弾き語りばったり #31+ 小さい土器みつけた
2022年1月10日(月)@日本橋三井ホール
一刻でも早くライヴが観たくなった
一昨年に出たNEWアルバム『23歳』を聴いてKANにハマり、それから全アルバムを集めて聴きました。
となると、ライヴに行きたくなるわけですが、コロナに影響を受けたうえ、ようやく開催される事となったのは弾き語りライヴだったわけです。
僕、弾き語りって苦手でね。
弾き語りでも曲の良さは伝わるけれど、それではどうも満足できなくて。
音的にも単調だし、飽きちゃうんですよね。
どうしても、ドラムやベースが入った、原曲通りのバンド・アレンジを求めてしまうのです。
なので、大好きなアーティストでも、弾き語りライヴの場合は避けるようにしてました。
でも、ハマったKAN、早く生で聴いてみたくて。
で、よくよく考えてみると、僕が苦手だなと思う弾き語りって、ギターの弾き語りなんですよね。
だけど、KANはピアノの弾き語り。
DVD観てても、ピアノの弾き語りの曲は素直に良いなあと思える場面は多かったので、もしかしたら、ピアノだったら、弾き語りライヴでもイケるんじゃないか?と。
あとはセットリストの問題。
大好きな曲をやってくれるのか。
ピアノの弾き語りに耐えうる曲なのか。
それも問題なので、ネットで調べたんですが、KANのライヴのセットリストって、なかなか見つからないんですよ。ものすごく情報が少ない。
やっとこさっとこ、とある個人ブログにたどり着き、大阪公演のセットリストや、ライヴの雰囲気などの情報を少しだけ得る事ができました。
1番好きな「まゆみ」をやらない事は残念でしたが、今回1番期待してた「エキストラ」はやるみたいなので、それなら、「エキストラ」を聴くためだけにでも、行ってみるか!となりました。
チケットの発売は、チケットぴあとイープラスでの取り扱いは無く、ローチケだけ。
しかも、先行抽選はなく、一般発売のみという事で、会場も小さいし、無事に獲れるものなのか不安でしたが、すんなり獲れました。
慌てなくても、ライヴ直前まで余裕でチケット獲れるみたいでした。
ライヴ当日。迷子寸前。開演前のKAN
さて、ライヴ当日。
日本橋三井ホールは初めて行く場所でした。
迷子になりかけました。
独立した建物ではなくて、並び立つビル群の中の1つのビルの、その4Fだか5Fだかにあるので、ホントわかりづらかったです。
一瞬、スマホのマップに頼ろうかとも思ったのですが、事前に調べたうえでは確かこの辺のはず...と歩き回り、なんとか自力で見つけました。
目印も少ないし、ちょっと焦りましたね。
初めての会場なので、早めに行ったので、開場時間の16時少し過ぎに到着しました。
僕の席はG列30番。
G列ということは、7列目ということなので、今まで行ったライヴと比べると、かなり前の方の席と考えてもいいです。
KANの表情が、肉眼でもはっきりとわかる距離です。
弾き語りライヴの時は、KANは開演30分くらい前からステージでピアノの練習をするという情報を掴んでいましたので、興味津々で早く会場に入りました。
すると、暗闇のステージ上からピアノの音が。
KAN、もう練習してる?と思ったのですが、よく見たらスタッフの方でした。
まだ開演まで45分くらいあったので、流石にまだだよねーと思い、トイレに行きました。
トイレから帰ってきた時も、ピアノの音がポロポロ聞こえてたのですが、ほとんど意識して見ませんでした。
しばらくすると、ピアノを弾いていた人がステージ前方に出て来て、
「えー、前説です」
KANじゃん!!
さっきからピアノを弾いてたのはKANだったのです。
そして、前説として、座席についての注意点とか(希望者は、後方の自由席に移動できる、とか)、いくつかの説明をして、またピアノの練習に戻っていきました。
ピアノの練習といっても、何か特定の曲を演奏しているわけではなく、指の動きを確かめたりする練習でしたね。
だから、その練習風景を見てても、面白くはないのですが、これから本番を行うアーティストが、開演前にステージ上で、お客さんの前で練習するというのはかなり珍しいんじゃないかなと。
僕は初めてだったので、興味深くKANを観てたのですが、そんな光景はファンにとってはお馴染み過ぎるのか、客席のファンは、練習中のKANにはほとんど無関心でいるようなのが面白いなと思いました。
ライヴの始まり
開演の数分前まで練習していたKAN。
いったん袖に引っ込みましたが、あっという間に開演時間の17時、再登場して本番です。
01. 恋する気持ち
02. カレーライス
03. 50年後も
04. いっちょまえに高級車
05. SAIGON
06. Penny Lane
07. サンクト・ペテルブルグ
08. 雨にキッスの花束を
09. プロポーズ
10. Le Ragazze
11. Autumn Song
12. よければ一緒に
13. 愛は勝つ
14. バイバイバイ
(Encore)
15. エキストラ
「恋する気持ち」。
いきなり重低音を効かせたビートのイントロ・アレンジが迫力あって驚きました。
大ヒットしてた「愛は勝つ」にそれほど心惹かれなかった僕でしたが、当時コレを聴いて、「KAN、なかなかいいじゃん」と思えた、KANとの出会いの曲の1つなので、思い入れがあります。
力強くリズム感があって、いい感じのオープニングです。
「カレーライス」。
どこか侘しく、ほのぼのとした曲。
手首が痛くなったり、背中に出来物ができたりして病院へ行く機会がたびたびあり、原因を訊いてみたら「加齢によるもの」と言われたそうで、それで今回「カレーライス」を演奏しようと決めたという。
「50年後も」。
前曲「カレーライス」が「加齢」ならば、当然「死」というものが視野に入ってくるわけで、自分が死んだ後の事を想う曲という事で、この曲になったそうです。
テーマ的にはちょっと重いのですが、穏やかに、サラッと演奏して歌う事で、身近に感じてすんなりと受け入れられる曲です。
「いっちょまえに高級車」。
原曲は割と派手な曲なので、ピアノの弾き語りではどんな感じなのかなと思いましたが、なかなかに元気に弾けてました。
バブルの頃に作った曲で、その後、高級車と呼べるようなものが買える身分になったとのことでしたが、その時に買った車を、約30年たった今でも乗り続けられてるというのだから驚きです。
その車があちこち壊れて、それを修理に出したりする話も面白かったです。
「SAIGON」。
これは、マイケル・ジャクソンみたいな曲だなあと思ってましたが、KANの口から、その通り、マイケルの「Heal The World」をイメージして作ったと聞かされました。
原曲では、KANはマイケルっぽく無垢な感じで歌ってましたが、今回は普通の声で歌ってましたね。
祈りを捧げるような、穏やかながらもスケールの大きな曲です。
「Penny Lane」。
いつも弾き語りライヴでは、ビリー・ジョエルの曲を採り上げて、そしてそれに影響を受けた自分の曲を演奏しているらしいのですが、今回は、ビリーではなく、ポール・マッカートニーの曲をやります、と。
それで、ポールのライヴの話とか、初めてイギリスを訪れた時の話とか、いろんなエピソードが聞けて楽しかったです。
間奏のトランペットの所は、KANが歌声で再現。
「サンクト・ペテルブルグ」。
そして、「Penny Lane」に影響されて作ったという事で、この曲を。
とてもビートリーな曲だなあと好きだった曲でしたが、はっきりと「Penny Lane」に影響されたと公言するのも潔い。
どうしてサンクト・ペテルブルグなのかという事については、話し出すと時間がかかっちゃうという事で割愛。これは知りたいところだったな。
ま、とにかく、ポップで楽しい気分になる曲です。
「雨にキッスの花束を」。
これは、今井美樹に提供した曲のセルフ・カヴァー。
当時、まだ無名だったKAN、今井美樹が自分のライヴを観に来るらしいという話を聞いて、だったらという事で、サプライズで曲を2曲作り、楽屋に挨拶に来た今井美樹に「よかったら使ってください」とプレゼントしたんだそうです。そしたら、2曲とも採用されて、アルバムに収録される事に。
そんな経緯をもった曲なんだそうです。
僕はまったく知らない曲で、さほど期待もしてなかったのですが、聴いてみたら、一発で気に入った。とても良い曲!
後になって調べてみたら、TVアニメ『YAWARA!』の主題歌にもなってた曲なので、知ってる人は多く、事実、今井美樹のSpotifyでの再生回数でもかなり上位となっている人気の曲だったのでした。
原曲の間奏で、今井美樹のセリフが入るのですが、その部分をKANはプーチンの物まねでセリフを喋るという謎の志向。
ともかく、今井美樹のこの曲は後でチェックせねば、ですね。
「プロポーズ」。
前曲がプロポーズの曲(作詞はKANではない)だったので、次は自分で作ったプロポーズの曲を、ということで。
これは、原曲のアレンジはスティーヴィー・ワンダーっぽいなあと思ってる曲なんだけど、弾き語りになっちゃうと、そういうのは吹っ飛んじゃいますね。
公園とか噴水とかベンチとか。すごく日常的な風景が目に浮かびます。
そういう、何気ない日常の中での、覚悟、揺るがない信念みたいなものが見えてくる曲です。
ここで、席を立つ人多数。何かな?と思ったら、次は質問コーナーで、開演前にネットで受け付けた質問の中からいくつかを選ぶので、その間休憩しててくださいとのことでした。
そして、始まった質問コーナーでは、採り上げた質問をしてくれた人を客席から探し出し、マイクを通しての受け答え。
3つの質問に対して、トークが繰り広げられました。
今回のツアータイトルは『小さい土器みつけた』ですが、質問者の1人が、名字が元「ドキ」さんで、最近結婚して「ドキ」ではなくなった、というのが1番印象に残りましたね。
「Le Ragazze」。
耳慣れないタイトルのこの曲。聞けば、Neri Per Casoというイタリア?のヴォーカル・グループの曲だそうで。
もちろん僕が知るはずもなく、これもまったく期待しないで聴いてみたら。
Aメロは、イタリアらしい、大雑把な感じで始まったなあと思ったら、Bメロで「あれ?」とキュンとさせられ、サビではぐいぐい心を掴まされました。
これも良い曲でした。また聴きたいなあ。
「Autumn Song」。
タイトル的には秋の歌で、今はもう冬ですが、関係なくこの曲はやりたいと思います、と。
胸を打つピアノのフレーズです。
なんか寂しくなっちゃう曲ですよね。
エンディングが好きです。
「よければ一緒に」。
これは、「♪ ラララララララ」のところは、普通だったら、お客さんみんなで歌うところらしいのですが、コロナの影響で声は出せないので、振り付けで応えてほしいと、KANから振り付け指導。
この振り付けが、意味不明でグダグダなのがバカらしくてKANらしい。
そして、ニヤニヤしながらそれに素直に従って振り付けを踊るお客さんたちが愛らしい。
ほんわかしていて、憶えやすくキャッチーなメロディ、これも名曲ですよね。
「愛は勝つ」。
良くも悪くも、大袈裟なところがこの曲の特徴ですが。
ピアノ1台の演奏という事で、過剰なところはなく、素直にこの曲の持つメロディの良さ、力強さみたいなものが伝わってきました。
この曲が大ヒットしてた当時は、少し冷めた目で見ていた僕でしたが、KANのファンになって、ピアノ1台で披露されるこの曲も「悪くないな」と。
「バイバイバイ」。
本編最後ということで、それに相応しいこの曲。
大好きな人との別れ、それでも「また逢う日まで」と歌う。
切なくも優しい曲。
本編終了後、下手に下がり、あっという間に上手から戻って来てのアンコール。
「エキストラ」。
大好きなアルバム『23歳』の中の、大好きな曲。
原曲自体がピアノの弾き語りみたいなものだったので、今回のライヴにピッタリ。
叶うことのない片想いで、ホントに切なくて。
心からの「大好きです」が泣ける曲。
こんなにシンプルで感動させられる曲って、そうそう無い。
ピアノと歌だけなのに、こんなに胸に迫りくるなんて。いや、余計な装飾のない、ピアノと歌だけだからこそ、この曲は胸を打つのかもしれない。
ピアノの弾き語りライヴの神髄を見た気がしました。
ライヴ終了。19時45分。
弾き語りでも、こんなに多彩な表現が出来るのかと感動
ステージ上はKANとピアノ1台の簡素なものでしたが、バックのスクリーンには、曲名はもちろん、歌詞がしっかり映し出されるので、その歌詞を読んで、世界観に浸れるのはいいなと思いました。
バンド・メンバーの動きや舞台セットや照明演出が無いので、KAN1人だけずっと見つめてるのは飽きそうだと思いましたが、この歌詞表示には助けられましたね。
今回のセットリストに合わせて作ったiPodのプレイリストは1時間ちょっとだったので、これは、MCを入れても2時間くらいで終わるライヴなのではないだろうかという見立てをしてたのですが、終わってみたら、実に2時間45分もの時がたっていました。
観客を飽きさせること無く、たった1人でやり通したライヴ&トークショーでしたね。
話もとても面白かったし、演奏も良かった。
原曲にあったギターやベースやホーンやストリングスなどの音を思い起こさせるような感覚を、ピアノ1台で表現してくれていました。
ピアノの弾き語りって、こんな多彩な表現ができるのか、と驚きました。素晴らしかったです。
満足できました。
でも、まあもちろん、弾き語りライヴじゃなくて、バンド・ライヴの方が観たいという気持ちに変わりはありません。
KANも、バンド・ライヴがやりたいと言ってましたので、今年の後半にそれが叶えばいいなあ、と思ってる次第です。
コメント