ビーチ・ボーイズ おすすめアルバム・レビュー集 Vol.1

ジャケット写真が TOWER RECORDS の商品にリンクしています。

僕がビーチ・ボーイズにハマるまで

ビーチ・ボーイズと言えば、とりあえず知ってたのは「Surfin’ U.S.A.」
そのイメージは夏!海!日焼け!サーフィン!といった明るい雰囲気。
爽やか嫌いの僕は、あまり興味を持てずにいた。
しかし、名盤ガイドなどに度々出てくる『Pet Sounds』という存在。そしてそれを作ったブライアン・ウィルソンという男の話。
それらに書いてある事は、どうも僕の考えていた爽やかなビーチ・ボーイズ像とはあまりにもかけ離れているのだ。
この「名盤」に興味を持った僕は即購入。
そして、それまでのビーチ・ボーイズに対する考え方がガラリ一変するのである。
「どこがいいのか、最初はわからなかった」
そんな意見もよく目にする『Pet Sounds』だけど、僕は1度聴いただけで気に入った。
「Wouldn’t It Be Nice」「Caroline No」に一目惚れし、その後も「I Just Wasn’t Made For These Times」「Here Today」...と、聴く度に好きな曲が増えていく。
『Pet Sounds』は間違いなく名盤。
僕にもわかった。

とは言え、これでビーチ・ボーイズの大ファンになったかと言うと、そうではなかった。
当時読んだガイド等における『Pet Sounds』に対する評価が集中しすぎていて、【ビーチ・ボーイズは『Pet Sounds』さえ聴いてればOK】と解釈してしまったのだ。
ビーチ・ボーイズの関係はひとまずそこで終わったのだった。

そして数年後。
『In My Room ~Brian Wilson Sings』という、ブライアンのヴォーカル曲にスポットをあてた企画盤に興味がわいて購入。
この頃はブライアン以外のメンバーの事などまるで知らなかったからね。
そう。ビーチ・ボーイズはブライアンだけを見てればいい、と思ってたんだね。
だけど、その時はそれもピンと来なかったのだ。一度聴いて終わり、だった。
でもその後、ブライアンが歌ってるアルバムという事で、やっぱり気にはなり、たまに思い出したように聴いた。
で、不思議な事に、聴く度に少しずつ好きな曲が増えていくんだよね。
「あれ?こんな良い曲になんで今まで気付かなかったんだ??」って。

それでも、他のアルバムを聴こうとまでは思わなかったある時、有線放送でやっていたビーチ・ボーイズ特集で「Disney Girls」を聴き、強烈に感動する。
この時すでに「多少は」勉強していたので、この曲が人気が高いものだった事、この曲が収録されている『Surf’s Up』は(当時)廃盤になっていた事を知っていた中での感動だったから、思いは募る。
手に入れたいのに手に入らない辛さ。まさしく恋。
『Surf’s Up』の再発を切に願うようになるのだった。

しかし数年後、「Disney Girls」なら『Good Vibrations Box』に収録されている事を知る。
高額なボックスセットという事もあって悩んだが、いつになっても再発の話が出てこない『Surf’s Up』、モタモタしてたらこのBOXも手に入らなくなってしまう...と思い、ついに購入したのである。
「Disney Girls」どころか、これだけの曲が収められているBOX。6枚組、全147曲。
これさえ手に入れてしまえば、わざわざオリジナルアルバムを買う必要もないだろう...。
そう安心した僕とビーチ・ボーイズとの関係は、またここで切れるのである。

そして数年ぶりに飛び込んできたのが『Surf’s Up』ついに再発、のニュースだった。
ようやく出るのか...。
せっかくだから買ってみよう。長い間想い続けたアルバムなんだから。
で、同時発売で『Sunflower』ってのも出るらしい...。
この時点では、『Sunflower』の事は何も知らなかった僕。
うーん、ついでだから、もし良さそうだったら買ってみるかな...。
ふと思い立って、ネットで試聴してみる事にした。
そして流れてきた1曲目「Slip on Through」
なんだこれは!思いっきり「買い」じゃん!!
即座に気に入った僕は、『Surf’s Up』『Sunflower』の2枚を手に入れ、その事によって、いよいよビーチ・ボーイズに対するスイッチが入ったのであった。

とにかくあなどれない。
「もう後は大した曲はないだろう、買わなくてもいいや」
そんな気持ちはことごとく裏切られるのである。
その後も『Today』『Friends』と買っていく度にそう思った。
本を読むと、僕が持ってないものの中にもまだまだ隠れた名曲と呼ばれている曲がある事を知る。
ネットで試聴する。
なかなかいいんじゃない!?
また買ってしまう...。
この繰り返し。
そうやって、ビーチ・ボーイズの深みにハマっていった。
初めは毛嫌いしていたサーフィン・ソングやホットロッドも、いまや愛おしくてたまらない。ビーチ・ボーイズの持つ陰と陽のコントラストが、僕をとりこにさせる。

『Pet Sounds』で初めてビーチ・ボーイズに触れてから約10年。
ゆっくりと時間をかけてではあったが、ビーチ・ボーイズは間違いなく僕のフェイヴァリット・アーティストになった。
深いビーチ・ボーイズの海にどっぷり浸かり始めてしまったのだ。
その昔、萩原健太さんが、「ビートルズも大好きなんだけど、やっぱりビーチ・ボーイズの方が...」と言ってたのを聞いて、「ええ~っ、いくらなんでもビートルズに敵うわけないよ...」なんて思ったものだが、今だったら、健太さんの言葉に大きく首を縦にブンブンと振ってしまいそうなのである。

『Surfer Girl』

レコード会社の意向で、年に3~4枚アルバムを出してたビーチ・ボーイズ。
そんなハード・スケジュールでは、当然クオリティは下がるので、シングルで出ているサーフィン・ソング以外は無視しといていいだろう...そんな風に思っていた僕。

初期のアルバムの中では割と評価の高そうなこのアルバムも、「Surfer Girl」「In My Room」等の代表曲はベスト盤ですでに持っていたので、当然、「買わなくてもいいアルバム」と見下していた。

が、しかし。
数種類のアルバム・レビューを読んでいるうちに、あるひとつの曲が気になった。
「Your Summer Dream」
どのレビューにも【ファンの間では隠れた名曲として有名】と書いてあったからだ。隠れた名曲には弱い僕。
たしかに、ベスト盤や編集盤には収録されてないので、この曲を聴いてみたければ、このアルバムを買うしかないのだろう…。
そういった理由でこのアルバムを買ってみたのだが、たしかに、この曲は素晴らしかった。
夏の終わりの浜辺の切なさを見事に表したバラードだ。
演奏自体はいたってシンプルで、2ヵ所ほどギターのコード・チェンジが怪しくなるのだが、そんな所も含めた上でも、とろけるようなムードにもうメロメロ。
僕の中でのビーチ・ボーイズ・ソング・ベストテンに確実に入る。

このアルバムからプロデュースを手がけるようになって、よりその才能が光り始めたブライアン。
たしかに、僕もサーフィン・ソングと言えば「Surfin’ USA」的な明るいイメージしかなかったのが、「Surfer Girl」を聴いて、ああ、こういう曲ならば大歓迎だなと、ブライアンのセンスを再認識したものである。
僕にとってのポイントは、「せつなさ」なのかもしれない。

「Surfer Girl」の姉妹曲とも言える「The Surfer Moon」
こちらは、せつなさは感じさせず、より甘いムードが漂っている。

「South Bay Surfer」はブライアンとマイクの投げやりな歌い方が楽しい。

インスト曲はたいていスキップさせてしまう僕だが、何故か「The Rocking Surfer」は最後まで聴いてしまう。
リードのハモンド・オルガンの響きを聴いていると楽しい気分になってしまうのだな。

「Little Deuce Coupe」は、以前は「いかしたクーペ」という邦題だったはずだが、今は?【いかした】という言葉が古いのか?
マイクの低音のヴォーカルとブライアンのファルセットの絡み具合が心地良い。
この曲に限らずだけど、ビーチ・ボーイズの大きな魅力のひとつはこのヴォーカルの組み合わせにあるのかもしれない。

当時の独裁的なマネージャーだった父親との確執から、部屋にこもってしまったブライアンが心情をつづったという「In My Room」
そういう背景からして、どれほどドロドロしてるかと期待した(笑)が、そこまですごいものではなく、思ったよりはあっさりしてるなと思った。
ある種、開き直ったという事なのか。それとも、そのドロドロをあっさりと綺麗に聴かせる曲に仕上げた事に意味があるのか。
そうやって考えていくと、どんどんブライアンという人の深みが増していく。

日本ではシングル・カットもされてる「Hawaii」は、とにかく上機嫌。
ついつい「♪ ハワァ~イ、ホノルルゥ、ワイキッキィ~」と、一緒にコーラスしてしまう。

その他、軽快な「Catch a Wave」「Surfers Rule」等もあり、全体を通して考えると、ほぼ完璧と言っていいくらいのサーフィン・アルバムだと思う。
統一感があって、正直ここまで気に入れるアルバムだとは思わなかった。お薦めできる一枚。

それから、もう一曲。
ボーナス・トラックの「I Do」の存在が、現在このアルバムをお薦めする理由。
キャステルズに提供した曲のセルフ・カヴァー・ヴァージョンで、長いことお蔵入りになっていたものとの事だが、こんないい曲が埋もれていただなんて!と驚きを隠せない。
ここでもブライアンのファルセットが炸裂。
清々しくもあり切なくもあるという、コード進行&メロディ。
途中から入ってくるチャイムが胸を締めつける。
こういう曲があるから、僕はどんどんビーチ・ボーイズに惹かれていってしまうのだ。

『All Summer Long』

サーフィン、車といった限定されたものではなく、もう少し幅を持たせた【夏】がテーマのアルバム。
ジャケットも、そのテーマを反映して、夏の思い出的なショットを散りばめた仕上がり。
ただ、後に出る『Summer Days』とイメージがかぶってしまっていて、後追いの僕からしたら、「どっちがどっちだっけ?」となってしまったのだが。

オープニングは「I Get Around」
いきなりビーチ・ボーイズの魅力全開!といった感じ。サビでは高揚感も最高潮。
たしかに、こんな曲を聴きながら海へと出かけたら、ワクワクして仕方ないだろうなあ。

映画『アメリカン・グラフィティ』のエンディング・テーマとして効果的に使われたという「All Summer Long」
映画の最後でこの曲が流れてきた時は涙が出た、なんて意見も耳にしてたので、どれほど感動的な曲なのかと期待してたら、期待に反して明るい曲でガッカリしたのを憶えてる。
ただ、明るいとは言っても、「I Get Around」や「Fun Fun Fun」の様に突き抜けてる訳でもなく。
なんか中途半端だなあ、って。しばらくはそう思ってた。
でもね、何度も聴き続けてるうちに、この曲に感動できるようになったんだよね。
楽しい何かが終わってしまう時の切なさを、フッと感じた。

バラード系で最高なのは、なんと言っても「We’ll Run Away」
このアルバムの中での僕のベスト・トラック。
駆け落ちの歌なんだけど、自分の結婚式では是非かけようかな、と。
ブライアンがファルセットで歌いきってるんだけど、どんな顔して歌ってるんだろう。
ラストのオルガンの音には胸がキュンとなるし、もう完璧。

それから、「Wendy」も、負けず劣らず感動させてくれる。
おどろおどろしい音で始まり、なにやら暗雲たちこめる雰囲気を感じさせるのだが、そこから一転して突き抜けた晴れ間が広がるかのような「♪ ウェーンディィ~」のコーラス。
ただし、晴れ間を感じるのは一瞬で、歌詞の方はやっぱり不安感たっぷりで終わるんだけどね。

他にバラード系では「Hushabye」「Girls on the Beach」等もいいね。
特に「Girls on the Beach」は、初めから終わりまで絶妙のハーモニー、斬新な転調、そして中間部のデニスのリード・ヴォーカル。
曲の構成も鮮やかで飽きる事がない。

他、「Little Honda」「Drive-in」「Don’t Back Down」といった、ビーチ・ボーイズの【夏の歌】は、イメージ通りのものを見せてくれる。

ボーナス・トラックの中では「All Dressed Up for School」に注目。
サビが不思議な感触。ブライアン特有の不安感(時には狂気さえ)が垣間見られるような...。

しかし、夏が嫌いな僕なのに、ビーチ・ボーイズが好きになれる理由、それがわかった。
ビーチ・ボーイズの夏はどこか涼しいからだ。
ギラギラした暑さ、というのとちょっと違う。
明るい曲のその奥に寂しさがあるからだ。
僕が「ああ、夏って案外捨てたもんじゃないかも」と思うのも、そんな瞬間なのだ。

『The Beach Boys Christmas Album』

ビーチ・ボーイズのアルバムとして他の作品と比べたら、多少評価は劣るけれど、これはこれでそれなりに完成度は高い、面白いアルバム。

当時のスター達は、ファンへのクリスマス・プレゼントとして、クリスマス・アルバムを出すのが定番だった。
特にビーチ・ボーイズの場合は、夏のイメージだけにとらわれず、冬もいけますよ、というメッセージがこめられていたかもしれない。
事実、明るく楽しいビーチ・ボーイズならではのクリスマス、といった雰囲気に包まれている。
A面がブライアン作曲のオリジナル、B面がクリスマス・スタンダード・ナンバーという構成。

オリジナル曲は、シングルとなった「Little Saint Nick」を始めとして、ポップで軽快なナンバーが続く。
が、特に「哀しいビーチ・ボーイズ」が好きな僕にとっては、これらのオリジナル曲はちょっと明るすぎ(?)で、特に思い入れが深くなってしまうような曲がなかったのは残念。

だったらむしろ、スタンダード・ナンバーの方が聴き所あり、かも。
オーケストラをバックに、綺麗なハーモニーを聴かせてくれる。
クリスマスのわくわく感が伝わってくる「Frosty The Snowman」「Santa Claus Is Comin’ To Town」や、しんみりと聖なる気持ちになってくる「Blue Christmas」「White Christmas」
そして、唯一、僕が好きな「哀しさ」を感じられる「We Three Kings Of Orient Are」など、ビーチ・ボーイズ・ファンでなくても純粋に楽しめる。

『The Beach Boys Today!』

ツアーを周る事を止め、スタジオワークに専念する事を決めたブライアン。
新たな決意とやる気を持っての制作だった事が、ジャケットのブライアンの笑顔からも汲み取れる。
A面はアップテンポの曲、B面は切ないバラードを並べていて、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドを意識した音作りのモノラル録音、という所にブライアンのこだわりが感じられる。
初期の傑作として支持するファンも多く、当然僕も大好きな1枚。

アップ・テンポの中でも即座に気に入ったのが「When I Grow Up」
初めて聴いたのは、まだ僕がビーチ・ボーイズに偏見を持っている頃だったのだが、サビのファルセットの甘酸っぱさに、こういう曲だったら初期のビーチ・ボーイズもいいかも...等と、少しずつビーチ・ボーイズに対する見方が変わっていったのだった。
しかし、この「パンチで行こう」という邦題には違和感。基本的に僕は邦題に対しては寛容な方なのだが、このタイトルは、どうもこの曲のイメージと結びつかなくて、いまだ困っている。

これだけレベルの高い曲が収録されているとなると、他のヒット曲と比べると埋もれがちになってしまう「Good to My Baby」は、もっと注目してほしい佳曲。
ブライアンのファルセット、マイクの抑えたヴォーカル、そしてサビへと流れる展開はとても心地良く、サビは一緒に口ずさまずにはいられない。

また、ここには「Help Me, Ronda」のオリジナル・ヴァージョンを収録。
後にアレンジを変え、テンポを速めてシングルとなった。オリジナルのスペルは「Ronda」、シングルヴァージョンは「Rhonda」と使い分けてるね。

他にアップテンポものでは、ギターのリズムが印象的な「Dance, Dance, Dance」や、力強いカヴァー曲「Do You Wanna Dance?」など。

そしてB面のバラード群もまた素晴らしすぎる、のひとこと。
ミドル・テンポの「Please Let Me Wonder」は、これぞビーチ・ボーイズのコーラス!で、とろけるような味わいに、間奏のオルガンでは思わず涙。大好きな曲。

ドゥワップのカヴァー「I’m So Young」をはさみ、「Kiss Me Baby」
イントロのアカペラから、ブライアンのファルセット、マイクのベース、そしてサビの豪華なコーラス...と、ここまでで充分満足していたら、それらを上回る「She Knows Me Too Well」の登場。
全編ブライアンのファルセットで、穏やかなギター・ソロも含め、このアルバムのベストトラック。
この流れを聴いてもビーチ・ボーイズのファンにならない人とは、気が合わないかもしれない(笑)。

バラード・メドレー最後を飾るのは、デニスの「In the Back of My Mind」
デニスの声って切ないんだよね。初めの「♪ ア~」だけでも切ないもの。ブライアンとはまた違った魅力だ。
コーラスはほとんどなく、ホーンの音色がムードを醸し出す、このアルバム中では珍しいアレンジ。しかし、それもまたよろしくて...。

『Summer Days』

再び夏がテーマとなり、これぞビーチ・ボーイズのイメージという全体的に明るい作品となった。
また、ツアーでサポートメンバーとなっていたブルース・ジョンストンが初のレコーディング参加。

力強いサックスの音で始まる「The Girl From New York City」
A面1曲目にニューヨーク、B面1曲目にカリフォルニアを配置するという。

次はバカ笑いをフィーチャーした(?)「Amusement Parks U.S.A.」と、楽しい雰囲気の曲が続く。

「Girl Don’t Tell Me」はビートルズ「涙の乗車券」のパロディと言ってもいい作品。
ギターやグロッケンのフレーズ、間奏のドラム・フィル・イン。カールのジョン風「♪ Yeah」など、思わずニヤリ。

『Today』に続き、「Help Me, Rhonda」が、アレンジを変えたシングルVer.で登場。
サビ・ラストのキメの「♪ ヘルプ・ミー・ロンダ、Yeah」にブライアンのファルセットが加わっていて最高に盛り上がる。

同じくヒットした「California Girls」をはさみ、このアルバム中一番好きなのが「Let Him Run Wild」
イントロから思いっきり切ないブライアンのファルセット、印象的なベースライン、徐々に盛り上がっていってのサビ、ホーンセクションが入っての斬新な展開。
ああ...とため息の出る曲なのである。
アルバム中、見事なまでの切なさを持っているのは「Let Him Run Wild」くらいで、その後は再び明るいトーンに戻る。

印象的なリフの「You’re So Good To Me」は、ラストのブライアンのファルセットは、切ないと言うよりも気持ちよく昇天できると言った感じ。
後半の「♪ ラララ...」もまたいい。

インストの「Summer Means New Love」はムードがあって、浜辺の心地良い風を思い出させる。

ボーナス・トラックも、シングルの「The Little Girl I Once Knew」「Let Him Run Wild」の別テイク、ギター1本にコーラスが美しく映える「Graduation Day」と、楽しめる曲が並ぶ。

そう言った訳で、切ないビーチ・ボーイズが好きな人にとっては若干物足りない感じがあるかもしれない。
だけど、自信を持ち始めたブライアンが、いかに制作期間が短かろうと、テーマを決められようと、これだけレベルの高いものを仕上げられるのだぞ、といった、束の間の陽気な姿(?)を窺う事ができるアルバム。

『Pet Sounds』

それまでの僕の「夏だ!海だ!車だ!女の子だ!」というビーチ・ボーイズ像が見事に崩れた1枚。
まあ、それまで一部分しか見てなかった...というか、なんにも知らなかったんだな、って事だけどね。
明るい曲はあるけれど、突き抜けて浮かれた曲がなかった事が良かった。

ビートルズの『Rubber Soul』を聴いたブライアンがこの『Pet Sounds』を作り、それを聴いたビートルズが『Sgt.Pepper』を作った...というエピソードはロック・ファンにはあまりにも有名。
そして、さらに負けじと『Smile』を作ろうとするも挫折したブライアンは、ポールがブライアン宅を訪問した際、納屋に閉じこもって怯えて泣いていた...なんていうエピソードまで聞くと、「ブライアン、こんなすげえの作ったんだから自信持てよ~。そんな落ち込む必要ないじゃないかよ...」と、非常に切なくなるのだった。

いや、ブライアンだって、この『Pet Sounds』を作り上げた当初は自信はあったに違いない。
頭の中に流れるサウンド・アイデアを表現するべく渾身の力を振り絞り、スタジオ・ミュージシャン達と作り上げたバック・トラック。
しかし、それらをツアーから戻ってきたメンバーに聴かせたところ、かえってきたのは「なんだこりゃ?」の返事だったという。
それでも妥協しなかったブライアンはメンバーを説得してなんとかこの作品を仕上げたものの、結局メンバーのみならず、レコード会社、ファンからも戸惑いの声ばかり。
不安に感じたレコード会社はシングル「Caroline, No」をブライアンのソロ名義にして、ビーチ・ボーイズとしてはブライアンの意向ではなかった「Sloop John B」を出す。
『Pet Sounds』リリース後も、売上不振を危惧して急遽ベスト盤を制作し、そちらが大ヒット。
そのベスト盤につぶされるような形で『Pet Sounds』の売上は尚更伸びず...。

自信満々で完成させたものの、周囲のこの仕打ち、さらにファンもついて来ずでは、どれほど落胆しただろうか。
結果、ブライアンはドラッグ中毒なども重なって、どんどん深い闇の中に入り込んでいってしまった。
メンバーも、この音楽の素晴らしさを認めてない訳じゃなかったと思うよ。
でも、ブライアンが求めていた理想、進んでいった方向性は、メンバーの理想とするビーチ・ボーイズ像とはかけ離れていたって事なんだろうね。
しかも、自分達が留守の間にブライアンが一人で作り上げてしまったものだから。それが素晴らしいものだと感じれば尚更、嫉妬心や疎外感みたいなものも生まれただろうし。
とにかく、いろんなものが絡み合って、ブライアンの才能は正当に評価されるには至らなかった訳だ。

しかしもし、この時『Pet Sounds』が正当に評価されていたら。
そしてブライアンがどんどん自信を付けて、この後大成功を収めていたとしたら。
僕はここまでビーチ・ボーイズを好きになる事ができただろうか。深い思い入れを持てただろうか。
それはたぶん、NOのような気がする...。

さて、肝心の『Pet Sounds』の中身。
僕がちゃんと意識して聴くのは初めてだったビーチ・ボーイズのアルバム。
はたしてどんな音なのか。どんなメロディなのか。
期待と不安が入り混じりながら、聴こえてきたのは「Wouldn’t It Be Nice」のイントロ。
胸をくすぐられるようなフレーズに、ドラムがダン!!「♪ ウッ~~ド...」でもうノックアウト。
全体的には明るく希望に満ちた曲ながらも、サビではちゃんと切ないハーモニーが加わる。
この曲を聴いただけで、「ああ、僕が期待してたのはこんなんだった。買ってよかった」と思えたのだった。

期待してたと言えば、僕がどんな世界を期待してたかというと...それは『Pet Sounds』のCDオビに書いてあった言葉【悲しい程美しい】、これだった。
この言葉に惹かれたのだった。こういう世界、好きかも...と。
そんな期待を胸にこのアルバムを購入したのだった。
そしてその、【悲しい程美しい】世界を一番表現していたのが、ラストの「Caroline, No」だった。
なんて悲しいんだろう...こんなに切ないのに、何故か笑顔になりたくなる。
不思議な感覚。期待以上の曲だった。

1曲目とラストの曲が、非常にインパクトがあった。
初めと終わりが素晴らしければ、もうそれだけでも充分。
これは噂に違わぬ名盤ではないか。
瞬時に思えたのだった。

さて。
このビーチ・ボーイズの傑作『Pet Sounds』に関して、「初めて聴いた時はわからなかった」という声をよく耳にする。
なかには未だにわからないと言う人もいる。

じゃあ僕はどうだったかと言うと、初めて聴いた時にすぐに「いいな」と思えたので、「僕は『Pet Sounds』の良さが最初からわかったぞ!」なんて密かに自負したりしてたのだが、よくよく思い出してみると、買った当初、聴いてたのは「Wouldn’t It Be Nice」「Caroline, No」の2曲だけ。
この2曲のみをリピート再生してた気がする。

他の曲もなかなかいい雰囲気かもと思ってはいたが、何度も聴こうとはしてなかったような気がする。
という事はつまり、やっぱり僕も『Pet Sounds』という作品全体の魅力をわかっていなかったのではないか...最近そう思うようになってきた。

そして、その2曲ばかり聴きつつも、たまに通して全曲聴いてみる。
すると、今度は別の曲が心にひっかかる。気になっていく。

まず「I Just Wasn’t Made for These Times」に心奪われた。
「駄目な僕」だなんて。
なかなか自信を持つことができないブライアンの心情を見事に表した詞。
胸が痛くなってくる。この重さ。たまらない。

その次は「Here Today」
特にイントロのベース・ライン。気持ち悪いのが気持ち良い(笑)。
こいつはクセになった。スリリングな間奏もハイライト。

それから今度は「God Only Knows」
優しいイントロから、優しいカールの歌声。間奏の「パパパン」コーラス。
暖かい太陽の光を感じる曲。
ポール・マッカートニーが「最高の曲」と絶賛したというのも、聴けば聴くほど身に染みてわかった。

最後のコーラスの波がすごい「You Still Believe in Me」
バイシクル・フォンの音も印象的で面白い。

マイクが力強く歌ってる分、他の曲に比べたら元気な曲に聴こえる「That’s Not Me」
後半、ヴォーカルがブライアンになってファルセットが出てくると、とたんに切なくなって、「ああ、これも寂しい歌だったんだなあ」というのがわかる。

「Don’t Talk」は、コーラスを付けずにブライアンが独りで歌っているからこそ、【何も言わないで静かにしてて】という切なる願いにリアリティが増す。

ここでは数少ない、希望の見える曲「I’m Waiting for the Day」では、少しホッとして元気になれる気がする。

「I Know There’s an Answer」の力強さには救いの道が見えるようでもあるが、切ないメロディはやっぱり救われないような気もしてくる、不思議な感覚。

そして「Let’s Go Away for Awhile」「Pet Sounds」というインスト。
インスト苦手の僕が、ビーチ・ボーイズのインストだったら喜んで聴いてるというのだから、自分でも驚きだ。
ビーチ・ボーイズの曲には、やはり「何か」がある。

...と、こんな具合に、聴けば聴くほど好きな曲が増え、今では全曲好きなのだ。
捨て曲なし。そして飽きない。
こういうアルバムは珍しい。
だから名盤なのだ。
誰がなんと言おうと名盤なのだ。

『Smiley Smile』

ビーチ・ボーイズの事を少し勉強すると、あの名盤『Pet Sounds』の次に、制作途中で断念してしまった幻のアルバム『Smile』がある、という事を必然的に知らされる事になる。
しかも、この『Smile』、無事に完成していれば、『Pet Sounds』やビートルズの『Sgt.Pepper』を凌ぐ最高傑作になっていただろう、との噂。

そんな話を聴いてみれば、当然その作品に興味を持つわけだよね。
憧れというか、叶わぬ期待というか...でも所詮幻のアルバム。聴けるはずはない、と。
しかし、その『Smile』が制作中止になった後、収録予定だった曲を集めて再構築した『Smiley Smile』なるアルバムならば存在する、という話を聞いて、『Pet Sounds』購入直後に喜んで買い求めたのがこのアルバムだった。

最高傑作になるはずだった『Smile』が元になっているんだったら、最高とまではいかなくても、それなりの傑作に仕上がっているのだろう...。
そんな期待を胸に聴いてみたところ、聴こえてくるのは非常に重々しいコーラスばかり。
しかも、どれもが未完成な、断片的なもののつぎはぎばかりとあっては、当時の僕にとっては「?????」であり、まったくわからず【期待はずれ】に終わったのだった。

辛うじてわかったのが大ヒットシングル「Good Vibrations」くらい。
切ないAメロ、ポップなサビ、印象的な幽霊楽器(テルミン)の音。
ただ、この曲とて、僕にとって最高!にハマれるものではなく、もう1曲有名どころでは「Heroes and Villains」も、展開がめまぐるしくて面白いなとは思ったものの、めまぐるしすぎて散漫に思えてしまい、結果、アルバム全体に対する満足度も下がる。

期待が大きかっただけに余計...。
もしかしたら、長い間僕が『Pet Sounds』以外のアルバムは聴かなくてもいいや、なんて思っていたのは、『Pet Sounds』の次にこのアルバムを聴いてしまって、失望したからだったのかもしれない。

その後、何年か経つたびに、思い出したように聴いてみるも、やはりわからない...という印象だったので、当然、このアルバムは★1つだな!だなんて思っていたのだけれど、さらに数年振りに聴き直してみると、「あれ?もしかしたら...」という気になった。
この間にビーチ・ボーイズの他のアルバムを聴いて、思い入れが深くなった分、ビーチ・ボーイズを聴く耳も変化してきたようで、前に感じた程ひどいものには聴こえなかったのだ。

もちろん、即座にハマった!という曲がある訳ではないが、もう1回聴いてもいいんじゃないか、というような何かを感じる。
以前は「もう聴く必要ないや」くらいに思ってたものだったけど。
しかし、改めて聴くと、雰囲気的に、僕の好きなアルバム『Friends』にも通じるような世界だったりする(「She’s Goin’ Bald」「Little Pad」「With Me Tonight」等)のだ。

それにしても、この重さはなんなのだろう。
シンプルに聴こえるバックトラック。時々混じる奇妙な音。つぎはぎだらけの曲(つぎはぎが多すぎて、いつ次の曲に変わったのかもわからない。そういう意味では、これ全体で一曲と言ってもいいのではないか)。
しかも、どれもがデモ・ヴァージョンの様。そんな未完成さが不気味さを醸し出してもいる。
「Fall Breaks And Back To Winter」「Wind Chimes」なんて、怖いくらいだし。
よくこれを「完成形」として世に出したよなあ、と、ある意味『Pet Sounds』以上の驚きを感じる。
もしかしたら、これもビーチ・ボーイズの凄さ?
奥が深すぎる...。

そんな訳で、もしかしたら、もう少し聴きこんでいけばハマッていくかも...との思いで聴きこむたびに、約10年の歳月を経て、思いっきりハマッてしまった。
★1つだなんて思ってたのに、今では★4つくらいに大出世!
なんなんじゃこのアルバムは。

『Friends』

ブライアン・ウィルソンのフェイヴァリット・アルバムと言われ、ビーチ・ボーイズの中でも極めて穏やかで優しいアルバム。

『Smile』の挫折により、そのショックは尾を引くものと思われたが、『Wild Honey』を挟んでこのアルバムでは、ある種の開き直り(?)で、穏やかな気持ちになって傑作を作り上げてしまったという感じだ。
あの『Smiley Smile』の重苦しさを考えたら、よくここまで明るい表情のアルバムを作れたなあ、と思う。
暖かく心地良い太陽の光に包まれた気分になれる傑作だ。

冒頭の「Meant For You」
一歩間違えれば、『Smiley Smile』時のような奇妙な世界になりそうな危険を孕みつつも、ここでは、美しいメロディをさりげないアレンジで美しく仕上げる事に成功している。

つづくワルツの「Friends」
リズムにあわせて体を揺らしていると、ほんわかした気分になってくる。
そこに吹くビーチ・ボーイズ・ハーモニーの風。うーん、気持ちいい。

「Wake The World」は、ビートルズの『Magical Mystery Tour』(「Penny Lane」等)的なアレンジ。
ベースのフレーズ(ソロ?)も印象的だし、ナイフを研ぐような音も微かに聴こえたりして、興味深い。

「Be Here In The Mornin’」も、ウクレレ、チャイム、オルガン(音栓)、ヴォーカル・エフェクト、ドラム・ロール等、音的な聴きどころが多い楽しい曲。

ブライアンの歌い方が、抑えるようにだったり、つぶすようにだったり、ファルセットだったりと、変化するのが面白い「When A Man Needs A Woman」

「Passing By」「Anna Lee, The Healer」あたりは、映画音楽のようにも聴こえて、とてもお洒落な感覚(ビーチ・ボーイズに【お洒落】という言葉は似合わないような気も?)で、「ああ、このアルバムを買って良かったなあ」と、心から思う。

デニスの佳作「Little Bird」
デニスのかすれた声に綺麗なハーモニーが絡んで心地良い。
後半のバンジョーの音なども効果的。

つづく「Be Still」もデニスの曲。
こちらはバックはオルガンだけというシンプルな仕上がり。
やはりデニスの声って独特の良さがあるなあ。

しかしやっぱりこのアルバムはお洒落だ。
今度はボサ・ノヴァが飛び出す「Busy Doin’ Nothin’」
詞の内容もほのぼのとしてていい。

「Diamond Head」はインストなのだが、スティール・ギターやウクレレの他、波の音や虫の声の効果音も使って、ハワイの雰囲気を出している。
しかし、初期のサーフィン・ソング等で見られたような世界ではなく、あくまで『Friends』流のハワイ。穏やかで優雅で。
インストながら、これまた大好きな曲。

最後の「Transcendental Meditation」は、奇妙なコーラスで耳に残る。
これも一歩間違えれば気持ち悪い音になるのだが、なりそうでならないギリギリのところの快感がある。

オリジナルはここまでなのだが、ボーナス・トラックも充実。
その中の「We’re Together Again」をふとした事で聴いて、非常に気に入ってしまい、すでに『Friends』のCDは持っていたのだけれど、この曲聴きたさにボートラ付き『Friends』を買ってしまった。
この曲は『Friends』発売後にレコーディングされたものらしいが、世界観としてはまさしく『Friends』そのもの。穏やかで優しくて可愛くて。
ブライアンのファルセットも完璧で、「♪ all night long」の所なんかは最高。

「Walk On By」は、バート・バカラックの有名曲のカヴァー。
1分にも満たない、非常に短い形なのだが、切ないバカラック・メロディにビーチ・ボーイズらしいハーモニーを付け、非常に魅力あるものになっている。

最後の「Old Folks at Home / Ol’ Man River」もカヴァーだが、ノスタルジックで、やはり『Friends』の世界観にハマッている。

何度も言うようだが、とにかく穏やかで優しいこのアルバム、かなりの傑作だと思う。
捨て曲なし。すべてがいい曲だと思う。
ただ、すべてがいい曲な分、「飛び抜けてこの曲!」という思い入れを持てる曲ができにくかったりと、代表曲と呼べるものがないところが僅かな欠点、か。

しかし、それにしてもこんな凄いアルバムが何故、全米最高126位?
解せない。いくらなんでもこの順位は...。
今でこそソフト・ロックの範疇でも語られ、再評価の声と共に、このアルバムを支持する人はかなり増えたものの、当時のリスナーは、本当にこの良さがわからなかったのだろうか。
そんなはずはないと思うんだけど...。

『20/20』

せっかく穏やかな気持ちで『Friends』を作ったのにもかかわらず(しかもブライアンお気に入りの作品だった)、チャート126位という悲惨な結果。
どうしてこうもうまくいかないんだと、ブライアンの気持ちはさらに最悪な方向へ。
率先してレコーディングする事はもちろん、曲作りさえままならなくなってしまった。

そんなブライアンの状態を見て、自分達でなんとかしようとがんばる他のメンバー。
結果、カールやデニス等の才能が開花し始める。
しかし、メンバーが「ブライアンの穴を埋めるためにも」とがんばればがんばるほど、ブライアンからしてみれば、「ブライアンなんていなくても平気」とみんなが思っているような気がしてしまったのではないだろうか。
そんな誤解の中で、ブライアンはよりドラッグに溺れ、バンドの解散まで考えていったのではないかと。
バンド自体も、売上不振に加え、ツアーの中止や失敗等が重なり、非常に悪い状態でのアルバム作りだった。

僕がこのアルバムを買うきっかけとなったのは、『Good Vibrations Box』に入ってた「I Went to Sleep」「Time to Get Alone」がいい感じだったなと思ったから。
これならば、このアルバム自体も良い感じなんじゃないか?と期待してのものだった。

「I Went to Sleep」はブライアン作。
もともとは『Friends』収録予定だったというだけあって、ほのぼので穏やかな『Friends』の世界がここでも楽しめる。
パーカッションの音が時計のリズムにも似ていて、催眠効果があるというのか...うたた寝気分に浸れる佳曲。

「Time to Get Alone」もブライアンの手によるもので、やはり『Friends』的世界観を感じさせる曲。
特にサビはとても優しく柔らかくて。
ホント、こういう曲好きだなあ。

他にブライアン絡みでは、『Smile』に収録予定だったという2曲。
「Our Prayer」は、アーとかフーとか言ってるだけのアカペラなんだが、これがまたいいんだわ。
崇高な気分にさせられるというか、気持ちが引き締まるというか。
こういうのをサラッとやれる、っていうのはやっぱ凄い事だよね。ビーチ・ボーイズならではだと思うよ。

それから「Cabinessence」
こちらはバンジョーやハーモニカの音と共にゆったりのんびり始まるのだが、そこは『Smile』収録予定曲らしく、組曲になっていて、一筋縄ではいかない。
ただ、それほど難解さは感じられない(歌詞は除く)ので、割とすんなり聴ける。

さて、他のメンバーの才能が開花したとの事だが、まずお薦めはデニスの「Be with Me」
デニスの曲って、壮大なものが多いよね。ブライアンの曲とは違った重さがある。

それから「Never Learn Not to Love」もデニス作だが、実はチャールズ・マンソン絡みのいわく付きの曲だという。
ブライアンはこの曲を邪悪なものが漂っているとも言ってたらしいが、普通に聴いた限りでは、特に何も感じない(笑)。
というか、割と好きだったりするんだけどね。

それから、ブライアンの代わりにツアーのサポート・メンバーとして加入してたブルース・ジョンストンが、いよいよ「ビーチ・ボーイズ」として自分の才能を表現し始める。
後の「Disney Girls」でもわかるように、ブルースの曲は、とても優しくてファンタジック。
「The Nearest Faraway Place」も、インストだけれど、とてもブルースらしさが溢れた佳曲。
木々の間から太陽の光がキラキラと見えるようで、優しい気持ちになれる。

カールは、コンポーザーではなく、プロデューサーとしての活躍。
「I Can Hear Music」「Bluebirds over the Mountain」等のカヴァー曲を、軽快にポップに仕上げている。
「I Can Hear Music」の方は、アコースティック・ギターの柔らかいコード・ストロークが印象的で、フィル・スペクター的サウンドだ。

シングル「Do it Again」は、イントロのエフェクトをかけた音(ドラム)が、どうにもビーチ・ボーイズらしくなくて、初めは随分違和感を感じたものだ。
この曲のみモノラル録音をステレオ化した音だったというのも原因?
が、歌詞やハーモニー、サビの優しいメロディなど、初期のビーチ・ボーイズらしさがある気がする。

こうして、1曲ずつ取り上げてみると、なかなかの曲揃いなのに、アルバム全体でいうと、なんとなく地味な印象がしてしまうのは何故だろう。
個人的にも「もっと聴きこんでもいいよなあ」と思いながら、つい後回しになってるアルバム。

『Sunflower』

なんでこんないいアルバムが長いこと廃盤だったんだろう。
再発売された後でも、この事を思い出すと非常に腹がたつ。
お陰で、僕がビーチ・ボーイズにハマる事になったのも随分と遅くなってしまったからだ。

このアルバムは、僕がビーチ・ボーイズにハマる大きなきっかけとなったアルバム。とにかく傑作。
状況的には、レコード会社の移籍など、決していい状態ではなかったビーチ・ボーイズだったが、メンバーそれぞれが才能をフルに発揮(ブライアンだけは完璧には才能を発揮できない状態であったかもしれないが、曲を聴く限りではとても元気)し、前向きに、一丸となって作り上げたようなアルバムだ。
よって、各メンバーの持ち味があちこちで感じられるし、聴いてて嬉しくなるのだ。

もっとも、そうは言っても僕が初めてこのアルバムを聴いたのは、ブライアン以外のメンバーの名前さえ知らないくらいだった時だから、メンバーの持ち味どうのこうのは関係ないのかも。
とにかく、何も知らない僕でも、「いい曲がいっぱい入ってるなあ」と素直に感動できたのだから。

このアルバムを買うきっかけになった、デニスの「Slip on Through」
イントロのベースにデニスのヴォーカルが加わる瞬間がとてもカッコいい。力強くてスリリングで。
ファルセット、ハーモニーも見事で、曲そのもののパワーを充分に感じる。
もしこの曲を試聴しようとしなかったら、僕はビーチ・ボーイズにこんなにハマる事はなかったかもしれない。そう考えると恐ろしい。
とにかくデニスのお陰だ。
こんな曲を作るんだもの、デニスはエラい!

続く「This Whole World」は、ブライアンの曲作りの才能はもちろん、カールの歌の上手さも感じる事ができる。

「Add Some Music to Your Day」は、穏やかな曲調、各メンバーで分け合うリード・ヴォーカル。
そして特に「♪ music when you’re alone~」以降の切ないメロディ。
泣きたくなるような、笑いたくなるような、輝く名曲だ。

そして、ここでもブルースお得意の優しさが炸裂する「Deirdre」
女の子と一緒に聴きたいよなあ、こういう曲は。
ブライアンの作った「We’re Together Again」が元になってるというけれど、やはりこちらはブルース独特のファンタジーに仕上がっている。

同じくブルース作の「Tears in the Morning」も名曲。
メランコリックな雰囲気に、胸が詰まるようなメロディを乗せている。
エンディングのピアノ・ソロも切なくて好き。

そこから「All I Wanna Do」への流れは大好き。
本盤の僕的なハイライトはここ(このアルバムはハイライトだらけだけど)。
大好きな曲揃いの中、一番好きな曲と言えばこれ。
もう、たまらなくせつない。マイクのヴォーカルが最高。
どのパートのメロディも素晴らしいが、徐々に盛り上がっていって、「♪ My love is~」では最高にトロける。ああ完璧。
これはもっと多くの人にプッシュしたい名曲。

「All I Wanna Do」でトロけた後、心を癒してくれるのが「Forever」だ。
これも間違いなくデニスの最高傑作のひとつだ。
ブライアンも、デニスの作曲能力に驚いたと言うし。
ていうか、デニスの曲って、ヒット率高いなあ。

トロけたり切なくなったり、そんな雰囲気を壊さないような優しい曲が続く。
「Our Sweet Love」「At My Window」...ホント、どれもいいなあ。

そんな本盤のラストを飾るのが「Cool, Cool Water」
有名な『Smile』収録曲のひとつで、当然のごとく(?)組曲。
途中、「♪ nownow...」という【怖い】部分が現れるが、それを、可愛いメロディが挟むようになっているから、曲全体としては奇妙なイメージは持たない。
後半の流れるような展開といい、まさしく「水」らしく「涼しくなれる」曲。

という訳で、このアルバムには思い入れも強い。
事前情報もほとんどなく、特に期待もしてなかった所への思わぬ拾い物だっただけに、この出会いには感謝!なのである。
ジャケットの、赤ちゃんを抱えるブライアンの方が、まるで赤ちゃんのように見えてしまうから不思議(笑)。

『Surf’s Up』

僕にとっては、切れかかってたビーチ・ボーイズとの関係(興味)をつないでくれた「Disney Girls」という曲が入ってる、というだけで、充分思い入れのあるアルバム。

有線放送で出会った「Disney Girls」
とても甘酸っぱい雰囲気をもった曲で、それは今ならば、非常にブルース・ジョンストンらしい優しい魅力に溢れた曲だな、とわかるけれど、その頃は、ビーチ・ボーイズにこんな感じの曲があるなんて思わなかったからビックリで。
なんかの本で、「Disney Girls」はいいぞ、っていう話は聞いてたんだよね、たしか。
でも、それが入ってるアルバムは廃盤になってるとの事だし、権利上の問題もあって、ベスト盤などにも入ってはいない...つまり、手に入れる事はできない、聴く事はできない、と思ってた。
それが、有線放送で流される事を知って、チャンスとばかりに聴いてみたら、期待以上にいい曲で。

いい曲すぎちゃって困った。
だって、手に入れたくたって、CDは売られてないわけだからね。
...でもそうやって長い間この曲に対する憧れが持てたからこそ、ビーチ・ボーイズに対する想いも自然と深まっていったのかもしれない、と今なら思えるけれど。
でも、ホント、廃盤の間は長く感じたなあ。

さて。
このアルバムは、前作『Sunflower』の要素を引き継いではいるものの、ジャケットにも現れているように、派手さはない。
僕としては、こういう「暗いジャケット」だからこそ好感を抱いたりもする。
そして、これまた各メンバーの才能が随所に感じられる、素晴らしいアルバムである。

いい曲は「Disney Girls」だけではなかった訳だね。
控え目に始まる「Don’t Go Near the Water」
段々と賑やかになっていく感じが楽しい。

カールの傑作のひとつ「Long Promised Road」
荘厳な展開で、「♪ Long promised road~」のカールの歌い方が切なくてグッとくる。

アルの「Take a Load Off Your Feet」は、効果音や楽器の使い方が面白く飽きない構成。
サビのメロディなんかもなかなか魅力的。

カールの「Feel Flows」あたりを聴いてると、カールはブライアンのようになりたかったんじゃないかなあ、という気がしてくる。
間奏のフルートとギターのバトルが印象的。

アルの「Looking at Tomorrow」は、ギターの弾き語り的な仕上がりで、10ccのグラハム・グールドマンが、バンド結成前に作ったソロ・アルバムのようなメロディ・アレンジを髣髴とさせて、個人的には非常に好きな曲。

リード・ヴォーカルをバンド・メンバー以外が担当しちゃうというのもすごいなと思った「A Day in the Life of a Tree」だけど、メロディがいいから素直に聴けてしまう。
オルガンの音が神聖な雰囲気を漂わせる前半から、途中、小鳥のさえずりなどが聴こえてくる展開は、心休まる感じ。

ブライアンの「Til I Die」も注目曲。
「Our Prayer」等でもみられたような、荘厳で神聖な気持ちになる曲。
ゆったりと流れるメロディ、それに覆い被さるハーモニー。
しかも、【ティル・アイ・ダイ】だなんて...。
イメージでは、すごく短い曲って気がするんだけれど、実際は2分40秒もあったんだね。

そして、ラストの「Surf’s Up」
これまた『Smile』の曲だというから、注目せざるをえない。やっぱり組曲。
僕はこれを「Disney Girls」と同じく、有線放送で初めて耳にしたわけだけれど、「なんか不思議な曲だなあ」と思った。
なんか「べっとり」してていい感じだった。
この「べっとり」した感覚が良かったのよ。
後から、歌詞もカッコいい事に気付いたし。意味は不明でも、なんかカッコいいんだよね。
「Disney Girls」だけじゃなくて、もうひとつこういういい曲もあるから、『Surf’s Up』というアルバムはすごいんじゃないかなあ?と、心惹かれたんだろうね、きっと。
そしてそれは、間違ってはいなかった。

『In My Room Brian Wilson Sings』

『Pet Sounds』とベスト盤を1枚聴いて、なんとなくビーチ・ボーイズを知ったようになっていた僕。
そんな93年、CDショップにて、こんなコンピレーション盤が出ていたのを知った。
タイトル通り、ブライアン・ウィルソンがリード・ヴォーカルを取っている曲を集めたアルバム。

「えっ、ビーチ・ボーイズって、全曲ブライアンが歌ってるんじゃなかったの?」
そんなことを初めて知ったくらいに、それまでビーチ・ボーイズのことを知らなかった僕。
でも、ビーチ・ボーイズ=ブライアン・ウィルソンと思ってた僕としては、このアルバムには惹かれた。
もっとブライアンのことがわかるのではないか。
もっとビーチ・ボーイズのことがわかるのではないか。

このコンピレーション盤は、全世界的なものなのか、それとも日本独自の編集盤なのか。
それもわからないのだけれど、解説は中山康樹が書いていた。

収録曲は次の通り。
01. Please Let Me Wonder
02. I’m So Young
03. Kiss Me Baby
04. She Knows Me Too Well
05. Don’t Worry Baby
06. The Warmth Of The Sun
07. Why Do Fools Fall In Love
08. We’ll Run Away
09. Wendy
10. Hushabye
12. The Surfer Moon
13. In My Room
14. Farmer’s Daughter
15. Let Him Run Wild
16. Good Vibrations (Early Take)
17. In My Car
18. You Still Believe In Me
19. I’m Waiting For The Day
20. Wouldn’t It Be Nice

どうだろうか。
どの曲もメロウで、ロマンチックな曲が並んでいることがわかるだろう。
ファルセットを多用した、ブライアンの天使の歌声がたっぷりと楽しめる。
それまでありそうで無かった編集盤だ。

『Pet Sounds』やヒット曲とは少し違う、初期ビーチ・ボーイズの魅力。
僕も、まだまだビーチ・ボーイズのことを知らなかったなあと痛感させられたものだ。
これで、ブライアンの才能の素晴らしさを知ると共に、逆説的に、他のメンバーの魅力を知ることともなった。
このアルバムをきっかけに、ビーチ・ボーイズをもっと聴いてみたいと思い、奥深い世界へハマっていくこととなる。

あまり知られてないけれど、とてもいいコンピレーション盤なので、中古ショップで見かけたら、是非GETしてもらいたいと思う。

『California Feelin’』

近所のCDショップの閉店50%OFFセール。
結構あったんだよね、いいブツが。
あのバンドの名盤も、あのアーティストのベスト盤も、みんな半額だよ!

このビーチ・ボーイズのベスト盤も迷ったのだが、持ってない曲は1曲だけだし...という事で我慢。
一旦は買わずに帰宅したのだが、結局買いに行ってしまった。
狙う気持ちがあるのなら、おさえとけ。今買わないと後悔するよ、ってなもんで。

で、結局購入してしまった、ビーチ・ボーイズのベスト盤。
この作品、まず、ジャケットが素晴らしい。青く澄んだ空と海。砂浜で砂遊びをする無垢な子供。
これだけで、見事にビーチ・ボーイズの世界を表現できている。

そして、PLAYボタンを押してみると...これはジャケットの魔力なのか?、「Surfer Girl」「In My Room」「Don’t Worry Baby」「The Warmth Of The Sun」など、すごく澄んだ素晴らしい音に聴こえる。
「こ、こんなにいい音だったっけ??」
各曲の最新リマスター盤は既に持っているはずなのに、何故か初めて触れる新鮮な空気を感じる。

それから、この作品が他のベスト盤と違うのは、ブライアン・ウィルソンが選曲にあたった、という事だろう。
レコード会社の選曲では、およそ【ビーチ・ボーイズの20曲】の中には選ばれないであろう「Busy Doin’ Nothin’」「We’re Together Again」「Time To Get Alone」など、隠れた名曲がセレクトされている事。

もちろん、ブライアン自身、『もし明日言われたら、違う曲を選ぶかもしれない』と言っているように、これはたまたまセレクトした2002年2月11日付けのリスト、という事なのだが、ありきたりの選曲ではない、こういった、ニヤリとさせられる曲が含まれてるというのも、ファン心理をくすぐるものである。
その心理の前には、「あの曲が入ってないじゃないか」等という不満の念は、微塵も浮かんでこないから不思議だ。

ブライアンは、各曲に対してコメントを添えているのだが、面白いのは、「Wonderful」に対するコメント。
『ハッピーで美しく、陽気にさせる曲だ』
この曲、ハッピーか?聴いて陽気になれるか?
もちろん、美しくていい曲で、好きではあるんだけど...ハッピー...かなあ...うーーん。
ブライアンの感じる事はわからん。

また、「California Girls」は『Endless Harmony』収録のステレオ・ヴァージョン、「Heroes And Villains」は『Hawthorne, CA』収録のステレオ・ヴァージョンと、比較的レアな音源を使用しているのも通好みというか、小技が効いている。

そして、僕がこの作品を購入した理由...唯一持ってなかった「California Feelin’」の存在だ。
この曲は以前ビーチ・ボーイズで録音されたものの、未発表のまま終わったもので、2002年に、ブライアンが新たに自身のバンドと共にレコーディングした新曲。
このベスト盤の流れで聴いてきて、突然、現在のブライアンのダミ声が現れる、というのはアレだが、まあ、それは致し方ないとして、曲調やサウンドは、このベスト盤の雰囲気を損なうものではなく、ビーチ・ボーイズの曲としてすんなり入って来る。
ゆったりとして爽やか、そしてほんのりせつない、このジャケットの印象そのままの佳曲だ。
「♪ Ba Ba Ba Ba…」のラインには、特にハッとさせられる。

というわけで、このベスト盤。
ベストと言っても、ビーチ・ボーイズの数ある名曲のうち、それはそれはほんの一部を並べたものにすぎない。
けれど、そこには、ビーチ・ボーイズの魅力のすべてが詰まっていると言っても過言ではない。
僕は「California Feelin’」目当ての購入だったけれども、こうやって通して聴いてみると、得られたものはそれだけではなく、一本スジが通った、いいベスト盤だったと、心から思えた。

『That’s Why God Made The Radio』

70年代後半以降のビーチ・ボーイズのアルバムの不評ぶりは嫌というほど聞かされてきたから、今さら再結成してアルバム作っても、大したものはできない、と思ってた。
2012年、再結成のライヴ前に、ちょっとした記念に作ってみました的なものだろう、と。
だから、いつ発売なのかもまったく興味がなく、完全にスルーしようとしてた。

ところが。
ふとしたきっかけで、なんとなく「From There to Back Again」を試聴してみたら、なんだか良さげだった。
そして、アルバムはもう発売になっていると知り、衝動的に購入に踏み切った。

これが、大正解。
おじいちゃんになったメンバーが久し振りに作ったとは思えない、素晴らしいアルバムだった。
ブライアンのソロ・アルバムに毛が生えたようなもんかとタカをくくってたら、見事なまでに裏切られた。
ブライアンだけじゃない、マイクの声も、アルの声もちゃんと聴こえてくる、やっぱりこれはビーチ・ボーイズのアルバムだったのだ。

冒頭の「Think About the Days」は、『Smile』の「Our Prayer」の様な、憂いを帯びたコーラス・ワークが見事な小品。
これだけで唸らされる。

続く「That’s Why God Made the Radio」は、『Surfer Girl』における「Your Summer Dream」の様なロッカ・バラード。
夏の幕開けを告げる、リード・トラックとなっている。

「Isn’t It Time」は、『Friends』や『Sunflower』を思い出させる。

「The Private Life of Bill and Sue」「Strange World」は、『Pet Sounds』みたいなアレンジが効いてて、ニヤリとさせられる。

「Shelter」は、サビのファルセットが心地良い、ビーチ・ボーイズの真骨頂。
アルバムの中盤をグッと締めてくれる。

次のマイクの作品「Daybreak Over the Ocean」も、マイクの抑えたヴォーカルがいい味を出している。

そして、なんと言ってもラストの3曲「From There to Back Again」「Pacific Coast Highway」「Summer’s Gone」は、メドレーの様になっていて、このとろける仕上がりは『Today!』のB面を思い出させる。
この流れには超感動。
夏が終わってしまう切なさが見事に凝縮されている。

これは大傑作ですぞ。
全盛期のいくつかの名盤にも引けを取らないと思える、メロウなアルバムとなった。
初期ビーチ・ボーイズの魅力だったアップ・テンポの曲がないので、そこが欠点と言えば欠点かもしれないけど。
でも、こんな歳になって、こんな傑作を作るとは思いもよらなかった。ビーチ・ボーイズの底力を感じたね。

The Beach Boys Best Songs 30

『レコード・コレクターズ』で「ビーチ・ボーイズ ベスト・ソングズ100」という大特集をやってたことがあって、とても読み応えがあった。
そのベスト100のランキングは、25人の評論家が順位を付けて30曲ずつ選んだものを元にしているとの事で、だったら僕も、と、30曲選んでみた。

第1位
「I Just Wasn’t Made For These Times」
邦題の「駄目な僕」ってのがいいよねえ。
ああ、駄目じゃないよ、君はすごいよブライアン、って励ましたくなるし、自分が落ち込んだ時とかにも心にピッタリくる曲で、なんとも愛おしく大切な曲。

第2位
「We’ll Run Away」
駆け落ちの歌なんでしょう?
なんてウットリとロマンチックなんだ!
カップルの若さを感じる。

第3位
「She Knows Me Too Well」
ブライアンのファルセットにマイクの低音ボイスが最強だなあ。

第4位
「Wendy」
おどろおどろしいイントロから、一気に「♪ウェ~ンディ~」と明るくなるのが好き。

第5位
「All I Wanna Do」
これ、あまり取り上げられる事がないけど、隠れた名曲だと思ってる。
浮遊感漂うサウンドに、抑えたマイクの声。
サビのファルセットがなんとも切ない。

第6位
「Disney Girls(1957)」
ブルース・ジョンストンはこの曲のお蔭で完璧にグループの一員と認められたよね。
なんともノスタルジックなこの曲、ファンはみんな好きって言うよね。

第7位
「Your Summer Dream」
ギターのコード・チェンジが怪しげな所とかも愛おしくて。
アレンジはすごくシンプルなんだけど、それが逆に曲の良さを引き立たせている。
ブライアンが書いた初期のバラードの傑作。

第8位
「I Do」
こんな素晴らしい曲が長らく未発表だったなんて。
すごく透き通ってて、ウキウキする曲。

第9位
「Please Let Me Wonder」
すごく穏やかな気持ちになれる。

第10位
「Caroline, No」
『Pet Sounds』のオビに書いてあった「悲しいほど美しい」というのはまさにこの事だなと。
初めて聴いた時から即お気に入り。アルバムの完璧なラスト。

第11位
「Let Him Run Wild」
切ない中にも力強さがあって。
サビが終わった直後の演奏のアレンジも好き。

第12位
「Deirdre」
メランコリックで可愛い曲。
当時、これでみんなが「ブルースってやるじゃん」ってなったと思うよ。

第13位
「Here Today」
これのベース・ラインが好き。

第14位
「Our Prayer」
『20/20』に収録されてた曲だけど、『Smile』のオープニングを飾るという事の方が素晴らしく印象的。
澄み切っているのに物悲しいコーラスの祈り。

第15位
「Good To My Baby」
サビがノリが良くてウキウキする。

第16位
「We’re Together Again」
ほのぼのとして可愛い。

第17位
「Slip On Through」
『Sunflower』を試聴したら、冒頭のこれがあまりにカッコ良くて即買い決定。
スリリングな流れからキラキラへ。デニス、カッコいい。

第18位
「Ballad Of Ole’ Betsy」
熟女賛歌と思いきや、車の歌とは。
でも、その愛着が伝わる名バラード。

第19位
「Sail On Sailor」
ゆっくりながらも力強いテンポのノリがクセになる。

第20位
「Girls On The Beach」
素晴らしいコーラス・ワークの後に、デニスの苦しい胸の内をはき出すかのようなリード・ヴォーカルのパートがなんとも好き。

第21位
「Help Me, Rhonda」
なんと言っても締めの「♪ ヘルプ・ミー・ロンダー、イェー!」に力が入る。

第22位
「Don’t Worry Baby」
フィル・スペクターに憧れて作られた曲のひとつ。
僕は「Be My Baby」を超えていると思うけどなあ。

第23位
「Wouldn’t It Be Nice」
キラキラしたイントロからのドラムがダン!そして「♪ ウ~ドゥイッビー」と高らかに歌い上げる冒頭から素晴らしい。

第24位
「Long Promised Road」
バラードかと思いきや、リズムも変わって混沌とする展開。
中盤でタイトルが歌詞に入ったパートがなんとも物悲しくて好き。
カールが素晴らしい仕事をした。

第25位
「Time To Get Alone」
心地良くゆりかごに乗せられているかの様。

第26位
「Surf’s Up」
『Smile』で目指した世界観の中ではこれが一番好きかな。
目まぐるしい展開にはちょっとした狂気も孕んでいて怖いけど、それも魅力。

第27位
「Summer’s Gone」
12年の再集結アルバムは傑作だった。
特にラスト3曲のメドレーの雰囲気はたまらなく、中でもこの曲を。
夏が終わってしまったんだなあと侘しくなる。

第28位
「Soulful Old Man Sunshine」
すごくキレがあって力強く、他のビーチ・ボーイズ・ソングとは一線を画すカッコ良さ。スウィングしてる。

第29位
「Friends」
穏やかで暖かい曲が多いアルバムを象徴する曲。

第30位
「All Summer Long」
たしかに、これが映画の最後で流れたら、感動しそう。
コミカルな雰囲気の中にもホロリと切なさがあって好き。

Brian Wilson『No Pier Pressure』

ブライアン・ウィルソン、ソロ11枚目のアルバムだという。

前作『That Lucky Old Sun』はそんなにのめり込まなかったけど、ビーチ・ボーイズとしての『That’s Why God Made The Radio』は素晴らしかった。
ブライアンの才能が衰えてない事を証明してくれた。
はたして、今回はどうか。
CDリリース前に公開された音源を何曲か試聴してみた。
とてもいい感じだった。期待は高まった。

「This Beautiful Day」
冒頭からとてもメロウな響き。
ブライアンの切実なヴォーカルにピアノの伴奏。そこに澄み切ったハーモニー。
とても切ないメロディで、一気にブライアンの世界に引きこまれる。
思わずウットリする。素晴らしい。

「Runaway Dancer」
スカのリズムのようにノリが良く、メロディも憶えやすい。
セブというヴォーカリストをフィーチャー。ブライアンの声はあまり表面には出て来ない。
しかし、ホーンの音色やコーラスを聴いてると、やはりブライアンだなあと。

「Whatever Happened」
ビーチ・ボーイズのアル・ジャーディンとデヴィッド・マークスを迎えて。
終わりゆく夏を惜しむかのような、メロウで切ない響きがここでも全開。
ベースのフレーズとか、ビーチ・ボーイズ時代を髣髴させて嬉しい。
これまた素晴らしい曲。

「On The Island」
女性ヴォーカリストがリード・ボーカル。でもブライアンもコーラスで目立ってる。
ボサノバのようなお洒落感あり。
口笛も寂しさを表現してて効果的。

「Half Moon Bay」
これはインストと言っていいんだろうな。ビーチ・ボーイズのアルバムにもこんなインストあったな。
天気が悪くなってきている浜辺のイメージ。そろそろ雨が降ってきそうな。

「Our Special Love」
前半はブライアンが歌ってるのだけれど、サビでリズムが変わってピーター・ホーレンスのヴォーカルに変わると、ガラッと別の曲になったかのように雰囲気が変わる。
しかし、中盤以降は見事に馴染んできて、見事な1曲となる。

「The Right Time」
リード・ヴォーカルはアルなのかな。すごく若々しい声なのにビックリ。
これまた切なくメロウな雰囲気で素晴らしい。
胸が締め付けられるようなメロディ。やるせないようでいて、どこか爽やか。
アルバム中、一番好きなのはこの曲かも。

「Guess You Had To Be There」
これも女性ヴォーカリストがリードをとっているが、ブライアンもサビで歌ってる。
カントリー風味のアレンジ。

「Don’t Worry」
非常に明るく派手な曲。
Don’t Worryという事で、聴くものを元気付けるようなパワーにみなぎっている。

「Somewhere Quiet」
初期の頃のビーチ・ボーイズのバラードみたいで大好き。
途中、明らかにブライアンではない人のリード・ヴォーカルが聴こえるが、誰をフィーチャーしてるとかの表記はない。

「I’m Feeling Sad」
タイトルにsadとあるように、悲しみを歌った曲だけど、聴いてる分には明るい感じに聴こえる。

「Tell Me Why」
前半をブライアンが歌って、サビ前にコーラスがググッと盛り上げて、サビでアルにヴォーカル交代。見事なコンビネーション。

「Sail Away」
どこかとぼけた味わいの雰囲気から、サビでの凝ったコーラス・ワークはブロンディ・チャップリンとアルが参加。
ブロンディが参加してるからか、70年代ビーチ・ボーイズの雰囲気。

「One Kind Of Love」
イントロの雰囲気とか『Pet Sounds』を思い出すね。
地味なんだか豪華なんだかわからない不思議なアレンジ。
間奏でのベース・ソロとコーラスの絡みがいい。

「Saturday Night」
フィーチャーされたネイト・ルイスのヴォーカルは非常に軽い。
ブライアンの色が薄い曲かな。こんなタイプの曲も書けるんだね。

「The Last Song」
アルバム本編最後の曲。
「♪ ラララ」のサビはアルバムを締めるに相応しいメロディ。

「In The Back Of My Mind」
ここからボーナス・トラック。
ビーチ・ボーイズ時代の曲のピアノ弾き語り。
デモと言った感じなので、ブライアンのヴォーカルが生々しい。

「Love And Mercy」
1stソロからの曲の、これまたピアノ弾き語りにコーラスを添えて。

期待以上に素晴らしいアルバムだった。
『That’s Why God Made The Radio』の続編みたい。
あのアルバムが好きだった人は、絶対このアルバムも気に入ると思う。
全体を通して、メロウで切なく美しい、まさしくブライアンの良さが全開になっているアルバムだ。

ブライアン、本当はビーチ・ボーイズとしてこれをやりたかったんじゃないかな。
実際、アルとかデヴィッド、ブロンディが参加してるというのもあるけど、他にもゲスト・ヴォーカリストを多用していて、純粋なブライアン一色のアルバムではなく、どこかオールスターズ的な、バンドのアルバムになっている。

ブライアンのソロ最高傑作だ。

コメント