KO SHIBASAKI LIVE TOUR 2024 ACTOR’S THE BEST ~響宴~
2024年12月22日(日)@パシフィコ横浜
リニューアルされた ACTOR’S THE BEST TOUR
昨年、柴咲さんがそれまでに出演した映画やTVドラマ楽曲を集めた企画盤『ACTOR’S THE BEST』に伴うツアーは、女優としての柴咲さんの活動を辿る、ある意味ベストヒットなライヴでした。
それがとても良かったので、今年もまたACTOR’S THE BESTと冠したツアーをやるとのことで、またあれが観られるのか!と興味をそそられました。
ライヴ日程は、僕にとっていちばん近くの会場は、布袋寅泰のライヴと被っていて断念。
関東圏では東京公演がなく、横浜公演のみ。
しかも、クリスマス前ということで、佐野元春のクリスマス・ライヴの日程がまだ決まっておらず、被ったりしたらダメだということで、チケットがすぐには獲れませんでした。
しかし、佐野元春のライヴの日程も決まり、無事にチケットを確保した時点で、上手い具合に柴咲さんのライヴもまだチケットが獲れる状態だったので、これは好都合だったなと、チケットを獲ることとなったのです。
いよいよライヴも近付いてきたところで。
このツアーも始まり、初日のセットリストが明らかになったわけですが、ちょっと落胆しました。
昨年のライヴでとても良かった「RIDE ON TIME」「Sign」「銀の龍の背に乗って」が軒並みセットリストから外れていて。
ACTOR’S THE BEST TOURと名乗ってるものの、アルバム『ACTOR’S THE BEST』からは4曲しか採り上げてないのです。
直前に『響宴』というミニ・アルバムをリリースしたので、そちらに完全に軸足が移動していて、これは僕が願っていたのとかなり違うライヴだなあと。
生で聴きたい、大好きな曲があまりなくて、これは、こんなセットリストになることを知ってたら、チケット獲らなかったよなあと思ってしまいました。
加えて、最近、体調があまり良くなかったこともあり、遠く横浜まで行くのも面倒になってきました。
チケットを売ってしまおうか、という思いもよぎりました。
でも、現時点でソールドアウトになってないライヴのチケットなんて、売れる可能性はあまりなくて。
とりあえず、行く方向で予習に励みました。
入手したセットリストの情報を基にプレイリストを作り、毎日、何度も聴きこみました。
お蔭で、だんだんと馴染んできて、生で聴くのがそれなりに楽しみになってきました。
ライヴまであと2日くらい、という時に、もう1度セットリストをチェックしてみたら、初日公演より3曲も増えていて。
そこに好きな曲が混じっていたので、楽しみも増してきました。
体調も良くなりつつあったので、これなら、なんとか行けるんじゃないか、というところでしたね。
ライヴ当日。会場へ
ライヴ当日は晴れ。
いつもなら、横浜に行く時は、disk unionやらBOOK OFFやらで買い物するのも楽しみなんですが、今回は体調を考慮して、寄り道せずにまっすぐ会場へ。
2日後には佐野元春のライヴも控えているので、なるべく体力温存です。
この会場は2度目ですが、初めて来た時のことをよく憶えています。
目の前には港が広がっていて、いかにも横浜!という会場で、好きです。
開場時間は17時でしたが、ちょうどその時間くらいに到着しました。
会場にはすんなり入れて、あちこち見て回りましたが、トイレの場所とか、なんだか迷路のようで、方向感覚が分かりにくくなる場所だなと思いました。
慣れれば、なんてことないんでしょうけど。
僕の席は2階10列27番。
遅れてチケットを買ったのですから、2階席なのは仕方ありません。
だけど心配なのは、最近体調が万全ではなくて、ライヴ中に具合が悪くならないかということ。
周りに人がたくさんいると、プレッシャーがかかって不安です。
でも、この日のライヴは、前日までにソールドアウトしなかったことを知っていました。
なので、後方の席ならば空いてるんじゃないか?と。
なんだったら、3階席に行ってみてもいいんだし、空いてるところで落ち着いて観たい!と画策しました。
でも、3階に続くエスカレーターが封鎖されてます。
なんで行けないの?だったら階段で...と思いましたが、階段も封鎖されてるのです!
どうやら、チケットの売れ行きは芳しくなかったらしく、3階席748席分は埋まらずにまるごと閉鎖したということなのでしょう。
チケット余ってるのは知ってましたが、3階席すべてとは思いもよりませんでした。
となると、2階席はどうなんだろう。
後方の席は空いてるのだろうか...と思いましたが。
トイレを済ませ、開演5分前になっても、2階席後方2列くらいはガラガラです。
左右の端の方の席は、もっと前列まで空いてましたね。
ファンとしては寂しいところなのですが、今の僕の体調を考えたら、ありがたいこと。
中央の最後列、18列23番に陣取りました。
どうやら、この席に人が来ることはなさそうです。
プレッシャーを感じず、気楽な気持ちでライヴが観られそうです。
ライヴのスタート
開演時間の18時。
ゆっくり客電が暗くなっていきました。
すると、女性が出てきて、一人芝居を始めます。
音を探しているとかなんとか、セリフを喋っていました。
その中で、バンド・メンバーが1人、2人と現れ、自分の位置に付きます。
01. 響宴
02. woh woh
03. 私が竜宮小僧だったとき
04. 泪月 -oboro-
05. 月のしずく
06. 紫陽花
07. 雨音はショパンの調べ
08. 硝子窓
09. そして僕は途方に暮れる
10. ヒトツボシ
11. 無形スピリット
12. n0w
13. Intoxicated
14. よくある話~喪服の女編~
15. 想待灯
16. ラブサーチライト
17. 瞳をとじて
18. A wonderful little light
19. ひと恋めぐり
20. かたちあるもの
21. 響宴
(Encore)
22. TRUST
23. KISSして
「響宴」。
ステージ後方、上段に、紫のドレスを着た柴咲さんが現れて。
まるで、女王君臨かのような存在感での登場です。
この曲は、柴咲さんの抑えめのラップがポイントです。
そんなに気を張らずに言葉を紡ぎます。
それほど好きな曲ではなかったのですが、ラップが終わり、メロディをたおやかに歌う様が、思ったより良きかな。
「woh woh」。
一聴してわかる、小田和正のメロディ。
音源では無かった男性コーラスとのハモりが、ライヴ感があって見事でした。
土に根を張るような低音から、天高く伸びていくような高音まで、高低差のあるヴォーカルを安定して表現していました。
澄んだ心で落ち着くわあ。
「私が竜宮小僧だったとき」。
これはもう、和の心を感じるというか、わらべうたのようでいて、独特の節回しです。
途中、男性コーラスがスキャットを入れてきて、これもまた原曲にはないアレンジでした。
不思議な雰囲気なんだけど、どこか寂しげなんですよね。
「泪月 -oboro-」。
なんだかイメージしたのが卑弥呼。
卑弥呼は太陽神だけれど、柴咲さんは月の神だな!と思わされました。
ゴージャスな女神を盛り立てるバンドの演奏が、とても躍動感がありました。
「月のしずく」。
やはり柴咲さんは月の女神だとの思いを強く。
デビュー時、この曲でいきなり歌の上手さを見せつけた柴咲さんですが、もはや貫禄しかない。
いつ聴いても、何回聴いても、逢いたいという切実な思いに心底聴き入ってしまいますね。
ステージ後方、上段に上がって、そこに神様がいるかのように、二礼二拍手一礼する柴咲さん。
やはりここは、とても神聖な場所のようです。
「紫陽花」。
落ち着いたサウンドで始まるかと思いきや、なかなかにビートを利かせたR&Bです。
ダンサーさんが柴咲さんを邪魔しないところで1人パフォーマンス。こちらにも目を奪われます。
大正浪漫というか、紫陽花寺?を想起させ、鎌倉がイメージされました。
「雨音はショパンの調べ」。
先ほどの紫陽花の上に、雨粒が落ちてきたという感じで、ストーリーが繋がっていきます。
透き通る雨の色は柴咲さんの声の色。
しっとりと美しく切ないメロディに乗せ、この世界観を構築します。
「硝子窓」。
さらに、雨が降る様子を窓から眺めている感じで。
少し寂しげな告白のような。
ここまで来ると、バンドのグルーヴが抜群。
原曲は、もっとジャズっぽい印象がありましたが、ここではもっとロックに近い感じでしたね。
「そして僕は途方に暮れる」。
とても優しく、柔らかいサウンドでした。
男性コーラスとの相性もピッタリ。
穏やかな中にも、やはり寂しげな心境を垣間見せるのです。
「ヒトツボシ」。
とても絶望的というか運命的というか、大迫力と共に、ドーンと重たい印象を受けます。
青を基調とした照明が、ここぞという時に真っ赤に変わったのがインパクト大。
その後は、客席の天井を白い光がクルクル照らしていて。
そんな風に、照明の演出も心に残りました。
前半のハイライトの1つで、ここで一旦ストーリーをまとめて終わる感じです。
会場に響き渡るカミナリの音。
ダンサーさんがステージ上で舞い、コーラスの人がスキャットを歌い上げます。
そして、だんだんテンポが速くなってきて、お馴染みのリズムに...。
「無形スピリット」。
黄色の生地に緑の模様、白のドレス・スカートを穿いて現れた柴咲さん。
ピョンピョンと飛び跳ねて、「♪ フィジカル フィジカル」と歌います。
最近好きになった曲で、楽しみにしてたのですが、なかなかAメロを歌い出さないなあと思ってたら。
いつのまにか「n0w」になってました。
「無形スピリット」は短く、雰囲気だけで終わってしまったのが残念!
強力なビートでダンサブル。
2階席のお客さんはみんな座ったままでしたが、1階席は立ちあがってノリノリだったのでしょうか。
これは体が疼きますよね。
ジャンプしたり頭を振ったりしたくなります。
我を忘れて踊りたい曲です。
さらに「intoxicated」になだれ込みました。
この辺りはメドレー形式で進みます。
トランス・テクノといったサウンドで、柴咲さんのイメージを覆す曲。
パワーを感じました。
「よくある話~喪服の女編~」。
追加された曲の中ではいちばん楽しみにしてた曲。
慌ただしくスリルがあり、ラテンの香り漂うもので、ゴージャスなサウンドです。
欲を言えば、この曲では生ホーンを聴きたかったところですが。
歌詞の中に「横浜の港町」というのが出てきて、この会場にピッタリだなと。
ノリの良さもメロディの良さも光る、大好きな曲でした。
座ったままでも盛り上がったな。
「想待灯」。
『響宴』の中ではいちばん好きな曲。
ライヴだと、感じるグルーヴが違いますね。
ぐいぐい心に迫って来て、持ってかれました。
熱くなり過ぎない柴咲さんのヴォーカルがクールでした。
「ラブサーチライト」。
この曲はなんと言ってもベース!
ファンキーでキレのあるチョッパーも含めて、大活躍でした。
そのベースに引っ張られるように、バンドの演奏もダイナミック。
間奏で、柴咲さんの「行くぞーっ!」の声が響き渡りました。
「瞳をとじて」。
淡いピンクのドレスに着替えた柴咲さん。
またここからバラードです。
この曲は、昨年の『ACTOR’S THE BEST』ツアーでも聴きましたが、今年のこれらの曲の流れで聴くと、全然違った印象を受けました。
やっぱり名曲なんだなあと。
ドラマチックなサウンドの中で、アコギの音色が美しく響いていました。
「A wonderful little light」。
この時期にピッタリ。
ほんわかと心温まるクリスマス・ソングです。
このタイミングで聴けたことに感謝ですね。
傘を差して、ダンサーさんと2人で歩くシーンが印象的。
相合傘から、結局1人になってしまう柴咲さんです。
この意味とは。
「ひと恋めぐり」。
これも大好きな曲でしたから、セットリストに追加されたのは嬉しかったです。
「♪ 憶えてますか」という問いかけから始まるバラード。
しっとりと、透明感のある歌声で歌い上げるのがたまりません。
「かたちあるもの」。
前曲と違って、今度は、どっしりと、ドラマチックに歌い上げる柴咲さん。
時に祈りを捧げるようでいて、この先どんなことがあっても、柴咲さんが守ってくれるから大丈夫な気がする安心感がありました。
「響宴」。
虫の声が鳴り響く中、このリプライズ。
ラップなしのショート・ヴァージョンで締めくくります。
ここで本編終了。
ここまで一切MCなし!
ストーリーを紡ぐように、世界観を作り上げたステージでした。
アンコールは、白いTシャツで現れた柴咲さん。
本編での緊張感あるストーリーから解放されて、やっとくだけた感じに喋ってくれました。
「今回のライヴは、演じるような感じで」
「去年、25周年でACTOR’S THE BESTというアルバムを作って、ツアーをやって、反響が大きかったです。自分らしいものを見つけられました」
「そして今回は、『響宴』というEPを出して、それを軸に四季を感じられるコンセプトのライヴにしました」
「私の曲は、人を失くすことがテーマになることが多いのですが、いろんなことがある人生の中で、それでも、歌で救われたらいいなと思いました」
そして、バンド・メンバーを1人1人、紹介しながら呼び込みます。
現れたメンバーは皆、柴咲さんとハイタッチをしてから、自分の位置に付きます。
ギター、ベース、ドラム、キーボード、コーラス、ダンサー。
そして、パーカッションだと思っていたのは、特別ゲストとして、ハンドパンという楽器を演奏してたんだそうです。
柴咲さんが、このハンドパンの音色が好きで、是非ステージで使ってみたいとの思いから実現したとのこと。
ハンドパンなんて、全然知りませんでしたね。
今度、調べてみましょう。
「今まで重ねてきた経験を基に、自分を諦めず、信じていこう、そんな思いで作った曲です」
そんな風に紹介された曲。
入り口で配られたチラシに、この曲の歌詞が書いてあって、みなさん一緒に歌ってくださいとのことでした。
昨年のライヴでも披露されて、その時、みんなが合唱してるのを聴いて、歌詞を全然憶えてなかった僕は付いていけませんでした。
今回もこの曲をやると知って、歌詞を憶えようかと思いましたが、なかなか憶えられず、当日を迎えてしまいました。
こうやって、歌詞を配られたのはありがたかったですね。
実際に曲が始まる前に、みんなで1回練習で歌ったりもしました。
そんなわけで、始まったのが「TRUST」。
近年の柴咲さん自身の推し曲ですね。
「偽らない」から始まるサビ、自分のありのままでいること、自分を信じて貫くことの大切さが歌われます。
そして、お客さんの合唱が始まり、会場は一体に。
コーラスを合唱しているお客さんの声をバックに、圧巻のヴォーカルを聴かせる柴咲さん。
みんなでこの曲を作り上げている感じがしました。
「KISSして」。
最後はノリノリ。
2階席のお客さんも、ようやく立ち上がった感じです。
元々、ポップでノリのいい曲なのは知ってましたが、こんなにロックンロール・ブギになるとは思ってませんでした。
「チュッチュッ、チュルルル~」のところはお客さんに歌わせたり。
手を左右に振らせたり。
一緒に歌って踊って。最後に来て、ライヴに参加してるなあという実感がありました。
ライヴ終了は20時10分でした。
情景を感じる、映画を観ているようなコンセプト・ライヴ
アンコールまでMCなしというのが驚きましたね。
虫の声、雨の音、和傘、大正浪漫。
日本の美しい四季、情景を感じるストーリーがゆっくりと流れる世界観。
そこではチャーミングさは封印して、どっしりと歌い上げる安定感抜群の柴咲さんの声が中心でした。
柴咲さんの私的な部分はまったく無くて、映画を観ているような感触だったし、歌を使って演技をしている感じでしたね。
そういった意味では、かなり強力なコンセプト・ライヴでした。
昨年のACTOR’S THE BESTツアーとはまったく違ったものでしたね。
これぞ女優さんの表現するライヴ、といったところで、普段僕が観ているロックなライヴと異なり、こういうのもまた素晴らしいエンターテインメントだなあと思いました。
今回のツアーのセットリストを先に知ってたら、観に来ようとは思わなかっただろうし、そういう意味では、新たな気付きをもらえたライヴでした。
こういう気持ちになれるライヴもたまにはいいですね。
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