ローリング・ストーンズ Live@東京ドーム 2014.3.4 感想

2014年3月4日(火) @東京ドーム

ストーンズ観に行かないのはロック・ファン失格?

ストーンズのライヴには行くつもりはなかった。
もちろん興味はあるけれど、変わり映えのしない定番曲ばかりで、僕の好きな曲がほとんどないセットリスト。
ポール・マッカートニーは40曲近く演ったというのにストーンズは20曲くらい。それでいてポールよりも高いチケット代。とても買う気がしないよ、と。
そして2月26日の東京ドーム初日が終わってセットリストを見たら、やっぱり僕の好きな曲がほとんどない。
行かなくて正解だよな、そう思った。

だけど、ネットをあれこれ見ていて、ryoさんやミネちゃんさんをはじめとする、いつも見ている音楽系ブログのみなさんの記事を読んでたら、段々と疼いてきて...。

ストーンズ、今回が6回目の来日だという。6回も来ているのに、まだ1回も観た事ないだなんて。
ロックが好きだと言ってるくせに、ストーンズを観た事がないだなんて、ロック・ファン失格というか、恥ずかしい事のように思えてきた。
年齢の事もあり、もしかしたらストーンズを観れる最後のチャンスかもしれない。

参加席GET

S席からB席まで、普通のチケットは既にソールド・アウト。それで、参加席が発売になっているのは知っていた。
参加席。
その存在は、ポールのライヴに行った時に知っていた。
「出演者並びに舞台の一部が見えにくい席となります」との事で、ステージの真横に位置するであろう席。ステージは見えにくいけど、音は聴けて、ライヴには参加できるという席なんだろう。
だけど、ポールのライヴの時は、ステージの横に、参加席用に小さなスクリーンが設置してあって、ちゃんと目でも楽しめるようになっていたのを確認していた。あれだったら、参加席でも充分アリだよな、と感じたのを憶えていた。
だから、参加席でもいい、ストーンズを観に行こう!
衝動的にチケットを買った。

参加席・外野席レフト側49通路8列524番。
しかし、チケットを買ってから少し不安が。
ポールのライヴの時には参加席用のスクリーンがあったけど、今回もあるとは限らない。慌ててネットで初日のステージの画像をいくつか見てみると、そのようなスクリーンがあるようには思えなかった。
ステージの真横と言うよりも、斜め後ろから眺める席で、ステージなんてほとんど見えないのかも...花道に出たミック・ジャガーの後ろ姿がちょろっと見える程度なのかも...。
「出演者並びに舞台の一部が見えにくい席」ではなくて、
「出演者並びに舞台の一部しか見えない席」なのかも...。
目で楽しむ事はできなくて、音だけ聴いて雰囲気を楽しむ、文字通り「参加するだけ」の席なのかも。それはちと厳しい。迂闊な購入だったのか...?
不安になりながら当日を迎えた。

ライヴ当日。会場へ。参加席は素晴らしい!

今回のストーンズの公演は東京ドーム3回のみ。
2月26日に演った後は1週間近く空いて3月4日と6日。
間の1日と2日は野球の巨人のオープン戦が行われていたから、26日の後にセットをいったんバラして、野球の試合後に再びセットを組み直した事になる。なんで、そんな人手もお金もかかるスケジュールになったんだろう。
ポールのライヴから約3ヶ月。それからこんなに早く再び東京ドームに来るとは思ってもみなかった。あの時よりも寒い気がする。
水道橋の駅前でチラシを配っていた。一旦は通り過ぎたのだが、今のクリアファイルだったんじゃね?と思い、引き返してもらいに行った。手に取って見ると、ぴあ特製のストーンズ・クリアファイルで、その中にはチラシの他、ストーンズのメンバーやアルバム・ジャケット・コレクションのポスターが入っていた。これが無料でもらえるなんて!これが5万人分もあったとは思えないから、この時間に通りかかった一部の人だけがもらえたんだろう。ラッキーだった。
5時前に到着してしまい、震えながらベンチでパンを食べた。本屋さんで立ち読みして時間を潰す。ドームの外周を一周。
グッズ売り場は2ヶ所あったが、どちらもすごい行列になってた。あんなに並んでたんじゃ、最後方の人はきっと開演時間には間に合わないと思う...。
6時頃入場。
トイレもすごい行列になっている事をポールのライヴの時に学んでいたから、早めに並ぶ。

さて、問題の参加席だが。
結論から言うと、素晴らしい席だった!
今回は、ポールのライヴと違って、参加席用のスクリーンというものはなかったのだが、ステージ左右にある巨大スクリーンが斜めに設置してあって、それが十分な角度で観る事ができた。何も問題なし。
そもそも、ステージの斜め「後ろ」から眺める席なんじゃないかと危惧してたのだが、ちゃんと、斜め「前」からの角度で観える席だった。スクリーンに頼らなくても、ちゃんと肉眼でステージのメンバーがちゃんと観えた。まあ、ドラム・セットは観えなかったけど。
でも、なにしろ近いんだ。外野席というのはステージの真横だから、気分はアリーナと一緒。ステージ左右に伸びた花道にミックが歩いて来てくれたから、50mくらいの距離で観れた。アリーナの後方、ましてや1階スタンド、2階スタンドに比べたら、断然近いんだ。
はっきり言おう。
参加席とは、良質の、格安なS席である!
参加席と言うと、いかにもお粗末な席で、そんなんだったら観たくないと思う人が多いだろうけど、参加席という言葉の悪いイメージに、いい意味で裏切られた。
S席は18000円もするのに、10000円で、こんないい席で観れた。ものすごいお買い得。
せっかくS席を買ったのに、いつもひどい席...と嘆いてる人には、一度、参加席を検討してみる事をお薦めしたい。
まあ、いつも参加席が発売されるわけではないだろうけど。

ライヴのスタート

席に着き、静かに始まるのを待つ。
僕の2つ隣の若い男の子はTシャツ1枚になっている。僕は結構寒いというのに、そんな恰好で...。その男の子は寒くて震えてるのか、興奮を抑えきれないのか、時々頭を揺らしている。
開演時間から25分が過ぎ、もうすぐ7時になろうとする時、場内が暗くなった。
一斉に総立ち。
ポールのライヴの時は、僕の周りの2階スタンドのお客さんはほとんど座って観てたけど、今回はアリーナはもちろん、1階スタンド、たぶん2階スタンドも初めから総立ちだったのではないか?

01. Start Me Up
02. You Got Me Rocking
03. It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)
04. Tumbling Dice
05. Angie
06. Doom And Gloom
07. Silver Train (Fan vote – with Mick Taylor)
08. Honky Tonk Women
(Band Introductions)
09. Slipping Away (with Keith on lead vocals and Mick Taylor joining on guitar)
10. Happy (with Keith on lead vocals)
11. Midnight Rambler (with Mick Taylor)
12. Miss You
13. Paint It Black
14. Gimme Shelter
15. Jumpin’ Jack Flash
16. Sympathy For The Devil
17. Brown Sugar
(Encore)
18. You Can’t Always Get What You Want
19. (I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)

暗闇の中から3人が飛び出るようにして出てきた。頭一つ抜け出したのがキース。
すぐさま1曲目「Start Me Up」のイントロを弾き始める!
心配されたトチりなし、完璧なイントロだった。
初日のオープニング・ナンバーは「Get Off Of My Cloud」で、意表を突かれたとの評判だった。だけど、僕はこの日の1曲目は「Start Me Up」にしてほしいと願っていた。いや、おそらくそうするだろうという確信のようなものがあった。やっぱり「Start Me Up」だった。
ストーンズのライヴの1曲目はやはりこれが似合う。メンバーが躍動している。顔が自然とニヤけてきた。ああ、来て良かった。すぐさま思った。

2曲目「You Got Me Rocking」
うわ、いきなり知らない曲だ。でも、サビが「ヘイヘイ!」と憶えやすくてキャッチーでなかなか。と思って後で調べてみたら、『Voodoo Lounge』収録曲だって。なんだ、持ってるじゃん。後でちゃんと聴かなきゃな。
それにしても冒頭の2曲。これは初日とは大きくセットリストを変えてきそうな予感。

3曲目「It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)」
ほとんどイントロなしで歌いだしたこの曲。なんだかちょっと雰囲気が違う。キーを下げてるのかな?

5曲目「Angie」
いつのまにかアコギに持ち替えていたキースがボロンとイントロのコードを弾いた瞬間わかった。おお、「Angie」だ。歓声も凄い。
初日ではやらなかったから、今回のツアーのセットリストには入ってないんだと思ってた。まさかこの曲が聴けるとは思ってなかった。大好きなバラード。

6曲目「Doom And Gloom」
「シンキョクデス」と言って披露。大好きな曲だ。
ここではミックがギターを抱えて歌った。この曲のCD音源もミックがイントロのギターを弾いてるという話だったから、自然な流れだったのかな。
僕は普段あまり映像を観ない方だから、ミックがギターを弾く姿というのは初めて観るかもしれない。それにしても、弾いているギターは黄色のテレキャスで、この時キースもまったく同じギターを弾いてた。ミックとキース、お揃いのギター!よく不仲説が流れている2人だけど、お揃いだよ。ペアルックだよ。

7曲目「Silver Train」
ファン投票で本日選ばれたのはこの曲。
ここからミック・テイラーが参加。ミック・テイラー、昔はスマートで色男だったのに、見事に太っちゃったな。転がり続けてスタイルを維持してきたストーンズのメンバーとは大違い...でも存在感はあったけど。
この曲、人気あるんだね。タイトルはカッコいいと思うけど、メロディ的には僕としてはイマイチなんだ。
「All Down The Line」か「Respectable」が良かったな...僕にとっては残念な投票結果だった。

ここでミックがバンド・メンバーの紹介。
ロニー・ウッドなのかロン・ウッドなのか、どちらで呼んだらいいのか長年の謎だったのだけど、ミックはロニー・ウッドと紹介していた。これからはロニー・ウッドと呼ぶ事にしよう。
参加席からはドラム・セットが全く観えないので、肉眼では観る事ができなかったチャーリー・ワッツが、メンバー紹介でようやくステージ前方まで出てきてくれた。よたよたと歩くチャーリーに、ミックが手を添えながら少し花道を歩いた。老老介護という言葉がチラついた。
ミックはMCに結構日本語を入れてくれたけど、あまり上手じゃなかった。何言ってるのかよくわからない日本語もあったりして。

ここからはキースのコーナー。
キースが歌ってる間はミックはどうしてるのかと思ったら、やっぱり袖に引っ込むんだね。

9曲目「Slipping Away」
キースの生歌ってどうなんだろうとちょっとドキドキしたけど、渋く味があって安心して聴けた。
バラードっぽいゆったりした曲。

10曲目「Happy」
この曲も初日では演らなくて、ガッカリしたファンが多かったみたいだけど、きっと演ってくれるだろうと思ってた。
キースと言えばまずこの曲。

11曲目「Midnight Rambler」
ミック・ジャガーがハーモニカを吹きながら再登場する所がカッコ良かった。
ミック・ジャガーのハーモニカとミック・テイラーのギター・ソロの絡み合い。
リズムがスローになってブレイクしたり、観客と掛け合いをしたり、後半はテンポがアップしたりと、飽きさせない、見所満載だった。
このようなブルース・ブギの曲調は僕は苦手なんだけど、それでも楽しめた。名場面だった。

12曲目「Miss You」
ファンクなディスコ・チューンは文句なく好き。サックスが素晴らしかった!

13曲目「Paint It Black」
これも大好きな曲なんだけど...ちょっとテンポが遅かったかな。
本来はサビが物凄くスリリングなはずなのに、ちょっと緩すぎてグッとこない感じで残念だったかな。

14曲目「Gimme Shelter」
イントロのギターとコーラスからして妖しい雰囲気で、大好きな曲なんだけど、すぐにタイトルを思い出せなかった。サビに来て、そうだ、「Gimme Shelter」だ!と。
曲の途中で女性ヴォーカリストが花道に出てきてリード・ヴォーカルを披露。これが圧巻、圧倒的で素晴らしかった。僕は不勉強で、このヴォーカリストの事をまったく知らなかったんだけど、有名な方なのかしらん。この曲を演る時はいつもこの女性が歌うのかなあ。後半はミックとのデュエット。ますますこの曲が好きになった。

15曲目「Jumpin’ Jack Flash」
僕にとってはストーンズと言えばこの曲。なんだけど、意外とあっさりしてたかも。待ってました!ガツーンと来た!という感じではなかったなあ。

16曲目「Sympathy For The Devil」
一瞬ステージが暗くなり、メンバーの姿が舞台から消える。静寂の後、ステージは赤い照明、スクリーンには赤く燃える森の映像という事で赤く染まる。
観客はこの曲だと気付いていて、「♪ フッフー!」と合唱。
ミックがマントを羽織って出てくる。怪しい雰囲気が場内を包んでいた。
途中、キースが花道をゆっくり歩いて行ってアリーナ中央へ。手を振ってお辞儀をした後、そこでソロを弾くのかと思いきや、踵を返してステージへ戻る。弾かないのかよ、キース!

17曲目「Brown Sugar」
ライヴ本編ラストのこの曲も盛り上がった。「♪ イエーイエー、フー!」とミックと観客が一体になって歌う。

本編が終了して、僕は帰り支度。電車の時間は心配なかったのだが、混み合う前に帰りたかったので、ここで自分の席を離れた。あまりにも素晴らしい参加席だったので、最後までここで観ていたかったのだけれど。
トイレに到着するより早く、コーラス隊のハーモニーが聴こえてきた。うわ、もうアンコール始まったの?早くね?

18曲目「You Can’t Always Get What You Want」
僕にとっては思い入れの無い曲なので、トイレタイムにしてしまった。
用を足した後、出口近くの場所からもう一度ステージを眺める。今度は1階スタンドの最後方、ほぼ真正面からステージが観える場所だ。
ここからはステージ全体が俯瞰して観えるので、見晴らしがいいとも言えるが、やはり遠い。音もなんだか悪く聴こえる。でもこの辺りはS席なんだろう。やっぱり参加席の方がずっと良かったよ、と改めて思った。

19曲目「(I Can’t Get No) Satisfaction」
最後にはやっぱりこれも演らなきゃね。ミック・テイラーがアコギを弾いてるのが印象的だった。

これぞロックンロールで自然と興奮。素晴らしい体験

いやあ、観に行って良かった。それに尽きる。
ストーンズの歴史に参加できて良かった。
参加席の思わぬ良席ぶりもあって、大満足だった。
でも、終了はほぼ9時ジャスト。2時間で19曲のステージはちょっと短いかなあと思った。ポールのライヴを観た後だけにね。定番曲だけじゃなくて、もっといろんな曲が聴きたかったと思っちゃう。そういう意味では物足りない。あっけなかった。

ミックはとにかくパワフル。ステージの前後左右、花道を歩き回り、ずっと踊っている。それでいてまったく息を切らさない。音も外す事無く歌いきる。とても70歳には思えない。若い頃とまるで変わらないパフォーマンス。
やっぱりスーパースターだなあ。普段よほど鍛えてるんだろうなあ。ポール・マッカートニーとはまた違った凄みを感じた。

キースはハニかみながら観客にお辞儀をする姿が印象的だった。
ストーンズでは一番のワルなんだろうけど、可愛かった。
ギターを弾いた右手をガッと一瞬止める決めポーズも観れた。あの腕の角度がカッコいい。痺れた。

ロニーはタバコをくわえたまま演奏する姿が印象的だった。キースも吸ってたけど、ロニーの方がよく吸ってた。
そして控えめだった。目立つような事はまったくしなかった。それがロニーの良さでもあるし弱さでもあると思うのだけれど。
どの曲だったか忘れちゃったけど、座ってスチール・ギターを弾く姿も良かったなあ。

チャーリーは歩く姿はお爺ちゃんそのものだったけど、スクリーンで観えたドラムさばきはスマートでカッコ良かった。

ミック・テイラーは曲によって参加してたり、ひっこんでたりで。気付いたら、いた!みたいな。
でも、今回のツアーに彼が同行しているというのは結構大きいよね。長い時を経て再びストーンズと行動を共にして、わざわざ日本にまで来てくれるなんて、嬉しい。彼も立派なストーンズのメンバー。
ステージ上にギタリストが3人。豪華だった。

いつも僕は拍手をしようと意識してから拍手をするのだけど、この日は、「気付いたら」拍手をしていた。無意識だった。
それほど好きじゃない曲も、決して退屈じゃなかったし。
楽しかった。盛り上がれた。
最終日にも行きたいくらい。
まだ参加席は売っている。
今からでも行ける人は是非行った方がいい。
参加席は安くて素晴らしい席だよ!

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