ビリー・ジョエル おすすめアルバム・ランキング

大好きなアーティストのアルバムをランク付けするシリーズ企画。
今回は、ビリー・ジョエル。

好きなアーティストのアルバムをランク付けするのって、非常に難しい。楽しいけど。
その日の気分によっても違ってくると思うし、はっきり優劣があるものもあるけれど、そもそも好きなアーティストの作品なんだから、どれも好きで、順位なんて紙一重のものが多いでしょう。
それでもやっぱり、ランク付けしてみたくなります。楽しいから。

好きなアルバムの定義ってなんだろう?と思います。
大好きな曲が入ってる、全体の流れや空気感が好き、ジャケットが好き、リアルの生活における思い出とリンクしている...など、いろいろあると思うんですが、僕が重要視するのは「ワクワク度」ですね。
そのアルバムを聴いている時はもちろんなのですが、「それを聴いてない時でも、そのアルバムの事を考えると、ワクワクしてしまう」ものが自分にとって上位なんだと思うんです。
個人的に思い入れの深い順ではありますが、それこそがみなさんへのおすすめ順。
好きなものをおすすめしたいです!

コメントの次には、各アルバムの中で1番好きな曲を、No.1 Songとして表記しました。
ジャケット写真をクリックするとTOWER RECORDSへのリンクになってます。

大ヒットした『The Stranger』の次が大事だとばかりに、気を引きしめて作った、密度の濃い締まったアルバム。
二番煎じを嫌い、ジャズの要素を採り入れて、早くも新しい自分を見せる。
ビリーのチャレンジャー精神が詰まっていて、それが成功し、ビリーの才能の奥深さを決定的に知らしめた名盤。

まず特筆すべきは、日本人にとても人気のある「Honesty」
どうやら欧米ではそこまで人気ではないらしく、まさに日本人好みのメロディを持った、切なさと温かみのあるバラード。
この曲が入ってるだけでも、買った甲斐があったなと満足できるアルバムと思えることでしょう。
もちろん僕も大好きです。

有名どころでは、のっけから気合いの入る「Big Shot」、マイルドなノリも優しく聴きやすい「My Life」
「Zanzibar」の転がるリズムにピアノを連打するシリアスなサウンド。
「Half A Miles Away」はホーンをフィーチャーして、スリルあるメロディと展開にゾクゾク。
ライチャス・ブラザーズみたいな「Until The Night」
クールに通りを忍び歩くような「52nd Street」

ジャズの要素がところどころに採り入れられ、ホーンの音色が効果的で魅力。
ニューヨークのお洒落ながらも厳しい生活を映し出したようなサウンド。
これまでにない新しいスパイスを加えながらも、それまでのビリーの魅力の総決算とも言える出来。
ビターとマイルドが交じり合った傑作です。

No.1 Song 「Half A Miles Away」

西海岸から東海岸へ!
心機一転、吹っ切れた心の移り変わりを表したアルバム。
ジャケットにも表れているように、様々な人が登場し、生々しいドラマを次々に紡いでいく魅力に溢れています。

まずは「Say Goodbye To Hollywood」で、西海岸にサヨナラ。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド風で心も踊ります。
そしてたどり着いた先が「New York State Of Mind」。重厚感あるバラードでニューヨークへの想いの強さを表します。ムーディーなサックスが印象的。
この2曲がアルバムの象徴的なものですね。

「Summer, Highland Falls」はキラキラした夏の想い出が蘇ります。
「All You Wanna Do Is Dance」はカリプソで、暑い夜でも心は涼しげ。
「James」はエレピの音色が虚ろで切ないメロディにグッとくる。
「Prelude / Angry Young Man」はピアノ連打からの華々しい前奏、そして軽快なメロディで心を浮き立たせます。
「Miami 2017」は嵐が来る前には何故かワクワクした子供心を思い出す、目まぐるしく怒涛の展開に弾ける曲。

素晴らしいサウンドとメロディの連続で、こんなにも充実しているアルバムなのに、当時の売り上げは過去最低を記録したというのだから、もう意味不明です。
みんな、ビリーのどこを聴いてるんだ?と。いや、売れなかったんだから聴いてもいなかったのか。
さすがに今では再評価されてると思うけど、新しい地で奮闘しようとするビリーの熱のこもったアルバムで、大好きなんです。

No.1 Song 「Miami 2017」

これはもう言わずもがな、ビリーをトップ・アーティストにした大ヒット作。
前作『Turnstile』が結果を残せなくて崖っぷちに立たされていたはずのビリー起死回生の作品。
ビリーを見捨てずアルバムを作らせてくれたレコード会社も偉いし、プロデューサーとしてフィル・ラモーンが就いたことが非常に大きかったんでしょう。

レコードに針を落とすと聴こえてくるのは「Movin’ Out」のシリアスなビート。ギターのカッティングが鋭く刻まれ、それに負けじとビリーの「♪ カカカカ」が印象的。緩急のあるサウンドに、たちまち虜になります。
そして「The Stranger」。哀愁漂う口笛に始まり、寒いニューヨークにとびきりの孤独を感じ、それでもそこで生きていく芯の強さを感じます。クールなメロディとメロウなメロディが交互に現れる素晴らしい曲。
さらには「Just The Way You Are」。お洒落にコーヒーでも飲みながら聴いて浸りたい。さりげない優しさを歌ったバラード。
冒頭からのこの3曲で、もうやられますよね。名盤決定です。

「Scenes From An Italian Restaurant」は様々な表情を見せる壮大な展開。
「Vienna」はお得意の美メロ弾き語りとアコーディオンの響きでウットリさせます。
「Only The Good Die Young」はユニークなリズムとメロディで欧米ではとても人気あるらしいけど、日本人にはちょっとそこまではわからない感じがあるかも。楽しいけどね。
「She’s Always A Woman」はアコースティックな響きが、洗練された都会の素敵な女性を想起させます。
「Get It Right The First Time」は気合いが入りながらも「♪ ラララララ」と気さくに歌う感じがハマる。
「Everybody Has A Dream」はゴスペルで合唱して大団円。

最初から最後まで、付け入る隙なく完璧なアルバム。
僕にとっても、ビリーとの出会いはコレでした。
このランキングでは好き度の濃さからいって3位という位置付けになってしまいましたが、正直なところ、ビリー初心者には、まずは黙ってコレを聴きなさい、と言うと思います。

No.1 Song 「Movin’ Out」

前2作のモノクロのジャケットから、一変してカラフルになったように、市井の人々の生活を鮮やかに紡ぎ出し、躍動感も伝わって深みと色彩が増したアルバム。

まず挙げねばならないのは「The Entertainer」
エンターテインメントとは何か。客の喜ぶことならなんでもするよとばかりの堂々たる宣言がとても力強く、清々しさを持って証明しています。

「Streetlife Serenade」は街の景色が静かに広がっていくようです。
「Los Angelenos」は力強いロック曲で、ここまでパワフルなビリーは初めてではないでしょうか。新たな一面を見せた曲です。
「Souvenir」は心静まるバラード。

それから2曲もインストがあるのが特徴的。
「Root Beer Rag」は軽快で愉快なピアノに心も踊ります。
「The Mexican Connection」は美しさもさることながらダイナミックな展開と表現力に驚きます。
インストは基本的に苦手な僕ですが、この2曲はどちらも好きで、アルバムの良いアクセントになっていて、スパイス以上の存在感を感じます。

ロック曲やノリの良い曲もありますが、全体を通して聴いてみて感じるのは、穏やかな空気感がなんとも言えない心地良さだということ。
この穏やかさを地味と受け取って、このアルバムを評価しない方もいらっしゃると思いますが、僕はこの世界観がとても好き。
店に籠ってたピアノ・マンが、街に出て風景を歌い出した、ステージが一段階上がったアルバムだと捉えています。

No.1 Song 「Los Angelenos」

1993年、ビリー44歳にして最後のポップス作品となっているアルバム。
発表当時、ファンの誰もがこれが最後になるとは思ってなかったでしょうに。
新曲を望む気持ちはあれど、ビリーにはビリーの考え方がある。
そう思って聴くと、やはり最後に相応しいのかもなあと思えてくる作品です。

大ヒットシングル「The River Of Dreams」は新しいリズムにゴスペルが絡み、ちょっと不思議で癒されるメロディ。
根本は楽しく踊れる曲です。

アルバム冒頭「No Man’s Land」から怒っているのが伝わってきます。どうやら元マネージャーとの金銭トラブルといういざこざがあったようで、その鬱憤がこめられているようです。
「The Great Wall Of China」はビートルズとデヴィッド・ボウイが合体したような曲。
「Blonde Over Blue」はダンディでマッチョ。ここまでセクシーに迫るビリーは初めてかも。
「Shades Of Grey」はイントロのコーラスからしてなんか聴いたことあるなと思ったら、クリームへのオマージュ。サウンドもハードです。
「All About Soul」はバラードと言うには力が入りすぎてますが、深みのある壮大なメロディでビリー渾身の1曲。「♪ NaNaNaNa…」のリフレインの辺りまで来ると、感動的で胸一杯、涙が滲みます。
「Lullabye」は初期を思い出すピアノ・バラード。
「Famous Last Words」は最後にしては驚くほど軽快なビリーからの最後のメッセージ。

新しいことに挑戦しながらも、それもいつものビリーと思わせる安定感。
こんなに良い曲をたくさん作れるのに、どうして曲作りを止めちゃうのだろう、嫌気が差したのかなと勘繰ってしまいますが、嫌気が差したにしては素晴らしすぎる。
曲作りの才能を封印してしまうのはもったいないとは思いつつも、惜しまれつつ身を引くのも美学なのもわかります。
当時の奥さんが描いたジャケットのビリーは眠っているでしょ。だからまた、どこかで夢の続きが見られるんじゃないかなと、聴いてて心地良さを感じるアルバムなのです。

No.1 Song 「All About Soul」

前作『The Nylon Curtain』の重たさから一転、非常に軽くてハッピーなアルバム。
前妻と別れて、新しい女性との出会いが、ビリーの気持ちを浮つかせました。
ただ軽いだけでなく、ポップス、R&B、ドゥーワップやファンクなどを惜しげもなく採り入れて、オールディーズ風に仕立ててビリーのルーツを辿るようにしたことで人生の深みまで感じます。

「Tell Her About It」はモータウン・ビートのヴァージョン・アップ。コーラスもホーンの煽りもとにかく楽しい。これでウキウキしない方がおかしいです。
さらに輪をかけるようにテンションを上げてくれるのが「Uptown Girl」。最初から最後まで、どこを取ってもキャッチーなメロディと構成。
この2曲がアルバムの要。
音楽には気分を高揚させてくれる魔力があるのを実感します。

「Easy Money」はジェームス・ブラウンみたいにファンキー。ホーンも弾けます。
「An Innocent Man」はタイトル曲で、夜空に独り、無垢な男が黄昏ている。まさしくジャケットのビリーの姿そのもの。
「The Longest Time」。1人ドゥーワップ。アカペラで楽しく歌っているのが伝わってきます。
「Christie Lee」は性急なオールド・ロックンロール。
全体的に明るいロック曲が多い中、「Leave A Tender Moment Alone」という郷愁を誘う曲があるから、アルバムがピリッと締まります。

とにかく、楽しい楽しいアルバム。
音楽は楽しいものなんだと、純粋な気持ちを精一杯表現したもので、これを作ったことはある意味でのリハビリでもあり、そして大ヒットもしたことで、ビリーの才能の奥深さを感じさせる作品です。

No.1 Song 「Leave A Tender Moment Alone」

それまでのピアノ・マンのイメージから脱却しようとしたのか、一気にロックンローラーへと変貌したアルバム。
いや、今までのアルバムにだってロック曲はあったしね、驚くことではないんだけれど、ファンを良い意味で裏切っていくのが好きなのがビリー。
安定なんて求めていなくて、新しいことに切り込んでいく姿勢もまたビリーの魅力。

このアルバムのジャケットを眺めながら、レコードに針を落とすと、ガチャン!とガラスの割れる音が聴こえて物語が動き出すような「You May Be Right」は衝撃的でインパクト大。革ジャンが似合うオールド・タイプのロックンロールに途端に熱くさせられます。
それから「It’s Still Rock And Roll To Me」もロックンロール賛歌で、ビートの緩急の付け方がたまりません。
この2曲が、ロックなこのアルバムの象徴。

「Don’t Ask Me Why」はアコースティック・サウンドでさり気なくグルーヴします。
「All For Leyna」はピアノの連打とギターの鋭いカッティングが印象的なシリアス・ロック。
「I Don’t Want To Be Alone」はレゲエ風味から力強いビートへの変貌が楽しめます。
「Sleeping With The Television On」はノリの良さは天下一品、キャッチーなメロディとギターのカッティングがビートルズを想起させます。
「C’etait Toi」はアコースティックで穏やか。爽やかなんだか憂いがあるのかわからない不思議な曲。
「Close To The Borderline」はビリーが気持ち良さそうに歌うロックンロール・ブギ。
「Through The Long Night」はアコギとコーラスワークで聴かせてクール・ダウン。

細かく見ていけば、ロックンロール一辺倒ではなく、落ち着いたアコースティック・サウンドもあるのだけれど、それでもパワフルなロック・アルバムを聴いた感触に満ちています。
ビリーお得意のピアノ・バラードは1曲もない、というのがポイントかもしれません。
みんな盛り上がっていこうぜという、ビリーの心意気を感じる作品です。

No.1 Song 「Sleeping With The Television On」

今まで楽しく音楽を紡いできたビリーが、重たく社会派のテーマに取り組んだアルバム。
当時、東側諸国を表す『鉄のカーテン』という有名な言葉があったけれど、アメリカにだって『ナイロンのカーテン』がある、と様々な問題に切り込みました。
今までのビリーと比べると、やはりやや聴きづらい印象は受けます。
しかし、ジョン・レノンの死を受けての制作で、ジョンからの影響を隠さないサウンドは、そういう観点からするとビートルズ・ファンには一気に興味深いものに思えてきます。

象徴的なのは「Pressure」。差し迫ったキーボードの音色から来る緊張感がハンパないです。そしてプレッシャーを開放させるようなビリーの爆発的なヴォーカルとサウンドにゾクッとします。
「Allentown」はどこか仕事に疲れたような男たちが見える。でもムリヤリ頑張っている労働者のため息が地味に効いてくる感じです。
「Goodnight Saigon」は冒頭聴こえるヘリコプターの音から連想できるように、ベトナム戦争と向き合って、兵士たちを癒すために書かれた歌。
この3曲だけでも、とっても重たいよね。今までのビリーの美しさとか楽しさが別次元に行ってしまったかのようです。

「Laula」はビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」が下敷きで、これまた疲れたジョン・レノン。力入れたシャウトの重さに耐えきれない感じ。
「A Room Of Our Own」は前作『Glass Houses』に入ってても良さそうな力強いロック曲。むしろこういうのにホッとします。
「Surprises」は切ないメロディで、ファルセットを使い歌う様もジョン・レノンのソロ曲を感じさせます。
「Scandinavian Skies」はアレンジがビートルズの「Being For The Benefit Of Mr.Kite!」とか「I Am The Walrus」辺りの混沌とした感じに酷似。

とにかく、ビートルズっぽいのは面白いとしても、テーマが重たいので、聴いてて疲れるのが正直なところではあります。
一人のピアノ・マンが、社会的テーマに挑戦した記録。
これはずっとビリー自身がやりたかったことで、今でも自信作であるし、作れたことを誇りに思うと発言しています。ただ、そこにファンが望んでたこととの乖離はいささかあるのかな。
でも、何度も聴きこむことで、そこに潜む奥深さにどんどん気付いていく。そんな気がします。

No.1 Song 「Surprises」

大ヒットした『An Innocent Man』から3年、久し振りに届けられたのは、何故か地味な印象のアルバムです。
レコード会社からせっつかれて制作されたもので、ビリー本人がノッてなかったんでしょうね。
ただ、地味だから全然ダメというわけでは決してなく、いくつも大ヒット作を生んで一気にベテランの風格を携えた、ゴージャスな音作りが目を見張ります。
ゴージャスなのに地味。この矛盾した感じが、このアルバムの特徴を表しています。

「Running On Ice」はポリスみたいにシリアスで疾走感溢れるシャッフル・ビートにワクワクします。でも、ビリーはこの曲をクソと酷評してるそうで。サビの「♪ オーオー、オーオオオ」というところなんか、ゾクゾクするほど素晴らしいと思うんだけどね。
「This Is The Time」はダンディで、ここまで実績を重ねてきたビリーだから出せる説得力。
「A Matter Of Trust」はマイルドなメロディにパワフルなサウンドの妙。
「Modern Woman」は『Glass Houses』のストレートさ、『An Innocent Man』のノリが勝負なところを引き継いだ、デジタル・ビートのロックンロール。
「Baby Grand」はレイ・チャールズとのピアノ・バラードのデュエットで、貫禄と渋みは王道を行っています。
「Big Man On Mulberry Street」はゴージャスなビッグ・バンド・サウンド。
「Code Of Silence」は、シンディ・ローパーのヴォーカルもピリリとしてて、ハーモニカも響き、シリアスながらも熱い曲になってます。

こうして見ると、なかなかの佳曲揃いで、決して捨て置けるものではありません。
でも全体の印象が地味に感じてしまうのは、ヒットしたと言える代表曲に乏しいからでしょうかね。
方向性や聴いた後の感触としては『The Nylon Curtain』に近いものがあります。
あとは、都会の一匹狼風情だったビリーが、レイ・チャールズ、シンディ・ローパー、スティーヴ・ウィンウッドなど、がんがんゲストを迎え入れてコラボしている点が、このアルバムの新しいところだと思います。

No.1 Song 「Running On Ice」

バンドがうまくいかず、ソロになってのデビュー作。
トラブルでピッチが狂ったレコードが出回り、後にプロデューサーが修正して出し直したという経緯があって、結局、ビリーが目指してた本来のサウンドはどんななの?と疑問を持ちながら聴くことになってしまうアルバム。
基本的には、シンプルなサウンドでメロディ勝負の、いかにもシンガーソングライター姿勢に溢れています。

「She’s Got A Way」は優しいような切ないような。シンプルだからこそ胸に刺さるお手本のようなもの。
「Everybody Loves You Now」は波打つピアノの速弾きに胸が高鳴ります。キャッチーなメロディにスリルたっぷりの爽快感です。
まず採り上げるならこの2曲ですね。

「Why Judy Why」はアコギ主体で意表を突かれます。フォーク・ソングと言ってもいい侘しさがあります。
「Turn Around」はピアノを軸としながらも、どこかのどかなカントリー風のアレンジ。
「You Look So Good To Me」はボードヴィル調でポール・マッカートニーからの影響大。ピアノに被さるオルガンやハーモニカ・ソロも印象的。
「Tomorrow Is Today」はピアノ弾き語りの王道。
「Nocturne」はピアノだけのインストで、悲しく美しいメロディに胸が締め付けられます。

ピアノを中心に、温かな音色なんだけど、このジャケットとタイトルの印象から「寒い」感じを強く受けてしまうので、ちょっと損してるかも。
しかし、ビリーは最初から素晴らしいメロディ・メイカーだったことを実感。シンプル・イズ・ベストを体現したサウンドも静かに心に染み入ります。
とても良い感触を持ったアルバムで、これは上位に来るなあと思ってたのですが、並べてみたらこの順位なので自分でもビックリ。でも、それだけビリーの作品の充実度がわかります。

No.1 Song 「You Look So Good To Me」

前作『The Bridge』で少しモヤッとした空気を作るも、すぐに立て直してヒット作を作るのがビリーのすごいところです。
新たな旋風を巻き起こし、健在ぶりをアピール。
僕がビリー・ジョエルを意識し始めてから、リアルタイムで接したのがこの頃からなので、思い出深いですね。

このアルバムを大ヒットに導いたのは、なんといってもシングル「We Didn’t Stop The Fire」の存在。ビリーが生まれてからの世界の出来事・人物を韻を踏みながらノリ良く速射砲のように歌い飛ばしていく、そのスピード感に圧倒され、燃えます。力が漲ってくる曲ですよね。

「The Downeaster “Alexa”」は重たく険しい航海の様子がうかがえます。
「I Go To Extreams」はダイナミックで力強いビートのノリが良い。
「Shameless」はバラードだけどパワフルで、ギター・ソロがふくよかで熱い。
「Leningrad」は遠くへ思いを馳せる、落ち着いたピアノ・バラード。
「When In Roma」はホーンもコーラスも楽しいアップ・ビート。
「And So It Goes」は初期にも通じるシンプルで美しいピアノ・バラード。これでちょっぴりほろ苦くアルバムの幕が下ります。

良くも悪くも80年代らしいサウンドで、ビリー流パワー・ロック。
『An Innocent Man』の楽しさ、『The Bridge』の重厚さを兼ね備えて昇華させた感じ。
大ヒット曲が入ってるというだけで圧倒的な華やかさを感じるんだなと実感させられる作品。

No.1 Song 「We Didn’t Stop The Fire」

ビリーが『ピアノ・マン』というアイデンティティを確立したアルバム。
シンプルながらも、これほどまでにビリーを表した言葉はない。
ただ、ピアノ・マンと言いながらも、ピアノだけに頼らず、1stアルバムよりも音の厚みが増しました。
いよいよエンジンがかかってきた高揚感に満ちています。

「Piano Man」はビリーを一言で表すならばこれしかないという感じで、場末のバーで奮闘する一人の天才の物語。激情のヴォーカル、ピアノの調べ、鳴り響くハーモニカ、静から動へのスウィングがたまりません。
「Captain Jack」は嵐の中へ大航海する勇気をもらえる曲。静かに、でもジワジワと確実に闘志が漲っていきます。ピアノはもちろんなのですが、ギターの音色がいい味出してるんですよね。
この2曲がアルバムの二大巨頭ですね。

「Travelin’ Prayer」はサウンドが前作からガラッと変わったなと実感できる曲。ユーモアあふれるカントリー風味で、これからビリーの音楽は面白くなっていきそうだぞと期待感を抱かせます。
「Ain’t No Crime」は跳ねたピアノのスワンプ・ロック風。レオン・ラッセルが歌いそうじゃないか。
「You’re My Home」もカントリー・タッチで穏やかに故郷を歌います。
「The Ballad Of Billy The Kid」は郷愁を誘うハーモニカから、ピアノ、ホーン、ストリングスが舞う壮大な展開。
「Worse Comes To Worst」をレゲエと呼ぶのは気が早いかな。
「Stop In Nevada」は地味ながらも、とてもビリーらしい曲だなと思います。
「If I Only Had The Words」はピアノ弾き語りを下地にしながらも、ささやかなギターやストリングスが気分の高揚に一役買っています。もちろん美メロなのは言うまでもありません。

タイトル通り、どの曲もピアノひとつでも成り立つメロディの良さをもったものばかりです。
ビリーが初めて自分の才能を知らしめることに成功したアルバムです。
でも、まだまだこれはほんの序の口。
後だからそう言えるのかもしれませんが、ホントにそうなんですよ。このヒット作を超えるものを、この後どんどん作り出していくと思うとワクワクしてくるんですよね。
結果的にはこのアルバムが最下位となってしまいましたが、聴きどころも充分なビリーの最初のヒットである重要作なのは重々承知ですし、あくまで他のアルバムと比べたらという苦渋の結果であることをご承知おきください。

No.1 Song 「Travelin’ Prayer」

さて、いかがでしたでしょうか。
みなさんの好きなビリー・ジョエルと僕の好きなビリー・ジョエルには、どれだけ違いがあったでしょうか。
同じアーティストを好きでも、同じアルバムが好きとは限らないのが面白い所だったりします。
いろんなファンの方の意見があると思います。
僕は、そういうファンの意見の違いを面白がったりしたいので、まずは自分の好みを披露してみました。
もちろん、これは現時点でのランキングで、今後ビリー・ジョエルを聴きこむ事によって、順位が変動してくる事はあるかもしれません。

ビリーは40代で新作を作ることを止めてしまったので、キャリアの割には作品数はそれほど多くありません。
後追い世代でもあまり苦ではないし、ある意味、何度も聴き返してどっぷりハマるのに適しているアーティストと言えるかもしれません。
正直、僕はビリーがこれから新曲を作ることには望みを持ってません。すでにあるアルバムを何度も楽しむことで充分満足できるんじゃないかなと思えるからです。
だって、どれも素晴らしいアルバムなんですもの。

他のアーティストのおすすめアルバム・ランキングはこちら

コメント