佐野元春 Live@戸田市文化会館 2023.6.3 感想

今、何処TOUR 2023

2023年6月3日(土)@戸田市文化会館

待ちに待ったツアー。しかしチケットが

昨年リリースされたアルバム『今、何処』が素晴らしくて、それを引っ提げてのツアーを待ちに待っていました。
今年、ようやくのツアー決定です。
日程を見たら、関東でのライヴは、埼玉と東京の2日間のみ。
こりゃ、少なくないかい?と思うも、どちらにも行きたいと願いました。

昨年春のツアーも、初日は埼玉でしたが、当日券も出たくらいでしたから、チケットには余裕がありました。
だから今年もと、余裕ぶっこいてたら、イープラスでの先行抽選もハズレ、ぴあの先行抽選もハズレ!
ありゃりゃ、まずいぞと思いながら、一般発売に賭けたら、発売開始3秒で繋がるも予定枚数終了!
3秒で売り切れってなんだよ。こんなの、どうやって獲ればいいんだ!
とにかく、せっかくの地元・埼玉、ツアー初日のチケットは手に入りませんでした。
絶望。

それからも、リセールが出ることを願って、毎日ヒマがあれば、ぴあをチェックしていたのですが、埼玉の公演なんて、出てきません。
これはダメなのか。
ただ、簡単に諦めることは出来なかったので、ライヴの日は仕事の休みを申請して、もしも土壇場でチケットが手に入る場合に備えていました。

『今、何処』と『ENTERTAINMENT!』のレコード

そんな風に毎日、佐野さんのことを考えていると、『今、何処』と『ENTERTAINMENT!』のレコードが今年発売になったことも気になってきました。
リリースの発表があった時、大好きなアルバムですから、もちろん欲しいと思ったのですが、1枚4400円。
この2枚は関連性があるので、どうせ買うのなら2枚ともじゃないと気が済まない。
そうなると、8800円。
ひえ~っ。
CDは持ってるんだし、サブスクでも聴けるんだし、わざわざそんなお金出してまでレコード買う意味があるのか?と考え、一時は断念しました。
しかし、disk unionに行った時に、実物を目にしたら、その大きなジャケットのレコードがなんとも魅力的で、欲しくなってしまったんですよね。
ああ、いいなあ。欲しいなあ。
でも、最近、無駄遣いはやめよう、お金を節約しよう、と考えていたところなので、なんとも悩ましい。
買っちゃおうかな、やっぱり我慢かな、の繰り返し。
Amazonでは、付与されるポイントは日々変更されるのですが、これらのレコードに付くポイントは、たいていが1%分の44ポイントでした。
これでは全然旨味がないなあと思うのですが、たまに跳ね上がって600ポイント付くことが過去に何度かあったのです。
600ポイント付くのならば、それなりにお得感がある。
だったら、もし2枚のアルバムが同時に600ポイント付くことがあったら、その時は買おう、と思っていました。
そしたら、埼玉のチケットが獲れなくてもんもんとしていたある日、とうとう、2枚ともに600ポイント付いた日がやってきたのです。
こんな高いレコード買うなんて、贅沢かもしれませんが、チケットが獲れない憂さ晴らしみたいなところもあって、えいや!と買ってしまったのです。

それから毎日、この2枚のレコードを聴く日々。
どちらも収録時間が短いので、何度もリピート出来ちゃいます。
もともと好きなアルバムで、今まで何度も聴いてたはずなのに、レコードでも何度聴いても飽きなくて楽しい。
大きなジャケットも素晴らしくて。
レコードは、音質がどうのではなくて、所有欲を満たしてくれるアイテムなんだなと実感しました。

Twitterで嘆いたら、神が現れた

そうやって毎日、レコードを聴いていると、すっかり佐野元春モードの体になってきました。
早くライヴで聴きたい、と。
レコード聴いてて楽しい気持ちはTwitterにも書いてたのですが、ただ何回も「レコード聴いてる」だけ書くのも芸がないと思って。
じゃあ、なんて書こうかなと。
とにかくライヴに行きたい気持ちも書きたい。
そういえば、僕は以前、余らせてしまったチケットを誰かに譲りたいなと思った時があって、その時は、Twitterで、チケットが手に入らなくて嘆いている人を探して、声をかけたんです。
逆の立場になってみればわかる。
チケットが手に入らないと表明しないと、誰にも伝わらない。
なので、佐野元春のレコード聴いてて楽しいけど、チケットがあったならもっと良かったのに、という主旨のことをツイートしてみたんです。
直接的に、誰か譲ってくださいではなくて、あくまで嘆いている感じで。

そしたら、なんとその日のうちに、あるフォロワーさんから、「まだチケット手に入ってませんか?もしよろしければお譲りします」とのメッセージが!
まさか、そんな早くに反応があるなんて思ってもみませんでした。
いや、期待はしてましたけど、こんなにすぐにとは。
ここまで思い通りになっちゃっていいの?と逆に不安にもなりましたが、タイミングも良かったのでしょう。
そのフォロワーさんも良い方で、話がとんとん拍子に進み、無事にチケットを譲ってもらう運びとなったのです。
電子チケットなので、分配すればいいだけの話だったし、そのフォロワーさんもライヴに参加されるので、チケット代は当日手渡しということで。

そうやって、念願叶って、埼玉・戸田公演に参加できることになりました。
ライヴの5日前でした。

ライヴ当日。会場へ

実はライヴ前日、台風接近による大雨で、日本は広範囲で影響が出ていました。
夜にTwitterを見ていると、不安を訴える声が多く、怖くなってきたのですが、ライヴ当日は昼頃から晴れるという予報になっていたので、そこに希望が見えて、なんとかなるんじゃないかなとは思っていました。

当日、僕が家を出る正午前には雨は上がっていて。
なんとか無事に開催できそうだな、と。
交通機関の乱れがあるかもしれないので、早目に家を出て。
それで、少し足を延ばして新宿で買い物。
それから再び埼玉に戻って、戸田には15時頃到着。
運良くBOOK OFFやHARD OFFがあったので、そちらで時間を潰し、会場の戸田市文化会館には、開場時間の17時の10分前に着きました。
駅から割と近かったし、アクセスの良い場所でした。
今後も来てみたい会場です。

開演までどうするかといったところでTwitterを見ると、僕にチケットを譲ってくれたフォロワーさんは、雨の影響でダイヤが乱れた新幹線になかなか乗れず、開演時間には間に合わないとの話で。
もしかしたら、アンコールが聴ければいいくらいの時間になるかも、とかで。
ああ、なんということ。
チケットを譲ってくださった優しい方がこんな目に合ってしまって、急遽参加の僕はなんだか申し訳ない気持ちになりました。
でも、絶対に会場には来るとのことなので、チケット代をお渡しするためにお会いするのは、終演後ということになりました。

僕の席は2階31列31番。
31列といっても、実際は2階の2列目でした。
思ったよりもステージは近く、中央の席だったので、佐野さんの顔も肉眼でバッチリ観えそう。
全体を見通せる、なかなか良い席。
それよりも、2階1列目じゃなくて良かった。
高所恐怖症の僕は、ちょっと耐えられない感じ。

僕にチケットを譲ってくださったフォロワーさんは、チケットを連番で獲っていて、僕の他にもう1人のフォロワーさんにチケットを譲ったという話を聞いていました。
その方は、たぶん僕も知ってる方であろう、と。
そうなったら、その方に声をかけない手はありません。
席に着いて、恐る恐るお隣さんに声をかけてみると、やはり僕と同じフォロワーさんからチケットを譲ってもらったとのことで、お名前をお伺いすると、やはり僕のフォロワーさんでもありました。
それから開演まで15分ほど、お話をさせていただきました。
チケットを譲ってくださったフォロワーさんが無事に早目の到着をされることを共に願いつつ。

ライヴのスタート

開演時間の18時を2分過ぎて、客電が落ちました。
メンバーと、佐野さん登場。
みんながこの時を待ってたというのが手に取るようにわかる、割れんばかりの拍手と歓声。
なんか、久し振りな盛り上がり。

01. さよならメランコリア
02. 銀の月
03. クロエ
04. 植民地の夜
05. 斜陽
06. 冬の雑踏
07. エンタテイメント!
08. 新天地
09. 愛が分母
10. ポーラスタア
11. La Vita e Bella
12. 純恋(すみれ)
13. 詩人の恋
14. エデンの海
15. 君の宙
16. 水のように
17. 大人のくせに
18. 明日の誓い
19. 優しい闇
(Encore)
20. 境界線
21. 空港待合室
(Encore 2)
22. スウィート16
23. 約束の橋

アルバム『今、何処』の冒頭「OPENING」のSEが流れて、不穏な空気。
これを取り払うには、あの曲で始まるしかないでしょう!といった感じで、誰もが期待してたであろう1曲目。
そう、「さよならメランコリア」です!
スクリーンには砂漠のような映像が映し出されています。
そして、意外だったのは、佐野さんはギターを抱えてセンター・マイクで、ではなくて、キーボード前に座っての歌唱でした。
サイケでブルージーなギター、力強いリズム。
なんとなく、曖昧な、ではなくて、「♪ ぶち上げろ魂」というメッセージが突き刺さってきます。
佐野さんは、そんなに力入れて歌ってないのに、それでも伝わってくる熱。
この、沸々とエネルギーが沸き立ってくるような感じ。
バンドの演奏も、いきなりの一体感で高揚しました。

こうなったら、次はあの曲がいいよなあと思ってたら、その通り。
ピコピコという電子音に導かれて、「銀の月」です。
スクリーンには、もちろん大きな月。
生き辛い世の中を歌った、悲観的でもある歌詞ですが、ノリが良く、自然と体がフニフニと動いてしまいます。
当初は、この曲はとりたてて好きでもなかったんですが、どんどん感触が良くなってきますね。
最後に「♪ 君は少し笑った」と、希望を持たせて終わるのも良いです。

照明が、ピンクとオレンジで、なんだかロマンティックなムードに。
そうなったら、あの曲でしょう。
「クロエ」
スクリーンに「彼女が恋をしている瞬間」などと、歌詞が映し出されていきます。
この曲に限らずですが、今回のライヴでは、曲によっては、歌詞の一部がスクリーンに映し出されて、その印象的なフレーズが目にも飛び込んでくる演出が多々ありました。
この曲は、なんともお洒落で大人なムードで大好きです。
ただの胸キュンとは違います。
「♪ その仕草 朝の光のように暖かい」。
とても美しい女性が目の前に見えるようです。
こういう曲が書けるんですから、佐野さん、全然枯れてませんよね。
ただただ、ウットリします。

「植民地の夜」
荒っぽいギター・サウンド。
前曲とはまた違った意味で、心が揺さぶられます。
心の中の何かが暴れ出しそうな感じ。
開放していいの?

「斜陽」
イントロのアルペジオが印象的。
スクリーンにも映し出されましたが、「♪ 幻想 狂想 暴想 ブルジョワな妄想」というライムが好きです。
「♪ 君の魂 決して無駄にしないでくれ」というメッセージを、張り上げて歌うのではなく、静かながらも熱を帯びた歌い方するのがいいんですよね。
じんわりと、「ああ、そうだよなあ」と納得・実感するんです。

「冬の雑踏」
ハーモニカの音色がいいスパイスです。
もう会えない「あの人」を想う時。
原題(「Where Are You Now」)からして、『今、何処』のタイトル曲です。
今、何処?ここ、何処?
バンド・メンバーのコーラスとの掛け合いも印象的。
どこかでのんびり散歩するように、穏やかな気持ちになれる曲です。

MCで、昨年はとてもいろんなことがあって、忙しかったと。
具体的に活動を挙げていましたが、たしかに、精力的でした。
特に、アルバム2枚出して、そしてようやくそのツアーが出来る、と。
もちろん、ファンもこの時を待っていたんです!

「エンタテイメント!」
イントロのギターが鳴るだけで、心が踊ります。
そして、叩き出されるビート。
イヤなことは忘れて、エンターテイメントの夢の世界に浸る喜び。
コーラスの「♪ It’s just entertainment」は、一緒になって歌うと爽快感。
間奏のキレのあるギターのストロークと、ベース・ラインの絡みがたまりません。

「マスクも外して、ようやくいつものライヴに戻ってきた感じ?」
佐野さんからもお許しが出たと言ってもいいでしょう。
マスクなんて外そう!

「新天地」
昨年春のツアーが始まる直前にリリースされた『ENTERTAINMENT!』。
その中でも、ライヴで盛り上がりそうだなと思って期待してたのに、やってくれなくてガッカリしたのがこの曲。
ようやく今回初披露です。
とても爽やかで、佐野さんもフワフワした歌い方をするのですが、どんどん引き込まれていって、終盤はグイグイ来ます。
そして、「♪ チュルルル、チュッチュッチュルー」のコーラスが頂点に引っ張っていってくれる感じ。
最高です。

「愛が分母」
ライヴで初めて聴いた時から大好きで、必ずやってほしい曲。
スカのビートで跳ねるのが心地良い。
サビではようやく「♪ あーいがぶんぼっ」と気兼ねなく歌うことができます。
そして、締めの「♪ say yeah」はとことん気持ちいい。
まだお客さんは控えめではありましたが、これ、大合唱になるとものすごくいいと思うのです。
その日は近い。
確信しました。

ここまでずっと、昨年リリースのアルバムからでしたが、ここでコヨーテ楽曲の代表曲が。
印象的なベース・ラインのイントロで、ちょっと空気が変わりました。
「ポーラスタア」
サビの「♪ ほら見上げてごらん 冬の星空 あれはポーラスタア」では、お客さんみんなで、空高く指を差します。
この日の会場は熱かったですが、この時だけは真冬の気分。
深沼さんのギター・ソロは、感情を揺らすようなブルージーなフレーズ。
藤田さんの方はかき鳴らすようなソロで、感情を震えさせます。

「La Vita e Bella」
静かなビートで始まって、穏やかで優しいのにキレもある、コヨーテ・バンド屈指の名曲。
キャッチーなメロディと展開、幸せを感じる歌詞。
僕が佐野さんに注目するきっかけともなった、思い入れのある曲なので、何度聴いてもいいです。

「純恋(すみれ)」
イントロで、ピンク色のライトに照らされた佐野さんが、バシッと両手を広げるポーズはお馴染み。痺れます。
恋をする若者たちに、恋することの喜びを教える胸キュン・ソングですが、若者に限らず、歳を重ねた僕らにも、その喜びを思い起こさせてくれる永遠の名曲。
サビ・ラストの「♪ 君がいなければこの心は闇にさまようだけ」は、気持ちが高揚して、どこまで上り詰めてしまうのかわからない感覚になります。

「詩人の恋」
この時、佐野さんはキーボード前にいたんだっけかな?
「♪ 私たちはずっと共にいる」というフレーズが印象的で、佐野さんが呟くように、囁くように歌います。
この曲の時は、今までの流れとまた空気が違いましたね。
なにか、特別なものを耳にしている感がありました。
正直、僕はこの曲のタイトルを憶えてなかったのですが、今回のライヴの中でも印象に強く残った曲の一つでした。

ここからまた『今、何処』の世界に戻ります。
重たいベースのビートで始まる「エデンの海」
この曲も楽しみにしてました。
「♪ White Light!」という合いの手コーラスが耳に残ります。
怪しげな様相を呈しながらも、すごくカッコいい曲です。
髪を振り乱して、無になって頭を振り回したくなるほど力が入ります。

「君の宙」
枯れた味わいのあるサウンドとメロディ。
大それた力や勇気は持ってなくとも、意志だけはしっかりと持っていればなんとかなると思わせてくれる、不思議な力のある曲です。
ギター・ソロにウットリしましたね。

「水のように」
Aメロの、バンド・メンバーによる「♪ 変わらない」とか「♪ かまわない」という合いの手コーラスが印象的で、一緒に歌いたくなります。
「♪ いつだって誰もが誰かに」と早口での歌いまわしも好き。
サビで、「♪ 眠れ、水になって」と一気にノリが良くなります。
なにか、心の中の汚いものを洗い流してもらったような気分。

「大人のくせに」
これは相手に向けた言葉なのか。自分に向けた言葉なのか。
歌詞の内容と共に、サウンドもどこかユーモラスな大らかさがあります。

「明日の誓い」
決して派手ではないけれど、アルバムのラストを飾る意味においては、強い意志と明るい希望を持った、相応しい曲。
一発で心やられるというよりも、じわじわと来るタイプ。
ジャーン!と演奏が終了した時、おお、終わった~と、ひとつの世界観が幕を閉じた感がハンパなかったです。

でも、まだ終わりじゃありません。
「優しい闇」
テロテロテロというギターのイントロに導かれて始まります。
だんだんとビートが熱くなってくる感じ。
そしてサビで「♪ なんだろう」と一気に盛り上がります。
「♪ この心どんなときも 君を想っていた」というところで、2階席の僕の方を指差してくれた佐野さん。「僕を」指差してくれたとは言いませんよ。「僕の方を」、です(笑)。
終盤で、ジャーン、ジャーン、ジャーンとバンドがリズムを合わせるところが好きです。
なんか、力いっぱい演奏して盛り上げている感じが、ラストっぽいなと思ってたら、これでホントに本編終了でした。

アンコール。
「境界線」
優しいベース・ラインとキーボードの音色で始まります。
涼しい風を感じるかのように進んでいきます。
穏やかで、ちょっぴり切なくて。優しい気持ちになります。

「空港待合室」
「♪ 炎の人に逢った」という呟きで始まりながら、一転してのロックンロール・ブギ。
会場全体がノリノリで、踊りまくっていました。

ダブル・アンコール。
今日はこれまでずっとコヨーテ楽曲でしたが、ここに来てようやくの元春クラシック。
「スウィート16」
これを演奏するとはやや予想外でしたが、今年『SWEET 16 30th Anniversary Edition』BOXが出たんだし、そんな驚くことではなかったですね。
イントロでジャングル・ビートが鳴り響いた時の歓声も凄かったですね。
この曲は、キレが鋭い。
ビートに任せて体を揺らしながら、爽快感のあるキレ味を体感。
間違いなく強炭酸系。

「約束の橋」
佐野さん最大のヒット曲ですから、喜ばない人はいないでしょう。待ってました感がすごい。
「♪ 今までの君は間違いじゃない」と、肯定してくれる感じがいいんです。
そして最後、「♪ ラーラーラーララ、ラーラーラーララ」と大合唱できました。
やっぱり、これぞライヴ!ですね。

最後の最後、佐野さんがバンド・メンバーを紹介して、ライヴは幕を閉じました。
新しいアルバムを引っ提げての、コンセプチュアルなツアーがようやく始められたことの高揚感と充実感を顔ににじませながら、満足そうに皆ステージから去っていきました。

『今、何処』の世界にどっぷり浸れた、過去最高のライヴ

ライヴ終了は、19時58分。
なんと、2時間にも満たないものでした。
今まで僕が参加したライヴは、たいてい2時間半くらいやってたので、これは意外な短さ。
でも、時間が短いぞ!っていう不満はなくて。
だって、曲はいっぱいやってくれた、という実感があったから。
あと30分くらいやってくれたら他の曲もたくさん聴けたのに、というのは贅沢な思いなのでしょうし、今回のコンセプチュアルなライヴでは、これが正解なのでしょう。
とにかく充実した、ものすごく密度の濃いライヴだったというのは感じました。

ライヴを聴いていて、もしかしたら、『今、何処』のCDと同じ曲順なのかなあという思いはありました。
でも僕は最近レコードを聴きまくっていて、レコードとCDでは曲順が違うので、確信は持てませんでしたが、後で確認したら、やっぱりそうでした。
ライヴ前のラジオなどのインタビューで、『今、何処』全曲演奏するくらいのライヴになりそうだとは言ってたので、期待してたのですが、ほぼその通り、期待に沿ったものとなりました。
スクリーンに映像や歌詞の一部が映し出される演出も、佐野さんのライヴでは僕は初めてだったのですが、これも素晴らしくて、大好きなアルバム、『今、何処』の世界にどっぷり浸れる一因にもなっていました。
最高も最高、過去最高と言ってもいいくらいのライヴでした。

しかし!
それでも僕は手放しで喜ぶことはできませんでした。
何故なら、全曲好きと言ってもいいくらいの『今、何処』の中でも、1、2位を争うくらい大好きな「永遠のコメディ」をやってくれなかったからです!
特にこの曲を生で聴くのを楽しみにしてたというのに。
よりにもよって、『今、何処』の中からこの曲だけ演奏されませんでした。
なんで?どうして?
ライヴが進んでいく中で、この曲はまだかなと思いながらで、それがやがて、もしかしてやらないのでは?という不安な気持ちに変わっていって、とうとうやらずに終了してしまった。
もう、落胆です。
そりゃね、この曲が、異質なのはわかります。
ライヴの流れの中で、どこにはめ込んだらいいのかわからなかった曲だったというのは頷けるんです。
だけど、どうせだったらこの曲もしっかり演奏して、アルバム全曲演奏・完全再現ライヴとしてほしかった。
難しいこの曲に挑戦してほしかった。
これでは、僕にとっては完全な不完全ライヴなのです。
もし、「永遠のコメディ」をこのライヴに組み込むとしたら、そうだなあ。
最後の最後。
思い切って、アンコールの最後というのはどうでしょう。
「約束の橋」で盛り上がってライヴが終了するのはたしかに王道なんだけど、「永遠のコメディ」でしんみりと深みにハマって終わると、なんとも言えぬ余韻を残した印象的なライヴの締め方になると思うのですが、いかがでしょうか。

まあ、なんにしても。
今まで観てきた佐野さんのライヴとはひと味違いました。
これまでは、コヨーテ楽曲に加えて、80年代や90年代の元春クラシックスを織り交ぜて、ライヴが構成されてましたが、今回はとにかく、新作の『今、何処』の世界観をライヴで再現することにこだわった構成。
僕は『今、何処』が大好きなので、もちろんそういうライヴを求めていたので、その点では大満足。
長いキャリアの持ち主になると、過去の代表曲に頼ったライヴをやるアーティストがほとんどだと思うのですが、ここまで新作に振り切ったライヴをやれる人がどれだけいるでしょうか。
佐野さんのライヴでこういう感触を味わうのは初めてでした。

佐野さんのヴォーカルも絶好調。
若い頃に作ったキーの高い曲をがんばって歌うわけではなく、ほとんどの曲が、今の佐野さんの声に合った最近の曲なわけですから、無理せずに歌えてたし、自然に耳に馴染むヴォーカルでした。
まあ、さすがにアンコールあたりになると、息切れしてるかな?的なところもありましたが。
それでも、今の、ややかすれたりヨレたりするヴォーカルが逆に魅力的だったりするんですよね。

コヨーテ・バンドの演奏も、もう円熟しきっていて、すごい結束力。
深沼さんと藤田さんのギター・ワークも、時にリードを取ったり、サイドに徹したりと、曲によって見事に分担されていました。
なんの曲だったか忘れてしまいましたが、終盤の曲のラスト近くで、同じフレーズを交互に弾いて、音が右、左、右みたいに振れて聴こえてきたのがカッコ良かったです。
高桑さんの、ベースを弾きながら左右にステップ踏んでる姿が好き。今回も、1曲だけステージの前方まで出て来て、ギターの2人と並んで演奏したところがありましたね。
渡辺さんのキーボードも、時々ハッとするようなフレーズを奏でるのですが、どちらかというと、陰でサウンドの装飾を支えている感じでしたね。
小松さんのドラム。『今、何処』は、その独特な世界観を作るために、複雑なリズム・アンサンブルが必要だったと思いますし、それでいて統一感のあるライヴにするために、安定したビートを刻んでいました。
このメンバーだからこそのコヨーテ・バンド。
大好きです。

終演後、席が隣になったフォロワーさんと共に、チケットを譲ってくださったフォロワーさんと会うことが出来ました。
「エンタテイメント!」演奏時に到着されたということですから、心配してたよりも早めに到着することが出来たようです。
それでもやっぱり、せっかくのライヴを最初から観ることが出来なかったというのはお気の毒ではありました。
3人で少しお話をしたのですが、チケットを譲ってくださったフォロワーさんは、顔が広く、他にも知り合いのフォロワーさんがたくさんいらっしゃるということで、御挨拶の場所に同行させてもらうことに。
そこでは10人近くの方がいらっしゃってて、後ろで話を聞いてると、なんだか聞いたことあるような名前が聞こえてきます。
え、Twitterで知ってる●●さん?
それを皮切りに、何人かの方が挨拶して下さったのですが、
「〇〇です」
「え~っ、〇〇さん、知ってます!」
「▲▲です」
「あ~っ、▲▲さん、わかります!」
みたいな感じで、普段Twitterで見聞きしているフォロワーさんばかりでした。
思いがけずたくさんのフォロワーさんに直接会うことになってしまって、お土産までたくさんいただいたりしちゃって、恐縮でした。
なんだか、街で有名人にたくさん遭遇した気分でした。
ほとんどの方が僕の名前を知ってらっしゃったのも嬉しかったです。
ただ、お会いできたのはいいのですが、一度にたくさんの人と、しかも時間は短かったので、それぞれお顔まで憶える余裕はありませんでした。
次にどこかですれ違ってもわからないです。ごめんなさい。
今度はもっとゆっくり皆さんとお話ししてみたいですね。

それで、席が隣だったフォロワーさんと2人で、駅まで一緒に帰ることになりました。
ライヴ直後の興奮の中、ライヴの感想を話したり、今までの佐野元春歴を話しながらで楽しかったです。
その方は、僕とほぼ同年代だったのですが、80年代から佐野さんを追いかけているということで、僕とはファン歴が圧倒的に違っていて凄かったです。
こうやって楽しく話が出来たのも、チケットを譲ってくださったフォロワーさんのお蔭でもあるので、つくづく感謝です。
今回出来た縁は大切にしたいと思います。

ライヴを迎えるまでの数日間は、ワクワクで心がざわついてたのですが、ライヴが終わっての翌日は、1日中、心が満たされていて、「ああ、いいものを観たなあ」と、穏やかで温かい心でいられました。
ここまでの感覚になるのは初めてかも。

あの時、思い切ってレコードを買ってなかったら、ツイートもしなかったでしょう。
ツイートしてなかったら、チケットを譲ってもらうこともなかったでしょう。
いろんなことが繋がって、奇跡的に、ツアー初日の素晴らしいライヴを体験することが出来ました。
ほんとうに良かった。
感謝です。

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