小沢健二 Live@日本武道館 2018.5.2 感想

春の空気に虹をかけ

2018年5月2日(水)@日本武道館

一般発売前日に気付く

オザケンがライヴをやるだなんて、まったく知らなかったんですよ。
たまたま、チケットぴあのトップ・ページを見たら、「明日発売のチケット」の欄に「小沢健二」って書いてあって、へー、オザケン、ライヴやるのかあ、って知りました。
最近、ちょいちょいTVに出てたのは観ましたけど、ライヴやるほど精力的に活動するとは思ってもみなかったのです。
で、ライヴの日程をチェックしてみたら、日本武道館で、僕がちょうど仕事が休みの日じゃないですか。
オザケンは、そこまで詳しくはないので、わざわざ仕事を休んでまで、って感じではないですが、たまたま、仕事が休みの日なんだったら、観に行ってもいいかな、と思ったのです。
一般発売日前日に気付けた事も何かの縁だと思いましたし。

本当は、2000円席が良かったのですが、それはやはり速攻で売り切れで。
だったら、まあ、安いA席でいいか、と。S席でもそんなに値段の違いはなかったんですけど、ケチりました。
そしたら、A席、一発で僕の好きな通路側の席が確保できたので、これならと思い、購入しました。欲を言えば、帰る時に出口に近い西側の席の方が良かったんですけどね。でも、通路側の席が獲れる幸運もなかなかないので、それに乗りました。
チケットは結構争奪戦になるのかなと思ってましたが、そうでもなかったですね。
祝日公演の方は早目にいったん売り切れてましたが、数日後には追加席が出て、しばらくチケット余ってる状態でした。
僕が行く日の方は、公演日ギリギリまで余ってましたね。

ライヴの予習過程で神曲発見

さて。ライヴに行くとなると、予習をしなければならないのですが。
僕が持ってるCDは、1st、2ndと、コンピ盤の3枚だけ。
売れてた頃でもシングル・オンリーの曲は当然知らないし、その後のアルバムも持ってないし、最近の曲もなんとなくしか知らない。
こんな状態ではたして楽しめるのか?知らない曲ばかりだったら辛いぞ、と。
一応、出来る限りの予習はしました。
持ってなかったアルバムはレンタルしてきましたし、シングル・オンリーの曲はYouTubeに頼ってチェックしたりしました。
でも、その中で、発見もありました。
「戦場のボーイズ・ライフ」です。
僕、この曲知りませんでした。
オザケン絶頂期にシングルで出たもので、『HEY!HEY!HEY!』のエンディングでも使われてたようです。でもおかしい。『HEY!HEY!HEY!』は毎週ビデオに録って観てたほどなのに、まったく記憶にないんですよね。
だけど今回、YouTubeで聴いてみたら、一発で気に入ったんです。これは素晴らしい曲だ!と。
すぐにCDが欲しい所でしたが、シングル・オンリーの曲なので、今は入手困難なのです。しかも8cmCDだし。
で、iTunes Storeなどのダウンロードにも対応してないので、手に入れたくても不可能なのです。
こういう状態って、よくないですね。CDかダウンロードかストリーミングか、聴きたい時に手に入れられる状態にない、ってのはダメですよ。
こんな時は、YouTubeがありがたいです。
でも、本当は、YouTubeでタダで済ませるってのは心苦しいんです。お金払って音源手に入れたい。なんとかならんもんですかね。
とにかくオザケンは、そんなシングル・オンリーの曲が多いので、ベスト盤でも出してくれるとありがたいのですが。

今回のライヴのテーマは「ファンク交響楽」という事で、オーケストラを含めた36人のメンバー構成になるとの事。
豪華なオーケストラでファンクな曲を奏でる。これには素直に期待が持てましたね。
僕が聴きたいものと合致しそう。
とりわけ、「戦場のボーイズ・ライフ」はそのイメージに当てはまっているため、ライヴでやってくれるんじゃないか、と期待は高まりました。

満島ひかり参加

いよいよツアーが始まり、東京公演初日の情報が入ってくると、大きなサプライズが。
「ファンク交響楽」と聞いた時から、指揮は服部隆之じゃないかなと思ってて、それは当たったのですが、そしたら、それだけではありませんでした。
なんと、女優の満島ひかりが、バンド・メンバーに名を連ねているというではありませんか。
ゲストで1曲だけデュエットするとか、そんなんじゃない。
ライヴのオープニングから、アンコールのラストまで、まさしくバンドのメンバーとして楽器を弾いたり、歌ったり踊ったりと、出ずっぱりなんだそう。
これにはビックリすると共に、これで、見所が増えたなあ、どうなるかなあ、と、またもや期待は高まっていったのでした。

ライヴ当日。座席は振り替えでアップ・グレード

ライヴ当日は曇り空で、夕方から雨予報でした。
昼間はなんとかもったのですが、武道館に到着した18時頃は、パラパラと雨が落ち始めていました。
開場は18時だったので、到着後、すぐに入場。
男もいましたが、やはり妙齢の女性が多かったですね。みんな、かつての王子様を拝みに来たのでしょうか。

僕の席はスタンド指定席A、2階北東S列21番。
ところが、北東エリアに行ってみると、N列以降はシートが覆い被さっていて、閉鎖されているのです。
僕のS列は??
大いに戸惑って、近くの係員さんに訊いてみると、なんでも、席の振り替えがあるそうで。
係員さんに案内された所に行ってみると、僕の北東S列21番は、東S列21番の所に振り替わってました。
僕が買ったのは安いA席でしたから、本来は、ステージを斜め後ろから観る席となるのは覚悟の上だったのですが、東エリアに振り替わった事で、ステージを斜め前から観れる席となってました。
観やすさはかなり違います。
これは、A席ではなく、S席にアップ・グレードしたと言ってもいいでしょうね。ラッキーでした。
しかし、予定していた席を閉鎖して振り替えが行われたという事は、想定よりもチケットがさばけなかったという事でありまして、振り替えをしたのにもかかわらず、2階席後方はゴソッと列ごと空いてたり、空席も目立ったのは複雑な気持ちでした。
実際、僕の前の席も空席でしたし、左側は3席空席。右側は通路でしたから、僕の周りは人がいなくて、かなり余裕を持って観られるらくちんスペースで、これはとてもラッキーでしたけどね。

ライヴのスタート

開演時間の19時を10分過ぎてスタート。

01. アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
02. シナモン(都市と家庭)
03. ラブリー
04. ぼくらが旅に出る理由
05. いちょう並木のセレナーデ
06. 神秘的
07. いちごが染まる
08. あらし
09. フクロウの声が聞こえる
10. 戦場のボーイズ・ライフ
11. 愛し愛されて生きるのさ
12. 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディ・ブロー
13. 愛し愛されて生きるのさ
14. 戦場のボーイズ・ライフ
15. 強い気持ち・強い愛
16. ある光
17. 流動体について
(ENCORE)
18. 流星ビバップ
19. 春にして君を想う
20. ドアをノックするのは誰だ?
21. アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)

真っ暗になった場内から流れてきたのは、その名の通り、ギターのアルペジオと共に「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」
優しくふんわり、穏やかな雰囲気でスタートです。
「マスコミの既報通り、ヴォーカル、満島ひかり」
オザケンのそんな言葉に促され、満島ひかりがラップ部分を歌ったりしてました。
機械でシャボン玉の泡が飛ばされていて、ファンタジーな夢の世界を演出です。

次の「シナモン(都市と家庭)」は、最近のシングルのカップリング曲で、僕はCDを持っておらず、YouTubeでチラッと聴いただけで、割といい感じの曲かもという印象程度だったのですが、これをライヴでちゃんと聴いたら、見事に撃ち抜かれました。
やや地味なファンクといった風情でしたが、サビの「♪ 僕はスーパーヒーローに変身する」の所では仮面ライダーの変身ポーズの様な振り付け。すぐに憶えられて、思わず僕も一緒にやっちゃいました。
それから、間奏ではメンバー紹介。しかもメンバーの名前をメロディに乗せて歌いながらの紹介です。その間の満島ひかりの「♪ Ah」とか「♪ Woo」といったコーラスがとても綺麗で素晴らしく、すごくテンションが上がって楽しくなってきました。
このライヴに来て良かった!と、早くも思いました。
この様に、この曲はとても気に入ってしまったので、帰ったらiTunesでダウンロードしよう、と思ったのでした。

早くも「ラブリー」登場。
渋谷系の王子様・オザケンと言ったらコレ、ですかね。
ただただ楽しく、みんなをハッピーにさせる曲です。

大好きな「ぼくらが旅に出る理由」
とにかくワクワクする曲です。ストリングスとホーン、大所帯のオーケストラという今回の編成を存分に活かせる曲。特にホーン隊の煽りには興奮しました。
満島ひかりが、あれこれ服を選んだり、歯磨きをしたりと、PVを想起させる動きをしていたのがキュートでした。

「いちょう並木のセレナーデ」は、まったりとした気分になるバラード。
いや、バラードと言うには語弊があるかな?
大学のサークルかなんかで、みんなで合唱しているようなイメージです。
実際、サビの後半はお客さんも一緒になって歌ってましたね。

「神秘的」はほとんど馴染みのない曲だったので、あまり憶えてません。

「いちごが染まる」では、オザケンの周りに4つのポールを立て、その周りを満島ひかりが蛍光テープでぐるぐる巻きにしていくという、前衛芸術かのような演出。
曲はちょっと陰鬱な感じ。

「あらし」は『Ecrectic』収録曲ですが、そのアルバムはあまり聴きこんでない事もあって、それほど印象に残らず。

SEKAI NO OWARIとのコラボが話題となった「フクロウの声が聞こえる」
今回のファンク交響楽の核になってるのがこの曲だと言ってました。
オザケンがSEKAI NO OWARIの作風に近寄って作られた感じのこの曲は、あまり好きではないのですが、オザケン単独のヴォーカルだったので少しはマシでしたし、この曲があったからこそ、今回のようなライヴが行われる事となったのならば、この曲には感謝しなければなりませんね。

ここまで何曲かゆったりした曲が続いたのですが、ここでギア・チェンジ。
待ってましたの「戦場のボーイズ・ライフ」
ただ、始まってすぐ、リード・ヴォーカルを満島ひかりに委ねてしまいます。
楽しみにしていた「♪ ラッキースタァァァァァァァ」のロング・トーンが聴けず。
しかも、Aメロを2回繰り返さずに、1回だけでサビに突入のショート・ヴァージョン。
さらに、「Come on boys!」の叫びもなく、サビもそこそこしか歌わずに、次の曲に切り替わってしまうという、最悪の事態。
この曲が聴けるのを1番の楽しみにしてきたのに、この短さには思いっきり不完全燃焼で、大ショックでした。

前曲からのメドレー気味で始まったのが「愛し愛されて生きるのさ」
軽快なリズムでノリが良く、好きな曲なのですが、前曲のショックが尾を引いていて、身が入りませんでした。
しかも、この曲もショート・ヴァージョンでして。

「東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディ・ブロー」
コミカルな雰囲気で「♪ パーラーパー、パラッパッパパーラパラッパー」と能天気に歌われる頃には、モヤモヤしていた僕の気分も少し和らいで、楽しい気分になってきました。

と思ったら、次に始まったのが「愛し愛されて生きるのさ」
あれ?またこの曲に戻った??
さっきショート・ヴァージョンで終わった理由はここにあるの?
という事はつまり?

そう、次にまた「戦場のボーイズ・ライフ」に戻ったのです!
今度はオザケンがAメロ、サビ共にしっかり歌ってくれまして、大サビの「♪ この愛はメッセージ 祈り 光 続きをもっと聞かして!」の部分は一緒になって歌えて盛り上がれたし。
さっきまでのガッカリしてた気持ちも吹っ飛びました。
ただ、結局「Come on boys!」の叫びがなかったのだけが残念でしたけど。あれ聴くと、すごく気合が入って大好きなんですよね。だから聴きたかった。それだけが心残り。

ストリングスが大活躍な「強い気持ち・強い愛」
筒美京平先生が作った曲ですが、まるでオザケンが作ったかのように、おそろしくハマっている、大好きな曲です。さすが筒美先生だよなあ。
この「突き抜けた感」は素晴らしかったです。

事前情報では、満島ひかりはギターも弾いてたって話だったのですが、ここでようやくギターを手にして、イントロからジャーン、ジャーンとストローク、そのままリズム・ギターでの「ある光」
この曲は、メロディも少なくて、やや単調でもあり、長いんだけど、長さを感じさせない不思議な曲ですね。

僕にとっては、オザケン復活の印象が強い「流動体について」
サウンド的には絶頂期のものと遜色ありません。
この曲に良い印象がなかったとしたら、今のオザケンに興味を持たなかったかもしれませんし、今回のライヴに来る事はなかったかもしれません。
サビで上り詰める様にファルセットになるのが印象的な曲でしたが、このライヴでは、ファルセットでは歌ってなかったですね。辛いのでしょうか。満島ひかりのコーラスに任せたり、オクターブ低くしたりして誤魔化してました。
現在のオザケンを印象付けて、本編終了。

アンコールは、ギターの弾き語り風に始まった「流星ビバップ」
「♪ ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」と客席中が歌う所が楽しかったですね。

「服部さんがピアノを弾きます」と紹介しての「春にして君を想う」
ジャジーで、クラシカルなスタンダードの趣きに、オザケンの甘いヴォーカルです。

前曲から一転して、「ドアをノックするのは誰だ?」で、またとびきり弾けます。
サビの手拍子が楽しかったです。

ラストは、オープニングを飾った「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」のリプライズ。
この曲の調べに乗って、満島ひかりが、メンバー全員の名前を紹介。
名前を読み上げたら、お客さんは「ホロッホー」って返す件。
「満島ひかり!」
「ホロッホー」
「小沢健二!」
「ホロッホー」
みたいな。
こんなやりとりがあって、ほっこり温かい気持ちになって、ライヴは終了。

「今日、僕のコンサートに初めて来たっていう方、どれくらいいます?」
もちろん、僕も手を挙げました。
「嬉しいです。ありがとう」

「楽しい時間でしたが、それも終わるんです。日常に帰るんです。カウントダウンで日常に帰りましょう。5、4、3、2、1」
バシャッ、と照明が落ち、場内が真っ暗になって終わりました。
21時10分。
約2時間のライヴでした。

満島ひかりとオーケストラ。ハッピーとファンタジーの間に哲学があるようなライヴ

知らない曲が多かったらどうしよう、と思ってたのですが、最低限の予習もした効果もあって、初めて聴く曲はありませんでした。
2ndアルバムと、最近のシングルを知ってればなんとかなっちゃうようなセットリスト。
ただ、オザケンは「トーキョー!」と煽って、一緒に歌うように促す場面が結構あったのですが、僕は歌詞まで全部憶えているわけではないので、テキトーに歌ってました(笑)。
1stアルバムからの曲が1つもなかったのは意外でしたね。「ファンク交響楽」というコンセプトに当てはまる曲は1stにもあったと思うんだけどね。

そして、まず特筆すべきは、出ずっぱりだった満島ひかりの存在感。
ライヴの表記を「小沢健二と満島ひかり」としても良かったと思えるほどの活躍っぷり。
横に太鼓を置いて、それを叩きながらのヴォーカル&コーラス。
かなり多くの曲で、オザケンに代わってリード・ヴォーカルをとる場面がありました。
が、オザケンとはキーが違い過ぎて、オクターブ下げて歌うと、ドスが効いちゃって聴き苦しいし、かと言ってオクターブ上げて歌うと、かなり高音張り上げて歌わなければならないので、力んで辛そうでした。
といったわけで、正直、単独ヴォーカルにはキツい所が多々あったのですが、オザケンとのハモリとなると、ビシッと美しく決まるんです。「Ah」「Oh」「Hah」「Woo」などのコーラスもとても心地良かった。
満島ひかりが単独ヴォーカルをとると、客席は盛り上がりはしたのですが、ハモリとコーラスに徹した方が良かったんじゃないかな?とは思いました。
曲によっては、ダンスや演技のような事もしていて、とってもキュート。オザケンよりも彼女に目を奪われていた人も多かったのではないでしょうか。
それにしても、満島ひかりはロング・スカートが似合いますね。
今回のライヴで満島ひかりが観れた事は、嬉しい副産物でした。

それから、36人編成のファンク交響楽オーケストラによる豪華な演奏。
正直言うと、2階後方席では、それほど迫力のあるサウンドには聴こえなくてガッカリした面もあったので、もっと良い席で聴きたかったところですが。
それでも、コンセプトは良かったと思います。
オーケストラのみなさんは、自分たちの演奏パートがない時は、パーカッションになってる椅子を叩いてたり、シャボン玉を吹いてたりしてたのが印象的。
それにしても、この大所帯。
36人の演奏者。
それを束ねる大物・服部隆之さんでしょ。
それに加えて満島ひかりでしょ。
これ、ギャラどうなってるのかね(笑)。
ライヴの儲けなんて出ないのでは?と心配になってしまう。

オザケンて、今までTVで観ていた限りでは、歌はヘタだと思っていたのですが、こうして実際に生で聴いてみると、それほど気にならない。むしろ、丁寧に歌ってくれていて、意外とパワーもあった印象です。

2階席後方では、ほとんどの人が座って観てました。
座って観てるとなると、眠くなってしまう可能性があったため、本当は立って観たいと思ってたのですが、僕が立ってしまうと、座っている後ろの人に迷惑がかかると思って、立てませんでした。
なので、眠くなりやしないかとヒヤヒヤものだったのですが、今回は、座って観てたのに、全く眠くならずにすみました。
それが何よりでしたね。

楽しい曲が多かったですが、そこはオザケンも歳を取りましたから、ただ能天気にハッピーなだけじゃなく、その幸せの根源は何か?と考えさせられるような深みもありました。
それに気付く事が出来た僕たちオーディエンスも歳を取ったという事なんでしょうけど。
ハッピーとファンタジーの間に哲学があるようなライヴでした。
小沢健二に関しては、ライトなファンですが、行ってみて良かったです。
すごく元気をもらえて、ライヴが終わって日常に戻っても、よし、がんばろう、と活力が漲ってきて、ライヴの前よりもワクワクする気持ちが強くなっているのが驚きでした。

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