
Performing the Music of 80s KING CRIMSON
2025年9月1日(月)@日本武道館
80年代キング・クリムゾン楽曲!
2021年のキング・クリムゾンの来日公演は感動的でした。
クリムゾンの長い歴史を辿るような代表曲ばかりのセットリスト。
とても満足したのですが、エイドリアン・ブリューがいるクリムゾンも特異なものがあり、観たかったよなあと思っていました。
そしたら!
エイドリアン・ブリューが、クリムゾン・メンバーのトニー・レヴィンを誘って、80年代クリムゾン楽曲を演奏するバンドを結成したというニュースが飛び込んできたのです。
さすがにロバート・フリップは不参加ですが、お墨付きはもらってるそうで。
フリップ卿の代わりのギターはスティーヴ・ヴァイ。
え、この人、ヘヴィメタ方面じゃなかったっけ??
ドラムはダニー・ケアリーという人で、僕は知らなかったけど。
なんにしても、こんなバンドがツアーを行うというのだから、トキメキました。
ブリューとレヴィンがいれば、ほぼクリムゾン!
80年代クリムゾンが聴ける!
そんなニュースを聞いてから約1年、待望の日本公演も決定。
武道館、1日限りの来日。
正直、会場はもっと小さいところだと思ってました。
このバンドの歴史は浅いし、知名度も低いし。
ていうか、BEATなんて、ありふれたワードは、検索もし辛いのよ。
でも、日本中のクリムゾン・ファンに呼びかければ、1万人くらい武道館に集まってきますかね。
80年代クリムゾンに絞ってくれたことで、予習もしやすかったです。
3枚のアルバムを聴けばいいわけですし。
ていうか、ツアーが始まってみると、セットリストは固定だったので、それでプレイリスト作って聴いてればOKだったのでした。
ライヴ当日。会場へ
さあ、9月です。
5月からしばらく間隔が空いて、日本公演からツアーが再開ということだったのですが、情報はあまり入って来なくて、ホントに来るのかなと心配にもなりましたが、どうやら、無事開催の運びらしく。
当日はちょうどいい天気。
まだまだ酷暑な日本ですが、この日はそれほど強い日差しではなく、夕暮れ時になったら涼しい風まで吹いてきました。
秋は近づいてるんですね。
disk unionお茶の水駅前店で買い物をしてから会場へ。
開場は18時でしたが、武道館には18時20分頃到着しました。
既に入場はかなりスムーズに進んでるようです。
トイレを済ませてから入場しましたが、まったく並ぶことなく、すんなりと入れました。
僕が買ったチケットはS席ですが、S席は全部2階です。
僕の席は東スタンド2階D列20番。
通路から2番目の席なので、出入りがしやすく、僕にとっては良い席だったのですが。
この来日公演。
やはりBEATというバンドには、武道館を満員にさせるほどの力はなかったようです。
2階席の後方、5列くらいはごっそり空席なんです。
テレビCMやってましたが、もうちょっとうまく周知させることは出来なかったものですかね。
こんなバンドがあることすら知らないクリムゾン・ファンも多そうです。
ソールドアウトしなかったのは寂しいのですが、僕からしてみたら、ラッキーでもあるのです。
僕は、前方の席じゃなくていい。
後方でいいから、空いてるところでリラックスして観たいのです。
というわけで、上段まで上がっていって、周りに誰もいない場所。
U列5番の席に座りました。
周りの人に気兼ねすることなくライヴが観れるのは、僕にとっては幸運なことでした。
これで、なんの心配もなく、ライヴが始まるのを待つのみです。
ライヴのスタート
開演時間の19時ちょうどに客電が落ちました。
エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、スティーヴ・ヴァイ、ダニー・ケアリーの順に、1人ずつステージに現れて、深々とお辞儀。
4人揃ったところで、それぞれのポジションに付きます。
ブリューが中央。
ヴァイが左側。
レヴィンが右側。
01. Neurotica
02. Neal And Jack And Me
03. Heartbeat
04. Sartori In Tangier
05. Model Man
06. Dig Me
07. Man With An Open Heart
08. Industry
09. Larks’ Tongues In Aspic Part III
(Intermission)
10. Waiting Man
11. The Sheltering Sky
12. Sleepless
13. Frame By Frame
14. Matte Kudasai
15. Elephant Talk
16. Three Of A Perfect Pair
17. Indiscipline
18. Thela Hum Gin Jeet
「Neurotica」。
ブリューの高らかなホイッスルと同時に演奏が始まりました。
ドラムが破壊的なリズムを叩きます。
体の芯まで響くビート。
ブリューとヴァイのギターが空気を切り裂く。
前半の台詞はテープでした。
ブリューがメロディアスなパートを歌い始めるまで、ずいぶん勿体付けましたね。
その割にあっという間に歌い終わっちゃった感じ。
終わるの早くね?
「Neal And Jack And Me」。
ブリューとヴァイのダブルアルペジオが心地良い。
ノリの良いビートはレヴィンがリードします。
前半のソロはブリュー。
ブリューはヴォーカルにも力が入ります。
ラストはヴァイがソロを弾きました。
クールなのに熱い曲です。
「コンニチワ!」
「Heartbeat」。
シンプルなビートで、ぐっと抑えた感じの曲。
ヴォーカルが前面に出た曲で、メロディアスな旋律をレヴィンがハモってたようです。
「Sartori In Tangier」。
レヴィンのスティックから始まりました。
今回初めて知ったのですが、スティックという楽器は、ベースの音とギターの音が同時に鳴らせるんですってね。
そんなスティックの担い手、レヴィンのプレイを堪能しました。
落ち着いた曲調ではあるのですが、ビートはなかなかの轟音。
ヴァイのソロは激情的で、ブリューのギターは全編に渡って幻想的。
ブリューは早くもジャケットを脱いで、Tシャツ姿に。
アルバム『Three Of A Perfect Pair』の曲をやるよ、とMC。
「Model Man」。
演奏が、全体的にブクブクしたサウンドを奏でてるイメージ。
重低音のビートで唸らせる曲が多い中、どこか浮遊感漂う音像でした。
ブリューの歌声も、ファルセットも含めて艶やか。
「Are You Happy Now?」
「Dig Me」。
これまた面白い曲。
イカれたギター。
ブリューの叫び。
ギター・ストロークとメロディアスな歌。
この3つの構成で成り立っています。
それらがクルクルと場面展開をしていって惹きこまれます。
「Man With An Open Heart」。
ヴォーカルを前面に押し出していて、いちばん甘いメロディの曲じゃないでしょうか。
「♪ アアアアーア」と一緒にハミングしたくなります。
「Industry」。
歌メロが主体だった前曲から一転、怪しげで、どこから何が飛び出すかわからないインスト。
レヴィンはキーボードを弾いてたように見えました。
ブリュー、ヴァイ共に、様々な鳴き声のギターを奏でていて。
そして、ケアリーのドラムも、とても多彩な音色で、それだけでも飽きません。
24時間稼働している工場のような不気味さ、不夜城といったイメージでした。
「Larks’ Tongues In Aspic Part III」。
ヴァイの速弾きから、ブリューのキレのいいカッティングというイントロからカッコいい!
そしてすぐさま爆裂ビート。
「Larks’ Tongues In Aspic」シリーズはIVまであるのかな?「LEVEL FIVE」を入れたら5作?
まだ、パッと聴いただけでは、聴き分けが出来てないし、このIIIはあまり印象に残ってない方だったけど、今回のライヴのために聴きこんできたので、かなり好きになりました。
それで、「Larks’ Tongues In Aspic」シリーズの共通点みたいなものもわかってきた感じです。
ブリューとヴァイが寄り添って、掛け合いのようにギターを弾きあってるのが印象的でした。
そして、どちらかがカッティング、どちらかがソロときっちり分けてるのではなく、カッティングとソロを途中で交代しながら弾いてるのが、芸が細かいなあと思いました。
ここで第1部終了。
15分間の休憩です。
盛り上がってきたところで、もう休憩とは早いなとも思ったのですが、あれだけのプレイをするのは、とても集中力のいることなのかもしれません。
再開を待っている間、ステージの方を眺めていると、舞台袖の階段を降りたところで、レヴィンが写真を撮りまくってるのが見えました。
21年のクリムゾン公演の時もそうだったけど、レヴィン、写真撮るのホント好きだなあ。
「Waiting Man」。
ケアリーが1人で現れて、ステージ前方にある電子パーカッション?を叩き始めて、第2部のスタートです。
アフリカンなパーカッション・ソロが続きます。
そしたら、真っ赤なスーツを着たブリューが現れて、ケアリーと向かい合わせになってパーカッションに加わりました。
リズムが厚くなった!
そしたら、レヴィンのスティックも加わって。
いつの間にかヴァイもいた!
ブリューがステージ中央に行って、どこかの民族の祈りのような歌を歌います。
中盤からケアリーがドラム・セットに移動。
徐々に大迫力のバンド・サウンドに。
終盤、ブリューが客席に背を向けて、アンプの前に座ってギターを歪ませるパフォーマンス。
「The Sheltering Sky」。
どこまでも続く地平線、果てしない大空を飛ぶ鳥のような。
落ち着き渡ったポリリズムにヴァイのギターが鳴きます。
負けじとブリューのギターも鳴きます。
再びヴァイが鳴くと拍手が沸き起こりました。
長い演奏になりそうだと覚悟してたのですが、想像以上に惹きこまれて、あっという間でしたね。
「Sleepless」。
イントロのレヴィンのスティックが重低音をはじきます。
ブリューはTシャツ姿になってました。
この曲のメロディもなかなかに甘い。
プログレは難解なイメージがありますが、クリムゾンはこういうキャッチーなメロディの曲が多いのも特徴なんですよね。
そして、この曲もドラムがカッコいい!
このバンドが結成されたと知った時、唯一知らなかったのがドラムのダニー・ケアリーだったのですが、実際にライヴを観てビックリしました。
ビル・ブルーフォードに敬意を払いながらも、ビルに負けない存在感あるドラム・プレイの数々でした。
そのドラムのリズムに巻き込まれていくように、ラストがグイグイと盛り上がっていったのにはゾクゾクしました。
「Frame By Frame」。
原曲とは違い、ヴァイのアルペジオで始まります。
それにウットリしていると、ブリューのキレッキレのカッティングが空気を切り裂くカッコ良さ。
ハード&スウィート。
曲に緩急があって、アルバム『Discipline』の中でいちばん好きな曲です。
ブリュー、やっぱり、かなり声出てる。
全盛期と変わらない?
僕は初めて観たけど、年齢を感じさせないなあ。
終盤、ヴァイがかなりの速弾き。さすが、ヘヴィメタ方面から来た人です。
最後はブリューとヴァイ、2人のアルペジオで終了。
痺れた!
ブリューが呟くように「Thank You」。
「Matte Kudasai」。
日本人としては、この曲をやってくれるのは誇らしいところがあります。
穏やかで、どこか爽やかさまで感じるこの曲。
ここまで来たら、バラードと言っていいかも。
ブリューの「マッテクダサイ」の発音が良くなってた。日本人並みの発音と言えるほどに滑らか。
そして、全編に渡っての幻想的なブリューのギター。
鯨の鳴き声のようなサウンドが、武道館の天井に反射してました。
「Elephant Talk」。
印象的なイントロはレヴィンのスティックだった!
今までギターだと思ってたよ。
そこがスティックならではなんだね。新たな発見。
リズムはキレッキレ。
ブリューの台詞ともラップとも取れるようなヴォーカル。
これはクリムゾン流のヒップホップだったのかもと思ってしまった。
そして、ヴァイの稲妻カッティングがカッコいい。
ブリューのギターは、その名の通り、象が吠えているような音を響かせていて、いったいどうやってあんな音出してるんだろう?と。
「Yeah!」
「Stand Up!」
興奮して、観客に立つように促したブリュー。
そして、「良い眺めだ、いい感じ」と言ってました。
「Three Of A Perfect Pair」。
どこか虚ろなメロディのヴォーカルとギターの絡み。
粘っこくまとわりついてくる感じ。
サビでリズムが変わるところもグッと来る。
ヴォーカルとコーラスの掛け合いも印象的。
「Indiscipline」。
またまたグッと怪しい感じで始まって。
メンバーそれぞれが個別にプレイしてるのかと思いきや、ジャーン!と一体感溢れるバンド・サウンドになるのに興奮。
ブリューの台詞も、抑えて呟くようだった前半から一転して、「I repeat myself...」と早口で喋るところに歓声。
どこか絶望感が漂い、スクラップ&ビルドな感じの演奏。
「I like it!」と叫んでのフィニッシュには大歓声でした。
「We Love You Very Much」
「Will Come Back Soon」
「Thela Hum Gin Jeet」。
ブリューの激しいカッティングから始まりました。
このツアーでは、会場によっては「Thela Hum Gin Jeet」の前に「Red」が演奏されていて、その2曲がアンコール曲だと思ってましたが。
この曲が始まった瞬間、あ、今日はアンコールはないのね。「Red」もないのねと、ちょっとガッカリ。
しかし、「♪ Thela Hum Gin Jeet」の連呼がキャッチーで、大好きな曲。
これで最後と、一緒に歌いながら踊りました。
ところどころに入る台詞はテープでしたね。
それにしても、間奏のブリューのギターはぶっ飛んでました。
もちろん、ヴァイのカッティングもカッコいい。
ステージ中央でブリューとヴァイがほぼ背中合わせみたいに寄り添ってギター弾きあう姿は胸アツ。
ラスト、一瞬ブレイクし、突然の終了かと思いきや、ちゃんとしたエンディングがあるという。
ライヴ終了は21時ジャスト。
あれだけ楽しみにしていたライヴは、なんかホント、あっという間でした。
これはもうクリムゾンそのものでもあり、新しいサウンドでもあり
ロバート・フリップが率いてるのがキング・クリムゾンなので、これはクリムゾンではない。
だけど、エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィンがステージ前方で躍動してれば、それはもうほぼ80年代クリムゾン。
フリップ卿はいなくても、僕の中では、クリムゾンを堪能したという満足感でいっぱいです。
2人のクリムゾン・メンバーだけではなく、ヴァイとケアリーのプレイもホント良かった。
僕は、かなり後追いのクリムゾン・ファンなので、今の時代になって80年代クリムゾンを再現するバンドというアイデアを実行してくれたことには、本当に感謝しかない。
そんな僕にはクリムゾンそのものに見えたけれど、80年代クリムゾン楽曲を現代に蘇らせた、この4人ならではの新しいサウンドにも思えました。
奇妙に吠えまくるギター、複雑なリズムと場面展開。
そんな難解さも心地良く。
さらに、叙情的でキャッチーなメロディが入り混じるのがクリムゾンの魅力。
それは80年代の楽曲においても言えることで、やはりこれも間違いなくクリムゾンの曲の素晴らしさでした。
80年代にテーマを絞ったことで、その当時のエッセンスが凝縮されている、わかりやすいライヴでした。
たった1日のために日本に来てくれてありがとうと言いたい。
ブリューとフリップ卿が一緒にプレイすることは、今後もないのかもしれないけど、この4人のBEATというバンドが、少しでも長く活動してくれると嬉しいな。
そんなBEATの、2024年ロサンゼルス公演。
2枚組ライヴ盤&Blu-rayが発売されてます。
日本公演を楽しんだ方も見逃した方も是非!
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