
【問題】
安レコ・ハンターの由仁雄くん。
いつも通っているdisk unionに、4000円で売られている山下達郎『FOR YOU』のレコードがあったのですが、ちょっと高いなとスルーしてました。
そしたらある日、セールで20%OFFの対象になったので、ついに購入しました。
ところが次の日、2500円のものが入荷していたのです!
由仁雄くんは得をした?損をした?
A 800円得をした
B 得も損もしていない
C 700円損をした
「いやいや、ちょっと待ってよ」
レコード好きの皆さんから、こんな声が挙がると思います。
「中古モノなんだから、まったく同じものじゃないんだし、比べることはできないでしょ」
「その盤やジャケットの状態にもよるよな」
「82年のオリジナル盤なのか、リイシュー盤なのか」
「オビは付いてるのか?」
まあ、まあ、まあ。
皆さんのご指摘はごもっともです。
でも、この話は、そこが本質ではないので、まったく同じレコードであると仮定して考えてみてください。
さあ、どれだと思いますか?
割と意見が分かれると思います。
Aを選んだ人は「4000円のものを3200円で買えたから得した!」と自信満々。
Bの人は「その時の価値が3200円なんだから損も得もしてない」と冷静。
Cの人は悔しそうに「次の日まで待ってれば2500円のものが買えたんだから損した」とつぶやく。
その人それぞれの考え方の違いなので、これが正解と1つに絞るのは難しそうです。
ここで、付け加えます。
実はもう1つ、選択肢があります。
D この中に正解はない
こういう選択肢です。
さて、そのこころは?
他の答えを思いつく方はいらっしゃいますか?
得をしたのか、損をしたのか。
音楽が好きで、レコードを集めることを趣味とし、日々、お買い得な買い物をしようとしている人は多いと思います。
レコード掘りは楽しいですよね。
でも、そんな人ほど、陥りやすい落とし穴なんです。
音楽を聴くことが好きになった原点を思い出してください。
観点を変えるのです。
その山下達郎『FOR YOU』を聴いて、ちっとも良いと思えなかったら、どんな値段でも、損した!って後悔するよね、ということです。
どうでしょうか。
この観点で考えることが出来てたでしょうか?
この答えなら「たしかに!」と納得する方が多いのではないでしょうか。
「なんだ、そんなこと当たり前じゃん!」と思う方もいるかもしれません。
でも、意外と盲点になっていたのではないでしょうか。
値段より、その音楽が自分に合ってるかどうか。
損得と言ってもお金ではなく、自分の満足感。
「価値とは何か」をもう一度考えるきっかけになったのではないでしょうか。
でも、どうして損得というと、値段にばかり気を取られるのでしょう。
こういうレコード集めが趣味の人になると、興味のあるレコードをいかに安く手に入れられるか、どうやってお宝物を掘り当てるか、というのが楽しいところなのは充分わかります。
欲しかったレコードを相場よりもずっと安い値段で手に入れることが出来れば、めちゃくちゃ嬉しいです。
それがレコード掘りの醍醐味でもあります。
しかし、そういう趣味の生活を続けていると、知識が増えてきて、いろんなレコードの相場とかがわかってきます。
すると、それほど自分が大好きというわけでもないアーティストなのに、あのレコードがこの値段だったら、お買い得なんじゃないか?買わないと損なんじゃないか?という気になり、買うつもりがなかったレコードにまでどんどん手を出すようになってきてしまいます。
まあ、それがきっかけで、大好きになる場合もあるでしょうが、それは稀なこと。
たいして興味がないレコードでもお買い得そうだからと買ってしまうのは、ただ単にコレクターになってしまってるのであって、音楽が好きという本質からは離れてしまってるように思います。
もちろん、中には、そういう「コレクター」の方もいらっしゃるとは思います。
それはそれで、立派な趣味と言えますから、その生き方は否定はしません。
でも、元々、音楽が好きということでレコードを買い始めた方が、そういう状態に陥っているとしたら、ちょっと立ち止まって考えてみる必要があると思います。
これはもちろん、僕の自戒の意味もこめて。
実は、この話は、田内学さんの本『お金の不安という幻想』に載っていたものを基にしています。
その本の問題では「メロンジュース」だったものを、音楽好きの皆さんにもより深く興味を持って読んでもらえるように、「レコード」に置き換えた内容にしました。
この田内学さんというのは、『きみのお金は誰のため』というベストセラーを生み出した著者です。
その田内さんが、新たに「お金の不安から抜け出すための本」として、新しい時代を生きるための具体的な生存戦略の話を書いたのがこの本です。
先ほどのレコード(メロンジュース)の話をきっかけにして、読者に「価値とは何か」を考えさせます。
多くの人が、将来に不安を感じている現代。
その中で、「お金さえ持っていれば解決する」と思っている人が大多数ではないでしょうか。
でも、田内さんは、いくらお金を持っていても、不安はなくならないと説きます。
がんばってお金を貯めても、たくさんお金を持っててもなんの意味もない場合があるというのです。
問題は別のところにある、と。
「愛、仲間、お金、この3つのうち、一番大切だと思うものはどれですか?」
この問いに対する答え、年齢によっても違ってくるそうですが、具体的な意味合いも教えてくれます。
現実を直視することの大切さ。
そして、そこから浮かび上がってくる、個人の力ではどうすることも出来ないもの。
円安。
人手不足。
個人が将来に感じてる不安は、すべて社会の問題に通ずる。
利己的でいいけれど、「社会を良くしたい」という小さな勇気こそが社会を動かす。
生活を豊かにするとはどういうことか。
お金に支配されないためには、どうすればいいのか。
そんなことを考えさせてくれるし、いろいろなヒント、ブレない考え方の軸を教えてくれます。
興味のある方は是非、読んでみてください。

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