ブライアン・ウィルソン Live@東京国際フォーラム 2002.2.22 感想

2002年2月22日@東京国際フォーラム

『Pet Sounds』全曲再現。すべり込み参戦

数ヶ月前から行こうかどうしようか悩んでたブライアン・ウィルソンのライヴ。
ブライアンと言えば、どうしても体調問題、精神的問題がついてまわり、「声が出てない」だの「ところどころつっかえる」だの「痛々しい」等と言ったライヴ評を以前耳にしてたものだから、どうにも心配で今ひとつ乗り気ではなかった。観に行ったらガッカリするんではないかと。

だから、去年来日公演が決まった時も、公演直前までその存在を知らなかったほど。
「でも、まあいいや」と思っていたのだが、ふとした所で今回のライヴでは『ペット・サウンズ』全曲再現との情報を得、俄然興味が湧いた。
しかしもう直前だもんなと諦めたところ、例のテロの影響で延期に。幸か不幸か、それからずっと「行くべきか否か」で悩む事になったのだった。

振替え公演は2月になると発表があったのは10月だったが、それから悩む悩む。
結局、ガッカリする可能性も高い(?)ライヴに8500円のチケット代は高い、平日のため開演時間も遅く帰りの電車が気になる、他の予定が入るかも等々。
やっぱり我慢しようかとの方向に傾き、なるべくライヴの事を忘れようと...。

そんなこんなでいよいよ2月に突入、たまに入ってくる情報に嫌々をしながら過ごす。
それで、東京公演は先週終了したと思っていたのだが、今日本屋で立ち読みしていると、ライヴは先週ではなくて今週だった事を知らされる。
「あ、まだ間に合う...」
雑誌に書いてある期待記事を読むうちに、土壇場でやっぱり行きたい気持ちが強くなった。
ブライアンの年齢の事を考えたら、次の来日公演の可能性は何とも言えぬ所はあり、この機会を逃したら...と。

意を決して銀行でお金を下ろし、チケットぴあへと走ってみるが、なんと前売り販売は昨日で終了した、と。
そりゃそうだよなあ。東京公演はもう前日&前々日だもの...。
それにしても昨日かよ、チクショー。
当日販売分もあるらしいが、当日券なんて買った事ないから、ちゃんと買えるかどうか不安。当日わざわざ電車賃かけて行って「売り切れました」では悲惨極まりない。
やはりこれは諦めろという事か。
一時は行かないと決めてた自分が悪いのだから、と半ば諦めつつも、「当日券の予約ってできないもんかな」と思い、雑誌に書いてあった問い合わせ先に電話してみると、予約できるとの事。
無事、金曜日分のチケットを確保する事に成功したのだった。なんとか間に合った...。

そんな訳で、滑り込みで行く事にしたブライアン・ウィルソン。
やっぱ電車賃込みで1万円以上の出費は痛いなという事と、ライヴの出来と、やはり不安はついてまわるものの、この目で現在のブライアンを確めてきますぜ。

ライヴ当日。会場へ

という訳で、滑り込み参戦となった東京国際フォーラム、ブライアン・ウィルソン・ライヴのレポート。
予約はしてあるものの、当日券の状況がどうなってるかわからなかったので(予約者の中でも早く行った方がいい席と引き換えてもらえるのか?と)、一応、当日券発売時間ちょい前に着くようにした。
10分ほど待った後、時間になって引き換えたのだが、結局、予約者はちゃんと予約者毎に振り分けられたチケットが確保されていたので、早く行く必要はなかった(笑)。
ただ、当日券の割には、1階22列60番、となかなか良い席。
ヘタに前売りを買うよりずっと良かったと思える。席にはかなり満足。

チケットを引き換えた後、開演までがかなり時間があった。さてどうヒマ潰しをしようかと思っていたのだが。
ブライアンのライヴなら絶対いるはずの音楽評論家、萩原健太氏。もしうまく遭遇できたらサインでももらおうかなと思っていたら(一番好きな評論家であり、直前でライヴを観に行く決心したのも、『レコードコレクターズ』での彼の文章を読んだからなのだが)、入口の関係者受付付近でいきなり目撃。その場所までは一般人は行けないので、そこからエスカレーターを上がった一般フロアの所で待機、もしそこに上がってきたら声かけてみよう、と思っていたら、ホントにやってきた(笑)。
こうなったらもらうしかないだろう、と声をかける。
健太さんは「俺のサインでいいのか?なんか俺のコンサートみたいだな」と笑いながら、快くサインに応じてくれた。
今まで何度か著名人に遭遇した事はあったが、こうして自分からサインを求めたのは初めての事だった。サインなんてもらってどうするの?ってな気持ちもあるが、記念は記念。
ブライアン・ライヴでの健太さんサインならば、ちゃんとした結びつき(?)の記念でしょうよ(笑)。

パンフレットも欲しかったが、こちらは2500円。高い。お金ない中、足を運んだ訳だが、2000円以内だったら悩むなあと思っていたらこの値段。諦めざるをえない。
他にはTシャツなども売っていたが、どうしても欲しいと思えるものはなかった。
結果的にそれで良かったのかな、お金使わずにすんで。
それからグッズと言えば。
開場前から列ができていて、開場と同時に中へ走り出す連中がいるので、全席指定のライヴなのに、どうして律儀に並んだり我先にと走ったりするのかなあと思っていたら、ブライアンのサインが入ったポスターが限定で発売されていたからだそう。
売り出される枚数は、当日のブライアンの気分次第との事だから(笑)、欲しい人はそりゃ並び走るわなぁ、と。

客席はほとんど埋まっていたように思う。
後で聞いた話によると、前日は2階席の人を1階席に振り替えるくらい空席があったとの事だったのだが、この日はそんな気配は感じられないくらい、しっかり人が入っていたように思う。
しかも、思ったより若い人が多かった。親に連れられてきてた小学生は例外としても(笑)、20代が目立ったなあ。僕の両脇のカップル達もそのようだったし。
で、何故か女の人は美人が多かった。これまた不思議。美人でブライアン・ファンなんて、僕の周りにゃあいねーぞ(笑)。

ライヴのスタート

1時間半もの待ち時間は辛いかなと思っていたが、意外と早く時間は過ぎて7時に。5分程遅れて開演。

第1部
01. Brian Wilson
02. ‘Til I Die
03. Dance Dance Dance
04. In My Room
05. California Girls
06. The Warmth Of The Sun
07. Your Imagination
08. Forever
09. Sail On, Sailor
10. Add Some Music To Your Day
11. Please Let Me Wonder
12. You’re So Good To Me
13. Don’t Worry Baby
14. Desert Drive
15. Meant For You
16. Friends
17. Our Prayer
18. Heroes And Villains
19. Surf’s Up
20. Marcella
21. Do It Again
第2部
22. Wouldn’t It Be Nice
23. You Still Believe In Me
24. That’s Not Me
25. Don’t Talk
26. I’m Waiting For The Day
27. Let’s Go Away For Awhile
28. Sloop John B
29. God Only Knows
30. I Know There’s An Answer
31. Here Today
32. I Just Wasn It Made For These Times
33. Pet Sounds
34. Caroline, No
35. Good Vibrations
(Encore)
36. Surfer Girl
37. Help Me, Rhonda
38. I Get Around
39. Barbara Ann
40. Surfin’ USA
41. Fun, Fun, Fun
(Encore 2)
42. Love And Mercy

今回のライヴが強烈に観たかった原因は、やはり『ペット・サウンズ』全曲演奏という事だったけれども、その他の演奏予定曲にもかなり惹かれたから。
雑誌やネット等で確認した予想セットリストを見ると、僕が特に好きな曲はだいたい演ってくれる、って感じだったからね。
ブライアンのソロコンサートとはいえ、選曲はほとんどがビーチ・ボーイズのものから。
「’Til I Die」「The Warmth Of The Sun」「Forever」「Add Some Music To Your Day」「Please Let Me Wonder」「Meant For You」「Friends」「Our Prayer」「Surf’s Up」等が特にお気に入りで。
超有名曲という訳でもなかったりする曲もあって、よくぞ演ってくれました、って。ウットリしてしまう選曲。

日本でのロックのライヴには珍しい休憩タイムをはさんで2部のペット・サウンズ。
今回はここが本編と言える事もあるのだが、あの歴史的名盤を曲順そのままに再現してくれるというこの企画、さすがにこちらもじっと耳を傾け、聴き入るしかなかった。気を抜く余裕なんてない。

「Here Today」「I Just Wasn It Made For These Times」が特に良かったかな。

インストの「I’m Waiting For The Day」「Pet Sounds」なんかも意外と印象に残ってる。

「God Only Knows」は「ポール・マッカートニーのフェイヴァリット・ソング」と紹介してたし、「Caroline, No」のラストはちゃんと動物の鳴き声、電車や踏み切りサイレンの音など、すっかりアルバムと一緒で感動。

その直後になだれ込んだ「Good Vibrations」の時は、お客さんが一体となって感動、ノッているというのが伝わってきた。

アンコール1はサーフィン・ソング連発で躍らせて、ラストの「Love And Mercy」でしんみりとして終了したのだった。

心配だった声の方も全然問題なくて。
もちろん、60年代~70年代初期の綺麗な声とは違っちゃってるけど、噂で聞いた、音はずしまくりだのなんだの、って事はなくて。
ただ、ファルセットは伸びがなくて、若干悲しさもあったりしたけど、その分サポートするメンバー達のコーラスワークが絶品で。
ブライアンはキーボードはほとんど弾かずに、目の前に置いてあるだけ、ヴォーカルに徹するという感じだったけれど、「Surfer Girl」ではちゃんと弾いてくれたし、「Barbara Ann」ではベースをプレイ。
ちゃんと楽器を演奏する姿もしっかり見せてくれ、ファンを喜ばせてくれた。

しかし、立ち振る舞いはおじいちゃんで(笑)。よちよち歩いてくる感じだし。
アンコール前の最終曲では、自分のヴォーカルパートが歌い終わると、メンバーはまだ演奏してるにも関わらず、さっさと(というか、のそのそと)袖に引っ込んでいってしまうのだが、やっとメンバーの方も演奏を終えて引っ込むと、それとすれ違うようにしてブライアンが再登場(笑)。メンバーは休むヒマもなくアンコールに突入する、という様にはウケたな。

しかし、そんなこんなも含めてのブライアン。
過去の事などもよくわかっているから、ここまでできるようになったブライアンをみんなで盛り上げよう、という雰囲気が会場全体に伝わっている。
僕も、普段ならライヴは座ってゆっくり観たいなあと思う方なのだが、この時は、早く立ってブライアンを盛り立てたいという気持ちだったもの。
だから、「Marcella」の時にブライアンのEverybody stand up!の声でみんなが立ち上がった時は、待ってました、という感じだったし。
立ち振る舞いはオジイでも、顔は思ってたより凛々しくてカッコよかった。

意を決して行ってみて大正解。皆でブライアンを盛り上げよう

インターバルの間、ふと前の方を見てみると、サインを求める列が出来ていて、その先頭にはスラリとした白髪の人が。その後姿から、すっかり坂本龍一だと思っていたのだが、実は後で調べてみたら、ブライアン夫人のメリンダさんとの事(笑)。
いやあ、似てたんだよマジで。そっかあ、いま日本に帰ってきてるから矢野顕子との離婚の件も発覚したのかぁ、なんて思ってて。でも、右手でサイン書いてるようだからおかしいなとは思ったんだけどね。それも右手でも字が書けんのかぁと感心してた(笑)。
前日には鈴木慶一氏他、著名人が来てたとの情報を聞いたものだから、教授だって来てもおかしくないなぁと思い込んでたんだね。
まさかブライアン夫人、つまり女性だったとは(笑)。
他に著名人と言えば、トイレで亀和田武氏とすれ違った。開演直前だったのでじっくり確認するヒマはなかったが、こちらは恐らく本人だろう。

そんな訳での2時間半、全42曲(1曲1曲が短いとは言え、この曲数はかなり嬉しい)は意を決して行ってみて正解、無事満足する事ができたライヴだった。
もちろん、8500円はやっぱ痛いよなとは思うけど、それと引き換えに得た満足感、思い出、そして帰ってきてからもビーチ・ボーイズ聴きまくりの自分を顧みて、うん、良かったんだ、と感じるのだ。

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