
大好きなアーティストのアルバムをランク付けするシリーズ企画。
今回は、サザンオールスターズ。
好きなアーティストのアルバムをランク付けするのって、非常に難しい。楽しいけど。
その日の気分によっても違ってくると思うし、はっきり優劣があるものもあるけれど、そもそも好きなアーティストの作品なんだから、どれも好きで、順位なんて紙一重のものが多いでしょう。
それでもやっぱり、ランク付けしてみたくなります。楽しいから。
好きなアルバムの定義ってなんだろう?と思います。
大好きな曲が入ってる、全体の流れや空気感が好き、ジャケットが好き、リアルの生活における思い出とリンクしている...など、いろいろあると思うんですが、僕が重要視するのは「ワクワク度」ですね。
そのアルバムを聴いている時はもちろんなのですが、「それを聴いてない時でも、そのアルバムの事を考えると、ワクワクしてしまう」ものが自分にとって上位なんだと思うんです。
個人的に思い入れの深い順ではありますが、それこそがみなさんへのおすすめ順。
好きなものをおすすめしたいです!
コメントの次には、各アルバムの中で1番好きな曲を、No.1 Songとして表記しました。
ジャケット写真をクリックするとTOWER RECORDSへのリンクになってます。
第1位 『kamakura』
テレビで何気なく「Bye Bye My Love」を耳にして、不思議で切ない感情に襲われ、音楽って、なんて心地が良いのだろうかと心を撃ち抜かれるくらいの衝撃を受けました。
そして、このアルバムを聴いて、オリジナル・アルバムとはどういうものかを知りました。
このアルバムを聴いた事によって、僕の趣味が「音楽鑑賞」になりました。
音楽は素晴らしい、という事を強烈に教えてくれました。
生まれたての雛が初めて目にした親みたいなもんです。
このアルバムがなかったら、今の僕はありません。
4作続けて7月にアルバムをリリースしていたサザンでしたが、2枚組、原坊の妊娠という事で7月には間に合わず、9月発売になりました。それでも、それだけの延長期間だけで完成させたのだから凄いことです。
発売日に貸しレコード屋へ行ったら、すべて貸出し中で、店主が「すげーな、サザン」と言っていたのが忘れられません。
この2枚組は、当時「モンスター・アルバム」と呼ばれてました。
実験・挑戦することとヒットさせることを両立させた初期サザンの到達点。
シングルの「Bye Bye My Love」「メロディ」が変に突出することなく、他のアルバム曲と見事に調和していて、一気に聴かせます。
A面からD面まで、好きな曲だらけです。
当時最先端のデジタル・サウンドでの警句にぶったまげた「Computer Children」。
熱くアフリカンにループする「真昼の情景」。
なんとも不思議な世界観の音色「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」。
すれ違いをロマンチックに表現した「愛する女性とのすれ違い」。
スリルとサスペンスに満ちた「死体置場でロマンスを」。
スティーヴィー・ワンダー風ながらもあまりに情熱的で切ない「欲しくて欲しくてたまらない」。
喜びをストレートに表現した「Happy Birthday」。
雨の9月の気怠くも愛しいバラード「メロディ」。
呟きから徐々に強い思いがこもっていく「吉田拓郎の唄」。
原坊の優しくて可愛くて切なくもある名曲「鎌倉物語」。
変拍子の展開がクセになる、桑田さんにしか思いつかない歌詞とメロディの「顔」。
儚げなサウンドに誘われながらも力が漲ってくる「Bye Bye My Love」。
際どい歌詞とハードなサウンドの一体感「Brown Cherry」。
AOR感覚もある渋味の「Please!」。
誰かに歌を捧げるってのはこんな気分「星空のビリー・ホリデイ」。
ムクちゃんの穏やかな性格が滲んで和む「最後の日射病」。
誰しもが帰らぬ学生時代に思いを馳せて胸が熱くなる「夕陽に別れを告げて」。
スケールの大きな世界観で圧倒するスペイシーなハード・ロック「怪物君の空」。
渋くジャジーな切なさが何重にも心に迫る「Long-haired Lady」。
寂しく淋しくさびしくなる「悲しみはメリーゴーランド」。
とても引き締まったアルバムです。同じ2枚組でも、そこがビートルズの『ホワイト・アルバム』との違いです。
量と質で聴く者を圧倒する。
デビューから8年目でここまでの境地にたどり着きました。
このあと活動休止に入るという意味でも初期サザンの集大成。
やっぱり「モンスター・アルバム」です。
これがサザンとの、音楽との出会いでした。
僕にとって、思い入れが強すぎる作品です。
No.1 Song 「Long-haired Lady」
第2位 『ステレオ太陽族』
『kamakura』は2枚組なので聴くのが大変、という意味では、素直に1枚もののアルバムとして考えると、これが1番、最高傑作と思うところもあります。それだけ、『kamakura』と甲乙付け難いです。
優しく始まって、ハラハラさせたりドキドキさせたり、ノリが良かったり切なくなったり。いろんなタイプの曲が詰まっていて、捨て曲なし、申し分ないです。
それでもあえて言うなら、バラードの魅力が存分に味わえる、うっとりするアルバムですね。
実はこの頃、サザンとしてはヒット曲に恵まれず、苦悩していた跡が見られます。
それでも、クオリティ高いアルバムを作ろうという志の高さと、サザンらしさを忘れないところが愛おしいのです。
メロウな感覚がたまらない「Hello My Love」。
ビリー・ジョエル風の切迫感が狂おしい「My Foreplay Music」。
2月26日はみんなにとって大切な日になるバラード「素顔で踊らせて」。
波打ち際の恋物語に胸焦がれる「夜風のオン・ザ・ビーチ」。
ジャケットと共に異世界へ飛んでく「我らパープー仲間」。
男の悲しいコンプレックスを熱く切なく表現した「Let’s Take a Chance」。
出会いと戸惑いの瞬間を切り取った「ステレオ太陽族」。
大人な世界のムードにとろける「朝方ムーンライト」。
ジョン・レノンを絡めながらも力強いブルース・ブギに仕立てた「Big Star Blues (ビッグ・スターの悲劇)」。
恋する喜びに涙が混じる初期サザンの3連バラードの傑作「栞のテーマ」。
意味不明のジャケット、修学旅行的なメンバー写真もウケます。
このセンス、世界観こそサザン、な気がして大好きなんです。
1番自由な感じも受けるアルバムで、手を変え品を変え、聴く者を楽しませようという気概が伝わってきます。
それでいて、切ないメロディが満載なんです。
楽しくて切ない。
それがサザンの本質かもしれません。
No.1 Song 「朝方ムーンライト」
第3位 『Nude Man』
僕はリアルタイムで聴いたわけではないので、リリース当時の空気感とかわからないのですが、「サザンと言えば夏、海」といったイメージになっていったのは、このアルバムの存在が大きいのではないでしょうか。
サウンドは前作よりも迫力が増し、汗の飛沫が飛び散ってくるような、男っぽいイメージです。
憧れのDJに向けて暑苦しいほどにシャウトするロック曲「DJ・コービーの伝説」。
ゴスペル風女性コーラスが雰囲気を作るソウル・バラード「思い出のスター・ダスト」。
海の冷たさとシャワーの熱さに恋人たちもうなだれる気怠さの「夏をあきらめて」。
ゴージャスなサウンドで、いかがわしさがギラギラしている「匂艶THE NIGHT CLUB」。
冒頭のため息がすべてを物語る「逢いたさ見たさ病めるMy Mind」。
後輩たちを前に、スターに成長した姿を見せつける「Plastic Super Star」。
いつまでも胸に残る恋をしていた頃に思いを馳せるバラードの傑作「Oh! クラウディア」。
甘くてクールで粋な「女流詩人の哀歌」。
混沌から解放されるまで「Nude Man」。
コミカルなレゲエ「来いなジャマイカ」。
エレピとホーンがさりげなく不埒な関係を見つめる「Just A Little Bit」。
僕は冬の生まれなので、冬の方が好きなのですが、このアルバムを聴いてると、夏も悪くないなあ、と思えてくるのです。
僕は音楽好きなので、好きな作品は四六時中、一年中、季節を問わず聴きたいのが当然と思ってるのですが、このアルバムだけはやはり、夏に聴くのが合ってるなあ、と心から思います。
No.1 Song 「DJ・コービーの伝説」
第4位 『人気者で行こう』
前作『綺麗』で大人に成長したサザンが、さらに野心を持って追求したアルバム。
シンセ、デジタル、コンピューター。進化するテクノロジーと生楽器との融合の試みが、「ミス・ブランニュー・デイ」の大ヒットという形で結実し、掴みはOK。
メリハリもあり、ある意味ピークと言ってもいい頃のアルバムで、コレを最高傑作と捉えてる人が多いのも納得です。
大暴れしているサザン、といった感覚です。
怪しいサウンドと歌詞が独特の世界観「JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)」。
不思議なグルーヴが心地良い「よどみ萎え、枯れて舞え」。
テクノ・サウンドで時代の最先端にヒットさせた「ミス・ブランニュー・デイ」。
尖がって爆発する「開きっ放しのマシュルーム」。
喜びの開放感「あっという間の夢のTONIGHT」。
原坊の切ない胸の内が明かされる「シャボン」。
イントロだけで胸がキュンとなるバラードの傑作「海」。
元気に跳ねていこうとする「夕方HOLD ON ME」。
気怠くも色気のある不思議な世界「女のカッパ」。
スパイが暗躍するスリリングな「メリケン情緒は涙のカラー」。
ベンチャーズ風のいかしたインスト「なんば君の事務所」。
気合い入りまくりでカッコいい「祭はラッパッパ」。
ジョン・レノンを慕う気持ちに溢れた「Dear John」。
【人気者で行こう】というのは、サザンのデビュー当初からの思惑だったはずですが、このタイミングでそれを高らかに宣言しています。
「ミス・ブランニュー・デイ」と共にアルバムもヒットしたので、ちゃんと人気者を証明できて良かったね、と思います。
これまた意味不明なジャケットもインパクト大で、赤と黒の情熱です。
No.1 Song 「よどみ萎え、枯れて舞え」
第5位 『THANK YOU SO MUCH』
サザンとしてはまたもや10年振りのアルバムは、タイトルも今までの総括的で、これが最後のアルバムになると示唆するかのような、感謝と別れの言葉に感じられて、なんだか複雑で素直に喜べなかったりしました。
事前に配信やオンエアで聴いた曲には、平和なムードも感じたのだけど、密度が濃厚なものもあったので、掴みどころがない感じもしました。
今回のアルバムは、強力に惹かれる僕好みの曲は少ないかなあ、あんまり期待は出来ないかなあ、と思っていたのが正直なところです。
でも、実際に通して聴いてみると、思ってた以上にテンションが上がりました。
1曲1曲を見ると、思い入れの強い80年代までの曲には遠く及ばない感じだし、僕の好みという点からすると、いまいち物足りない感はあるのですが、アルバムとして聴いていると、どんどん興奮してきて、それぞれの曲の良さが聴くたびに伝わってくるというか、何度も何度も聴きたい衝動に駆られて仕方なくなったのです。
エレクトロでめくるめく淫靡な世界のディスコ・ソング「恋のブギウギナイト」。
現役感たっぷりにイントロのリフから勝負で気合いが入るハード・ロック「ジャンヌ・ダルクによろしく」。
新しい生活に希望を抱く春に心が軽くなる時のようなサウンドの「桜、ひらり」。
どこかドロドロとして情念たっぷりの昭和歌謡「暮れゆく街のふたり」。
江戸の昔と90年代と令和の夏がミックスされた、いかがわしく燃えたぎるダンス・ミュージック「盆ギリ恋歌」。
ポツポツと冷たい雨が滴るようなダウナーなサウンドで社会風刺する「ごめんね母さん」。
一気に爽やかに原坊の声が風に舞っていく「風のタイムマシンにのって」。
ほのぼのとしたサウンドの中に、地球を大切にしない人間たちが、自然の驚異にしっぺ返し食らうような警句を含む「史上最恐のモンスター」。
とにかくブリティッシュなポップ・サウンドと親しみやすいメロディに心がワクワクし、夢オチが明かされるところがたまらなく切ない屈指の名曲「夢の宇宙旅行」。
南国ムード全開で日本を歌い、底抜けに明るいのが安心感に包まれる「歌えニッポンの空」。
なんとも素敵なタイトルでデビュー前からレパートリーだった、リトル・フィートへのオマージュ「悲しみはブギの彼方に」。
倍賞美津子とアントニオ猪木をモデルに、昭和の大らかな時代の男女の話に心が和むブギ「ミツコとカンジ」。
大衆芸能、煌びやかな昭和の歌謡曲への思慕が込められ、音楽と共に生きる喜びに感謝するフィリー・ソウルの「神様からの贈り物」。
次の世代の子供たちに明るい未来を繋げられるのかという問題提議を、馬鹿なりの提言としてまとめ上げるゴスペル・バラード「Relay~杜の詩」。
暗く重たいテーマの曲も多いし、明るいだけではないのだけど、全体を通しての印象となると、楽しいアルバムだなあ、というイメージが強く残ります。
古希を迎えようとしてるけど、まだまだパワー旺盛だし、相変わらずエロだし。
でも、惚れた腫れただけではない、社会全体を俯瞰的に見る懐の深さでもって、音楽を楽しいと感じさせる。
こういう感触のサザンのアルバムは聴いたことなかったです。
ベテランの余裕を携えながらも、また新たな扉を開けたような新感覚のサザン。
1曲1曲が凄いと言うよりも、アルバムを通して聴いてこそ押し寄せてくる感動や興奮の大きさという意味では、ビートルズの『Sgt.Pepper’s』に通じるものがあります。
何度も聴きこまずにはいられず、サザンには感謝の気持ちの言葉をそっくり返したい。
昭和からトップを走ってきたサザンが、令和に生み落とした名盤。
No.1 Song 「夢の宇宙旅行」
第6位 『綺麗』
他のファンがどう思ってるかはわかりませんが、僕にとっては、このアルバムは秋のイメージなんです。
夏が終わり、冷たい風を感じて、心がふっと寂しくなる、そんなイメージ。
エネルギッシュな夏を表現した前作『Nude Man』に比べたら、グッと控えめになって、ある意味、地味な作品です。
大ヒットしたシングルが含まれてないのも、地味な印象を抱く要因かもしれません。
だけど、何かが僕を惹きつけるんです。好きなんです。
怪物と対峙するSF的でスリリングなロック曲「マチルダBABY」。
ダンサブルにLGTBに目を向けていた「赤い炎の女」。
中国残留孤児問題をテーマにし、サザン社会派ソングの先駆けとなった感がある「かしの樹の下で」。
冷たい風が娼婦になびくレゲエ「星降る夜のHARLOT」。
混沌としたジャングル・ビートに燃える「ALL STARS’ JUNGO」。
GS風歌謡曲に傾倒した原坊の「そんなヒロシに騙されて」。
秋の始まりに恋の諦めを決意する切ないバラード「NEVER FALL IN LOVE AGAIN」。
がんばれと気合いを入れられる「YELLOW NEW YORKER」。
妖艶な「MICO」。
爽やかに家出少女にエールを贈る「サラ・ジェーン」。
ムクちゃんの穏やかなサンバ「南たいへいよ音頭」。
しっとりとしたAORサウンドでサザンのイメージを覆した「EMANON」。
音楽業界を旅するバンドの結束感「旅姿六人衆」。
勢いで突っ走ってきた時期が終わり、本格的な音楽ファンの心を捕まえるべく、大人なサウンドへ変化し始めました。
熱く燃えたぎるような曲はあまり入ってなくて、突出したシングル曲もなくて。
全体的にしっとりと滋味深く、落ち着いた味わいのアルバムです。
このアルバムが大好きと言ったら、「渋い」と思われるかも?
No.1 Song 「NEVER FALL IN LOVE AGAIN」
第7位 『タイニイ・バブルス』
この頃になると、プロ意識も高まり、肩の力を抜いて、ヒットするしないに囚われず、いいものを作る事だけを念頭に置いているような気がします。
シングルだけでなく、アルバムも水準の高いものを作ろうとしている意識を感じます。
程良く力が抜けてる分、過度な派手さはなく、あくまでマイルド。
聴く方もリラックスして向き合えるアルバムです。
狂乱と爽やかさが一体となった「ふたりだけのパーティ」。
愛しい連れ合いにもう逢えない寂しさをブルージーに歌う「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」。
ディキシーランド・ジャズで華やかに宇崎竜童に捧げた「Hey! Ryudo!」。
憂いを秘めた原坊の魅力をファンに知らしめた「私はピアノ」。
徐々に盛り上がっていく桑田さんの熱唱が光る「涙のアベニュー」。
跳ねたサウンドに心が踊る「TO YOU」。
女性特有の日を困惑しながらも優しく見つめた「恋するマンスリー・デイ」。
ヒロシさんの澄んだヴォーカルが響く「松田の子守唄」。
穏やかさと軽さが見事に調和した胸キュン・メロ「C調言葉に御用心」。
忙しい音楽活動の日々を吐露した「働けロック・バンド」。
アベレージ・ヒッターをズラッと並べた強みがあるように思います。
でも、ギラギラとした、燃えたぎるようなロック曲がないからか、全体的に穏やかで柔らかい印象を受けます。
暖かくなった陽だまりの中で、これからの出逢い、何かが始まる予感に満ちた、春をイメージさせるアルバム。
このアルバムが1番好き!という人は少なそうですが、嫌いという人もほとんどいなそうで、親しみやすい感じだと思います。
No.1 Song 「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」
第8位 『10ナンバーズ・からっと』
コレ、昔は好きじゃなかったですね。初期8枚の中では、圧倒的に聴く回数が少なかったはずです。
理由は...僕が「いとしのエリー」をあまり好きじゃないからですかね(笑)。いい曲なのはわかるんですけど、好きかというと、ちょっと違う。
だから、世間のエリー高評価に反発するような感じもあって、あまり聴かないアルバムでした。
「アブダ・カ・ダブラ」を2で割って、A面B面に分けたのも、CDとなった今では辛い。また同じ曲かよ!ってね。これは桑田さんが曲作れなくて、数を揃えるための苦肉の策だったようにも思えます。
「エリー」の存在もあって、世間的にはヒットしたアルバムで、大成功に思われがちですが、曲数は足りないし、歌詞も間に合わないしで、実は桑田さんの苦悩が見え隠れする、ギリギリの状態で作ったのが伝わってくるアルバム。
2枚目にして、もうバンドが行き詰まっちゃってる?的な空気を感じるので、マイナスのイメージが強かったんです。
暑苦しくデビューしたサザンが、ここまでメロウで爽やかになれるのかと驚かせた「お願いD.J.」。
渋くて粋なR&B「奥歯を食いしばれ」。
ご当地ソングでちょっと微笑ましくもあるバラード「ラチエン通りのシスター」。
情熱と清廉が見事に同居し、言葉の速射砲も心地良い「思い過ごしも恋のうち」。
陽気なディキシーランド・ジャズ「アブダ・カ・タブラ」。
「勝手にシンドバッド」の路線をスリリングに突き進んでファンに応えた「気分しだいで責めないで」。
畳み掛けるリズムとメロディに思わず踊らされる「Let It Boogie」。
男同士の危険な世界を絡めた「ブルースへようこそ」。
やっぱりサザンの真の実力を世間に知らしめた重要作「いとしのエリー」。
桑田さんもこのアルバムを駄作と言っていて、僕も「そうそう、同感!」みたいな感じに思ってました。
でも、最近はかなり好きになってきてるんですよ。割といい曲入ってたじゃん、って。
ハード・スケジュールとプレッシャー、かなり過酷な状態の中でも、良い曲を生み出せる桑田さんは凄いな、と。
イメージに引っ張られて毛嫌いするのはもったいないとわかりました。
ロックとポップスと歌謡曲を見事に一体化させ、サザンの音楽性が固まっていく一連の流れがつかめるのも興味深い。
だいぶ遅ればせながら、見直したいアルバムです。
No.1 Song 「思い過ごしも恋のうち」
第9位 『Southern All Stars』
サザンとしては初めての長期活動休止後の復活の1枚。
僕自身、コレを聴いて、なんかサザン生まれ変わったな、という気がしたものです。
初期の8枚とは、聴いた感触がまったく違ったのを憶えてます。
下世話路線がサザンの持ち味だったのが、この辺りから、ポップでお洒落な印象が強くなっていくのは小林武史の影響でしょう。
衝撃のデビューから躍動した初期8年のアルバムと、90年代の『世に万葉』『Young Love』のメガヒットとに挟まれて、なんだか埋もれがちではあるけれど、活動休止からの復活作だし、バンド名をタイトルにした意義深い作品。
60年代に回帰した渋いロックンロール「フリフリ’ 65」。
潔くも優雅なラテンの「愛は花のように」。
跳ねたブルースとでも言うか骨太の「悪魔の恋」。
本格的なアカペラ多重コーラスで爽やかな夏を演出した「忘れられたBig Wave」。
突き詰めたポップ・ビートに切ない感覚がサザンの持ち味だと決定付けた「YOU」。
原坊が沖縄に染まった「ナチカサヌ恋歌」。
後悔混じりの憂いあるメロディにため息「OH, GIRL (悲しい胸のスクリーン)」。
ジャジーなドゥーワップで淫靡な世界に憧れる若者の心境を代弁した「女神達への情歌 (報道されないY型の彼方へ)」。
一般人には理解できない感覚を皮肉った「政治家」。
渋さと華やかさを同居させてスウィングする「MARIKO」。
ねっとりと情感たっぷりに歌われるバラードで初のオリコン1位を獲った「さよならベイビー」。
何が飛び出るかわからない密林の中を突き進んでいくような「GORILLA」。
切なくて、やるせなくて、諦念がこもっていて、原坊とのハモりも含め、なんとも感動的な屈指の名バラード「逢いたくなった時に君はここにいない」。
復活作でもあり、充電期間を経て、新しくなったサザンはどのようになったのか注目したけど、一言で言えばスマートなアルバムだなあということ。
1曲1曲の密度は濃いけれど、それが並べられると、意外なほどにしつこくはなくて、あっさり風味に感じます。
その辺りは、やはり小林武史によるものなのかなあと思ったりも。
タイトルをバンド名にしたのは、新たなデビュー作みたいな気持ちがあったからかもしれません。
新たな90年代に向けて、新生サザンを提示した充実作。
No.1 Song 「逢いたくなった時に君はここにいない」
第10位 『葡萄』
初期の8年間は、毎年アルバムを出してたのに、だんだん作る間隔が長くなっていって、とうとうコレは前作から10年振りとなってしまいました。
まあ、ベテランだし、活動休止もあったし、桑田さんの病気もあったし、それはもう仕方ない事で、サザンとしてアルバムを出してくれた事は奇跡のような事だと思った方がいいのかもしれませんが。
とにかく待望のアルバムで、個人的に前作には超ガッカリさせられたので、過度な期待は禁物で聴いたのも良かったのかもしれませんが、結果的に、満足のいく、素晴らしい作品となっていて安堵と共に感動もしました。
よくぞ復活してくれたな、と。
ただ、お得意の男女の情愛たっぷりの曲は少なくなっていて、そういうテーマが似合いにくくなったサザンも歳を取ったんだなあと実感するも、内容的には充実の果実。
まだまだ走り続けてやるぜと威勢よく始まるビートに、サザンが帰ってきたぞと興奮「アロエ」。
昭和のバンカラな映画のような「青春番外地」。
ゆったりと人生を待って幸福に行きつくような「はっぴいえんど」。
拉致問題に思いと怒りを乗せたヘヴィな「Missing Persons」。
華々しく始まるポップ・ビートにも現状を憂えた「ピースとハイライト」。
桑田さんの紡ぐ和の世界はとことん切なさに染まる「イヤな事だらけの世の中で」。
怪しさ満点のミュージカルのような「天井桟敷の怪人」。
ちょっと控えめなムードが愛おしい「彼氏になりたくて」。
コール&レスポンスで新しいアンセムとなった「東京VICTORY」。
原坊お得意の昭和歌謡路線「ワイングラスに消えた恋」。
長嶋茂雄に憧れる、名もなき人の生き様が浮かび上がる「栄光の男」。
はちゃめちゃにふざけるサザンの真骨頂「天国オン・ザ・ビーチ」。
一本筋の通ったフォーク・バラードで人生を歌い上げる「道」。
ちょっと突き放したような歌い方もクセになる「バラ色の人生」。
小さな命にも壮大で大切な物語がある「蛍」。
久し振りということもあってか、それまでのサザンとは少々違った感触を受けました。
スピード勝負で燃えるようなアッパー・ソングがない。
狂おしい胸の内を吐露した情感たっぷりのバラードがない。
なんていうか、ギラギラしてないんですよね。
好きな曲も多いし、好きなアルバムなんだけど、やはり、桑田さんたちの年齢が還暦に近いということを実感する内容です。
短距離走はやめて、ゆっくりジョギングに移行し、人生の深みで勝負している感じ。
恋愛の歌もあるにはあるけれど、どこか達観していて、青春の甘酸っぱさではなく、やはり渋味が勝っている。
完熟を通り越して、この年輪の深さだからこそ収穫できる果実の尊さ。
高齢者の奏でるロックはこういうものと、サザンによって提示されたのが本作。
決して派手さはないけれど、タイトル、ジャケット共に芸術作品です。
No.1 Song 「イヤな事だらけの世の中で」
第11位 『さくら』
前作『Young Love』でサザン史上最高の売り上げを記録したのに、コレは一気に売り上げを落としてミリオン割れ。
ジャケット、サウンド共に暗く重たい印象も悪く、世間的には失敗作との声もあります。
でも、僕の評価はまったく違います。
『kamakura』以降、生まれ変わった90年代のサザンのアルバムは、僕の好みからどんどんズレていくようでした。
売り上げは右肩上がりだったかもしれないけれど、それは90年代の音楽シーン全体に言える事であって、CDバブルの時代でした。
売れてるからって、いいアルバムとは限らない。僕はそうずっと思っていて、思い入れの強いサザンだから、ファンをやめはしないけど、関心は薄れていってたのは事実でした。
そんな中、リリースされたコレは、僕の求めていたサザンが久々に戻ってきてくれたようで、とても嬉しかったのです。
ブルージーで重たいロックに徹した「NO-NO-YEAH / GO-GO-YEAH」。
ひねりの効いた桑田メロディが炸裂した「YARLEN SHUFFLE~子羊達へのレクイエム~」。
桑田さんならではのエロな言葉遊びが最高潮に達した「マイ フェラ レディ」。
こんなに爽やかなら不倫の関係も悪くないと思えてしまう「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」。
攻撃的な皮肉で笑い飛ばす「爆笑アイランド」。
大切に歌いかけるような「BLUE HEAVEN」。
サビでスピードが増す瞬間がスリリングな「CRY 哀 CRY」。
遠くへ想いを馳せる原坊の「唐人物語 (ラシャメンのうた)」。
ポップで潔いビート・バラード「湘南SEPTEMBER」。
「愛の言霊」をファンキーなグルーヴで再解釈したような「PARADISE」。
桑田ソロのような暗い独白スタイルの「私の世紀末カルテ」。
ひんやりしたサウンドと切なすぎるメロディに、こんなサザンが聴きたかったんだと感動した「SAUDADE~真冬の蜃気楼」。
デジタル社会へ突入した世の中に警鐘を鳴らすようにシャウトする「(The Return of) 01MESSENGER ~電子狂の詩~」。
ラストは相変わらずスケールの大きなバラード「素敵な夢を叶えましょう」。
多彩で実験的だし、濃密な1枚です。
サザン初期の匂いも漂わせながら、20年のキャリアで唸らせるような傑作だと思います。
心が踊る快作に、これはバカ売れするぞと期待したのですが、大幅な売り上げ減。
サザンもとうとうピークを過ぎた説まで浮上する始末で、訳がわかりませんでした。
どうして『さくら』は売れなかったのか。
明解な理由を説明できる者はいるのでしょうか。
僕の中ではサザン七不思議の1つです。
No.1 Song 「SAUDADE ~真冬の蜃気楼~」
第12位 『Young Love』
サザン史上最も売れたアルバムで、これをもって誰もが国民的バンドと認める事となりました。
だけど、そんな大ヒットと裏腹に、僕のサザン熱は冷めていくばかりでした。
なんか違うんだよなあ、以前のように好きになれる曲がないんだよなあ、って。
初期のアルバムなんか、捨て曲なしとばかりに、大好きな曲がぎっしり詰まってたものでしたが、この頃は、一発で心奪われるような、神曲が少なくて。
80年代のサザンはこんなもんじゃなかったよ。
サザンはもっともっと良かったんだよ、僕の好きだったサザンはどこへ...といった気分でした。
自分の感覚と世間の評価のズレに戸惑ったのを憶えています。
しかし、それから時が経ち、最近このアルバムを聴き返すうちに、それなりに好きになってきました。
大好きな曲は少なくとも、不思議と統一感のあるサウンドで、いい雰囲気が漂っているアルバムなのではないか?と思い直すようになりました。
自分たちが影響を受けて来たロックの魂を、ひるむことなくJ-POPへと落としこんだアルバムです。
サビのファルセットが涼し気で、ゆっくりアクセル・ペダルを踏み込むロック・ナンバー「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」。
とても甘く丁寧な歌い方が特徴的な「ドラマで始まる恋なのに」。
韻踏みもハマった妖艶なリズムとサウンドで、サザンとしての新機軸を提案した「愛の言霊 〜Spiritual Message〜」。
憧れの初期ビートルズ・サウンドで、かなり騒がしく若さについて歌った「Young Love (青春の終わりに)」。
月の光ではなくて、暖かな朝日を感じてしまう正統派バラード「Moon Light Lover」。
ぶっきらぼうなボブ・ディラン風の歌い方でガツンとしたロックな演奏がスリリングな「汚れた台所」。
ポップで爽やかで、とびきり切なくもある王道のミディアム・バラード「あなただけを 〜Summer Heartbreak〜」。
毒気のない原坊の歌に浄化される「恋の歌を唄いましょう」。
いかがわしいリズムで遊んでるような「マリワナ伯爵」。
ジョン・レノンのような無邪気さと重たさが同居した「愛無き愛児(まなご) 〜Before The Storm〜」。
歌謡曲的要素を持ちつつも、ヘヴィかつ忙しない「恋のジャック・ナイフ」。
暴発寸前のエネルギーをため込んだハード・ロック「Soul Bomber (21世紀の精神爆破魔)」。
とびきり明るくカラッと弾けたモータウン・ビート「太陽は罪な奴」。
心が鎮まる神聖さと荘厳なオーケストラに震えがくる「心を込めて花束を」。
やはり、80年代までのサザンとは違うなあと思います。
何が、どこが、とは言いにくいのだけれど、新しいサウンドにも挑戦し、今までにない要素を見せて、密度の濃いアルバムだというのは、いつも感じます。
この頃、確立され始めたJ-POPという概念。
そんな既成のJ-POPには迎合しないながらも、我こそがJ-POPの王であると宣言しているような、大物感漂ようアルバムには、有無を言わせない迫力と説得力があります。
近年、このアルバムに対する僕の印象が良くなったのは、新品未開封と思われるレコードを500円という破格の値段でGETできたのも要因です。
ロック名盤のパロディ満載のジャケットは、レコードで所有してると満足感がありますね。
No.1 Song 「あなただけを ~Summer Heartbreak~」
第13位 『稲村ジェーン』
ヒットはしたけれど、かなり批判も受けた。桑田さんとしては、この映画は黒歴史かもなあ...ちょっと切ないです。
だけど映画は、このサントラという副産物を生んで、しっかりと歴史に名を残しました。
なんと言っても「真夏の果実」「希望の轍」という2大名曲が含まれているだけで価値があります。
たしかに、映画はつまらなかったけど、エンドロールで映画のハイライト・シーンと共に「真夏の果実」を聴くと、とてもいい映画だったような錯覚を起こしたのです。
そんな映画に使われた曲を中心に構成されたこのアルバムはなかなかのものです。
既発曲やカヴァー曲も含んでいるマイナス・ポイントはありますが、なんとか音楽で映画を盛り上げようという気概が伝わってくるのです。
厳密にはサザンオールスターズ名義ではなくて、サザン以外のメンバーで作られた曲も多く入ってますが、今となっては正式にサザンのディスコグラフィーの1枚となってます。
嵐の前触れのような不穏な空気が漂う「稲村ジェーン」。
イントロから胸が高まり、曲が進むほどにテンションが上がっていく喜びに満ちた「希望の轍」。
『Southern All Stars』からの再収録ながらも、映画の雰囲気を伝えるのに重要な役割となる「忘れられたBIG WAVE」と「愛は花のように」。
ヒロインを演じた清水美砂からインスパイアされた綺麗なインスト「美しい砂のテーマ」。
桑田さんの力の入った歌い方がお気に入りのカヴァー曲「LOVE POTION NO.9」。
サザンの象徴=夏をテーマに、永遠の切なさが歌われる国民的バラード「真夏の果実」。
なんとも優雅でポジティブな「マンボ」や「マリエル」。
レニー・クラヴィッツのような粘っこいサウンドの「東京サリーちゃん」。
原坊が南国ムードたっぷりのサウンドをバックに歌う「愛して愛して愛しちゃったのよ」。
ラテン的でレトロな感触のアルバムですが、「真夏の果実」「希望の轍」という両軸がしっかりしてるから、いつまでも色褪せないサントラ。
曲間に挿入された寺脇康文らのコメディ・ドラマを毎回聴かされるのは辛いところもありますが、それも含めて映画の甘酸っぱい思い出となってます。
映画の内容がそうさせたのだけど、最初から最後まで、ここまで夏一色のイメージとなったのは、サザンの中でも一番のアルバムかもしれません。
No.1 Song 「真夏の果実」
第14位 『熱い胸さわぎ』
あまりサザンを好きではない評論家ほど、このアルバムを推す、みたいなイメージがありますね。
たしかに、「勝手にシンドバッド」は強烈なインパクトだったのでしょう。僕も、サザンを好きになる前から、この曲の事はなんとなく知ってましたからね。
それをアルバムのド頭に持ってくる。その後は勢いで走る。そんな感じ。
大好きな曲はいくつかありますが、後追いで聴いた身としては、初期サザン8枚の中では、ちょっと異質な感じを受けました。
サザンのルーツ・ミュージックである、【サザン・ロック】がコアの部分にあって、大衆向きのポップスや歌謡曲の味わいがまだ薄かったからかもしれません。
そういう意味では、サザン本来のアイデンティティーが剥き出しになっているデビュー作。
サンバのリズムに合わせて、日本語を英語のように聴かせるという桑田さんの画期的な発明が日本の音楽界に革命を起こした歴史的名曲「勝手にシンドバッド」。
しっとりとジャジーで小粋な「別れ話は最後に」。
ゴージャスなモータウン・サウンドの「当って砕けろ」。
いたって真面目に熱く歌ってるのに、コミック・バンドと見られてた当時はこれとておふざけに思われたかもしれない三連バラード「恋はお熱く」。
軽快なサウンドで桑田さんのご当地ソングの原点「茅ヶ崎に背を向けて」。
玄人受けしそうなR&B「瞳の中にレインボウ」。
非常にノリのいい曲で、冒頭の一節から強く印象に残るも、家族と一緒に聴くのがとにかく恥ずかしかった「女呼んでブギ」。
抑えた表情で渋く決める「レゲエに首ったけ」。
リトル・フィートへの愛を和のテイストで処理した「いとしのフィート」。
バラードというよりR&Bとしてか、ふざけた歌詞でも切なさが滲む「今宵あなたに」。
「勝手にシンドバッド」はあまりに画期的すぎたし、さらに追い打ちをかけるように、コミック・バンドだというイメージを強くしたのは、「女呼んでブギ」なんて曲があったことも要因でした。
多彩な音楽性、桑田さん独特の歌詞の当てはめ方が、それまでの邦楽になかったもので、聴く者を誤解させてた部分があると思います。
現役の大学生がサークル活動のノリでふざけてると思われて、サザンを正統な音楽と受け止められるほど世間は成熟しておらず、コミック・バンドと認識することにより、自らを納得させていました。
サザンはサザンで、「真剣にやってんのになあ」と、リスナーの反応とはギャップがあったかもしれません。
時を経た今ならば、サザンがやろうとしていたことを冷静に受け止められるんですけどね。
ただ、個人的には、【サザン・ロック】というジャンルが、あまり好みではないので、それが色濃く反映されてるこのアルバムには、思い入れを抱きにくいのかもしれません。
No.1 Song 「今宵あなたに」
第15位 『世に万葉の花が咲くなり』
桑田佳祐と小林武史、共同作業の集大成。
小林武史はポップ職人という印象ですが、このアルバムにおいては、サザンを単なるポップ・バンドにはせず、実験精神を忘れず、革新的なバンドであることに重きを向いた節があります。
小林武史との出会いは、桑田さんにとって、とても大きかった事でしょう。
僕も、素晴らしいコラボだったと思っています。
でも、その共同作業も数年が経ち、この頃になると、うーん、あれ?となってくるのです。
サザンを聴いてて、あまりワクワクしてこなくなってしまったのです。
ちょっと過剰でしつこいような感じが鼻についてしまって。
いま思えば、もはや、このアルバム制作時は倦怠期だったのでは?と感じてしまいます。
収録時間が長い割には、シングル曲以外はあまりいい曲がなくてガッカリ、という印象が強かったのです。
重厚なブラス・ロック「BOON BOON BOON ~ OUR LOVE」。
ループするメロディがキリキリと胸を刺してくるブルース「GUITAR MAN’S RAG (君に奏でるギター)」。
流れるようなリズムながらも、あまりにもほろ苦い「せつない胸に風が吹いてた」。
しつこく燃えたぎるサウンドで迫りくる「シュラバ★ラ★バンバ」。
ほんのり侘しくて、桑田さん自身お気に入りのバラード「慕情」。
ボブ・ディラン風にふざけた風刺を見せた「ニッポンのヒール」。
原坊の昭和歌謡感覚がまた炸裂する「ポカンポカンと雨が降る」。
やまない雨のように音が降ってくるような「HAIR」。
ポップスの王道とも言えるようなキラキラしたサウンドの「君だけに夢をもう一度」。
オタク気質が狂気を孕んで息苦しさを感じる「DING DONG (僕だけのアイドル)」。
綺麗な音色のバラードの王道に胸が弾む「涙のキッス」。
サザンがふざけるのは今に始まったことではないけれど、誰もが「なんじゃ、これ」と戸惑う「ブリブリボーダーライン」と「亀が泳ぐ街」。
前2曲でのリスナーの戸惑いを吹き払うかのように安心感を与える「ホリデイ ~スリラー 魔の休日より」。
本格的アカペラ・コーラスで浄化させる「IF I EVER HEAR YOU KNOCKING ON MY DOOR」。
クリスマスという一時的なものを永遠の喜びへと進化させる包容力で幕引きを図る「CHRISTMAS TIME FOREVER」。
シングル「シュラバ★ラ★バンバ」「涙のキッス」のように、いかがわしく下世話でロックな曲と爽やか王道ポップ曲の二極化が進み、交互に攻めてくる。
ブルージーな感触と神聖なる味わいと。
それでいて、ふざけた要素もたっぷり含ませてくるあたりは、桑田さんと小林武史のニヤついた顔が思い浮かびます。
小林武史がサザンを使って実験したJ-POPの形。
コース料理というよりも、アラカルトの組み合わせの妙で、聴く者に満足感と、僅かな違和感を与えました。
個人的には、それまでのサザンとも違うし、小林武史っぽさも薄い、と感じました。
これはいったいどういうことなんでしょう。
いい曲があるのはわかってるんですが、聴いててちょっと退屈と感じる瞬間があって、特に後半は辛くて、聴き通すのが大変というイメージが拭えないんですよね。
No.1 Song 「せつない胸に風が吹いてた」
第16位 『キラーストリート』
「TSUNAMI」でレコード大賞も獲り、国民的バンドとしての地位を盤石にしながらも、ギタリスト・大森隆志が脱退。
そういった流れの中でのアルバム作りは相当なプレッシャーを伴っただろうに、さらに2枚組にするなんていう暴挙(?)に出ました。
この時点のサザンでやれる事はやり尽くした感があるのは当たり前で、「これが最後のアルバムになってもいい」といった桑田さんの発言も独り歩きし、解散説まで出ましたが、充実の名盤として、世間は好意的に受け入れました。
ただ、僕としては。
2枚組という事でもあり、ものすごく期待してたのに、これを聴いた時のガッカリ感と言ったらハンパなかったのです。
同じ2枚組でも『kamakura』とは雲泥の差だなと。
シングル曲は好きな曲がいくつもあったんですけど、アルバム曲で大好きになれる曲がほとんどなくて。
30曲もあるのに、いい曲ないのかよ!って落胆したのです。
収録時間も長いから、全部聴き通すのも大変で、特にDisc 2の終盤は辛くて辛くて。
サザンらしいポップなビートが胸をくすぐる「涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~」。
爽やかで力強く、希望が見えてポジティブになれる「雨上がりにもう一度キスをして」。
穏やかな春の生温かな空気感を感じる「彩 ~Aja~」。
キラキラとしたスポットライトを浴びるような「君こそスターだ」。
GS歌謡を思い出すレトロなサウンドにも興奮する「夢に消えたジュリア」。
ファンキーながらも古き日本のテイストとの融合が見事なディスコ・ソング「愛と欲望の日々」。
見かけが爽やかなだけに、一層寂しさを感じる「LONELY WOMAN」。
意味不明なところが盛り上がる要因ともなるサザンお得意のアッパー・ソング「BOHBO No.5」。
沖縄民謡で踊りまくる「神の島遥か国」。
とまあ、シングル曲は良かったんです。
だけども、ですね。
アルバム曲が、僕の期待に応えてくれるものが、なかなか...。
じんわり沁みて、唯一、おおっ、これはいいぞと思ったのが「セイシェル ~海の聖者~」。
ディズニーランドの喧騒、負の面をハードなサウンドで覆った「夢と魔法の国」。
グラム・ロックへの憧憬を表した「ロックンロール・スーパーマン」。
物悲しいインスト「キラーストリート」。
ここまではっきり言われる事の爽快感がある「ごめんよ僕が馬鹿だった」。
珍しくエロティックな原坊の「リボンの騎士」。
素朴ながらもヒップホップな味わいがクセになる「The Track for the Japanese Typical Foods called “Karaage”&”Soba”」。
とにかく期待外れに感じたアルバムでした。
すっと心に入ってくる曲が少なくて、捉えどころがなくて、全然耳に馴染まない。
がんばって長時間聴いてきた2枚組なのに、その終盤でとことん暗くて長い「FRIENDS」が現れるのも辛くてうんざりして、マイナスのイメージしかありませんでした。
ター坊の脱退は、想像以上に影響大だったのかも、とも勘繰りました。
サザンのアルバムを聴いて、こんな気持ちになったのは初めてでした。
リリースから時が経ち、何度か聴き返していく中で、少しずつ、少しずつですが馴染んできて、もしかしたら良い曲かもと思えるようになった曲も増えてきて、悪い印象は薄れつつあるのですが、それでもやはり、ランク付けをするならば、この順位になってしまうことは覆せません。
もちろん、このアルバムから入ってサザン・ファンになった若い人もいるでしょうから、そんな人には酷な言い方になってしまうのですが、僕にしてみたら、これは凡作なんです。
サザンって、こんな程度じゃないはずだ、と思ってしまうアルバムです。
No.1 Song 「愛と欲望の日々」
みなさんの好きなサザンと僕の好きなサザンには、どれだけ違いがあったでしょうか。
同じアーティストを好きでも、同じアルバムが好きとは限らないのが面白い所だったりします。
いろんなファンの方の意見があると思います。
僕は、そういうファンの意見の違いを面白がったりしたいので、まずは自分の好みを披露してみました。
以前にも記事にしたように、1978年のデビューから、毎年アルバムを発表し続けて、活動停止に至った1985年までの8年間というのが、僕にとっては、それこそがサザンのすべてであったりします。
僕がサザンに出会ったのが85年で、そこから一気に過去の作品を遡って聴き漁ったから、その8年間の作品がひとつの完成形としてパッケージになっているのです。
その後、活動を再開して、リアルタイムで追っかけてはきたけれど、僕にとってのサザンはやっぱり最初の8年間がほぼすべてで、あとはおまけみたいなもの、という気持ちがあって、それほど、その8年間は中身が濃いし、思い入れがあるのです。
だから、それが強く反映されたランキングになりました。
「TSUNAMI」あたりから入って来た若いファンの方からすれば、「おっさん、なに言ってんの?」的な感じで、ある意味、不愉快なランキングかもしれません。
『キラーストリート』は超名盤、大好きと思っている方も大勢いらっしゃるでしょうしね。
でもまあ、そこが、初期に思い入れが強すぎる、いちファンの、僕らしいランキングという事で許してもらえたら、と思います。
ただ、最新作の『THANK YOU SO MUCH』の出来栄えにはビックリしました。
僕の中で、こんなに上位に食い込んでくるとは。
まだまだ行けるぞサザン、ということを実感しました。
同じアルバムでも、聴くタイミングによって印象が変わったり、何度か聴き続けたりする事によって良さがわかっていったりするものもあります。
サザンの場合も、ベスト3とワースト3はこれで変わらないような気がしますが、中盤のランキングは、好きなものもイマイチなものも、微妙に入れ替わる可能性がありますね。
結構難しかったです。
でも、基本、大好きなサザンですから、これからあまり好きではなかったアルバムを聴き返す事によって、少しでも好きになってきた、というような変化が出てきたら嬉しい事なんですけどね。
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