ビリー・ジョエル Live@東京ドーム 2024.1.24 感想

ONE NIGHT ONLY IN JAPAN

2024年1月24日(水)@東京ドーム

まさかの来日公演決定!しかしチケットが

ビリー・ジョエルのCDを初めて買ったのは大学生の頃。今から30年以上前です。
でも、さらにいろいろCDやDVDを買ったり、レコードを集めたり、オリジナル・アルバムをすべて聴くほど好きになってからはまだ10年も経ってないと思います。
ライヴが観てみたいなと思っても、調べてみたらビリーは既にツアーはやってなくて、ライヴをやるのはほとんどアメリカ国内。しかもマディソン・スクエア・ガーデンばっかり、みたいな状況でした。
これは、ライヴ観たいならアメリカへ来いっていうことなのかなあと。
ビリーと旅行が好きな友人に付き添ってもらって行きたいなあと夢想するも、いやいや、海外まで行く度胸も知識も余裕もないじゃん、と。
なので、ビリーのライヴを観ることなんて、すっかり諦めてました。

それが、2023年の夏、突然にビリーの来日公演のニュースが飛び込んできました。
信じられなかったです。
しかもたった1日限定。
ビリーは1日だけならと、来日することを承諾したのでしょうか。
あまりにも嬉しいニュースですが、はたしてチケットは無事入手できるのでしょうか。
東京ドーム5万人というのは、今のビリーにとってどうなんでしょう。
争奪戦になりそうな気もするし、割と楽に獲れそうな気もするし。

9月、まずはウドー会員限定の抽選受け付け。
これは僕は会員ではないので見送りです。
そして次に一般先行抽選。
今回、10万円のVIP席は論外としても、S席でも24000円でした。うう、高い...。
今まで2万円以上のチケットを買ったことなかった僕は、できれば安い席で済ませたい。
A席なら16000円、B席12000円とあります。
これくらいなら...ということで、安い席狙いの僕は、第1希望B席、第2希望A席で申し込みをしました。
で、応募の締め切り日を過ぎてから気付いたのですが、公式サイトには席種別分布図が載っていました。
僕はなんとなく勝手に、1階がS席で、2階がA席とB席だと思いこんでたのですが、分布図を見ると、2階もほとんどS席で、A・B席なんて、2階の両サイドの後方のわずかな一画しかないのです。
A・B席って、これだけしかないのか!
これじゃあ当たる確率は...。
嫌な予感は的中、抽選は見事にハズレでした。

でも、すぐに二次抽選。
今度はほんの僅かしかないB席は除外です。
でも、やはりなるべく安く済ませたい気持ちが捨てられず、第1希望A席、第2希望S席ということにして申し込みました。
前回の抽選で、第3希望S席で獲れたという人をSNSで見かけたので、まあ、S席なら割と楽に獲れるんじゃないかと思ったのです。
しかし!
抽選結果はハズレでした。
S席も獲れなかった。
これはマズいことになったんじゃないか。
ようやく自分の認識の甘さに気付きました。
冷や汗が出てきました。

こうなると一般発売です。
先着順の一般で、獲れるのでしょうか。
ドキドキしながら、時を待つ。
受け付け開始の10時。
ほぼジャストに繋がりはしたものの、画像認証の反応鈍く。
次の瞬間、「予定枚数終了」の文字。
うおわぁぁぁ。
わずか5秒ほどでソールドアウトでした。
獲れなかった。
あれだけ観たかったビリー・ジョエルのチケットが獲れなかった。
ものすごい後悔が沸き上がってきました。
最初の抽選で、何故僕はA・B席しか申し込まなかったのか。
第4希望まで申し込めたんだし、安い席狙いではあったけれど、S席だって充分許容範囲だったんだから、S席の希望を入れておけば良かった。
実際に第3希望でS席獲れた人の話を聞いてたから、可能性は充分あった。なんでS席申し込まなかったのか、振り返ってみると自分でも謎で。
しかしあとの祭り!
とにかく甘く見過ぎていた。
チラッとニューヨーク行きまで考えたほどのビリーのライヴ。
待望の日本公演なのに、まさかのチケット獲得失敗!
【ONE NIGHT ONLY IN JAPAN】を謳ってるので、追加公演の可能性はほぼ無いでしょう。
大きく落胆、そして後悔しました。

チケット獲るのを諦めない。その覚悟。そして

ただ、諦めたわけではありません。
東京ドームならば、ステージプランが確定後、追加席が出る場合が多いからです。
おそらく、ステージサイドの観づらい位置の席が、注釈付き席として、追加発売されるはず。
それにまずは期待。
そしてそれも獲れなかったら?
さらには、もっと観づらい席が、参加席という形で売り出される場合があるのです。
僕は過去にローリング・ストーンズを参加席で観ましたし、ポール・マッカートニーのライヴでも参加席を売ってたのを知ってます。
ただ、参加席は、発売がかなりライヴの直前です。3日前くらいのこともあります。
場合によっては、当日券という形になるかもしれません。
もしチケットが獲れないままライヴ当日を迎えた場合、それでも会場に行く覚悟をしました。
前日まで公式アナウンスが無くとも、当日、現場で参加席や体感席(もっと悪い席)を売ってた、なんて過去の経験があるので、それに賭けます。
朝早く行って、当日券売り場に並ぶ。
1月だから、曇り空だったら寒いだろうなあ。雨だったら最悪だな。
何時間並ぶのに耐えられるだろう。
当日券発売開始は16時頃だろうから、9時に並び始めても7時間か。
9時に並び始めるのは遅いのか?それだけ並んだのに手に入らず、もっと早くから並べば良かったと後悔することは避けたいから、もっと早朝から並ぶべきなのだろうか。
でも!
そうやってでも、最後まで諦めず、チケット入手に尽力する覚悟はある。
他にも公式リセールがあるかもしれないし、Twitterで取り引き相手を探す可能性も考えます。
それだけ、どうしても観たいビリーのライヴなんです。

それから、ライヴに行けるかどうかわからなくて不安な日々が続きました。
でも、チケットを持ってないからといって、予習を怠るわけにはいきません。
なんの予習もせずに、いきなりライヴを観ることになっても、なかなか心はついて行けません。
ライヴが観れる前提で、気持ちを作らねばならないのです。
なので、ライヴ2ヶ月ほど前から、ビリーのアルバムをほぼ毎日聴いて、徐々にビリー・モードにしていきました。

ビリーのチケットについて、最新情報が出てこないかと、公式サイトは毎日チェックしていました。
12月18日。
いつものように公式サイトにアクセスすると、追加席発売決定の文字が。
来たか!
いつから発売だ?
なんと、12月18日12時からとなってます。
うわっ、既に始まってたのかよ!!
焦りながら受付ページに。
まだ売り切れてないぞ!
よし!
申し込みだ!
と思ったら、「第1希望選択」の文字が。
うん?希望選択?
なんだ、抽選か。
過去に、追加席は先着順だったことがあったので、今回も先着順だと思ってました。
ならば、焦ることはない。
でも、抽選受け付け期間が、12月18日から1月8日までとなってます。これは長い。
こんなに期間が長いと、多くの人が気付いちゃって、申し込む人が増え、どんどん競争率が高くなる。
注釈付きの追加席なので、販売枚数は少ないはず。B席の枚数より少ないかもしれません。
そんなんで、抽選突破なんて出来るんだろうか...。
ともかく第1希望は注釈付きS席、第2希望は注釈付きバルコニー席です。バルコニー席は35000円ですが、こうなったらその金額でも出します。ライヴ当日、寒い中、長時間並んでの当日券に賭けるよりはずっといい。
願いを込めて申し込みです。

それから長かったですね。
クリスマス、年末、お正月。
チケットが獲れるのかどうか、それがずっと心から離れなくて不安でしたね。
ビリーの音楽を毎日聴きながら、
「ライヴ、観れるんだろうか」
それで頭いっぱいの日々でした。

そして1月12日。
いよいよ抽選結果発表の日。
どうなるのかとドキドキです。
18時過ぎ。
スマホを見ると、届いたメールの件名は、
「抽選結果のお知らせ」でした。
チケット会社によって違いますが、当たってる場合は、件名が「当選のご案内」となってることがあります。
今回はそうじゃない。
次に続く文面も、「この度は抽選にお申し込みいただきありが...」と見えて、ああ!このパターンは、「今回は残念ながらチケットをご用意することができませんでした」のパターンだ!
ああ、くそ~っ、ダメだったかあ!!
と早くも落胆。
しかし、とりあえずメールを開いてみると。
「厳正なる抽選を行った結果、お客様はご当選されました。」
え?
え?
と、当選!?
や、やったぁぁぁ!!!
獲れたぁぁぁ!!!

願いが叶いました。
もう嬉しくて嬉しくて。
これはきっと、先日亡くなった友人のコタさんが獲らせてくれたんだな。
コタさんは、初めて自分のお小遣いで買ったCDがビリー・ジョエルだったことを誇りに思ってた方で、今回の来日公演もきっと行く予定だったはず。
自分が行けなくなった代わりに楽しんできて、とチケットをプレゼントしてくれたんだと思う。
ありがとう。コタさんのお蔭だよ!

来日発表、そしてチケット抽選が始まってからのこの4ヶ月。
どうしても観に行きたいのに、自分の失態もあって、チケットが手元にないまま、ライヴが観れるのかどうかずっとモヤモヤしていた4ヶ月。
長かった。
でも、ようやく手に入れることができた。
ホント良かった、ホッとした!
こんなに嬉しい日は久し振りだ...。

ここ2ヶ月、チケットなくとも来日に備えてほぼ毎日ビリーを聴いてきたけど、不安を抱えながらでなく、チケットを手に入れてから聴くビリーは格別の響き。
もう遠慮することなく、トップ・スピードでテンションも上げられる。
もうすぐライヴが観れるんだ。
この期待に満ちた開放感!
安堵と期待が最高潮です。

その後。
1月17日には、追加席二次販売決定のニュース。
で、いつからかというと、その発表当日の12時からの先着順!
こういうことは充分考えられると思ってたから、僕はチケット入手出来てなかったら、ライヴ当日まで公式サイトの情報は午前中からチェックしようと思ってました。
まあ、無事にチケット入手出来たので、朝からチェックはしてなかった僕がこの情報を知ったのはチケット発売後で、既に予定枚数終了になってましたが。
こういう弾丸発売があること、過去の経験から予想してましたからね。
発表から発売までの時間が短くて、情報を知らずに買い漏らして不満に思う方もいらっしゃると思いますが、これは、ライヴに行きたくて、最後まで諦めず、最新情報のチェックを怠らなかった執念の強い方には幸運が訪れる、ということなんだと思います。

そして。
ライヴ前日に、当日券発売情報。
券種は未定というから、VIP席からB席、そして注釈付き席まで、余ってるチケットをかき集めての販売になるのでしょう。
はたして参加席は出るのでしょうか。
発売開始は16時30分から。
もし僕がチケットを持ってない状態だったら、当日券売り場に並ぶつもりでした。
始発に近い電車で行ったとすると、10時間くらい並ぶ可能性がありました。
それでも確実にチケット手に入れられるかはわからないという10時間は辛いだろうなあ。
あらためて、事前にチケットを入手できたことに感謝です。

ライヴ当日。会場へ

いよいよライヴ当日。
太陽は出てましたが、風が強くて。
もし当日券目当てで10時間以上並ぶことになってたら、かなりの地獄だったなと、その可能性があったことを考えるとあらためて恐ろしくなりました。

東京ドームには、15時30分到着。
当初はグッズは買うつもりはなかったのですが、よくチェックしてみると、やっぱり欲しいなと思うTシャツがあって、6000円もするけど、後では買えないんだし、やっぱり買っとくか、とこの時間帯に到着。
グッズ売り場はかなり長蛇の列でした。最後尾を探して、並んで。
冷たい風吹く中、ジリジリとしか進まない列にイライラしながら。
で、10分くらい経って少し進んだ先に、グッズ一覧ポスターが貼ってあって、それを見ると、すでにかなりの数のアイテムに×印が書いてありました。
ええーっ、もうそんなに売り切れてるの?
Tシャツは売れ筋商品だから、在庫いっぱいあるよね??
不安になりながら、さらに10分くらい経ったら、スタッフが、僕の目当てのTシャツの写真に×印を付けてるのが見えました。
うおおおお、ソールドアウトかああ!!
グッズ販売開始は13時で、開場は17時30分、開演は19時というスケジュールだから、このくらいの時間に行けば余裕でしょ、と思ってたけど、見通しが甘かった!
まさか2時間半で売り切れちゃうなんて。
他のデザインのTシャツも、その時点で売り切れてるサイズが結構あって、これはもうすぐにでも無くなるでしょう。
ていうかさあ、こんな早い時間帯に売り切れてるアイテムがいっぱいあるなんてさ、グッズの運営側も見通しが甘かったんじゃないの?在庫少なすぎ。
このあとまだ3時間もあるんだから、グッズを求めて来るお客さんはたくさんいるだろうに、売り上げの大きな機会損失だよね。
売れ残りが怖くて、生産数絞ったのかもしれないけど、運営側もお客さん側も、どちらも得しない結果だよ、これは。
目当てのものが無くなっても、グッズ待機列は規制線が張られてて、すぐに離脱できなくて、結局、売り場まで行くことになってしまいました。
で、虚しく退散。
欲しかったんだけどなあ。
でも、お金使わずにすんで良かったと思うようにしましょう。

で、気になった当日券を買い求める人の列。
これも随分と長い列になってました。
当日券、あまり枚数ないと思うんだよなあ。
最後尾なんて、今からここに並んでも買えないっしょ、てくらいの所まで並んでる。
僕もここに並んでたかもしれないと思うと...おお、怖い怖い。

この時点で16時。まだ開場・開演までかなり時間があるので、歩いてお茶の水のdisk unionまで行きました。
電車を使わずとも、歩いて行ける距離らしかったので、一度試してみたかったのです。
そしたら、20分経たずに着きましたね。
店では1時間があっという間で。
特別に目当てのものは無かったので、時間を持て余すかなと思ってたくらいなのですが、いやいや、やっぱりこういう店での時間はすぐに経ちます。
こんなことなら、あと1、2時間早く家を出てれば、Tシャツも買えただろうし、disk unionでもゆっくり物色出来ただろうにと。
やはり、少し後悔です。
そろそろドームに戻らないと、と思って焦り、気分も落ち込んで、結局何も買わずに店を出ました。

東京ドームには、18時頃戻ってきました。
驚いたのは、まだかなり当日券売り場に並ぶ人の列が長いこと。
ていうか、16時30分販売開始で、この時間でもまだ売り切れてはいないのね。
1人がチケット買う時間が結構かかってるみたいだし。
前日情報では、券種は未定とのことだったけど、結局S席のみの販売みたい。
でも、おそらく、列の後ろの方の人は買えないだろうし、この調子では、買えたとしても、ライヴ始まっちゃってる時間になりそうだったよ。
1人でも多くの人が買えればいいのだけど。

そろそろ僕も中に入らないと。
11ゲートから入場。
そしてすぐにトイレを目指します。
東京ドームはトイレがかなりの長蛇の列になるのはわかってるので、なるべく早く、です。
それでも、今まで経験してきた中で、最高に長い列になってて焦りました。
グルグル回ってジリジリ進んで。
結局、並んでから、用を足し終わるまで20分以上かかりました。
もうちょっと並ぶのが遅かったらヤバイことになってた。

僕の席は、外野レフト15列511番。
まず感じたのは、スクリーンがほぼ観えないこと。
ライヴによっては、左右のスクリーンを斜めに設置したり、時には補助スクリーンを設置したりして、サイドのお客さんにもスクリーンが観やすいようにする場合もあるのですが、今回は、正面に正対するスクリーンのみ。
ということもあって、僕らの座る注釈付き席の範囲も予想以上に狭かったです。
サイドからでもスクリーンが観やすければ、もっと注釈付き席の枚数出したり、さらには参加席も出したり出来たんでしょうけどね。
今回、参加席の販売がなかった理由はそれ。
でも、予想以上に注釈付き席の範囲が狭かったということは、そこのチケットが獲れた僕はかなりラッキーだったということになります。
ああ、ありがたや。

自分の席に着いた時点で、既に開演5分前。
落ち着く間もなく開演です。

ライヴのスタート

開演時間の19時を6分過ぎ、客電が落ちました。

01. My Life
02. Movin’ Out
03. The Entertainer
04. Honesty
05. Zanzibar
06. Start Me Up
07. An Innocent Man
08. The Lion Sleeps Tonight
09. The Longest Time
10. Don’t Ask Me Why
11. Vienna
12. Keeping The Faith
13. Allentown
14. New York State Of Mind
15. The Stranger
16. Say Goodbye To Hollywood
17. Sometimes A Fantasy
18. Only The Good Die Young
19. The River Of Dreams
20. Nessun Dorma
21. Scenes From An Italian Restaurant
22. Piano Man
(Encore)
23. We Didn’t Start The Fire
24. Uptown Girl
25. It’s Still Rock And Roll To Me
26. Big Shot
27. You May Be Right

まず、僕の席から観た景色がこんな感じ。
意外にもドラムセットがちゃんと観えて、ステージ全体が見渡せたんだけど、肝心のビリーが。
鉄骨の柱が、見事にビリーとピアノを隠してるんです。
全然ビリーの姿が観えないわけじゃないけど、とにかくあの柱が邪魔で。
スクリーンも僅かしか観えないし。
視覚的には、当たりとは言えない席でしたね。
スクリーンさえもっと良く観えてれば、不満もなかったんでしょうけど。

聴こえてきたのはあの曲のリズム。
でも、歌い始めたのは「第九」!
ええ、年末でもないのに、と思っちゃいましたけど。
まあ、すぐに「My Life」になりましたけどね!
ゆっくりと、軽やかにライヴが始まった感じです。
ビリーがピアノを「カカン、カカンカカン!」て叩き弾くフレーズが好きなんですよね。生で聴けました。

1・2・3・4!とビリーが大きな声でカウントして「Movin’ Out」
僕が初めて買ったビリーのCDが『The Stranger』で、その1発目がコレで、いきなりノックアウトされました。思い出の曲です。
緊張感あって、胸に迫るリズムとメロディ。気合いも入ります。
「♪ カカカカカ!」が耳に刺さります。うーん、これですよ、これ。
終盤は、ホーン隊がステージ前方に出てきて吹きまくります。
気分は最高潮。

「ミナサン、コンバンワ!」
「ヒサシブリデス!」
日本語で挨拶するビリー。

74年の『Streetlife Serenade』に入ってる曲で、と紹介して「The Entertainer」
アコギの音色が瑞々しいです。
ビリーのエンターテイナーとしての決意表明とも言えるけど、歌詞は結構皮肉ってるらしいですね。
でも、曲調が爽やかで歯切れがいいので、澄んだ気持ちになってきます。

「サイゴマデタノシンデクダサイ!」
またもや日本語でビリーが語りかけます。

「Honesty」
おお、やっぱり出ましたか!
アメリカ公演では、この曲がセットリストに入ることはほぼありません。
でも、ここは日本。日本で1番人気があると言えるこの曲をしっかりセットリストに入れてくれるあたりは、よく日本のことを考えてくれてる証拠。そのサービス精神が嬉しいですね。
なんでも、ライヴで採り上げるのは4年振りだとか?
もちろん僕も、この憂いのあるメロディのこのバラードは大好きです。
伸びやかに歌ったり、シャウトしたり。
起伏ある展開で楽しませてくれます。
演奏が終わると、ひときわ大きな拍手が起こりました。

次にビリーがピアノで弾いたのは、日本唱歌の「さくら さくら」のメロディ。
日本へのリスペクトを見せたところで、「Zanzibar」
一気にビリーがピアノを叩き弾くイントロに引きこまれます。
そして跳ねるようなリズムに思わず疼き、体を揺らさずにはいられません。
シリアスなメロディが光りますね。
そして中盤、またビリーがピアノを叩いた後の、トランペット!
そして動きまくるベース・ライン。
このグルーヴ、たまりません。
ジャズを色濃く感じる瞬間です。
演奏終了後、「トランペット、カール・フィッシャー!」と紹介するビリー。
おお、カール・フィッシャー。僕が観た15年くらい前のライヴ映像でも、この人いたぞ。まだずっとビリーと一緒にやってたのか。嬉しくなるね。

そして、ピアノから離れて、ステージ前方にやって来るビリー。
「I’m Not Mick Jagger」と言って、笑わせたかと思いきや、
「Start Me Up」を真剣に歌い始めました。
ビリーはライヴでカヴァー曲をちょいちょいやるのが好きとは聞いてましたが、この曲は意外。
物まねが好きなのか、意外と声の雰囲気似てました。
そしてワンコーラス歌って。
最後にまた、
「I’m Not Mick Jagger」
知ってるよ(笑)。

83年に作った曲で、かなり高音なので歌えないよ、的なことを言って、
「An Innocent Man」
この曲もビリーはステージ前方のスタンド・マイクで歌います。
かなり身振り手振りを使って、セクシーな動きをして、指パッチンもしたり。
そしてサビの高音パート。声を張り上げて、ドーム中に轟かせました。これにはお客さんもどよめいた。
高音出ないよとか言っておきながら、やるじゃん、ビリー。
ビリーのヴォーカルのいまだ衰えぬ底力を体感しました。
...と感動してたら、2番のサビでは、ちょこっとだけ声が裏返りそうになったビリー。
おお、危ねえ危ねえ。
3番のサビは少し慎重に歌いました。
今まで、普通のバラードかなくらいに思ってましたが、なかなかどうして、ライヴで聴くと、起伏があるのがわかるし、かなりライヴ映えする曲でしたね。

コーラス隊がステージ前方に並んで、コーラス・グループのカヴァー曲らしきものをアカペラで。
僕は知らない曲でしたが、「The Lion Sleeps Tonight」だそうです。

このアカペラの流れだと、次はアレだよねと思ったら、その通り。
「The Longest Time」
ビリーのドゥーワップ、アカペラといったらこれです。
とにかく美しく、綺麗なハーモニー。
どこかユーモラスで温かく、幸せな気持ちになります。
夢のような時間。
そして、最後の締めくくりの部分をなかなか歌わずに、メンバーとお客さんを焦らすビリー。この茶目っ気もビリーの魅力。微笑ましい。

ビリーが再びピアノに戻り「Don’t Ask Me Why」
アコースティックな響きです。
穏やかながらも、ノリはいいですね。

1977年の『The Stranger』から「ヴィエナ!」と紹介して「Vienna」
ヴィエナと発音してるんだけど、日本だと「ウィーン」というタイトルになっちゃうんですよね。そこにちょっと違和感が。
楽しいムードが続いてましたが、これはまたビリーお得意のピアノ・ハラードです。
サビ終わりのメロディの締め方にキュンとします。

83年の曲を...と言って「Keeping The Faith」
またフワフワとした楽しい気分です。
サビ終わりの「♪ イエー、イエー、イエー」というところが印象的。思わず一緒に叫んじゃいます。
ラストはまたステージ前方にホーン隊が集まって吹きまくりです。

82年の『The Nylon Curtain』からと紹介して「Allentown」
「♪ シッ!ウッ!ハッ!」というパートが好きです。
アルバムの中で聴くと、疲れた感じの曲だなあと思ってましたが、ライヴで聴くと全然印象が違いました。
仕事は大変だけど、がんばってやるぞ、という気概のある曲に聴こえました。
ステージ前方でギター・ソロを弾いてたのが心に残りました。

美しいピアノの音色で始まる「New York State Of Mind」
力強いバラードです。
ビリーと言えばニューヨーク、を印象付けた曲です。
東京からニューヨークへ。
ビリーのピアノとヴォーカルを堪能。
そしてサックスのたまらない響き。
ラストはジャズのようにスウィングして、ビリーとサックスの会話のようなやり取り。
壮大なスケールを感じる曲でした。

ここで気付いたのですが、ライヴの最初は僕の方を向いてピアノを弾いていた(ステージ左側を向いていた)ビリーが、いつの間にか後ろ姿になってました(ステージ右側を向いてる)。
ピアノが回転してるのかな?と思ってたら、ちょうどそのタイミングで、ピアノが回転しはじめました。
何曲か演奏するごとに、回転してるようです。
客席の左側にも右側にも、ビリーの顔が観えるようにとの演出ですね。

「The Stranger」
ビックリしました。最近のセットリストから外れてたので、今回はこの曲はやらないんだろうと思ってましたから。
でも、これは嬉しい誤算です。
哀愁のある口笛が聴けた時は震えましたね。
そして、ダイナミックな演奏に切り替わる!
この勇気が湧いてくる前半と、メロウなサビとの対比が素晴らしいメロディなんですよね。
たまらなかったです。
ビリーも力入れて、ピアノを連打してました。

ドン、ドド、ドン!とドラムのリズム。あっ!これは!
「Say Goodbye To Hollywood」だ!
この曲もやらないと思ってたので、嬉しい限りです。
フィル・スペクターへのオマージュな、懐かしさ溢れるサウンド。
サビは「♪ セグバートゥハリウ~!」と一緒になって歌いましたよ。
これもまたサックスが爆発して。
感動しましたね。

「Sometimes A Fantasy」
ロックなアルバム『Glass Houses』からの、当然ロックな曲ですが、有名かと言われると、そうではないですけどね。
ロックなのでノリも良く盛り上がり、「♪ オーオオオ」というフレーズが耳に残る。
ギター・ソロはかなりの速弾きで興奮しました。

「Only The Good Die Young」
踊らないでいられるかというリズムです。
日本風に言えば、どんちゃん騒ぎ的な。
楽しそうにピアノを弾きまくるビリーです。

パーカッションの音が聴こえてきて「The River Of Dreams」
これも、ゆったりとうねるように体が動き出すダンス・ナンバー。転がるようなギターの音色が心地良い。
サビのファルセットのメロディが、天にも昇るようで気持ちいい。
ほんわかと体が温まります。
で、曲が一旦ストップして。
ここで、カヴァー曲に切り替わるのが定番です。
今回はどんな曲が飛び出すかと思ったら、僕の知らない曲で。
しかも、歌い出したのは、女性ヴォーカリスト。
どうやら「River Deep Mountain High」という曲らしいです。かなりのロック曲。パワフルな歌声に唸りました。
そして再び「The River Of Dreams」に戻ります。
ビリーもピアノ・ソロを弾きました。
終了後、ビリーが、さっきの女性ヴォーカリストを「ヴォーカル、パーカッション、サックス、その他いろいろ...クリスタル・テリフェロ!」と紹介しました。
あ!この女性も、15年くらい前のライヴ映像で観た人だ!とわかって感激しました。

次に歌い出したのは、ビリーじゃない人。
オペラのようなクラシックのような響き。
僕は疎いのですが、プッチーニの「Nessun Dorma」らしいです。

そして「Scenes From An Italian Restaurant」
初めに聴いた時は、なんだか長い曲、くらいの印象しかなかったのですが、ビートルズ『Abbey Road』のB面メドレーを念頭に置いて作った曲だと知って、一気に好きになりました。
なるほど、最初は小粋なピアノ・バラードに始まり、途中からボードヴィル調になったりと、目まぐるしく展開して。
色んなメロディを繋ぎ合わせて作ったとビリーが言ってる通り。様々な顔を持っている曲です。
曲調が変わるたびに、どんどん曲に引きこまれていって、「♪ オオ、オオ、オオ、オオーオオーオ、オオ」というフレーズは一緒に歌って楽しさ全開。
そして最後は優雅なサックス・ソロで終了、です。

ここで、ビリーがハーモニカ・セットを装着。
これで、次に何をやるのかお客さんがわかって大きな拍手。
ビリーが「まあ、わかっちゃうよね」といった表情で、ため息をついてから。
ハーモニカを響かせて「Piano Man」
ビリーの才能を最初に見せつけた、ビリーの代名詞のピアノ・バラードです。
体を左右に揺らし、うっとりと耳を傾けます。
そして、ピアノ・マン、歌ってよとばかりに、
「♪ Sing us a song you’re the piano man
Sing us a song tonight
Well we’re all in the mood for a melody
And you’ve got us feeling alright」
と大合唱です。
これがあるとわかってたので、がんばって歌詞憶えてきました。
なんとか一緒に歌えた!
会場内は、たくさんのお客さんがスマホのライトを点灯させていて、とても綺麗で壮観な景色でした。

「アリガト!」と言って、ビリー退場。
本編終了、20時58分。

そして、すぐに戻ってきてアンコールです。

ビリーはギターを抱えてました。
「We Didn’t Start The Fire」
ピアノ・マンがギターを弾きながら歌う姿に萌えますね。
曲は疾走感たっぷりのロックンロール。
速射砲のように、ビリーの口から飛び出す人物の名前、歴史的出来事。
それと同時に、スクリーンにはその人物やら出来事の写真が1枚1枚映し出されていきます。
サビの「♪ We Didn’t Start The Fire!」というところは、拳を上げながら一緒に歌いました。
かなり踊りました。
でも、まだこの時点でも、僕の周りの注釈付き席の人たちは座ったままなんですよ。それがちょっと歯がゆい。

「Uptown Girl」
とんでもなく大らかでポジティブ、キャッチーなメロディのこの曲。
体の奥底から湧き上がるものを感じます。
これが、テンションが上がる、というやつですよね。
ビリーはハンド・マイクで、ステージの左右へと練り歩きながら歌いました。
この曲を聴くと、昨年亡くなったKANさんのことを思い出さずにはいられません。きっとKANさんも、この日のライヴのチケットを獲ってあったと思います。同じ空間で味わいたかったな。

「It’s Still Rock And Roll To Me」
今度はビリーはスタンド・マイクで歌います。
それどころか、ビリーはこのスタンド・マイクをクルクル回したり、足で捌いたり、天高く放り投げたりと、かなりのパフォーマンス。
それに見惚れて、ある意味、歌が耳に入ってこなかったり(笑)。
ロカビリーにも通じるロックンロール。
とにかくビリーが楽しそうでした。
最後は、ビリーが遠く離れたスタッフへスタンド・マイクを放り投げて、パシッとキャッチしたところで終了。

「Big Shot」
力が入る、パワフル・ロック。
ここではビリーはまたピアノに戻ってます。
バンドの演奏が一体となって燃え上がります。
思わずパンチを繰り出したくなります。

ガラスの割れる音が聴こえて「You May Be Right」
性急なロックンロール。
ていうか、アンコールのこの5曲のロックンロール大会の流れは素晴らしいですね。
さすがに、注釈付き席の人たちもチラホラ立ち上がり始めたので、僕もすぐさま立って、手拍子しながら踊り狂いました。
「♪ Turn out the light」のところでは、ホントに一瞬、ドームの照明が消えるという粋な演出。
そしたら、終盤、いつのまにかレッド・ツェッペリンの「Rock And Roll」に。
これには痺れましたね。
「♪ lonely lonely lonely lonely time」と一緒に歌って、めちゃくちゃ気持ち良かった!
そして、最高潮でフィニッシュ!

ライヴ終了は21時25分でした。

どうしても観たかったビリーが観れた...これは奇跡だ

いやあ、マジでこれは良かったですね。
素晴らしいライヴでした。
生のビリー、堪能しました。
期待以上の感動でした。
あれだけ観たいと願って、チケットが獲れずに長い間不安になったりして、そして、ようやく観ることの出来たライヴは2時間20分。
ホントにホントにあっという間でした。
夢が叶った、でも夢のような時間でした。

予想されるセットリストとして、今年行われたアメリカ公演のセットリストを参考に考えてたのですが、概ねそれに準拠したものでしたね。
ただ、オープニング曲は「Miami 2017」だと思ってたので、大好きなそれをやらないと最初にわかった時はガックリしたというスタートだったんですが。
でも、日本向けの「Honesty」や「The Stranger」、それに「Say Goodbye To Hollywood」といったサプライズもあって。
結果的には満足したセットリストでしたね。

で、驚いたのがビリーのヴォーカル。
めちゃくちゃ声出ててビックリ。
予習として、観ていたライヴ映像は15年くらい前のものだったので、その時よりビリーも歳を取って...今74歳でしょ?
それだけのお爺ちゃんになれば、衰えもあるだろうし、普段ライヴ映像やライヴ音源で聴いてるヴォーカルを期待しちゃいけないよな、と思ってたんです。
なのに、まさかまさか。
もう、まったくイメージを損なわない、パワフルで繊細な、変わらないビリーの歌声がそこにありました。
全盛期とまったく変わらないんじゃなくて?
ほんと驚きました。
歩くのはね、ちょっとヨタヨタしてて、そこはお爺ちゃんみたいな危うさがあるんだけど、ヴォーカルは凄かった。
ビリー、凄い!

演奏ももちろん良かった。
【ピアノ・マン】ビリーが奏でるピアノが生で聴けた。
そのフレーズひとつひとつが愛おしかった。
繊細にしてダイナミック。
唸りました。
そして、それに合わせるバンド・メンバーたち。
詳しくは知らないけれど、長い間ビリーと一緒に活動してきたメンバーもいたし、腕利き揃い。
そんな仲間たちを、ビリーはまとめてメンバー紹介するのではなく、曲終わりにフィーチャーした楽器を担当したメンバーを1人ずつ紹介していったのが印象的でしたね。
バンド・メンバーにも拍手です。

そして、きっとこのライヴのチケットを獲っていたであろうコタさん。
彼もきっと、自分が確保した席あたりにやって来て、ビリーのライヴを楽しんでいただろうと想像します。
ホントは、ライヴ前にお会いしてあれこれ話したり、ライヴ後にはTwitterで感想を聞いたりとかしたかったですけどね。
でも、きっとどこかで観てたでしょう。

ビリーのライヴは最高だったよね!

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