2016年4月19日(水)@日本武道館
ツアー引退のはずが来日公演決定でビックリ
クラプトンは昔から好きだったけれど、本当にハマッたのは昨年の事。
14年に来日公演をやっていた事を改めて知り、ツアー引退宣言をしていたのも知っていたから、「ああ、もう少し早くハマッていれば、ライヴ観に行けたのになあ」と無念の思いでいた。
そうしたらなんと、16年4月、まさかの来日公演決定の知らせ。
思ってもいなかった朗報はグッド・タイミング。躊躇する事なく、チケット獲得に動いた。先行抽選に申し込んで、無事ゲット。焦ってS席にしちゃったけど、A席でも良かったかなあとは思った。
それでも、結局ライヴのかなり前にチケットは完売してたから、まあ、無事に手に入れられたので良しとするか。
それにしても、ツアー引退宣言をしてたはずなのに、どうして日本公演が行われる事になったのかはわからない。
事情があるのだろう。
ここは素直に喜ぶ事としよう。
どんなセットリストになる?
注目は、セットリスト。どんな構成になるのか。
昨年の、ロイヤル・アルバート・ホール公演が基本となるのか。
でも、そうなると、そのロイヤル・アルバート・ホール公演は、前年の日本公演のセットリストとほぼ同じだから、また同じ内容で日本に来るとは考えにくい。
すでにツアー引退を宣言した身。
当然、日本公演もこれで最後かと噂されている。
となると、最後のここは、クラプトンの音楽人生の集大成的な、ベスト盤的なセットリストになるのではないか。
あの曲もこの曲もみんなやっちゃう。
特に「Layla」は、14年公演ではアコースティック・ヴァージョンだったので、「エレクトリック・ヴァージョンが聴きたかった」というファンの声が多かったから、最後となりそうな今回は、エレクトリックでやってくれるんじゃないか。
そんな風に期待せざるを得なかった。
考えただけでワクワクする。
チケットを獲れた事でテンションが上がり、勢いで、ロイヤル・アルバート・ホール公演を収録したライヴDVD『Slowhand At 70』を買ってしまった。DVD2枚+CD2枚の豪華盤で、予習するには最適だ。来日する頃には世間も盛り上がって、売り切れになるのではないかと予測しての、早めの購入だった。
これで、万全の態勢でライヴを迎えられる。
来日。明らかになったセットリストにガッカリ
しかし、とうとう4月になって来日し、初日公演のセットリストが明らかになると、僕のワクワクも吹っ飛んだ。
まさかの「Layla」無し。
半分以上、ロイヤル・アルバート・ホール公演と同じ曲目。
新しく加わった曲は、僕の知らない曲ばかり...。
知らない曲が多いというのも当然で、5月にリリースされるNEWアルバムから4曲も披露されると言うから、それはそれで納得。
それにしても...。
どうやら、クラプトンの自作曲は2曲しかないと言うではないか。
オリジナル曲を重要視するので、あまりカヴァー曲には興味が持てない僕からしたら、ちょっとガッカリ。
これで、セットリスト的には期待が持てなくなった。
渋いブルース大会になりそうだ。
以前の、ブルース苦手な僕だったら憤慨してただろう。だけど最近、ようやくブルースの良さがわかるようになってきたので、少しは期待も持てる。
ロイヤル・アルバート・ホール公演のCDが、本当に予習の意味合いが濃くなった。
ライヴ当日。嫌な予感
いよいよライヴ当日。
目が覚めると、思ったのは、「今日はなんか眠いなあ」という事だった。
睡眠が足りない。
不安になる。
日本武道館は、3月31日に訪れたばかり。その時は、桜が満開に近かったけれど、それから半月で桜の姿はまったく無く様変わり。
訪れるファンも、その時は若い子ばっかりだったけど、今回はおっさんおばさんが多くなって様変わり。
僕の席は、2階南東X列16番。
なんと、2階最後方列だ。
それでも、ほぼ正面の位置からという事でS席なんだろう。
チケットは、早ければ良い席が獲れるというものではない。しかも経験上、そしてネットでの話を総合すると、先行抽選で獲った人ほど悪い席が当たる確率が多いように思われる。先行なら早くチケットを確保できるのは利点だけど、それで悪い席というのはどうにもモヤモヤする。先行サービス料がかかってお金も多く取られるし。売り切れ覚悟で一般発売に賭けた方が良いのではないか。そんな気にさせられる。
どうせこんな席だったら、立見席の方が良いのではないかと思ったのだが、トイレに行っている間に立見席の方もほぼ埋まってしまった。諦めて自分の席に着く。
ライヴのスタート
開演7時を5分ほど過ぎて客電が落ち、クラプトンを先頭にメンバー登場。
それまでの目撃情報から、「クラプトンはジャージだった」話にウケていたのだが、この日は、ちゃんとベストを着て、きっちりと決めているように見えた。
しかし、後からの情報によると、「最終日も下半身ジャージだった」話あり。
いかんせん2階最後方列。よく確認できなかった。
01. Somebody’s Knocking on My Door
02. Key to the Highway
03. Hoochie Coochie Man
04. Next Time You See Me(Vo. Paul Carrack)
05. I Shot the Sheriff
06. Circus
07. Nobody Knows You When You’re Down and Out
08. I Dreamed I Saw St. Augustine
09. I Will Be There
10. Cypress Grove
11. Sunshine State(Vo. Dirk Powell)
12. Gin House(Vo. Andy Fairweather Low)
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads
15. Little Queen of Spades
16. Cocaine
(Encore)
17. High Time We Went(Vo. Paul Carrack)
1曲目は「Somebody’s Knocking on My Door」。
渋くズルズル引き摺るようなブルース・ナンバーだけど、ロイヤル・アルバート・ホール公演のCDを聴いて、結構気に入ってた曲だったから嬉しい。
地味なんだけど、ジワジワと来る。
「Key to the Highway」は、デレク&ドミノス時代のヴァージョンがすごく好きなのだけど、今回のヴァージョンは当然アレンジも少し違っていて、さらに明るくラフな感じに。
しかし、ここで問題発生。
強烈な眠気が襲ってきたのだ!
朝起きた時から嫌な予感はあったのだけれど、早くもそれが的中してしまった。まだたったの2曲目なのに、だよ?
客席はおっさんおばさんが多いから、アリーナ席も含めて全員が座ったままでの鑑賞。だから不安だったんだ。やっぱり立見席にすべきだったか。
皮肉な事に、今回はブルース大会。
ノリのいいロック・チューンと違い、単調なリズムのブルースは、最良の子守唄となった。
この後僕は、睡魔との格闘の下にこのライヴを味わう事となる。
「Hoochie Coochie Man」も、どブルース。
気合を入れて歌うクラプトンのヴォーカルに耳を傾けようとするのだが、さらに深い眠りに誘われるようだ。
ポール・キャラックが歌う「Next Time You See Me」。知らない曲。
クラプトンが歌うんじゃないのか、ってだけで、どんな曲だったか全く記憶に残ってない。
イントロの数フレーズを聴いただけで、なんの曲かわかった「I Shot the Sheriff」。
渋めのセットリストの中では、聴き所と言えるヒット曲。
でも、サビの印象的なフレーズを女性ヴォーカリストたちが歌うのはなんだかなあ。クラプトンにシャウトしてほしいのに。
ここから、クラプトンはアコギに持ち替えてのアコースティック・コーナー。
まずは「Circus」。
これが、思いの外、良い曲だった。ちょっと切ない感じ。これも亡くなったコナー君について書かれた曲じゃなかったっけか。
たしか持ってるアルバムに収録されてたはずだけど、どんな曲だったっけ?という認識だったので、今回好感を持てたのは良かった。後でアルバム聴き直すのが楽しみ。
結果的に、今回のライヴで一番印象に残ったのがコレ。
「Nobody Knows You When You’re Down and Out」もブルースで、デレク&ドミノスのヴァージョンは好きだけど、今回はアコースティック・ヴァージョンだから、かなり印象が違って別の曲みたい。
で、ここからは知らない曲がズラッと並ぶ。というか、NEWアルバムからの曲3連発、「I Dreamed I Saw St. Augustine」「I Will Be There」「Cypress Grove」。
NEWアルバムは既に予約してあるので、はたしてどんな感じなのか期待はして臨んだのだが、いかんせん、僕の睡魔も絶好調。
クラプトンがヴォーカルじゃないのならいっそのこと...と、睡魔と闘うのは諦めて、思い切って目を瞑ったのが「Sunshine State」「Gin House」。
ダーク・パウエルやアンディ・フェアウェザー・ロウが歌うのを聴き流して、クラプトンのギター・ソロが始まると、カッと目を見開く、という感じ。
それにしても、眠い。
とても聴き馴染んだイントロが流れて大歓声。
あまりの歓声の大きさに、サプライズで「Tears In Heaven」が始まったのかと錯覚してしまったのだが、「Wonderful Tonight」。
え、もうこの曲なのか。
中盤はズラッと知らない曲が並んでる印象があったのだが、ほとんどうたた寝状態だったため、まだ2曲くらいしか聴いてない感じだった。でも、5曲も終わってた。
で、「Wonderful Tonight」。
しっとりと、うっとりと聴きたい所なのだが、Aメロがちょっとレゲエっぽくアレンジされてるので、ちょっと悲しい。
オリジナルのメロウなバラードという雰囲気が損なわれているようで、少し残念なアレンジだ。
「Crossroads」も、クリーム時代の、スリリングでスピード感抜群のヴァージョンに比べると、ゆったりとして、よりブルース感が増すアレンジで、個人的には残念な変更。
クラプトンのギター・ソロも迫力や緊迫感がない。これは、よりオリジナルに近い形なのかなあ。オリジナルって聴いた事ないけど。
「Little Queen of Spades」も、「ど」の付くほどのブルースで、しかも長尺。
「Have You Ever Loved A Woman?」みたいな雰囲気で、嫌いではないんだけどね。
ここはじっくりクラプトンのブルース・ギター・プレイを堪能したい所だった。だったけど、睡魔がそれを邪魔をする。
やっと、はっきりと意識が覚醒したのが「Cocaine」。
何故ここに来て覚醒できたのかはわからない。でも眠気は吹っ飛んだ。
それと時を同じくして、ここでアリーナ席の観客が立ち始めた。1階席・2階席はみんな座ったままだったけどね。
でも、なんとかここでようやくロック・コンサートらしくなってきた感じはあった。
最後の観客全員による「コケーン!」コールにも参加できた。
これにて本編終了。
アンコールは「High Time We Went」。
最後の曲だというのに、リード・ヴォーカルがクラプトンじゃない、ってのが納得できない。
じゃあ、その分、素晴らしいギター・プレイを聴かせてくれるのか?と思いきや、ほとんどコード・バッキングで、目立ったソロ・プレイもなし。
嫌いではないけれど、特に盛り上がるような曲でもないし、どうしてこの曲がライヴのラスト曲に選ばれるのか、まったく理解できない。
一礼して、ちょっと手を挙げただけで、サッサとステージを下りるクラプトン。
このあと少し、会場が暗くなったので、まさかのダブル・アンコール?サプライズ?と一瞬期待したのだが、パッと客電が点いてライヴ終了のお知らせ。
会場からはドッとため息が出たように思われた。
残念無念。嫌な思い出のライヴになってしまった
そんなわけで、ライヴ終了。
約1時間45分。
ライヴの時間のほとんどを睡魔と闘ってた僕は、このライヴの事をどうこう言える資格はないのかもしれない。
当然、見逃したり、聴き逃した事はいっぱいあると思う。
間違ってるかもしれない。
でも、そんな僕の事情を差し引いたとしても、「今回のクラプトンは素晴らしかった」とは言えないと思うんだよね。
これだったら、ジョージ・ハリスンとのライヴでやった時の、たった4曲のクラプトン・コーナー。あれの方が短かったけど、ずっと素晴らしかったし、満足できた。
今回は最後方列で、大きなモニターもないから、クラプトンの姿は小さい。ギターを弾く指使いなんてほとんど見えない。スローハンドどころかストップハンドのように動きが見えない。
クラプトンの炎のようなギター・ソロは堪能できなかった。
「観客に媚びないセットリストで、素晴らしいプレイを聴かせてくれた」という意見もあったのだけど、どうも、やっぱりそう思えない。
前回と半分が同じセットリスト。
今回の5公演すべてが同じセットリスト。
観客の望んでるものを拒否するかのようなセットリスト。
17曲中、4曲もクラプトン以外がリード・ヴォーカル。
ライヴ決定時から、追加公演は絶対にないと断言されてた。
MCも、まったく無し。「Thank You」とは言ったけれど、「アリガトー」とか、日本語で挨拶するような所は無し。日本語どころか、英語でのMCすらないのだから驚いた。
ライヴの最後には、ステージ前方でメンバー全員が並んで肩でも組んで挨拶するものが当たり前だと思ってたけど、そんな場面も無し。
演奏が終わると、サッサと引き上げてしまった。
もしかしてクラプトン、本当はライヴなんてやりたくなかったんじゃないか?
日本になんか来たくなかったんじゃないか?
手抜きにも感じる、やっつけ仕事のような雰囲気。
ファン・サービスという言葉はまったく感じられなかった構成、姿勢。
クラプトンは親日家だとずっと言われてきたけれど、今回のクラプトンからは、それを感じる事はできなかった。
ライヴなんて本当はやりたくない。
断れない事情のある仕事だから、仕方なくやってるんだ。
そんな印象を受けてしまった。
いつもクラプトンのライヴはこうだったのだろうか?クラプトンの態度は前からいつもこうだったというのなら、僕の思い違いだけど。
しかし、眠ってしまった自分にも失望したけど、クラプトンにも失望してしまったというのが本音だ。
みんな、このライヴで満足したのだろうか?
無言で、足早に会場を後にするファンが多かったように思えるのは気のせいか。
僕としては、残念なライヴだった。
せっかくのクラプトンなのに。
こんなはずじゃなかったのに。
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