『rockin’ on』60年代ロックアルバム (51位~100位) 300文字レビュー

雑誌『rockin’ on』での年代別ロックアルバム特集でランキングされた名盤を、実際に聴いてみて300文字レビュー。

★★★★★ 思い入れたっぷり超名盤!!
★★★★☆ かなりいい感じ!
★★★☆☆ 何度か聴いたらハマるかも
★★☆☆☆ 好きな人がいるのはわかる
★☆☆☆☆ お耳に合いませんでした

今まで馴染みが薄かったけど、今作で、これがベックのプレイか!と初めて知る衝撃。
野太い稲妻ソロ、時にサイケな音と使い分けながらのギター。静かに燃え上がる花火のようなプレイだ。
ロッド・スチュワートのヴォーカルは、こんなにハード・ロックぽかったっけと驚く。
ロン・ウッドのベースは重量感たっぷり。
そして「Girl From Mill Valley」ではソロ・インストを任されるほどの美しくブルース色の濃いピアノはニッキー・ホプキンスだった。
「Rice Pudding」ではギター、ベース、ドラム、ピアノすべてが聴きどころ満載の展開で、永遠に聴いていたい演奏だが、突然に終わる衝撃。
ベックの名を冠しているけれど、バンドで作り上げた名作だ。

★★★★ (2024.1.13)

スワンプ系だと思ってたら、聴こえてきたのは宗教的な祈りの声。何の煙かわからないものが立ちこめていて、サイケなギターの音に、ダミ声で念仏のように歌う世界。輪になって踊りだし、太鼓を叩きながら「ヤヤヤヤ」と儀式的な宴。
「Croker Courtbullion」はフルートの音に導かれ、一艘の船がジャングルの奥地へと進んでいく様。
これは秘境の音楽か。
かと思えば「Mana Roux」は聴きようによってはお洒落なフレンチ・ポップスで、小粋にスウィングするギャップ。
「I Walk On Guilded Splinters」は既視感あると思ったらポール・ウェラーがカヴァーしてた。
ミニマルなサウンドにやる気なさそうなコーラスが不気味な光を放つ異文化を覗き見た。

★★★ (2024.1.12)

ドノヴァンといえばフォーク・ロックか。
ビートルズにスリー・フィンガー奏法を教えたというから、アコギの名手というか、テクニックを駆使したサウンドかと思いきや、そうでもない。
「Legend Of A Girl Child Linda」はつぶやくような歌声でアコギと僅かな弦楽器で引きこむ。
シタールとパーカッションで音を紡ぐ「Ferris Wheel」など、サイケでインドな世界も広がる。
「Bert’s Blues」など、基本的にダークなメロディのものが多く、ノリの良い「The Trip」でさえ、その流れにあると体の疼きも複雑。
最後の「Celeste」でやっと穏やかな空気に変わる。
ボブ・ディランのような弾き語りとも違うし、何やら業を背負っているかの世界観に驚いた。

★★★ (2024.1.11)

ポール・ウェラーのフェイヴァリットとして有名。
「Care Of Cell 44」は、ベース・ライン、コーラスなど、ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』の影響がすぐにわかる。甘く切ないメロディも活きている。
「Hung Up On A Dream」はサイケなギター、浮遊感漂うコーラスも良いし、終盤のピアノのフレーズが胸を打つ。
「Time Of The Season」は不穏な雰囲気のあるベース、歌い方、吐息からの、サビでのサマー・オブ・ラヴなメロディが開放感。
アコギ、ピアノ、オルガンを基調としたサウンドは、フォーク・ロックからソフト・ロックへの過程。
各楽器の音が生々しく、暖かい陽だまりのようで生の喜びに満ちている。懐かしいキャラメルの味を思い出す。

★★★ (2024.1.10)

どうしても『Saturday Night Fever』関連のディスコなイメージが強いけれど、元々は正統派ブリティッシュ・ボップスをしっかりヒットさせていた。
「World」は目の前が優しく開けてくるようなドリーミーなサウンド。
「Lemons Never Forget」は絶望的なピアノとサイケなギター。
「Harry Braff」はキャッチーなサビのリフレインにトランペットが煽る華々しさ。
「The Change Is Made」は虚ろでメランコリックなメロディを情緒たっぷりに歌う。
後のソウルフルなディスコ・サウンドとは一線を画しているが、ややモコモコとしたサウンドは、今聴くといかにも60年代的な独特の(良い意味での)古めかしさがあり、このポップス路線こそが彼らのルーツ。

★★★ (2024.1.9)

バンドの中心だったシド・バレットが活動ができなくなり、デヴッド・ギルモアを加え、試行錯誤したアルバム。
序盤は抑えた歌声で、何かが始まりそうなおどろおどろしいアート・ロック。
「Corporal Clegg」はヘヴィなサウンドから、牧歌的なヴォーカルとハモンド・オルガンが印象的で、カエルの鳴き声のようなユニークさも。
「A Saucerful Of Secrets」は、明確なメロディはなく、様々な不安が飛び交う恐怖映画を観ているようだ。音の構築がプログレの萌芽。
明確な舵取りはおらず、サイケ、フォーク、アート・ロックからプログレへと移り行く姿が見え、細分化した60年代サウンドのパレードとなった。
混沌とした移行期の面白さがある。

★★★ (2023.12.14)

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとのコラボ『バナナ』発表後すぐにグループから離れてしまったニコの1stアルバム。
序盤はフォークを基調とし、そこにストリングスが優雅な装飾をしたサウンド。
「Winter Song」はフルートとストリングスが冬の凍える寒さを演出している。
ニコの歌声はどこか寂しさ・危うさがある反面、芯の強さも感じさせる。
特筆すべきは「It Was A Pleasure Then」で、ギターが主張することを抑えた演奏が逆に存在感を持つ曲で、ニコのスキャットも轟き、終盤は不協和音ギリギリを攻めてくるもの。それもそのはず、この曲を含め5曲にヴェルヴェッツのメンバーが関わっていて、ダウナーな『バナナ』の続編を想起させる。

★★ (2023.12.13)

迷いこんだ。思いきり迷いこんだ。あそこで行われているのはなんだ?
エレクトロの始祖と言われてるらしいが、決してポップではない。
「Oscillations」は単調なリズムの繰り返しで、時折熱くなるヴォーカル。呪術的な雰囲気の中、シンセの不思議な音が宙に舞う。
「Velvet Cave」は管楽器のおならみたいなユニークな音が中核。終盤は太鼓を叩きまくりでムリヤリ盛り上がる。
「Dust」に至っては、いよいよもって呪いの儀式が始まり、それに呼ばれて「Dancing Gods」は、神(悪魔か?)のお出ましだ。
シンセと太鼓の実験的なサウンド・メイク。
近未来のお祭りというか、少数民族の異文化の伝統儀式をのぞき見たような、なんだコレ感に襲われる。

★★ (2023.12.12)

大ヒットした『噂』近辺のベスト盤を聴いたことあったけど、それとまったく違うサウンドじゃないか!
まず「My Heart Beat Like A Hammer」の完全なるブルースに驚いた。
「Shake Your Moneymaker」はかなり縦ノリで突き進むブルース・ロックンロール・ブギ。
他、アルバム全編、ギュイーン、キュイーンと太い金切り音を鳴らすギターで昇天させてくれるのが最高だし、ピアノ1つでブルースやるのも驚いた。
この頃の中心メンバー、ピーター・グリーンはブルースブレイカーズのギタリストだったそうで、それなら納得のサウンド。
同じバンド名義でも、これだけメンバーが違えばもはや別物だと痛感。
良い意味で大きく裏切られて興奮した。大好きだ。

★★★★ (2023.12.11)

クラプトン、ベック、ペイジと、配するギタリストによって指向が異なるヤードバーズ。
これはベック時代の唯一のアルバム。
「Hot House Of Omagararshid」はヤーヤーヤーと繰り返されるコーラスに絡むギターが絶品。
「What Do You Want」はキャッチーなサビのメロディとノリの良さは群を抜いていて、ギター・ソロはサイケ風。
でも現在の一番の聴きものは「Happenings Ten Years Time Ago」。ベック&ペイジのツイン・ギターが楽しめる貴重な時代のシングルが追加収録された。
ベックはクラプトンよりプレイの幅が広く、バンドの音楽性を広げた。
玄人好みのブルースから、サイケ色混じるモッズ・ビートへ。60年代のイケてるバンドへ変貌した。

★★★ (2023.12.9)

ガツーンと熱いブラス・ロックが聴こえてくるのかと思ったら、フルートの音色でフォーキーなエリック・サティが流れてきて意表を突かれる。
しかし、その後は期待通りのサウンド。「Smiling Phases」「More And More」などベースが躍動し、ドラムが波打ち、ホーンの煽りが華々しい。いかついシャウトに胸焦がすと、間奏のピアノとオルガンのプレイの上品さに感心させられ、ブラス・ロックの洗礼を受ける。
ラテン系のノリもあり、時にジャズ的、それをファンキーにまとめる技。
血・汗・涙。体中の液が脈打ち、沸騰する。煽って興奮させるだけではない、クールに聴き入れるテクニックも見せられれば、流れ出るものは自分の意思では止められない。

★★★ (2023.11.28)

ロックスターは、スターとしての自分をどこまで演出できるか。
Tレックスと改名する前、エレキ・ギターを派手にかき鳴らすマーク・ボランの姿はない。
「Deboraarobed」でアコギをジャカジャカ刻み、パーカッションがパカポコと鳴り、一定のリズムが繰り返されると、サイケ・トリップの世界に誘われそうになる。
そもそもこのアルバム、ほとんどアコギとパーカッションの音しか聴こえない。これってバンドなのか?デモ音源のようにすら思える。
しかし、「Conesuala」など、少ない楽器で生み出されるグルーヴにスリルを味わっている自分に気付く。
スターを演出するには、自己陶酔する能力が必要だ。このトリップ感覚は、見事に陶酔している証だ。

★★ (2023.11.27)

イエスの音楽をひとことで表すならば「聖」だ。
天から降りてきたようなジョンの澄んだ歌声が唯一無二。
「I See You」はジャズ的。ビルのドラムはリズム表現の多彩さを見せてくれる。ピーターのギターは滑らかな流暢さもあり、時に激しく歪んでザラつく。
「Harold Land」は各メンバーの高度で熱い演奏が一体となり、次々と押し寄せる波のような効果を生んでいる。
トニーのキーボードの音色は心を洗い、圧倒的な音圧が胸をくすぐる。その奥ではクリスのベースがゴリゴリと躍動して頭を弾く。
その後のメンバーチェンジも激しいイエスだが、この1stから既にイエス・サウンドは確立。
聖なるものの中に潜む牙を垣間見た時、その奥深さに戦慄する。

★★★ (2023.11.26)

ムシャクシャした時に、モノに当たる気持ちがわからない。一時の感情でモノを壊すなんて、後になって虚しい気持ちにならないのだろうか。
それでは、負の感情をどうしたらいいのか。
たとえばこのバンド。僕はまったく知らなかったのだが、こんなところにハード・ロックの元祖がいたとは。
「Summertime Blues」は、ザ・フーの曲をジミヘンがやったような趣。ポップさはなく歪んだギターが魅力だ。
ギターが唸ったり吠えたり、永遠に続くかのようなソロが熱い曲もあるが、このバンドの肝は各楽器の暴力的な魅力を引き出しているところだ。特にドラムの破壊力は凄まじい。
30分一気に。何かをぶち壊したい気持ち、その衝動を代わりに叶えてくれる。

★★★ (2023.11.25)

ハード・ロックの始祖みたいなイメージだけど、この1stでは、まだハード・ロックになりきれてない面白さがある。
ロッドのヴォーカルは60年代的な揺れがあるし、リッチーのギターもそこまでタフではない。幻想的な音像はクリームとかヴァニラ・ファッジみたいなアート・ロックの系統。そう思った矢先、「I’m So Glad」のカヴァーまで飛び出した。
白眉は「Mandrake Root」で、60年代から70年代へと繋ぐサウンド。後半のギター、ベース、キーボード、ドラムのインプロビゼーションは、クリームよりもある意味強力。
「Help」の平和的なムードのカヴァーには笑ったけど。
パープルたらしめているのは、ジョンのキーボードの音色なんじゃないかな。

★★★ (2023.11.22)

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