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『John Lennon / Plastic Ono Band』
ジョン・レノンの、重たいアルバムだ。
赤裸々。叫び。痛み。孤独。血。
激しい、苦しい、寂しい...フッと思い浮かんだキーワードを並べてみると、やっぱり重い。
この重さがキライな人もいるだろう。この重さが好きな人もいるだろう。
でも、ジョンが歌えばロックになるんだな。アレンジがシンプルな分、すべてがストレートに響いてくる感じだ。
「Mother」の冒頭の鐘の音からして重いもん。怖くなるもん。それが既にこのアルバムの色を表してるよね。
それに続くのは痛々しい程の叫び。
すごいよなあ...と思いつつも、続けて何度もは聴けない...。
で、「Mother」で気持ちがどんより重くなった後だから、「Hold On」がやけに安らぐ。
でも、間奏でのジョンの突然の一言(なんて言ってる?)がやけにリアルでビックリ。また怖くなる(笑)。
左右のスピーカーから分かれて聴こえるジョンのヴォーカルも好き。
このアルバムは、作品全体がロックだと思っているけど、とりわけストレートでアップテンポ、いかにもロックなのが「I Found Out」や「Remember」、「Well Well Well」。
どれもリンゴのドラムが力強くてカッコいい。
これらの曲の存在が、この作品をロック・アルバムとして強烈に印象付けていると思う。
「I Found Out」はグチャグチャ聴こえるギターが好き。
「Remember」は、突然爆発音で終わって、なんだかスッキリ(笑)。
「Well Well Well」はヘヴィなギター・リフが印象的で、ジョンのヴォーカルも激しい。
このアルバムで一番初めに好きになったのが「Working Class Hero」。
ギター一本での弾き語り、マイナー・コードでつぶやくように歌うのはボブ・ディランの影響か。
「Isolation」もまたいいね。
ゆったりした流れの中から徐々に昂揚していって。
段々と力が入っていくサビ、絞り出すような叫びも好き。
ピアノとギターによる弾き語り「Love」は極々シンプルなバラード。
綺麗なメロディだなとは思いつつも、単純なフレーズの繰り返しだったので、初めはとりたてて好きではなかったんだけど、ある日突然好きになったんだな。
こんなシンプルなのにどうしてここまで入り込めるんだろう?と、自分でも不思議に思った。
悲しげな曲なんだけど、光が見えるんだよね。ちょっと辛い事があった時とか、フッとこの歌詞を思い出す事がある。
「Look At Me」は、「Dear Prudence」「Julia」あたりを髣髴とさせる。
これも聴いてて寂しくなるなあ。
で、「God」。
イントロあたりは割とポップなんだけどなあ。
タイトルといい歌詞といい、こういう曲をシングルにしてしまうんだから、そりゃあ色々問題になったろうなあ。
「♪ I don’t believe...」のくだりは、初めは「長いよ!」とか思ってたけど、段々この繰り返しが気持ちよくなるんだよね。
ラストは「My Mummy’s Dead」。
冒頭で一所懸命母に向かって叫んだけれど、結局母は死んでしまったのだ...と、寂しく歌っているジョン。
音がチープになっていて(カセット・テープでの録音?)、なんだかジョンが子供の様に思えてしまう。
近年はボーナス・トラックとしてシングル曲が追加。
「Power to the People」は、初めはキライだったんだよね。
いかにも煽ってます、って感じの曲だから。
みんなで「♪パワ~ッ...」って大合唱モードがね、キライだった。
でも、ミドルの「♪ Say we want a revolution...」というジョンのソロ・パートはカッコいい。
リズム隊との絡みが最高。
「Do the Oz」は、ジョン流ブルース・ロックに、例のヨーコの奇声がバックでいななく訳だが、結構僕はこの奇声好きだったりするんだよね(笑)。
初めてこのアルバムを聴き終えた時は、ドッと疲れるんじゃないかと思う。
でも、それがこのアルバムのポイントだとわかった人は、きっとこのアルバムを好きになっているだろう。
(2024.8.19)
名義とタイトルが逆?
コレ、ジョン・レノンのソロということになってるけど、実は Plastic Ono Band 名義の『John Lennon』というテーマ・タイトルのアルバムではないかと思うんだ。
同じ Band 名義で『Yoko Ono』というテーマ・タイトルのアルバムも作ったと考えれば腑に落ちるのですが、どうでしょう。
(2024.4.29)
「生々しい」「剥き出しの」という表現がピッタリな、ギター、ベース、ドラム、ピアノと極力シンプルなサウンド。
ビートルズの原点回帰 Get Back Session はポール主導だったぽいけど、あれが中途半端に終わったことで、その続きをジョンがやったかのように思える。
(2024.5.9)
『Imagine』
一番ポップなジョン・レノンのアルバム。
前作の重たさから考えたら信じられないくらい。
前作で心の底から叫び、心情を吐露した事によってスッキリしたのか。
これでようやくゼロから始める事ができたかのような、穏やかなジョンの心持ちが見て取れる。
もちろん、前作のようなハードな曲も存在する。
「It’s So Hard」「I Don’t Want to Be A Soldier」「Gimme Some Truth」「How Do You Sleep?」...と、実は「かなり」ある。
しかし、ブルースにも根差したそれらの曲の持つハードな雰囲気は、アルバム全体の印象として強くは残らない。
前作で感じたような重さとはどこか違うんだよね。
よって、印象として残るのはやはり、穏やかで優しいジョンなのだ。
その筆頭とも言えるのが「Imagine」。
僕も、ビートルズを意識する前から、なんとなく知っていた曲だった。
それで、ビートルズを好きになってから改めて聴いてみて、いい曲だなとは思ったけれど、正直、すぐに飽きちゃったかな(笑)。
そのメッセージも含めて、あまりに大々的に取り上げられている曲だからかもね。
でも、この曲が名曲である事には異論はありませんですよ、もちろん。
それよりも、すぐに好きになったのが「Jealous Guy」。
ジョンの大反省曲(笑)なのだが、これまた綺麗なメロディ。間奏の口笛もせつない。
「Imagine」よりもジョンの本質を表している曲だと思う。
「Crippled Inside」は楽しい気分になれる。
ジョージのドブロ・ギターが印象的。
「Oh My Love」は、前作の「Love」に似た、シンプルな作りのバラード。
ギターとピアノが美しい旋律を奏でて、それだけで泣きそうになってくる。
この曲を聴いてると、悲しさも感じるし、幸せも感じる。どうしたらいいのかわからなくなる程の名曲だ。
「Love」はベスト盤に収録されるのは当然なほど有名なのに対し、この曲の方はなんとなく過小評価されてるように思えた僕は、一時期、「Love」よりもこっちの方がいいぞ!と事あるごとに訴えていた。
それから、初めはなんとなく地味に思えて素通りしてしまっていたんだけれど、実はとんでもなくいい曲だったのが「How?」。
これまたとびきり優しいジョンだ。
ストリングス・アレンジも感動的で、いつのまにかアルバムの中で1~2を争うほど大好きな曲になってしまった。
とびきり明るくてポップなのが「Oh Yoko!」。
曲全体がキラキラしているように思えるんだよね。
このアルバムがこの曲で終わる、というのも、意味があるように思う。
というわけで、とにかく聴きやすいと思う。
なので、初心者に一番初めに薦めるとしたら最適と思えるのがこのアルバム。
(2024.8.21)
生々しいエネルギーだった前作から一転、とても聴きやすいアルバム。
超有名曲、ヘヴィなロックンロール、穏やかな曲、弾けた曲。
そして、ヨーコへの愛を内に秘めておけず、全世界にさらけ出したくて仕方ないジョンが愛くるしい。
そう、やっぱりこれは愛のアルバムだ。
(20242.5.15)
『Sometime In New York City』
平和な世界を願う思いが先鋭化し、一気に政治色が強くなったアルバム。
ヨーコの曲がジョンのアルバムの中に侵食してきた。
ロックンロール「New York City」で尖る一方、「The Luck of the Irish」の美しいメロディにホッとする。
ちょっと散漫な出来かも。
(2024.5.24)
『Mind Games』

いつのまにやら邦題が『ヌートピア宣言』から『マインド・ゲームス』になった。それはそれで健全な姿(?)になったかと言えるかも。
なんとなく、地味な存在感のジョン・レノンのアルバム。
ビートルズ・ファンであっても、このアルバムを聴いた事ないという人は多そう。
政治的な歌詞の曲と、ヨーコへの愛の曲とが混ざり合っている。
たしかに、一般的な目から見れば、いまひとつ「パンチの足りない」曲ばかりなのが人気のなさの原因か。
さらにジャケットの趣味の悪さが輪をかけて(笑)。
でもね、ちゃんと聴けばいい曲だよ。みんな。
地味とは言っても、唯一、皆に知られてるであろう「Mind Games」でスタート。
なんだかんだ言っても良い曲。「Imagine」よりも僕は好きだけどなあ。
ストリングスの使い方も感動的だし。途中、ギターがレゲエのリズムを奏でる。ジョンはこの頃からレゲエに注目してたんだね。
少年時代、サビの言葉はある意味ドキドキして聴いてた(笑)。
一番好きなのが「Intuition」。
ベースの弾ける音に始まる「♪ ヘヘヘエ~イ」というリズム、メロディがたまらない。
間奏のピアノ・ソロもつぼを突いてくる。
この1曲がある限り、僕はこのアルバムを支持しますと言っても過言ではない。
そして、ラストの「Meat City」がめちゃくちゃカッコいい。
このアルバムでは唯一のハードなロックン・ロール。
ジョンの本領発揮。
...が、このアルバム自体が地味なためか、ファンの間でもこの曲の事はあんまり話題にならない。忘れられた(?)名曲だ。
ファルセットとコーラスが印象的な「One Day」は、透明感を感じるバラード。
パワフルに酔える「Bring on the Lucie」。
よく聴くと、「そっか、この曲もレゲエだったのか...」と気付く。
「Sexy Sadie」的な味わいの「Out The Blue」。
いいメロディだなあと心から。感動的なアレンジもマル。
「I’ve Got A Feeling」的イントロで始まるのは「I Know」。
トロピカルな「You are Here」は穏やかな気分に浸れる。
後の「Beautiful Boy」に通じるかな。歌詞も「over the ocean」とか入ってるし。
他にも、あいすいませんと日本語でヨーコに謝る「Aisumasen」は面白いし、
ブギの「Tight A$」「Only People」は、楽しくノれるし...と、改めて聴いてみても、やっぱりいい曲多いよ。地味ながらも(笑)。
曲のイメージとしては、後の『Double Fantasy』に通じるものがあると思う。
だから、『Double』みたいなジョンが好きな人はきっと気に入るんじゃないかな。
優しいジョンが味わえます。
(2024.8.23)
政治的活動には少し疲れたのかもしれない。
前作のような先鋭的な面は影を潜め、『Imagine』の世界観に立ち戻り、スピリチュアルな作品。
「One Day」「Out the Blue」などメロウな曲が目立つも、クールで小気味よい「Intuition」やハードなロックの「Meat City」に痺れる。
(2024.6.5)
いつのまにかUltimate Collectionとやらが出てまして。
たくさんあるミックス違いは、僕に違いがわかるか不安だったので、アウトテイクだけ聴いてみました。
もともと地味目なアルバムだけど、装飾の少ないサウンドが、むしろシンプルでロックぽくなってて。
ジョンはリラックスして、穏やかな歌声。
「One Day」がファルセットじゃないのが新鮮。
アルバム随一の攻撃的な「Meat City」でさえ優しい感じ。
アウトテイクというよりも、スタジオ・ライヴを聴いてるようだった。
このアルバムの奥深さに気付いて、さらに好きになったような気がする。
(2024.7.18)
『Walls And Bridges』
ヨーコと別居、酒に溺れながらの日々を過ごしている時に録音されたとあって、このアルバムに表れているのはジョン・レノンの「弱さ」。
メロウでファンキー、一番好きなアルバムだ。
もちろん、ジョンは意識して弱さを出そうとしてるわけじゃない。むしろ、そんな弱さを悟られないように強がってみせてるようでもある。
ホーン・セクションやストリングスを多用して派手なサウンドに仕立てているのが「強がり」に思えるんだよね。
でも、いつものように(?)ポロッと正直な胸の内を出している部分があって、結局はそんなジョンの寂しさ・辛さがアルバム全体を覆ってしまっているのだ。
それが一番表れていると思えるのが「Going Down on Love」だと思うのだが、どうだろう。
パッと聴くと、力強いリズム、「♪ going down on love~」での力の入れ方。
でも、どこかパンチ力不足という感じで、ホントは弱ってます、みたいな。
「♪ somebody please~」の所とか、大好きなんだよね。
なんかもう、1曲目からメロメロじゃん(笑)。
で、エルトン・ジョンが一緒に騒いでくれる「Whatever Gets You Thru the Night」では、束の間のカラ元気(笑)。
力強いハモりでノリが良くていいよ。
で、「Old Dirt Road」はメロウで素晴らしい曲。
ピアノの音も美しい。道は枯れてても感じるこのしっとり加減はジョンの涙か。
アルバム中、唯一、素直にカッコいいと言えるのが「What You Got」。
印象的なリフ、ブラス・セクションと共にジョンの力強いシャウトがこだまする。すごいカッコいい。
「Bless You」はせつない。
「♪ Bless you」って言ってるのにせつない。イントロが聴こえただけでせつない。やっぱり愛する人が側にいないからだな。
Bless youと言っても、その声は届かないのをわかってて言ってるBless youだから、せつなく響くんだな、きっと。
そして、狼の遠吠えが聴こえてくる「Scared」では、我慢できなくなってついに泣き出す。「怖い」って。
この曲も大好きなんだよなあ。
このアルバムは全曲好きなんだけど、一番を選べと言われたらこれかなあ。
怖いよって言いながら、力強いサウンドにしてるでしょ?後半ではシャウトしてるし。弱い気持ちを力強いサウンドで誤魔化す。こういうところが好きなんだよね...。
怖い夜をなんとかやり過ごし、B面は「#9 Dream」でスタート。
ホントに夢のような、気持ちよい曲。ファルセットで歌うサビは最高でしょ。
「Surprise, Surprise」は、ファンキーで明るい曲なのかと思ったら、途中でメロウなメロディが入る。
ヴォーカルも、いい意味でヘロヘロ。
「Steel and Glass」は、ボブ・ディランのようなマイナー・コードの曲。
途中からはファンキーになってきて、「♪ New York ta~~~~~~lk」と永遠に続くかのような伸びが気持ちいい。ここでもブラスが大活躍。
「Beef Jerky」はカッコいいインストゥルメンタル。
ちょっとウイングスっぽいかも?
「Nobody Loves You」もまた、メロウな流れに力強いシャウトが入るという、このアルバムのお得意パターン。
孤独を感じる曲。
ジョンが「俺ってしょうがねえ奴だなあ...」と半ば自分に呆れながら歌っているように思える。
ラストの「Ya Ya」は、少年ジュリアンがドラムを叩いていて微笑ましい。
ジョン、最後は息子に助けられちゃったよ(笑)。
こういう弱気なジョンが嫌いで、当然このアルバムも好きじゃない、という人もいるでしょうが、僕はここで見れるジョンが一番好き。
弱音を吐いて、強がり言って...全曲好きだね、このアルバムは。
そして、邦題がみな秀逸すぎて好き。
こういうのも大切に残してほしいなあ。
(2024.8.24)
ジョンの不安な気持ち、弱い部分がメロウなメロディとなって現れていて、一番好きなアルバム。
そんな弱気を吹っ飛ばす曲として、エルトン・ジョンとの「Whatever Gets You Thru the Night」以上に「What You Got」がファンキーでクレイジーなロックンロール。
(2024.6.14)
ジョン・レノンのソロ・アルバムで、僕が一番好きなのがこの作品。
だけど、実は、長い間このCDを持ってなかった。
というのも、理由が2つあって、まずは、最初にこれはレコードで買ったという事。
だから、全曲知っている。
そして、CDとしては、90年にリリースされた『Lennon』という4枚組BOXセットを買ったら、その中に、このアルバムの曲のほとんど(12曲中9曲)が収録されていたという事。
外れた3曲のうち1曲はインスト、1曲は即興演奏なので、まともな歌モノは1曲のみだった。
だから、わざわざこのアルバムを単体で買う必要性が少なかったのだ。
『Lennon』を持っていたお蔭で、長い間ジョンのソロを単体で買う事はなかったのだが、2000年代に入って、『Imagine』を皮切りに、少しずつリマスター盤がリリースされたので、それらを順番に購入していって、いずれは『Walls And Bridges』のリマスター盤が出るのを楽しみにしていた。
しかし、いざ、このリマスター・シリーズが『Walls And Bridges』の番になった時は、暗黒のCCCD時代。
CCCDじゃあ、とても買えないよ、というわけで、ますますこのアルバムとも縁遠くなってしまったのだ。
だけど、ジョンのソロで一番好きなアルバムなのに、CDを持ってないのはどうよ?という思いはずっとあったし、なんと言っても、大好きな曲「What You Got」が、『Lennon』には未収録で、この曲を聴きたければ、このCDを買うしかないという事で、いつかは手に入れたいなあと思ってはいた。
そして、このアルバムを購入する機会は突然現れた。
HMVに行った時に、1000円セールの一環で、このアルバムが置いてあったのだ。
しかも、10年の最新リマスター盤。
ようやく、大好きなこのアルバムをCDで買う事ができた。
74年リリースの作品で、邦題は『心の壁、愛の橋』。
このアルバムの曲名に付いた邦題はどれも素晴らしいと思う。
「Going Down On Love」はパーカッションの響きと共にゆったりと始まる。
時折入るピアノのフレーズも美しく、ジョンの歌声は優しさと力強さが同居している。
「Whatever Gets You Thru The Night」は全米No.1にもなった、エルトン・ジョンとのデュエットのロック・ナンバー。
ホーンも効果的に煽っていて、二人ともテンションが高く、注意して聴かないと、どちらがジョンでどちらがエルトンの声なのか聴き分け辛い。声質が似てるのかなあ。
「Old Dirt Road」もピアノとストリングスが美しく響き、ジョンの声が優しい。
「What You Got」は、この曲のためだけに、このアルバムを買ったと言える大好きな曲で、リフがカッコ良く、ジョンが一番ハイテンションで叫びまくってるファンキーなナンバーだ。
もっと評価されていいと思うのだが。
「Bless You」でのジョンの女々しく聴こえるヴォーカルもたまらない。
イントロからもう切なくて、アコギの音も印象的だが、エレピがいいフレーズを奏でている。
「Scared」は、その名の通り、不安に駆られている様が表現されている曲で、超やるせないメロディ。
そしてホーンが煽りまくる。
ヨーコと別居していて、不安定な生活をしていたジョンの様子が感じられる。
「#9 Dream」は、極限まで優しくフワフワした曲。
「Scared」の後だから余計にホッとする。サビなんて特に気持ちいい。
最初に聴いた時は、テンポを上げた「Jealous Guy」みたいだなあと思った。
途中に入る囁き声がヨーコの声に聴こえるのだが、この時はヨーコとは別居していたので、メイ・パンではないかという説もあるらしい。
「Surprise, Surprise」はイントロのギター・リフが印象的。
テンポはゆったりしてるけど、明るい感じの曲だ。
「Steel And Glass」はアコギのストロークがフェイド・インして始まる所からしてカッコいい。
ジョンの伸ばしまくるヴォーカルが魅力的。
「Beef Jerky」はインスト。
ブルージーなロック・ナンバーで、ギターとホーンががんばっている。
ポールの曲にもこんなフレーズの曲があったような...。
インストは苦手な僕だけど、これはなかなかカッコ良くて味わいがあると思う。
「Nobody Loves You」はフランク・シナトラを意識したというだけあってスタンダード・ナンバーの趣き。
優しく歌っていたジョンが、後半、突然シャウトする件は感動的。
「Ya Ya」はおまけみたいなものか。
まだ子供のジュリアンが叩くドラムに合わせた即興演奏で、1分程で終わる。
とにかく、一番好きなアルバムとあって、どの曲も大好き。
どれも一聴した時から気に入ったし、何度聴いても感動できる曲揃い。
ヨーコと別居しているせいで、落ち込む一歩寸前で踏みとどまり、それでも優しく強く生きていくというような決意が垣間見れる。
まあ、同時にダメ人間・ジョンの側面も見れるけど(笑)、そこがこのアルバムの魅力。
(2024.9.14)
『Rock’N’ Roll』
僕はオリジナル至上主義のところがあるし、60年代以前の音楽にあまり興味が持てないので、このカヴァー・アルバムを聴き返す機会はあまりないのだけど。
「Slippin’ And Slidin’」とか爆発的にスリリングだし、圧倒的なジョンのヴォーカルを堪能するのに最適かも。
(2024.6.26)
『Double Fantasy』

ジョン・レノン、5年間の沈黙を破っての復帰アルバムは、オノ・ヨーコとの連作。
もうジョンは音楽においてもヨーコと一体となった。
「Kiss Kiss Kiss」は「あなたぁ、抱いてよぅ」との声で始まる、日本人にとっては赤面せざるを得ない曲。
その後も「抱いて」を連発、その喘ぎ声は激しいものになっていく。
日本人はこれは恥ずかしくて家族などと一緒に聴くのは気まずいけれど、日本語がわからない人たちにとっては、この「抱いて」のセリフはどう感じるのだろうか。
ただ!
この曲のサウンドは素晴らしい。
キレのいいギター・サウンドが非常にロックしている。
歌詞、サウンド共に攻めまくっている。
「Give Me Something」もまた、シャープなリズムで抜群の切れ味なニューウェーヴ・サウンド。
鋭いギター・ソロにも燃える、狂気漂うロックンロール。
ジョンの「I’m Losing You」がフェイドアウトしていったかと思ったら、そのままメドレー的に始まる「I’m Moving On」。
繋ぎのギターのフレーズがめちゃくちゃカッコ良くて、いつも痺れる瞬間。
繋がってることもあって、サウンドもメロディも、ジョンの曲とは双子の関係。
「Yes, I’m Your Angel」はディキシーランド・ジャズか。
小粋でお洒落な感じすら受ける。
バーでお酒を飲みながらステージに見入っているお客の顔が目に浮かぶようだ。
「Beautiful Boys」は、ちょっとおどろおどろしくヨーコが歌う。
美しい男の子たち...夫と息子への子守唄か。
それにしては重い。
このアルバム、ジョンとヨーコの曲が交互に登場しているのだけれど、A面最後がジョンの曲なのに、B面最初もジョンの曲になったせいで、アルバムの最後にヨーコの曲が2曲連続になってしまうという。
なんだか、ちょっとバランスは悪いんだよねえ。
「Every Man Has a Woman Who Loves Him」は、とにかくこのビートの刻み方が心地良い。
秀逸なメロディをヨーコがフワフワした声で歌う。
「Hard Times are Over」はスタンダード・ナンバーかのような、オーラス感漂うダイナミックな曲で大合唱。
しかし、この曲名。実はこの後にHard Timesが待ち受けているとは...皮肉すぎる。
というわけで、ヨーコの曲を採り上げてみた。
このアルバムを聴く時、ジョン・レノン・ファンは「ヨーコの曲は飛ばして聴いた」という人がほとんどだろう。
実際に、どこへ行ってもそんな声が多く聞かれる。
だけど。
僕は、このアルバムのヨーコの曲が大好きだ。
飛ばして聴くなんて、とんでもない。
なんせ、ジョンよりもロックンロールしてるのだから。
穏やかで優しい曲が目立つジョンに比べて、ガンガンに攻めた姿勢のヨーコがカッコいい。
ヨーコの曲が先鋭すぎて、ジョンの曲に安心感を憶えてしまうという。
ロックンローラー・ジョン・レノンはどうした?
喘ぎ声はあったけれど、お得意の奇声のようなものは繰り出さず、割と真面目に歌うヨーコ。
アヴァンギャルドではなく、ロックになったヨーコ。
70年代前半に出してた曲に比べたら、グッとレベルが高くなって。
初めは、ジョンが作った曲?とすら感じるまでに、ヨーコの作曲能力は上がっている。
そして、そんな攻めたサウンドを作りだせたのは、デヴィッド・ボウイのバックでもお馴染み・アール・スリックや、後にキング・クリムゾンに加入することになるトニー・レヴィンなど、名うてのミュージシャンたちの演奏あってこそだ。
ヨーコの曲は過小評価されている。今でもだ。
しかし、あのジョンが、自分との連作でのアルバムにしたんだ。
そうしたいと思えるほどの才能がヨーコにはあると認めてたってことでしょう?
ジョンのファンなら、ジョンの考えを尊重し、もっとヨーコの曲に注目してほしい。
このアルバムのヨーコは、カッコいい。
だから素晴らしいジョンとヨーコのアルバムだ。
(2024.9.5)
『Double Fantasy Stripped Down』
2010年、ジョン・レノン&ヨーコ・オノ『Double Fantasy』の新装版がリリースされた事は当時まったく知らなかった。
後になって、あれ?いつのまにかジャケット変わったの?くらいで。
でもどうせ、ヴォーカルと楽器のバランスをちょっといじったくらいのリミックスなんでしょ、と全く興味を持てないでいた。
しかし、ジョンの事を取り上げているブログの中で「この『Stripped Down』はアリだ!」という記事を見つけて、へえ~と思いながら試しにネットで少し聴いてみると、たしかに、なんか違うぞこれ、と途端に興味が湧いてきて、慌ててレンタルしてきた。
「Starting Over」。
鐘の音がなくセリフから入る。
ジョンのヴォーカルも今までより生々しく、女性コーラスなどが入ってない。
演奏も力強さが増して聴こえていて驚いた。
後半のヴォーカルは完全に別テイクで、スキャットが入っている。
最後もフェードアウトじゃなく、ちゃんとエンディングがあるのも嬉しい。
1曲目からしてこの違い。やはりオリジナル版とは別モノ。
聴いてみて良かった。
「Kiss Kiss Kiss」。
「ねえ あなた 抱いて もっと」というヨーコの喘ぎ声の連発に、日本人は恥ずかしくて大音量では聴けないだろうな。言葉がわからない外国人は割と自然に聴けるのだろうけど。
でも僕は、そんなヨーコのぶっとび加減にすごいやられた。カッコいいと思った。断然支持する。
「Cleanup Time」。
これも冒頭からジョンの歌い方が違う。
メロウなAメロに力の入ったサビのヴォーカル。
ハネた感じのリズムの刻み方が心地良くて好きな曲。
「Give Me Something」。
ギター・ソロがカッコいい。ここでもヨーコが攻めてる。
「I’m Losing You」。
ここでは新しくギターがやや歪んだリズムを刻んでる。
不安を表現した曲で大好き。
終盤また明らかに違う歌い回し。
「I’m Moving On」。
オリジナルでは前曲からメドレー形式になってて、その繋がり具合が見事で痺れるんだけど、ここでは前曲とは分断されてた。
でもやはり前曲とは2つで1つの曲という気がする。
「Beautiful Boy」。
ヴォーカルが前面に出て、まさしく耳元で歌っている子守唄の様。
不安を取り除く歌。
「Watching The Wheels」。
ジョンとヨーコの曲が交互に続いてきたのに、ここからB面という事で1曲目はまたジョンの曲。
どうせなら完全に交互にすれば良かったのになあと思う。
CDだとなおさらそのコンセプトの崩れ具合が気になる。
これは一見地味なんだけど、サビではポップな展開で、優しく物事を見守る、成り行き任せ的な雰囲気が魅力。
「Yes I’m Your Angel」。
ヨーコにしてはオーソドックスなミュージカル風。
ジョンとヨーコの優雅なダンスが目に浮かぶ。
「Woman」。
アコギの音がよく目立つ様になった。
まるで数日後にライヴが控えてて、そのリハでも聴いている感じのライヴ感。
「Beautiful Boys」。
イントロは日本の演歌みたいになった。
そのためかちょっとドロドロした感じのヨーコのヴォーカル。
「Dear Yoko」。
リラックスした、すごく楽観的な様子の曲で、ヨーコへの信頼感に溢れている。
なにかにつけてヨーコ、ヨーコと言うジョンが微笑ましい。
「Every Man Has A Woman Who Loves Him」。
オリジナルのノリのいい感じが好きな曲だったけれど、ここではドラムなしで浮遊感あふれる不思議な味わいの演奏になっている。
小気味いいロックがバラードに生まれ変わっており、全曲中、これが一番大きな変化を遂げた曲と言っていいだろう。
ヨーコの曲なんだけど、オリジナルよりもジョンのヴォーカルを大きくしており、ジョンとヨーコのデュエットという感じが増している。
「Hard Times Are Over」。
オールドタイプのロッカバラードという感じで、スタンダードとも言えそうなこれをヨーコが作ったというのも驚き。
ここでもジョンのヴォーカルが大きくなっていて、デュエット感が増している。
それにしてもこの『Stripped Down』、聴いて良かった。
こんなにいいものだとは思いもしなかったよ。
もうジョンの音源は出尽くしたろうと思ってたけど、まだこんないいものがあったのかという感じ。
余計なものを排除して、ソリッドでシンプルな演奏になって、ヴォーカルは生々しい迫力。
しかもヴォーカルは別テイクが多かったみたいだし、その違いの多さに驚いた。
まるで、ジョンはまだ生きていて、もう一度このアルバムを録り直したかの様な感じだった。
聴き慣れてたアルバムも、これだけ違いがあるといい気分転換になったし、まだ聴いた事のない人は、是非聴いてみるべきだと思う。
これを聴いて、『Double Fantasy』というアルバムがますます好きになった。
ジョンとヨーコの共同作業の頂点だ。
(2024.9.29)
『Milk And Honey』
ジョン・レノンが『Double Fantasy』制作時にレコーディングしていた曲をまとめ、その前作と同じようにジョンとヨーコの曲が交互に現れる、姉妹の様なアルバム。
ヨーコが偉いのは、悲しみにくれてばかりいないで、ジョンが遺したものを、なるべく世に出そうと尽力してくれたことだな。
さすがヨーコ、強い。
このアルバムはジョンの死から約3年後に出ていて、夢の続きというか、ジョンの物語はまだ続いていたと思わせるような感慨にふけってしまう。
「I’m Stepping Out」はキラキラとして跳ねているサウンドで、それでいて優しさも感じる、ゴキゲンなロックンロール。
ああ、ジョン、生き生きとしてるなという感じ。
「Sleepless Night」は、前作の「Kiss Kiss Kiss」の様に、またヨーコの喘ぎ声!(笑)
でも、それほどハードではなく、マリリン・モンローのような可愛らしさがある。
「I Don’t Wanna Face It」はファンクなノリ。
どことなくデヴィッド・ボウイのような軽やかさがある。
「Don’t Be Scared」はヨーコのレゲエ。
「Nobody Told Me」はグラム・ロックを思わせるブギ。
「Borrowed Time」は「Mind Games」辺りを思わせる、ジョンの伸びやかなヴォーカルの魅力。
トロピカルなサウンドでレイドバックしてる。
「Your Hands」は、ジョンとのアルバムでヨーコがとうとう日本語で歌ってくれた、という感じ。
日本人としては嬉しいところ。
「(Forgive Me) My Little Flower Princess」はキレのあるギターの転がりに、やるせなく苦みのあるメロディに痺れる。
コレ聴くと、いつもキュッと身が引き締まるんだ。
「Let Me Count the Ways」は、ヨーコがピアノ1本で次のジョンの曲へ繋げているような感じ。
「Thank You」と歌っていて、ジョンに対する思いが見える。
「Grow Old with Me」は、ジョンが最後の最後に生み出した傑作バラード。
君と一緒に歳を重ねていきたいと歌ってるのに、間もなく世を去ってしまうことを考えると、涙なくしては聴けない。
優しさに溢れつつも切ないメロディには感動しかない。
正式なレコーディングではなく、カセットテープへのホーム・デモだけど、こうして録音してくれておいて本当に良かった。
ちゃんとレコーディングしてたら、どんなアレンジになったかも興味あるけど、この曲は、こんな形態だからこそ良さが光ってる気もする。
ジョンが作ったバラードの中で1番好きかもしれない。
ジョンは永遠だ、とも思う。
「Grow Old with Me」で感動的にアルバムを終わらせれば良かったものの、最後に「You’re the One」という妖しい雰囲気の曲を持ってくるあたりが、さすが攻めのヨーコ。
『Double Fantasy』に比べたら、やや見劣りはするけれど、ジョンとヨーコの共同作業、これまた良いアルバムとなった。
しかし、これらの曲は『Double Fantasy』に入れるに値しなかったボツ曲なんだろうか。
それとも、『Double Fantasy』収録曲が決まってから、アイデアが止まらず作り続けた、明確に次を見据えたものだったのだろうか。
『Double Fantasy』は、ヨーコの曲を飛ばして、ジョンの曲だけ聴いてたというファンも多いだろうけど、それならば、『Double Fantasy』と『Milk And Honey』のジョンの曲だけを並べてプレイリストを作れば、1つの純粋なジョンのアルバムになるね。
(2025.1.26)
『Menlove Ave.』
ジョン・レノンが亡くなってから6年後にリリースされた未発表音源集。
サブスクでも聴けないし、あんまり話題になることも少ないけど、僕は大好きなんだよねえ。
アンディ・ウォーホルによるジャケットも良い。
いつか大きなジャケットのレコードが欲しいな。
いきなり未発表オリジナル曲「Here We Go Again」が良い。
いかにも『Mind Games』や『Walls And Bridges』の頃の作風で、ロングトーンのヴォーカルを聴かせるメロディもジョンらしい。
さらには後の「Starting Over」に繋がるような香りもして。
優しさと力強さを兼ね備えたジョンの魅力でいっぱいの佳曲だ。
A面は『Rock And Roll』セッションの音源が中心なので、ロックンロールのカヴァー曲が多いけど、『Rock And Roll』は勢い勝負なところがあったのに対し、ここでの曲はじっくり聴かせるようなところがある。
派手でゴージャスなサウンドなのは同じだけれど、選曲漏れしたのは、そういう理由からアルバムのコンセプトからは外れてたということだろうか。
より好きなのはB面。
元々『Walls And Bridges』が大好きなので、そのリハーサル音源というのが興味深い。
どの曲も、まだ装飾を加える前のラフな感じのシンプルさが、『ジョンの魂』のような生々しさを思い起こさせて良いんだ。
アレンジに凝ってない分、ライヴ感があり、元々曲の持っているメロディの魅力がストレートに伝わってくる。
特に「Bless You」とか、切なすぎて泣けてきちゃうよ。
どの曲も『Walls And Bridges』完成版テイクと甲乙付け難く、リハーサル・テイクだからとバカにできないんだ。
(2025.2.13)
『Shaved Fish』

レコード会社との契約満了、ヨーコの妊娠などもあって、音楽活動に一区切りをつけることになったタイミングでの、ジョン・レノン生前唯一のベスト盤。
同年リリースしたばかりのカヴァー・アルバム『Rock ‘n’ Roll』を除き、すべてのアルバムから選曲された。
とは言っても、ほとんどシングル・コレクションと言っていいね。
ソロ活動初期はシングルでしか聴けない曲も多かったので、重宝したと思う。
ジョンの代表曲と言えるものを絞りに絞って、削りに削ったら、こんなんが出来ましたよ、という感じ。
ジャケットが素晴らしい。
収録曲の世界観をイラストにして並べてあって、それぞれを見るのは楽しそう。
日の丸も見える?
でも、僕はこのベスト盤、聴いたことないんだよね。
収録曲がもっと多い他のベスト盤を買っちゃったから、あえてこのベスト盤も買う理由がなくて。
サブスクにあるかと思ったら、ないし。
とりあえず、ジョンのソロの歴史をサラッと振り返るには、これくらいコンパクトにまとまってるのも魅力があるかも。
ジャケットのこともあるし、いつかレコードを安く見つけたら、買ってみてもいいかもしれない。
(2024.8.6)
『The John Lennon Collection』

ジョン・レノンのベスト盤『Shaved Fish』を買わなかった理由はひとつ。
僕はこちらのベスト盤を先に買っていたからだ。
ジョンの死から2年後に出た、このレコード。
まずは、死の当日に撮影されたというジャケット写真が目を引く。
哲学者のような目つきで、40歳とは思えないくらいに老けても見える。
これからを暗示するような悲壮な表情にも見えて、いろいろ考えさせられる写真だ。
EMIとゲフィンという2つのレコード会社から編まれた、オール・タイムのベスト盤。
当時は、こういうレコード会社をまたいでのベスト盤の制作は珍しいことだと思う。
17曲も入ってるのは嬉しいことだったけれど、後半に『Double Fantasy』からの曲が6曲もまとめて入ってるのがポイント。
ヨーコとの共作『Double Fantasy』のジョンの曲7曲中、6曲までも入ってたのだ。
レコード会社の兼ね合いもあったのだろうけど、これはベスト盤としてはバランスが悪いよね。
僕は『Double Fantasy』を買う前にこちらのベスト盤を買ったので、たくさんの曲が聴けるのは嬉しかったのだけど、そのせいで、僕が実際に『Double Fantasy』を手に入れるまでには、この後かなりの時間を擁してしまった。
まあ、それ以外はシングル曲中心に、まずまず納得の選曲。
初めて買ったジョンのソロのレコードはコレだったので、ジョンの代表曲を学ぶうえでは役立った。
今思えば、「Mother」が入ってないし、『Sometime in New York City』からは1曲も選ばれてないのか、なんてことも思うけど。
ただ、それよりもいちばん不満だったのは「Cold Turkey」が入ってなかったこと。
この曲は、ジョンのソロ曲の中でも早めに知った曲で、すごいカッコいいと思ってたから、それが入ってなかったというのはかなりの痛手だった。
ジョンのオール・タイム・ベスト盤なのに、画竜点睛を欠くくらいに感じてたよ。
どうして外されたんだろうと思ってたら、後年、CD化の際には追加収録された。
それは正しい成り行きだ...とは思いつつも、そのためにわざわざCD買うことまではしなかったんだけどね。
(2024.8.17)
『Lennon』

レコードからCDに時代が切り替わっての1990年。
ジョンの曲をCDで聴きたい。どうやってアルバム集め直していこうか...と悩んでたところに出たのがコレ。
ジョンのソロ活動をCD4枚組で振り返るBOX。
まさに、渡りに船だった。
特にレアな曲が多く入ってるわけでもないのが良かった。
普通に、シングル、アルバムの良い曲をCDで聴きたかったからだ。
ジョンの代表曲はほとんど全てと言っていいほど収録された。
時系列に並べられた曲は、ジョンの人生をなぞるよう。
これだけ多くの曲が入ってるのに、ヨーコのヴォーカル曲は入ってないのも、多くのファンが喜んだポイントなんだろう。
レア曲は少ないと言っても、『Live Peace In Toronto』とか、エルトン・ジョンとの共演とか、それまで持ってなかったライヴ音源が入ってたのは嬉しかった。
1万円で買えて、豪華な宝物を手に入れた気分にさせてくれるものでもあった。
ひとまず、僕の欲求は満たされたという意味でも、思い入れの深いBOX。
(2024.7.24)
80年代後半、まずポール・マッカートニー『All The Best!』、次にジョージ・ハリスン『Best Of Dark Horse 1976-1989』といったベスト盤が出て。
CDがかなり普及してきて、次はジョン・レノンの名曲群をCDで聴きたいなと。
僕はジョンのレコードを買ってから、まだ数年しか経ってなかったので、これからまたオリジナル・アルバムをCDで買い直すのはしんどいなと思ってたところ。
そんな1990年に、ジョンの代表曲を詰め込んだCD BOXがリリースされた。
僕にとっては渡りに船だった。
ジョン・レノンのソロ活動の歴史を時系列で振り返る4枚組。
アルバム未収録のシングル曲を網羅してるのはもちろん、重要作『Plastic Ono Band』『Imagine』からはほぼ全曲が収録されていた。
ジョン・レノン名義のリリースではなく、エルトン・ジョンのカタログであるライヴ盤から、エルトンとの共演3曲が入ってるのも痒いところに手が届いてた。
『Double Fantasy』『Milk And Honey』からヨーコの曲を省いて、80年のジョン・レノン楽曲を1枚にまとめたDisc 4も白眉だった。
とにかく、代表曲と言われるものは漏れなく入っていて、このボリューム。
まとまりも見事で『ジョン・レノン全曲集』と言ってもいいくらい。
それで1万円でお釣りが来る値段。
とりあえずコレを持ってれば、当分のあいだは間に合うでしょという満足感いっぱいのBOX SET。
これがジョンの生誕50年を記念してリリースされたんだから、あまりにも出来過ぎたタイミングだった。
ジョンの歴史を振り返るという意味では、ファンの誰もが納得するだろうし、21世紀の現在においても通用する、見事な企画盤。
コレに深い思い入れを持っている人も多いと思うが、もっともっと評価されてもいいし、未来永劫残してほしい宝物だ。
(2025.4.24)
『Anthology』

98年にリリースされた、ジョン・レノンのアウト・テイク、デモ、ライヴ音源などを集めた4枚組BOX。
これを初めて聴いた時、僕は「あんまり面白くないなあ」と思った。
だって、どれも未完成で、完成版には遠く、ダラけた練習風景を聴かされてる感じがしたからだ。
それで4枚組。長い。
だから、1回聴いたきり、棚にしまいっぱなしだった。
しかし、ふと気が向いて、10年以上振りに聴いてみた。
ヘッドフォンでじっくり聴いてみて、印象が変わった。
単なる練習だけじゃない、思ってた以上に凝った音作りの曲もあった。
例えば、「Jealous Guy」。
完成版は、ピアノが印象的な曲だったけれど、ここでは、ドラムが勢いよくリズムを刻み、そこにギターの音が呼応するように鳴っている。
バンド・サウンドが心地良い。
他の曲も、まあ単なるデモというものもあるけれど、曲を完成させるうえで試行錯誤してる様子が窺えるものもあって、楽しかった。
こんなアレンジもありかもな、と思わせられた。
ジョンの10年間のソロ活動の歴史が詰まっているなあ、まさにアンソロジーだなあと、今さらながらに気付かされた。
しかし、曲目だけ見ればベスト盤的な内容ではあるけれど、初心者には薦められない。
初心者は、完成版の音から聴くべき。
これは、もっとジョンの声が聴きたいと願っていたファンに向けたBOXだ。
(2024.9.12)
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