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『COYOTE』
佐野さんは新しい力、COYOTE BANDを手に入れた。
そして静かに佇みながら、僕らの気高い孤独を尊重しつつ、「自分のこと責めないで」「僕は君の力だって憶えていてくれ」と見守っていてくれる。
佐野さんにそう言われたら、なんだか力が沸いて、今日もがんばっていけそうだ。
(2024.5.13)
続くヴォーカルの不調、CCCD問題をきっかけにしたEPICソニーからの離脱。
2005年、デビュー25周年を迎えた佐野さんは、決して良いとは言えない環境下にあった。
そんな中、ひと回り以上歳の離れたミュージシャンを集め、新しいバンドを結成する。
そのコヨーテ・バンドが今年20周年というけれど、この1stアルバムが出るまでには結成から2年近くかかってるんだよね。
しかも、結成当時のメンバーはギターの深沼さん、ベースの高桑さん、ドラムの小松さん。
現在のコヨーテ・バンドの売りでもあるツイン・ギターではなかったし、サウンドの幅を広げるキーボーディストもいない、最少限の3ピース・バンドだった。
そのメンバーで制作されたこのアルバム、現在のコヨーテ・バンド・サウンドとの違いを見つけるのも一興だ。
まさしく「星の下 路の上」が始まりの合図だった。
徐々にエンジン吹かして、さあ、新しい場所へ行こうという高揚感。
荒ぶるビートが沸々と湧きあがる。
「荒地の何処かで」は、ワイルドな佐野さんの歌声。
しかし、決して投げやりなどではなく、聴く者の心にそっと忍び込んでくる。
「君が気高い孤独なら」での、ポップ・ビート。
このような清々しいロックンロール・サウンドは、この後のコヨーテ・バンドの得意領域になっていく。
「呼吸」は枯れた味わいの佐野さんのヴォーカル。
近年の『或る秋の日』『今、何処』の世界に通じるものがある。
いつも傍にいるよ、いつも味方だよと言ってくれる佐野さんには全幅の信頼を寄せたくなる。
「Us」のような、UKギター・ロックが、コヨーテ・バンドの軸となっているのがわかる。
「世界は誰の為に」では、We’ve gotta changeと、変わり続けることの大切さを問うている。
「コヨーテ、海へ」は、Show realこそが勝利ある。
現実を直視することから、行く先が見えてくることを教えてくれる。
このアルバムが教えてくれるのは、暗闇の中から見える光、だ。
決して良くない状況にあっても、希望はある。
コヨーテ・バンドを手にした佐野さんは、ここから復活の道を遂げていく。
現状を打開する力は誰にでもあることを、佐野さんは身をもって教えてくれる。
(2025.3.5)
『ZOOEY』
佐野元春はベスト盤くらいしか聴いたことなくて、過去のアーティストだと思ってたら、不意にTVのCMで流れた「La Vita é Bella」。
「♪ 君が愛しい 理由はない」
あ、最近の佐野さんもいい曲作るじゃないかと感動しました。
そこですぐこのアルバム買ってれば人生少し変わってたかも。
(2024.5.25)
2人のメンバーが加わり COYOTE BAND がパワーアップ。
ビート・ポップ・バンドとして重厚かつ幅が広がった。
リスナー一人一人に寄り添うような形から、もっと広範囲に佐野さんの意志が届くようなサウンド。
音楽を演奏する楽しさ・喜びを再認識したようで、素晴らしき世界を構築。
(2024.5.19)
『BLOOD MOON』
ヒプノシスの世界観だとすぐわかるジャケットで、コンセプトがあるようなアートな佇まい。
ポップ・ビートの「境界線」「優しい闇」などの得意分野を活かしながらも、前作よりもロック路線。
「バイ・ザ・シー」のクールなメロディと歌詞に熱い演奏もコヨーテならではの魅力。
(2024.5.28)
『MANIJU』
ジャケットのカラフルな花のイメージとは違って、サウンド的には全体的を通して控えめ。
地味に愚直にビートを鳴らそうとしてる感すらある。
そんな中でも、唯一パッと華やかなのが「純恋(すみれ)」だ。
この曲だけ景色が変わる。若き恋人たちへ。青春を通りすぎた大人たちへ。
(2024.5.31)
『ENTERTAINMENT!』
ライヴでのぶち上がりナンバー「エンタテインメント!」「愛が分母」を収録するアルバムが出来上がって良かった。
この2曲に引っ張られるように、爽やかで潔いポップ・ロックが並んでる。
総時間も30分ちょいで、フレッシュな気分になれるアルバムなんだよな。
(2024.6.18)
最新形に進化した佐野元春の到達点として、『今、何処』が超名盤すぎるので、その3ヶ月前に配信リリースされた『ENTERTAINMENT!』の存在が霞んでしまってるきらいがあるが、こちらも紛れもない名盤・快作として決して忘れてはならない。
佐野さんの表現者としての姿勢を表した「エンタテイメント!」、
スカのリズムで爆発的にハッピーな「愛が分母」。
この2曲は、現在の佐野さんのライヴには欠かせないアッパー・ソングだ。
「この道」や「合言葉 – SAVE IT FOR A SUNNY DAY」は特に、コロナ禍という特異な時代性の記録でもある。
「街空ハ高ク晴レテ」「新天地」「少年は知っている」などは、爽やかでキレ味鋭いポップ・ロックの見本。
皮肉たっぷりにこの世を憂う「悲しい話」があるかと思えば、穏やかに平和を願うような「東京に雨が降っている」「いばらの道」もある。
『今、何処』という必殺技を出す前に繰り出されたジャブと言うには強力すぎたパンチだ。
30分強で終わる潔さ・聴きやすさといい、鮮やかすぎる。
聴けば気分は晴れ、スッキリした気分になるだろう。
(2024.11.23)
『今、何処』
リリース直前、佐野さんは「ヤバいアルバム」と表現した。
またまた大袈裟な...と思いつつ聴いてみると、希望と絶望、ポップとシニカルが交差し、混沌とした現実から別次元を提示するサウンドに圧倒された。
これを聴かなければ佐野元春は語れないほどの最重要作となった。
(2024.6.21)
『2022 LIVE AT SENDAI, FUKUOKA, OSAKA』
2022年のWHERE ARE YOU NOW TOURから、厳選された8曲。
配信のみのライヴ盤だけれど、これがまた濃密。
ライヴでは珍しい「マンハッタンブリッヂにたたずんで」からスタート。
甘いメロディが優しく光るこの曲、歓声が大きかったのを憶えてる。
この年が、『NIAGARA TRIANGLE VOL.2』と『SOMEDAY』のリリース40周年だったことによる選曲だった。
「ヴァニティ・ファクトリー」は『SOMEDAY』を代表しての選曲。
『SOMEDAY』には他にシングルなどの代表曲が多いのに、この曲を採り上げたことの意味。
まさかコヨーテ・バンドでこの曲をやってくれるとは思わなかったし、「♪ ヴァニティ!ヴァニティ!」と熱く盛り上がった。
ここまでライヴ映えする曲だとは。
会場の興奮も伝わる演奏。
「ラ・ヴィータ・エ・ベラ」「エンタテイメント!」「銀の月」「純恋(すみれ)」は既にコヨーテ・バンドのライヴ定番曲。
これらが配置されることで、ライヴに安定感が生まれる。
地の底から唸りをあげる「ヤング・フォーエバー」を経て、強烈なスカ・ナンバー「インディヴィジュアリスト」で観客をビートの渦に巻き込む。
全8曲38分。
作品としてはやや中途半端で物足りない面はある。
どうせならフル・ライヴの音源を聴きたかった、と。
しかし、このライヴのエッセンスを抽出した、ハイライト盤と割り切れば、充分楽しめる。
この短さもまた良し。
(2024.8.26)
『HAYABUSA JET I』
気が付いたら、45周年記念ツアーの開始まで1ヶ月を切ってるじゃないか。
そろそろリハーサルも始まるのだろうし、我々ファンも気持ちを作っていかねばならない。
それには、このNEWアルバムはマスト。
この作品がツアーの軸になることは確かだ。
初めて「Youngbloods」2024年ヴァージョンを耳にしたのが随分昔のようにも思える。
そこから始まった、元春クラシックス再定義プロジェクト。
「Youngbloods」を筆頭に、「つまらない大人にはなりたくない」「ジュジュ」「街の少年」「約束の橋」など、アップ・ビートで自然とテンション上がる曲が中心だ。
それでいて、大胆にアレンジを変えた「だいじょうぶ、と彼女は言った」「欲望」「自立主義者たち」などが、作品に深みを与えている。
このアルバムを初めて聴いた時は、その変化に驚き、なんて若々しいサウンドなんだと興奮したけれど、今すこし落ち着いたところで改めて聴いてみると、大人の余裕が感じられる。
20年間、活動を共にしてきた佐野元春とコヨーテ・バンド。
今まで作り上げてきたコヨーテ・サウンドの方向性を考えたら、元春クラシックスがこのような形に姿を変えるのは当然の帰結という気がする。
この20年は佐野元春を隼ジェットへ改造手術する期間であったと考えるのは行き過ぎだろうか。
(2025.6.13)
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