ギルバート・オサリバン Live@新宿文化センター 2022.4.23 感想

Japan Tour 2022 Just Gilbert

2022年4月23日(土)@新宿文化センター

チケット、そんなに安いの??

2020年初頭。Twitterで、とあるつぶやきを目にしました。
「ギルバート・オサリバンを5000円以内で観れるなんて信じられない」
うん?ギルバート・オサリバン日本に来るって事?
しかも、5000円以内というのはたしかに信じられないほど魅力的な話。
ホントかな...と思いながら、すぐさま調べてみたら、ホントでした。
東京国際フォーラム・ホールCにて、5月に来日公演。
席はSS席・S席・A席・B席とあって、SS席は1万円以上するけれど、1番安いB席は4500円との事でした。
全席同じ値段であっても、2階後方席で観る事の方が多い僕にとっては、悪い席は慣れっこなので、B席で充分と思えました。

ただ、今回のライヴは、バンド形式ではなくて。
オサリバンのピアノと、ビル・シャンリーというギタリストの2人による演奏との事。
それがちょっと心配ではありました。
グルーヴィーで多彩なサウンドのバンド演奏ではなくて、単調になりがちな弾き語りは飽きてしまうので苦手だからです。

でも、なんといっても4500円。
国内のアーティストでも、こんなに安く観られる機会は滅多にありません。
つまらなくて半分寝てしまったとしても、観てみて失敗したなと思ったとしても、この値段なら、まあ許せる。
なので、軽い気持ちでチケット買う事にしました。

そしてその後、YouTubeを検索したら、この2人の演奏による1時間くらいのライヴ映像が見つかったので観てみたら、意外と良かったのです。
こんな感じなら、充分期待できるなあと、楽しみになりました。
(この映像は気に入って、2・3回観たのですが、削除されてしまいました)

コロナによって延期・延期

ところが。
みなさんご存知のように、この直後に、全世界にコロナ・ウィルスが。
あっという間に雲行きが怪しくなって、オサリバンのライヴも、丁度1年後の同日・同会場への延期が決定。
楽しみが増していただけに、1年後というのは、なんとも気の遠くなる話だなあ、とこの時は思ったものです。

しかし、その1年後の5月が近づいてきても、コロナ禍は収まらず。
結局、2021年の公演は中止が決定、持っていたチケットは払い戻しとなりました。
払い戻しは郵送で、という知らせが届いて、超めんどくさいなと思ったのですが、試しに発券したコンビニに持っていってみたら、払い戻し出来ちゃいました。やってみるもんですね。

でも、すぐさま振替公演が決定。
さらに1年後の2022年4月、会場は東京国際フォーラムから、新宿文化センターへと場所を変えての開催という事となりました。
最初は、新宿文化センターと聞いて、駅から遠いみたいだし、行くのやめようかな、とも思ってました。

会場が変更になってのチケット購入

しかし、さらに時が経ち、チケットの発売日が近づいてくると、「やっぱり行こう」という気になっていました。
チケットは、今年1月、一般発売で無事GET。
1日目と2日目、どちらにすべきか考えたのですが、開演時間が1日目は18時、2日目は16時で、僕はライヴ前にdisk unionで買い物する時間を取りたかったので、1日目の方がいいなと思い、決めました。
あとは、コロナの状態が悪くならない事を祈るだけです。
今年は、オミクロン株の登場で第6波だなんだと騒がれ、鎖国もして、状況的には悪い感じだったのですが、僕的には、なんとなく大丈夫じゃないかという気がしていました。
3月になって、入国制限を少し緩和する方向に入ったにもかかわらず、4月の来日公演をキャンセルしていたアーティストもいましたが、オサリバンはきっと来る。そう思ってましたね。

ライヴの1週間前になっても、チケットの発売を中止しないんだから、これはやるという事だろうと、確信に変わっていきました。
ただ、やはり、開催できるのか不安な要素がある中で、チケットを売るのは大変だったでしょうね。
売れ行きはあまり良くなかったみたいです。
1日目がSS席とB席が売り切れ、2日目がB席が売り切れてましたが、あとは残ってましたもの。
ガラガラの客席は辛いな、と心配になりました。

ライヴの予習としては、今年アメリカで行われたツアーのセットリストを調べると、ベスト盤に入ってるような曲と、今のところ最新作の『Gilbert O’sullivan』というアルバムの曲が中心。
なので、それに沿ったプレイリストを作って、iPodで10回以上聴き込みました。
ライヴに備えて、オリジナル・アルバムをせっせと集めましたが、ほとんどは必要なかったですね。
まあでも、このようなセットリストのライヴなら大歓迎、と思えました。

ライヴ当日。はたして観客の入り具合は

そして、ライヴ当日。
ようやくです。
ようやく開催できるのか。
あれから2年もたったのかと思うと感慨深いです。

新宿文化センターは、初めて行く場所でしたが、昔行った事のある、日清パワーステーションの目と鼻の先にある場所でした。
思ってたよりわかりやすかったし、近かったじゃん。
B席は、席順は決まってなくて、当日引き換えで座席チケットをもらうまでわかりません。
これは、早目に行った方がいいものなのかどうか。
よくわからなかったのですが、とりあえず、開場時間の17時に到着しました。
ちょっと行列に並んで、チケットの引き換え口に辿り着き、引き換えをすると、受付の人は、チケットの束の1番上にあったものを渡してきました。
これは、早い者勝ちというか、勝ちかどうかもわからない、完全な運ですね。
見ると、僕の席は2階11列12番。
チケットの売れ行きが悪くて客席が埋まらず、2階席の人を1階席にしたりとか席を振り替えまくって、B席の僕でも1階席になったりしないかなあなんて夢見てましたが、あえなく撃沈。やっぱ2階か。
2階に行ってみると、11列というのは、最後列。やっぱりB席たる所以。
ところが、嬉しい事に、僕の席は通路側の席でした!
しかも、右側が通路で、左側はライヴが始まっても4席分空席のまま。
かなりゆったりした気分でライヴを観る事ができました。
完全な運任せの席だったけれど、僕にとっては当たりを引きました。
それにしても、B席は売り切れてたはずなのに、最後列でもガラガラでした。どういう仕組みになってたのでしょう。

ライヴが始まるまで、50分くらいヒマだったのですが。
開演10分前に1階席の様子を見に行ってみると、席の8~9割は埋まっていました。全然ガラガラという感じではなかったです。
ただ、入場する時に、一般席、関係者席の他に、招待席という受付もあって、そこに結構並んでる人がいたんですよね。
なんでも、区民招待とか言ってました。
もしかしたら、チケットが売れなくて、客席を埋めるために区民にバラまいたんじゃないかなあ、なんて勘繰ったり。
2階席は埋まったのは6割くらいだったでしょうか。

ま、ともかく、僕にとってはB席といっても最高の席だったので、気分良くライヴを迎える事が出来ました。

ライヴが始まる

開演時間の18時を5分ほど過ぎ、客電が落ちました。

01. January Git
02. A Friend Of Mine
03. What Can I Do
04. Nothing Rhymed
05. Where Did You Go To?
06. Miss My Love Today
07. Where Would We Be (Without Tea)
08. We Will
09. No Head For Figures But Yours
10. Dansette Dreams And 45’s
11. Where Peaceful Waters Flow
12. Ooh Wakka Doo Wakka Day
13. Clair
14. Tomorrow Today
(Intermission)
15. At The Very Mention Of Your Name
16. No Matter How I Try
17. At The End Of The Day
18. I Don’t Love You But I Think I Like You
19. Can’t Get Enough Of You
20. Why, Oh Why, Oh Why
21. The Same The Whole World Over
22. Out Of The Question
23. I’ll Never Love Again
24. What’s In A Kiss
25. Alone Again (Naturally)
26. Alone Again (Naturally)
27. Matrimony
28. Get Down

軽快なブギ調の「January Git」でスタート。
大好きな曲で、会場を徐々に温めていってる感じでした。
ホントはサビ終盤をコール&レスポンスしたいところでしたが。

「A Friend Of Mine」
のどかな日曜の朝、といった感じで、最近この曲のメロディが頭から離れないのでした。
この曲も、ホントは観客全員で「♪ オオーオーオ」とコーラス付けたいところでしたが。

活動を始めた68年に作った曲で...みたいなMCがあっての、たぶん「What Can I Do」という曲。
ワンコーラスだけでしたが、オサリバンらしい、グッド・メロディの曲でした。もっと聴きたかった。

「Nothing Rhymed」
切なく憂いなメロディがたまりません。

「Where Did You Go To?」
最新作『Gilbert O’sullivan』からの、ほのぼのとした曲です。
サビはキャッチーで、簡単に一緒に口ずさめます。

リズム・ボックスを鳴らしての「Miss My Love Today」
寂しい気持ちになる曲です。
フルートのような音も同期して聴こえてきましたね。

日本にはグリーンがあるだろ?アメリカはグラスで、イギリスではカップで...みたいなお茶のMCがあっての「Where Would We Be (Without Tea)」
リズム的には「Alone Again」に通じるものがあります。

「We Will」
素朴で、穏やかな気持ちになります。

「No Head For Figures But Yours」
ライヴの雰囲気が、ちょっと力強くロック調になりました。
ビルのギターも冴えてます。

「Dansette Dreams And 45’s」
雄大なメロディで、夢見ていた自分を懐かしく思うような気持ちに。

「Where Peaceful Waters Flow」
いつものオサリバン節かと思ってたら、終盤はなんだかゴスペルを聴いてるような雰囲気。
そして、観客も思わず手拍子をし始めました。

「Ooh Wakka Doo Wakka Day」
前曲の雰囲気に引きずられて、この曲では皆さん最初から手拍子で応えます。
だんだんと楽しい気持ちになってきました。

「Clair」
始まった途端、観客は拍手。みなさんこの曲を待ってたんだね。僕も1番聴きたかった曲です。
イントロの口笛の所は、ビルがギターでフレーズを弾きました。
ほのぼのとして幸せな気分でありながらも、どこか切なさも併せ持っていて大好きです。
特に中盤で畳み掛けるように歌う「♪ I’m going to marry you will you marry me」のところが好きです。
生で聴けて最高でした。

ここで第1部終了、休憩かな、と思ってたら、
「Tomorrow Today」が始まりました!
これは、アメリカ・ツアーではやってなかった曲です。
この曲は、日本ではTVドラマの主題歌になったという事で、日本ならではのサプライズ楽曲でしたね。

そして、オサリバンとビルがステージから去っていくと、お客さんたちは手拍子でアンコールを要求。
いやいや、休憩だから!と思っていると、かなり遅れて「20分間休憩」のアナウンスが。
お客さんたち、「なーんだ」といった感じでウケました。
この時、18時56分でした。まだ1時間もたってない。

第2部、再びリズム・ボックスを鳴らしながらの「At The Very Mention Of Your Name」でスタート。
穏やかな曲調ですが、リズムが強調されていたので、どことなくノリが良かった。

曲紹介で「タカオ・キスギ」と聞こえた気がしての「No Matter How I Try」
跳ねるようなピアノの響きにウキウキしてくる曲です。

「At The End Of The Day」
これも気持ちがのんびりしてくるというか、温かい曲。

「I Don’t Love You But I Think I Like You」
ロック調で、やや重たい雰囲気を感じました。
ビルもギターをヘヴィーに弾きまくってました。

バート・バカラックぽい「Can’t Get Enough Of You」
散歩に出掛けたくなります。

曲紹介で、この曲はリズム・パターンが2種類あるんだ、みたいな事を言ってた気がした「Why, Oh Why, Oh Why」
僕の知らない方のリズム・パターンで、力強さがあり、たしかに別の曲のように聴こえました。

「The Same The Whole World Over」
ブギ・ロックな響きのある曲。

「Out Of The Question」
これまた親しみやすいメロディです。オサリバンの音楽は安心して聴けますね。

「I’ll Never Love Again」
最新作『Gilbert O’sullivan』の中で1番好きな曲なので、やってくれて嬉しかったですね。
マイナーなメロディで、もう恋なんかしないという切実さが伝わってくる曲です。

「What’s In A Kiss」
これも有名な曲ですね。
ほのぼのとして、ささやかな幸せを感じさせる曲です。

そして、真打ち「Alone Again (Naturally)」
演奏を始めたと思ったら、すぐにストップ。そして弾き直しました。どうやらキーを間違えて弾いたようです。
オサリバンといえばこの曲でしょう。僕もこの曲でオサリバンを知りました。
歌詞の内容は実はシビアなものなのですが、英語がわからない僕としては、詞の意味なんて深く考えず、いい曲だなあ、くらいにしか思わないで聴いてるのですが。
この曲は間奏のアコギのソロもいいんですよね。
で、2番だか3番だかを歌ってる途中で、オサリバンの声が詰まってきて、咳ばらいをしてしまいました。

歌い終わってMC。
この曲は、欧米では、「♪ Alone Again Naturally」のところを観客に歌ってもらうんだ。それをお願いするのを忘れちゃったよ、みたいな事を言ってる気がしました。
さっき、ノドを詰まらせて、歌うのを失敗しちゃったよ。もう1回やらせてよ、みたいな事も言ってる気がしました。

そしたら、ホントにもう1回「Alone Again (Naturally)」
今度は、サビ終わりの「♪ Alone Again Naturally」のところをお客さんが歌いました。これくらいなら声を出したって、どうって事ないよね。
ともかく、予期せぬハプニングで、この曲を2回堪能する事が出来たし、2回目の方が心にグッときました。

これで本編終了、1回ステージを降りてからアンコールかな、と思ってたら、そのまま演奏続行!

「Matrimony」
軽快に跳ねるピアノ、明るいメロディ。思わず踊りだしたくなる曲です。総立ちにならなかったのが残念でしたが、みなさん座ったままでも体を揺らしてました。

そしてなだれ込むように「Get Down」
オサリバンのピアノを叩く手にも力が入ってます。
「♪ Get down, get down, get down」の3連発の所は思わず拳を突き上げました。
「♪ happy as could be」のコーラスの所は一緒に歌いました。
ラストは、オサリバンはピアノを乱暴に弾き倒してフィニッシュ。

これにてライヴ終了、20時6分。
開始から丁度2時間でした。
最後にオサリバンとビルが肩を組んで、拍手に応えていたのが印象的でした。

オサリバンの優しい歌声で穏やかな気持ちに

バンド形式ではなくて、ほぼ弾き語り的な演奏でも、飽きる事なく聴けました。
やはり僕は、ギターの弾き語りが苦手なのであって、ピアノの弾き語りなら大丈夫なのだとわかってきました。
で、サポートするビルは、ギターをエレキとアコースティック、曲によって取り替えて、控えめに演奏していました。
決して出しゃばるような事はせず、場合によっては、弾いてるギターの音が聴こえない場合も多いくらい控えめだったのですが(笑)、適度にハモりを入れたり、ヴォーカル面でのサポートもしてました。
きっといい人なのでしょう。

いい人というのは、そもそもギルバート・オサリバンその人の個性と言えるものでもあって、オサリバンの人柄が反映された楽曲の雰囲気が、とにかく温かく優しい空気で会場を包んでいて、なんとも言えない、リラックスして聴いていられるものでした。
よく考えてみたら、オサリバンの曲は、バリバリのバンド・サウンドというものではないので、こういう弾き語り風であってもなんら問題はなく、むしろ楽曲の良さを際立たせるためには自然な形式だったと言えるかもしれません。
満足感で一杯で、会場を後にしました。

後で聞いた所によると、来日直前に、オサリバンがノドの調子を崩して、開催が危ぶまれた場面があったそうです。
そしてなにより、日本ではまだまだ収まらないコロナ禍。
そういったものを乗り越えて、2年の時を経て、約束を果たして来日してくれたオサリバンたちには感謝ですし、ライヴが開催できた事は、やはり奇跡的な事だったんだなあと思うのです。
ギルバート・オサリバン75歳。
今回生でライヴを観る事が出来て、ホントに良かったと思います。


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