Billboard Live Smoke & Blue 2024
2024年10月29日(火)@Billboard Live TOKYO
2nd Stage
格式高いビルボード・ライヴ!
2024年夏、Zeppツアーを終わらせた佐野さん。
その時は、早くも来年の45周年ツアーの話題で持ちきりでしたが。
いやいや、来年の話はまだ早い。
今年だってまだ何かあるんじゃないか?と思ってました。
そしたら、予想通り、ビルボード・ツアーの発表。
横浜・東京・大阪の3都市だけですが、ビルボード・ライヴの開催です。
前回のビルボード・ライヴは、行かなかったんですよね。
というのも、僕は今のコヨーテ・バンドが大好きで、ポップだったりソリッドなモダン・ロックだったりという佐野さんの音楽を好んで聴いてました。
対して、ホーボーキング・バンドは、同じロックと言っても、どことなくのんびりしているというか、ガツンと来る感じが足りないと思ってたから、それほど興味がなかったんですよね。
しかも、会場がビルボードでしょう?
ここは普通のライヴ会場と違ったシステムというか、ディナー・ショーみたいな感じ?
行ったことはないけど、雰囲気が違いそうなのは伝わってきてたし、席によって食事するとかしないとか。
僕は持病の影響で外食がムリだから。
それで1日2公演なので、普通のライヴよりも演奏時間が短いし。
なにやら敷居が高いイメージばかりが強すぎて、敬遠してたのです。
でも、それから少し時が経ち、佐野さんの音楽性の幅広さを実感していくうえで、ホーボーキング・バンドのサウンドも肌で感じてみたい、と思うようになりました。
少し大人になれたかな、みたいな。
カントリーに根差したアメリカン・ロックだけでなく、ジャズっぽいサウンドもホーボーキング・バンドの得意としているところだというのもわかり、それなら、と。
今回の公演日程は、東京公演に、僕の仕事休みが確定している火曜日が入っていたので、10月29日一択。
1日2公演あるので、どちらかに当選すればいいな、と抽選申し込み。
あわよくば2公演とも観るのもアリだなとは思ってましたが、当選したのは2nd Stageのみ。
1公演だけなら、帰りの電車の心配がいらない1st Stageの方が良かったかなあとの思いもありましたが、とりあえず観られれば御の字です。
9月にこのビルボード・ツアーが始まって。
なかなかセットリストの情報が来なくてヤキモキしました。
みなさん、ネタバレしないように気を遣いすぎです。
SNSでは、タイムラインで不意に目に入ってしまうことがあるので、ネタバレしたくない人のためには仕方ないかとは思うのですが、ブログとか、セットリスト・サイトとかには、もっと情報載せてほしいです。
ネットの世界はネタバレしてナンボ。
検索した時に、欲しい情報がすぐに入るようになっていてほしいものです。
というわけで、僕はネタバレ歓迎派で、事前にセットリストがわからないのはイヤなんです。
日によって演奏する曲も違ったりするでしょうから、その辺にも対応できるように。
完璧ではないにしても、こんな感じの曲をやるとわかったうえで、ライヴに臨みたいのです。
それまでに、演奏予定曲を予習して、ライヴではこの曲がどう演奏されるのかと想像して気分を盛り上げたい。
幸い、ビルボード・ライヴのいくつかの公演と、高崎音楽祭のセットリストがわかったので、だいたい、これらの曲をやるのかな、というのを予想つけることが出来ました。
あとはプレイリストを作って、ひたすら予習です。
もちろん、原曲とは違った、今のホーボーキング・バンドのアレンジになることも鑑みながら。
ライヴ当日。会場へ
ライヴ当日は、あいにくの雨でした。
まあ、それほど強い降り方ではないし、会場も駅から近いので、それほど苦ではありませんでした。
六本木には、今年2月に来たばかりで、そこからほど近いのはわかってたのですが。
なにしろ初めて行く会場。
東京ミッドタウン。
地図的にはこの辺だけど、ここで合ってるのか。
ミッドタウンの中にビルボード東京があるっぽいけど、
どこがどうなってるのか、どこから入ればいいのか。
もう、なんだか、とにかくお洒落すぎて、機能的じゃない。
階段の場所も、階によって違うから、一気に4階まで上がれない。
次はどこに階段があるんだ?
そもそも、ここで本当に合ってるのか?
人もまばらだし、不安になる。
軽く迷子の状態。
なんとかかんとか、たどり着きました。
開場時間の19時ちょうどくらいでした。
入場時には、ファンクラブの会員証の提示を求められました。
え、そんなこと、チケット買う時に書いてあった??
でも、会員証がなければ入れないってわけではないし、持って来てたら何か特典があるというわけではなく、確認のためということで、次はお持ちくださいと言われました。
うーん、なんだかなあ。
僕の席は、カジュアルエリア5階・5C-7番。
いちばん安い席なので、いちばん上からステージを見下ろす感じでしたが、ステージのほぼ正面でしたし、カジュアルエリアの中でも良い部類の席だったと思います。
超・高所恐怖症なので、いちばん前から見下ろすのは怖いかもと不安だったのですが、テーブルがあったので事なきを得ました。
後ろにも人はいないし、ゆったりとライヴを観ることができそうです。
ライヴが始まるまで1時間弱。
ちょっと手持ち無沙汰でしたが、ライヴハウスみたいに立ちっぱなしで自分の場所をキープしなければならないわけではないので楽です。
ゆっくりトイレに入ったり。
この安い席でも、1ドリンク分はチケット代に含まれてましたが、ドリンクはすべてグラスに注ぐ形になるっぽいので、とても飲みきれない僕は断念。
他のライヴハウスのように、ペットボトルでお持ち帰り、みたいなことができなくて残念でした。
ドリンク・チケットは捨てる形に。
ちょっともったいないけど、まあ、いいや。
ライヴのスタート
開演時間の20時を過ぎても、なかなか始まりませんでした。
20時12分、ようやく開演の合図。
客席の合間を縫ってメンバーと佐野さんが歩いてきて、ステージに上がったのは驚きました。
そういう登場?
近くの人はいいね。
「今日はたくさんの人が集まってきてくれてどうもありがとう」
「リラックスして楽しんでください」
01. イッツ・オーライト
02. ドゥー・ホワット・ユー・ライク(勝手にしなよ)
03. こんな素敵な日には
04. バルセロナの夜
05. 二人のバースデイ
06. 最後の1ピース
07. 地図のない旅
08. 希望
09. カム・シャイニング
10. 夜に揺れて
11. 7日じゃたりない
12. 観覧車の夜
13. トーキョー・シック
14. ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
15. 最新マシンを手にした子供達
「イッツ・オーライト」。
原曲ではアップ・ビートなロックンロールでしたが、ここでは見事にジャズのグルーヴ。
井上富雄さんはコントラバスほど大きくはないけど、アップライト・ベースを弾いてて、いかにもジャズのスタイル。
ドラム・セットがステージ右端に横向きで設置されていたので、古田たかしさんのスティックさばきがよく見えて興味深かったです。
佐野さんが「♪ 迷子」と歌っていて、まさしく僕もさっき迷子になりかけたことを思い出しました。
長田進さんのギター・ソロの後は「♪ イッツ・オーライ!」と連呼して盛り上がりました。
「ドゥー・ホワット・ユー・ライク(勝手にしなよ)」。
井上さんのベースのイントロから始まり、この曲は終始ベース・ラインが演奏をリードしていました。
これまた小粋でお洒落なジャズで、呟くような歌い方から、だんだん笑顔になって歌う佐野さん。
途中、スロー・ダウンするところがあって、佐野さんのヴォーカルと、Dr.kyOnさんの綺麗なグランド・ピアノの音の絡みにウットリしました。
MC。
「ホーボーキング・バンドで演奏するSmoke & Blue、今年で8回目になりました」
「次の曲は、そんなスペシャルな日に演奏したい曲です」
「こんな素敵な日には」。
kyOnさんが、ステージ前方、佐野さんの横にあるキーボードを弾きました。
演奏は熱を帯び、真ん中の佐野さんに向かって、ギュッと中心に音が集まっていく感じを受けました。
音の密度が濃い!
「バルセロナの夜」。
佐野さんがエレキ・ギターを置いて、キーボードに向かって歌い出しました。
高音がムリなく、自然体の形で出ている佐野さんの歌声。
バルセロナの夜なんてタイトルですが、あまりにも爽やかすぎて、気持ちのいい朝のようなイメージでした。
ビリー・ジョエルにこんな感じのサウンドの曲があったなあと思い出しました。
MC。
「人はそれぞれ持っているものが違う。でも、共通して持っているものもある」
「誕生日!」
「今日が誕生日って人いる?」
「もうすぐ誕生日って人いる?」
「これから生まれる、って人いる?」
最後のはジョークですね(笑)。
という話の流れで「二人のバースデイ」。
ここで井上さんが普通のベースに持ち替えました。
アップライトでのジャズっぽいのは終わり、ってことかな?
演奏の雰囲気が、さっきまでとは違います。
お洒落なジャズから、ちょっとワイルドでポップに。
ドラムの音がひときわ大きくなり、リズム隊が迫力ある音を出しています。
原曲のイメージと違って、意外とグイグイ来ます。
佐野さんがキーボード・ソロを弾きます。
5階からなので、手元もよく見えました。
佐野さんの軽快な指使いがハッキリと。
「最後の1ピース」。
佐野さんは今度はアコギを抱えて。
リズムが跳ねてて、ちょっとファンキーです。
長田さんの弾くギターのフレーズがカッコいい。
「♪ Stronger」の歌声が、文字通り力強い。
MC。
「THE SUNというアルバムが出て、ちょうど20年。ザ・ホーボーキング・バンドでのレコーディングでした。そんなTHE SUNからもう1曲」
「地図のない旅」。
ひとりぽっちの寂しさを振り払うように。
長田さんのスライド・ギターが良い雰囲気を作ってました。
「希望」。
ちょっと寂れた街で生きる男。
ありふれた日常の中に、自由や希望を見い出していく。
そこには焦りなんかなくて、のんびりとしたムードが漂います。
枯れた味わいのサウンドに、佐野さんのフワフワした声。
「カム・シャイニング」。
佐野さんは再びキーボード。
先鋭的なヒップホップだったこの曲を、少し抑えた感じで演奏。
その中での佐野さんのラップが心地良い。
佐野さんがキーボードを連打しているのが見えて、佐野さんの、そしてお客さんたちの興奮が伝わってきます。
長田さんのソリッドなギター・ソロもそれを後押し。
この雰囲気をたっぷり楽しんで、演奏終了後はこの日いちばんの大歓声。
お客さんたちも大満足のようです。
「夜に揺れて」。
1stアルバム『BACK TO THE STREET』収録の「夜のスウィンガー」の改変ヴァージョン。
ブルージーな演奏をしながら、佐野さんの語りが入ります。
「デビュー当時、六本木の街の風景を描きました。まぁ、聴いてください」
スロー・ステップでダンシング!なリズム。
お客さんは大きく手拍子を取って、会場内にグルーヴの渦を作ります。
kyOnさんのピアノ・ソロの後は、珍しく佐野さんのギター・ソロ。
そしてまた、佐野さんが語りだします。
「あの頃の六本木。3つのグループに分かれてました」
「ブルジョワ。つまり金持ち」
「不良外国人」
「そして、僕みたいな文化的テロリスト」
ドラムが激しいリズムを叩いてフィニッシュ。
MC。
「VISITORSもそうだったけど、90年代もアメリカへ行ってレコーディングしました。そんなアルバムTHE BARNから」
「10代の頃、ガールフレンドの家に行くと、大概、出てくるのはイヤな顔をしたお姉さんかお母さん」
「でも、それでもガールフレンドに会いたいから行ってた」
「1週間に3回は会いたい」
「いや、4回は会いたい」
「毎日でも足りないくらいで」
「7日じゃたりない」。
佐野さんはキーボード。
kyOnさんはアコーディオンで優雅な音を奏でて、長田さんのギター・ソロはエモい。
演奏が熱を帯びていくのと同時に、
佐野さんの「♪ もっと もっと もっと」の叫び。
「観覧車の夜」。
原曲はゴージャスなサウンドでしたが、ここにはホーン隊もいないし、豪華なラテンぽさは薄め。
それでも、どことなく怪しげなムードが漂い、ベース・ソロもあったりして、クールな印象が残った演奏でした。
MC。
「今日は友達も観に来てくれています」
「友達って誰だよ?」
「コヨーテ・バンドのメンバーです」
「トーキョー・シック」。
雪村いづみさんとのコラボ曲。
ビッグ・バンド・ジャズのスタンダードのような名曲ですが、たしかに、こういう曲は普段のコヨーテ・バンドでのライヴではやれませんね。
ホーボーキング・バンドでのビルボード・ライヴだからこそ似合う曲です。
佐野さんは「この曲をやるのは地方では気が引ける。今日は東京だから思いっきりやれる」と言ってました。
スウィングする演奏。
この曲の雰囲気に合わせ、井上さんが再びアップライト・ベースを。
天井はミラーボールのような照明で、ムード満点の夢のような空間。
テンポも速く、躍動感があり、観客も手拍子で盛り上がります。
最後は佐野さんが「♪ ダダダダダダ」とスキャットで応戦。
「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」。
佐野さんはギターから再びキーボードへ。
元々の曲はとてもゴージャスなサウンドでしたが、ホーボーキング・バンドのアレンジはシンプルになって、より走るビートが強調されています。
佐野さんの力を入れない、さりげないラップがクールです。
涼しい顔して全力疾走、そんなイメージの演奏。
最後は「♪ Good Night」のリフレインと「♪ ララララララ」を耳に残して終了。
ここでメンバー紹介。
メンバーのみなさん笑顔です。
「最新マシンを手にした子供達」。
元は『Sweet 16』の「ポップ・チルドレン」でしたが、ホーボーキング・バンドでやるとこうなります。
佐野さんはギターを持たず堂々と立ってスタンド・マイクに向かって歌います。
そして、時折吹くハーモニカが物凄いインパクトあり。
よく見たら、ドラムの古田さん以外のメンバー全員が立ってます。
佐野さんの後ろでずっと俯いて黙々とギターを弾いてた長田さんまで。
キーボードとギターの両刀使いだったkyOnさんが、間奏でフライングVを持ってステージ前方に出てきてギター・ソロ。
そして、kyOnさんだけに美味しいところを持って行かせまいと、長田さんもギター・ソロ。
最後は、2人のギターと佐野さんのハーモニカが絡み合い、熱い熱い!
そんな感じで、あっという間にライヴは終了しました。
ステージを降りて、また客席の合間を縫って退場していくメンバーたち。
去りゆく佐野さんとハイタッチしていたお客さんたちが羨ましいなあ。
21時29分でした。
この場所だから鳴らされた音
今まで佐野さんのライヴは10回以上観てきましたが。
会場が違うと、バンドが違うと、こうも雰囲気違うものなのか。
これがビルボードか!
これがホーボーキング・バンドか!
その思いと共に圧倒されましたね。
ジャジーなスウィングのビートが走る。
格式高いブランド・イメージの確立した、ビルボードならではのお洒落空間で静かなグルーヴに酔いました。
今まで、佐野元春の音楽なんだから、バックがコヨーテ・バンドだろうと、ホーボーキング・バンドだろうと、そんなに変わらないだろうと思ってましたが。
全然違いましたね。
たしかに、コヨーテ・バンドはこういうムードは出しません。
ホーボーキング・バンドだから、ビルボードだから、鳴らされた音。
音楽が時と人と場所を選ぶことってあるんだなあと実感しました。
初めてのビルボードだったので、どんな感じで観ることになるのか不安はありましたが。
思っていたよりも良い席で、テーブルもあってゆったりとした感じなのがとてもリラックスできましたし。
不安は杞憂に終わり、とても良い気分でライヴを楽しめました。
ただ、正直、やっぱりビルボードのここまでの雰囲気は、僕にとっては敷居が高いですね。
慣れれば、なんてことないのかなあ。
僕はやっぱりどちらかと言うと、コヨーテ・バンドのガツンとしたポップでモダンなロックの方が好きなのだけれど、たまにはこういうホーボーキング・バンドのライヴもいいものですね。
全然違った魅力があるし、それを作り出している佐野さんの音楽性の幅広さを再確認しました。
また次の機会があったら、がんばって観に行こうかな。
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