンを叩きながら歌います。
歌詞に合わせて「プロパガンダ!」と叫びます。
盛り上がってたと思ったら、2番で、佐野さんの合図でオフビートに。
「いらない」という言葉が強烈で、世の中の理不尽なものに対する怒りを、皮肉を込めて。
そうだ、そんなものに踊らされちゃいけない。
終盤、深沼さん、藤田さん、高桑さんがステージ前方に出て来て。
その時スッと後ろに下がってた佐野さんでしたが、深沼さんのギター・ソロの時には指を差して称える仕草。
いいよ、フカヌー!

「ニューエイジ」
『HAYABUSA JET II』に収録予定。
タイトルが「新しい世界」と変更になるようです。
この曲は、原曲と比べて、新しいアレンジに変わったなとハッキリわかります。
スクリーンの映像でも感じるのですが、来たるべき近未来。
そこは寂れてる?
それともユートピア?
我々が迎える新しい世界とは。
「♪ That’s meaning of life」の後は「フッ!フッ!フッ!フッ!」と大合唱して気合いを入れます。
Cメロ「♪ 心のスクラッチを抱いて」からハンド・マイクに切り替えて、力のこもったヴォーカルを聴かせる佐野さん。
コヨーテ・ヴァージョンのアレンジになりましたけど、サウンドの方向性が大きく変わるものではなく、今までと違和感なく楽しめました。

MC。
「10代の頃から、バディ・ホリーが大好きで、よく真似してました」
「バディ・ホリーのような楽しいロックを作りたくて、なかなか書けなくて」
「でも、このアルバムを作っている時に書けました」

「スウィート16」
佐野さんは赤のストラトをかき鳴らし、ドラムがドンドコドンドコとリズムを刻む、稲妻のようなロックンロール。
サビの「♪ Wow Wow 夢見てるSweet 16」からは、拳を高く何度も突き上げながら大合唱して、熱く盛り上がります。
熱いんだけれど、水飛沫を浴びてるような爽快感。
間奏でギター2人が前へ出て来れば、一層テンションが上がります。
佐野さんの「♪ ウェ~~ルッ」で転調して、さらに高みへ。

MC。
「I’m gonna be with you tonight!」
「いい感じ!」
「80年代の思い出といえば、アルバムSOME DAYを作ったことです」
「この曲が書けて、本当に良かったと思ってます」
「詞を知ってる人がいたら一緒に歌ってください」

「サムデイ」
ドロロロンッ!という、イントロのドラムの爆裂な響き。
そして、その後のピアノの旋律に胸がいっぱいになります。
僕はもちろん、会場中、みなさん一緒に歌ってたようですが、不思議と僕の耳に入ってきたのは佐野さんの声だけでした。
サビ前の「♪ まごころがつかめるその時まで」の時のブイブイと鳴るベースの音に気分はさらに上昇。
「♪ SOMEDAY この胸に SOMEDAY」
もう、ずっと大合唱。
間奏では佐野さんのハーモニカ・ソロ。
その響きが郷愁を誘い、さらに若い青春の日々に思いを馳せます。
佐野さんの曲なんだけれど、みんなの曲。
そして、自分の曲。
いつまでも朽ちることのない、エヴァーグリーンのアンセムです。

「明日の誓い」
佐野さんはジャズマスターで柔らかくビートを刻みます。
「いつか」と歌った後に「明日」を歌う。
この2曲の流れがなんとも、ね。
「サムデイ」から時が経ち、新たな未来へ向けての静かな決心が見えてくるようです。
最後に「♪ ラララ」と大合唱して、会場がひとつに。
きっと、より良い明日になることを信じて。

MC。
「この45年を振り返ると、急に外国行ったり、ヘンテコリンな曲を書いたり、バタバタしてきました」
「でも、こうしていられるのも、ファンの皆さんのおかげです」
「そして、ハートランド、ホーボーキング・バンド、コヨーテ・バンドと、素晴らしいミュージシャンたちに恵まれました」

「約束の橋」
佐野さんは赤のストラトを抱えて軽快なアクション。
ライヴが佳境に入ったことを印象付けます。
「♪ 今までの君はまちがいじゃない」と大合唱。
佐野さんにそう言われれば。
そして自分もそう歌えば。
なんだかこれからも自信をもって生きていけそうな力が湧いてくるのです。
1番を歌い終えた後、ベースの高桑さんの方向を向いて、高桑さんになのか?それとも、その奥の舞台袖のスタッフになのか?、「抑えて」というようなジェスチャーをした佐野さん。
その直後にサウンドが変化したような感じはしなかったので、佐野さんの仕草はどういう意図だったのかわかりませんが。
間奏では原曲のようなサックス・ソロはないので、その代わりに、ピアノの優しい旋律が和ませていくコヨーテ・アレンジでした。
そして、ラストは精一杯「♪ ラーラーラーララー、ラーラーラーララー」と大合唱し、それでもまだまだとばかりに「ヘイ!ヘイ!」と気合いの声を出す観客。

「ギター、深沼元昭!」
「ベース、高桑圭!」
「ドラム、小松シゲル!」
「キーボード、渡辺シュンスケ!」
「ギター、藤田顕!」
「ザ・コヨーテ・バンド!」

ここで本編終了。

そしてアンコール。
佐野さんは黒のトレーナーに着がえてました。

佐野さんは赤のストラトを抱えた後、ハーモニカを取り出したので、あの曲だな、と。
「スターダスト・キッズ」
ハーモニカで爽やかな音を響かせて始まるこの曲。
序盤から「乾杯!」と盛り上がります。
「♪ Let’s twist tonight」のところはフニフニと踊って楽しくなります。
そして「♪ Ah Little darling I came for you」の疾走感!
このアップダウンのスリルがたまりません。

バンドがあの曲のビートを刻みながら、MC。
「今日は来てくれてどうもありがとう」
「東京の皆さんの笑顔がたくさん観れました」
「そして、身も心も若く!」
「ソー・ヤング」
「♪ Yes, you need somebody to love!」と拳を高く何度も突き上げ、飛び跳ねながらの大合唱に熱が入ります。
佐野さんもテンションが上がって、首を左右に振りながら歌うアクション。
そして、「もう寂しくなりたくない!」の叫び。
ギター2人が前に出て来てさらに燃える。
佐野さんがリズムに合わせて「ハッ!ハッ!ハッ!」とシャウトします。
こんな僕らの盛り上がり、「ちょっとだけ若すぎる」と言われたりするかな。

「I need somebody to love!」
「You need somebody to love!」
そう言ってから、ステージ前方を右から左へと歩き回って、満足そうな笑顔でファンの声援に応える佐野さん。
そして、そのままギターを弾き始めて。

「アンジェリーナ」
45周年記念のライヴの最後を飾るのはデビュー曲。
デビューした時から現在まで、ロックンローラーとしての魂は錆び付いてないという証明のように思えます。
「♪ Oh アンジェリーナ 君はバレリーナ」と、拳を突き上げて大合唱。
さらに、サビ前で「ゴー!ゴー!ゴー!」と煽る佐野さん。
そうなったら、力の限り声を出し尽くすしかありません。
「♪ 今夜も愛をさがして」
3番は恒例になった、小松さんとのハモり。
「♪ 二人でいれば大丈夫だぜ」で、佐野さんがそうするように、僕も2を表すピース・サインを高々と突き上げたのですが、周りの人、誰もやってない...。
それでも、「♪ 今夜も愛をさがして」と何度も歌えば、ボルテージは最高潮。
疾風怒濤の如く、最高のロックンロールが繰り広げられたのでした。

演奏終了後、満足そうにギターを高く掲げる佐野さん。

それから、メンバー全員がステージ前方に集まって。

「いいですね、東京」
「戻ってきた、って感じ」
「ここでメンバーを紹介します」
「ギター、深沼元昭!」
「ベース、高桑圭!」
「ドラム、小松シゲル!」
「キーボード、渡辺シュンスケ!」
「ギター、藤田顕!」
「ザ・コヨーテ・バンド!」
すると、もう1曲やってくれと願う観客からの声援がひと際大きくなります。
少し困った顔をして、それを制する佐野さん。
「東京では、来年の3月に追加公演が決まりました。良かったら、そちらにまた遊びに来てください」
「45周年ということで、いいスピーチをしようと考えてきたんですが」
「いつもの通り、ごちゃごちゃになってしまいました」
「僕はデビューしてからこれまで、自由に感じ、自由に思い、自由に表現してきました」
「でもそれは、当たり前のことではなく、とても幸運だったのだと思います」
「今、世界中で、自由とは何か、民主主義とは何かが問われています」
「でも、考え過ぎてもいけない」
「今夜、皆さんがここにいてくれることが心強いです」
「ノスタルジーとかじゃなく、いま表現できることを思い切りやりたい」

大きな声援に応えながら、ステージを後にしたコヨーテ・バンドと佐野さん。
ライヴ終了は21時37分でした。

佐野元春の45年が、コヨーテとの20年に見事に凝縮

渋谷公会堂時代は、終演時間にかなり厳しかったというこの会場。
その名残りは今もあるようです。
19時という遅めの開演時間だったので、終演が何時になるのか不安でしたが。
初日の埼玉公演と比べると、休憩時間が5分短くなったし。
「クロエ」がカットされたこともあって、全29曲だったし。
各MCも短めだった気がするし。
もう1曲お願いする声に応えてくれなかったし。
早く切り上げなければならないんだろうなというのを感じました。
せっかくの東京公演。
土日で17時開演とかだったら、また違ったものになってたんでしょうね。

でも、初日公演を観てから約4ヶ月。
このセットリストの流れにも慣れ、演奏にも随分と余裕が生まれていて貫禄があり、パワーアップしているのをハッキリと感じました。
ツアーも後半、演奏は安定感を増し、ラウドなビートから静かなグルーヴまで、表現力の幅が広がっていました。
ツアーが進むにつれて、ライヴが成長していくって、こういうことか、と。

佐野元春の45年が、コヨーテとの20年に見事に凝縮された感触を得ました。
そして、まだまだ進化していく未来が見えました。
来年3月の追加公演の頃にはどうなっているでしょう。
少し日にちを空けての追加公演なので、セットリストなども生まれ変わるのかもしれません。
もはや明るい希望しか見えない。
今日も熱い夜でした。

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