斉藤由貴 Live@LINE CUBE SHIBUYA 2025.2.27 感想

40th Anniversary Tour
水辺の扉 ~Single Best Collection~

2025年2月27日(木)@LINE CUBE SHIBUYA

デビュー40周年記念ツアー決定!

斉藤由貴は、僕が中学生の頃にデビューして、アルバム『AXIA』にドハマりしました。
当時、日本一ポニーテールが似合う美少女だったと思います。
ただ、『AXIA』はよく聴いたのですが、ドラマの『スケバン刑事』とか『はね駒』とか『はいすくーる落書』とか、全然観たことなくて。
だから、全然ファンと呼べるものではなかったんですよ。
女優さんとしての由貴さんはあまり知らなくて、単なる『AXIA』信者(笑)。
だいぶ大人になってから、ベスト盤を聴いて、良い曲いっぱい歌ってたんだなあと思うくらいでね。

そんな感じだったのですが、由貴さんがデビュー40周年を記念してライヴをやるというニュースを知って。
しかも、当時のアレンジで演奏する、シングル・ベスト・コレクション的な内容になるというではないですか。
さらに、当時のプロデューサーの武部聡志さんが監修し、同行するとのことで。
それなら、ベスト盤くらいしか知らない初心者の僕でも、きっと楽しめるはず。
それに、由貴さんの曲の中で、いちばん大好きな、『AXIA』収録の「AXIA ~かなしいことり~」。
この曲もシングル曲ではないにせよ、ベスト盤にも入ってるくらい人気のある曲なので、今回のライヴでやってくれるのではないか。
大好きなこの曲が生で聴けるのではないか。
もうこれは、絶対観に行くべきだ!

そう思うに至り、先行抽選に申し込み、無事に当選することが出来たのです。
まさか、斉藤由貴のライヴに行くことになるなんて、思いもよりませんでした。

ライヴの予習としては、まずは、ひたすらベスト盤を聴いてましたね。
こんなに良い曲がたくさんあったなんてと、あらためて思ったり。
それが、ライヴで聴けるかもしれないと思うとワクワクしてきて。

僕が観に行く日の約1週間前にツアーが始まって、セットリストが判明。
そこに並んでた曲は、僕の期待をさらに大きくするものでした。
よし、ほぼ願ってた通りのセットリストだ!
早速、Spotifyでプレイリストを作り、それで予習。
シングル曲ではなく、馴染みのないアルバム曲も含まれてたのですが、それらの曲も、とても僕好みの曲で、マジでこれが生で聴けることになるのか!と、テンションは高まっていくばかりでした。

ライヴ当日。会場へ

ライヴ当日は晴れ。
体調も良かったので、ライヴ前に買い物をすることに。
途中下車して新宿、そして渋谷のdisk unionで、レコード漁りです。
疲れましたが、収穫もあって、充実した時間でした。

楽しい買い物をしていると、あっという間にライヴの時間です。
17時30分開場ということでしたが、会場に着いたのは17時50分頃でした。
久々の紙チケットで入場です。

トイレは混んでるかと思いきや、個室もたくさん空いていて、これなら、他の人を気にすることないやと、ゆっくりしました。
ブログに載せる良い写真が撮れないものかとあちこち徘徊してると、すぐに開演の時間が迫ってきて。
客席フロアに入ったのは開演5分前になってました。

僕の席は1階11列9番。
これはなかなか良い席です。
高いところが苦手な僕にとっては、1階席なのは嬉しいし、しかも11列目。
かなり前の恵まれた席です。
今の由貴さんはファンクラブは無いのかな?
だからなのか、普通に抽選申し込んだ僕のような者にも、こんな良席があてがわれました。
今回はラッキーでしたね。

ライヴのスタート

開演時間の18時30分を2分過ぎ、客電がゆっくり落ちていきました。

01. 初戀
02. 白い炎
03. 情熱
04. 街角のスナップ
05. 少女時代
06. MAY
07. ORACIÓN -祈り-
08. 予感
(Intermission)
09. 土曜日のタマネギ
10. ストローハットの夏想い
11. AXIA ~かなしいことり~
12. 3年目
13. 青春
14. 砂の城
15. 青空のかけら
16. 悲しみよこんにちは
17. 卒業
(Encore)
18. 夢の中へ
19. 「さよなら」

静かな水辺の傍で、由貴さんが語りかけてるような、詩の朗読が聴こえてきました。
イメージがふくらんでいきます。

「初戀」の、心が跳ねるようなイントロで演奏が始まりました。
そして、ステージ奥のカーテンが開いて、センターから由貴さん登場。
肩から胸元までガッツリと露わになったグレーのドレスで、歌いながらステージ前方まで近づいてきました。
その声は恋する気持ちに気付いた心に寄り添うようで、優しい。
大事なものを抱えるように、マイク・スタンドを両手でギュッとしながら歌っていました。

「白い炎」
イントロのガツンと来るピアノのフレーズは武部さんが弾きました。
僕は「卒業」よりもこの曲の方を先に聴いていて、由貴さんを好きになったんです。
だから、思い入れのある曲。
でも、今の由貴さんは、高音をファルセット寄りで発声してるので、当時のような攻めた感じにはならないんですよね。
こういうロックな曲は、今の由貴さんにはちょっと合ってないなあと思ってしまいました。

「情熱」
これにも思い入れがあります。
『AXIA』の後にハマったのがこの曲でした。
こういう、心に秘めた情念を歌わせたら天下一品です。
「♪ さよならね」というところで、曲調が変わるのが大好きで。
やっぱり筒美京平はスゲエなあと思ったもんです。
今の由貴さんも、思いっきり歌の世界に入りこんでいて。
聴いているこちらも、時が止まったかのように、動けなかったです。

MC。
「まず最初に...ウフフ」
「よーこそ!渋谷!」
「こういうの似合わないと思うけど、言ってみたかったんです」
「40周年ということで、こういうツアーをやりましょうと提案された時、嫌がる私を周りの方が乗せてくれたんです」
「最大の懸念は、お客さんが埋まらないんじゃないかということでした」
「こんなにお客さん集まらないですよね?って訊いたら、そうだよね~って言われて」
「それで、カチンときたんですけど」
「今は、どうだ!って感じです」

「私はイヤモニを付けるのがイヤなタイプでして」
「イヤモニを付ければ、演奏の音が良く聴こえるんでしょうけど、私は、空間を感じたいので」

「今回のツアーは、今までのシングルをオリジナル・アレンジで披露するということで、そういうことならと、武部さんが全面協力してくださることになりました」
「そして、バンドのメンバーも、知る人ぞ知る、腕利きのメンバーが揃っています」
「なので、私を見飽きたら、メンバーを見てくださいね」
「素敵な時間にしましょう」

「街角のスナップ」
この曲は知らなかった曲で、今回のツアーで披露されてると知って、慌てて聴きました。
そしたら、一発でお気に入りになり、生で聴くのをものすごく楽しみにしてました。
優雅なステップを踏むタンゴのように、ゆったりとしたリズムにドリーミーなサウンドと切ないメロディがたまりません。
由貴さんもハンド・マイクで、ステージを左右に歩きながら歌います。
コーラスの女性が印象的なカウベルを叩きながら、ルルルとコーラスを付けて大活躍。
後ろを向いて「♪ 振り向いちゃダメよ」と歌う由貴さんの姿がすごい。
アコーディオン・ソロも印象的な音で感激しました。

「少女時代」
この曲はサザンオールスターズの原坊が作った曲として、原坊ヴァージョンを先に聴いていて大好きでした。
原坊と由貴さんでは、またひと味違うんですよね。
この曲で、この日初めて観客たちが手拍子を始めました。
由貴さんの声がひときわ明るく聴こえました。
歌詞の内容に沿った振り付けをしながら歌う由貴さんを観て、ああ、さすが女優さんの表現力だなあと感心しました。

MC。
「3階のみなさん、ついてきてる?」
「2階、どう?」
「1階はいいの。見えるから」

「次にやる2曲は、私が主演させていただいた映画の曲」
「大森監督の3部作の曲」
「それから、馬の映画」

「MAY」
スタンド・マイクに対峙して、ひとつひとつ言葉を置くように歌う由貴さん。
なんとも穏やかな曲なのですが、徐々に気持ちが入っていって、「♪ だけど、好きよ」のところでは情感たっぷり。

「ORACIÓN -祈り-」
これは来生たかおさんとのデュエットでしたが、今回のツアーではどうする?となったそうです。
でも、シングル曲を披露するコンセプトのツアーなので、なんとか1人でもと、リハーサルをやってみたら、意外と行けそうだ、と。
たしかに、1人で歌うことによって、元々のメロディの良さがシンプルに伝わってきて、違った味わいの良さを感じました。

MC。
「今回のツアー・グッズ、私もすべて制作に関わって作りました」
「みんな、アクスタ買ってどうするの?」
「お陰様で、さっき裏で訊いたら、アクスタ、あと10個くらいで売り切れそうですと言ってました」

「次にやる曲は、シングル曲ではないんですけど、ファンのみなさんにとても人気がある曲なんです」
「私が作詞した曲なんですけど、どうしてもこの詞で歌いたくて、スタジオで、とりあえずこれで歌ってみていいですか、ってお願いして」
「そして歌った後に、どうですか?と訊いたら、いいんじゃないの、って」
「そう言わせるように仕向けて、ちょっとズルいですよね」

「予感」
今回のライヴが決まった時、どんなセットリストになるかなあと、斉藤由貴のことを調べたら、この曲がとても人気があるということを知ったのです。
だから、おそらくやるんじゃないかなと思ってました。
作詞の件では策士でしたね。
とても穏やかでゆったりした流れから、大きな世界に広がっていくような由貴さんのヴォーカルが圧巻。
2番での、追いかけコーラスも良いスパイス。
何もかも包み込んで守ってくれるような、大人の女性のバラードで安心感です。
エンディングは優雅な演奏が続いていくので、きっと演奏途中で由貴さんは退場するんだろうなと想像してたら、その通り、ゆっくりと歩いていってお辞儀をし、ステージから去っていく演出でした。

19時27分。
ここで第1部終了。
15分間の休憩です。
このライヴ、観客の皆さんはずっと座ったままの鑑賞。
座ったままじっとしてるというのも、けっこう緊張して疲れるものです。
ライヴ中に体調が悪くなる心配を抱えた僕にとっては、こういう緊張感は大敵。
この休憩時間はホッとひと息リラックスできて、ありがたかったです。

「土曜日のタマネギ」
先に登場したギタリストとコーラスの女性が、ドゥーワップ・コーラスを歌い始めました。
そして、1番のメロディが始まるところで、ステージ袖から顔を出した由貴さん。
その仕草も可愛らしく、歌い出します。
由貴さん、今度は白いドレスに身を包んでいて、ハンド・マイクで歩きながら歌います。
オリジナルはアカペラでしたが、今回はジャズ風のバンド演奏がお洒落な雰囲気です。
曲の主人公のちょっとドジな感じが伝わってきて、コミカルなドラマを観ているようでした。

MC。
「今回のツアーは、シングル曲をオリジナル・アレンジでというのが謳い文句なのですが、先ほどの曲だけはムリ!でした」
「アカペラでやろうと思ったら、曲を作ってくださった亀井登志夫さんとか久保田利伸さんとか連れて来なくちゃならないから」
「なので、カヴァー・アルバム『水響曲』風のアレンジで、ということでいいんですかね?」

「最近、シティ・ポップというものが流行っていて、その流れで私の曲も注目されるようになっていて」
「私の曲なんだけど、私が歌ってるんじゃないな、というのに遭遇する機会が増えてきて」
「知らないうちにカヴァーされてたりとかがあって」
「そんな風に、後輩たちにも歌われている曲なんかをやろうと思います」

「ストローハットの夏想い」
シティ・ポップと言われれば、たしかにそうかも。
穏やかながらも80年代を象徴する、親しくも懐かしみのあるサウンド。
でも、バンドの生の演奏をよく聴くと、意外とファンクだったりもして。
カヴァーしてくれてる若い子たちに負けないようにか、由貴さん、いちだんと可愛らしい声で歌います。
乙女のようなステップも若々しく、時にマリリン・モンローを彷彿とさせるような艶めかしさもあったりして。
ギター・ソロも良い世界観を響かせてましたね。

「AXIA ~かなしいことり~」
出ました!大・大・大好きなこの曲。
まさか、生で聴ける日が来るとは。
イントロだけで感無量です。
スタンド・マイクの前で、遠くを見つめるような目で「♪ ごめんね」と歌い出す由貴さん。
この曲は何度も何度も聴きこみましたから、オリジナルとの違いも明らかにわかります。
今の由貴さんの声は、ややハスキーでしたね。
2番からはハンド・マイクに持ち替えます。
そして、ステージの左手に歩いてきて、僕の目の前で歌ってくれました。
大サビの「♪ 打ち寄せる」のところになると、またステージ中央へ戻っていって。
後ろ姿の由貴さんを観ていると、なんだか、波と一緒に遠ざかっていくような切なさを感じました。
2人の男性の間で揺れるこの曲。
当時は、少女の無邪気さから来る心の揺れ、決められない想いを感じていましたが、もう今の由貴さんはかなりの大人。
そこには小悪魔的な少女はいなくて、すっかり魔性の女性になっている主人公の怖さも感じましたね。

MC。
「いつの間にかバンドのメンバーはいなくなっていて、武部さんと2人だけです」
「緊張のコーナーがやってきました」

ここからは、武部さんのピアノの伴奏だけによる曲の披露です。
由貴さんは、ピアノの近くにある椅子に座って歌います。

「3年目」
この曲も、セットリストが判明してから慌てて聴いた曲なのですが、初めて聴くはずなのに、かつてどこかで何度も聴いたことがあるような既視感のある曲でした。
この素晴らしいバラードも、楽しみにしてました。
由貴さんの歌は、芝居のセリフを喋るように、心がこもっていて、言葉のひとつひとつが程好い重みをもって刺さってきます。
ビブラートも効いて、とても伸びやかな歌声が響き渡ります。
そして、武部さんのピアノの音色もとても美しい。
沁みました。

MC。
「武部さん、なんか喋ってくださいよ」
「ツアーが始まって、今日が3本目ですけど、一番いいライヴが出来てるんじゃないかなと思います。由貴ちゃんに初めて会ったのは、デビューする1年前でした」
「私もまだピカピカの高校3年生で。高校3年生はピカピカとは言わないか」
「でも、由貴ちゃんは、あの頃と印象は今でも変わらないですよ」
「なんか、20歳くらいから、精神年齢は変わらない感じなんですよね。でも、武部さんは...丸くなりました。あの頃の武部さんは、スタジオのコントロールルームでピリピリしてました」

「次にやる曲は、日替わりの曲で」
「2曲用意していて、それを交互にやろうということで」

この日替わり曲のコーナー。
ツアー初日が「morn ~透明な壁~」。
2日目が「うしろの正面だあれ」でした。
どちらも知らない曲だったので、僕が観に行く日は『AXIA』収録曲をやってくれないかなあと秘かに期待してました。
でも、2曲交互の日替わりだったとは。
じゃあ、どちらが来る?
予習で「morn ~透明な壁~」は何回か聴いたけど、もう1曲の方は全然馴染みがないぞ...と思ってたら。

「2曲交互にやろうと思ってたんですけど、日替わりなんだから、どうせなら全会場、すべて違う曲に変えるのはどうかなと」
「その日に来られた方だけのスペシャルな曲で。だから、今からやる曲も、全然リハーサルやってないんですよね」
「でも歌えるでしょ?」

おお~っ。
この日だけの特別な1曲。
期待が高まりました。

武部さんがピアノでイントロを奏でる。
これは!
よく知ってる曲だぞ!
「♪ 試合に負けた...」
「青春」だ!
やりました。
願い通り、『AXIA』収録曲でした。
由貴さんは椅子から立ち、スタンド・マイクで歌います。
ピアノとヴォーカル、2人だけの真剣勝負。
グイグイと迫ってきて、気持ちのこもった、良いパフォーマンスでした。
僕は弾き語りとかアコースティック・ヴァージョンとか、楽器の数が少ないのは苦手で、とにかくバンド演奏が好きなのですが、この武部さんのピアノの伴奏だけの2曲はとっても素晴らしかった。
バンドじゃなくても全然いけるじゃん。
心に響く演奏とはこういうことなんだなと。
あらためて、武部さんの凄さも実感しました。

そして、再びバンド・メンバーが戻ってきて。
ここで、メンバー紹介です。
詳しいことは知らないのですが、武部さん繋がりで、ユーミンのライヴのサポートをしてる方たちで構成されてたようです。
事前情報として、女性コーラスは歌手としても有名な加藤いづみさんと聞いてたのですが、由貴さんがコーラスの女性を、
「アイハラミキ!」と紹介したのはビックリしました。
えっ、加藤いづみさんじゃなかったの?
日によってメンバー変わってるとは驚き。

「砂の城」
明るく力強いバンド・サウンドに、思わず観客も手拍子です。
客席総立ちになるならここから!と思ったのですが、誰も立たず。
でも、由貴さんも大きく手拍子したり、コーラスをギタリストや観客に促したり、自然とノッてきて楽しそうでした。

「青空のかけら」
さらに明るい曲調で、心が軽くなります。
空に突き抜けるような由貴さんの歌い方。
「♪ Dancin’ in the sky」と歌詞にあるように、思わず踊りたくなります。
なのに、なんでじっと座ったままじゃなくちゃならないんだ~。
間奏でのドラム・ソロからのベース・ソロが熱かった。

「悲しみよこんにちは」
悲しみを携えた歌詞なのに、とことん爽やかで、元気がもらえる曲。
2番からハンド・マイクに持ち替えて、ステージを歩きながら、1階席、2階席、3階席、左右、前後と、会場のあちこちに勇気を配っているような由貴さん。
ギター・ソロも燃えてましたね。
全体の演奏もどんどん熱を帯びていって、フィニッシュの後には、由貴さんが思わずガッツポーズをしてたのが可愛かったです。

MC。
「明るくアップ・テンポな3曲をお送りしましたが、それでは、次の曲が最後です」
「この40年、私はずっと歌手だったわけではないです」
「それなのに、40周年ということで、こういうツアーをやることになって、正直、不安もありました」
「でも、やると決めた以上、精一杯やろう、と」
「そして、その結果が...みなさんです」
「こんな景色を見ることが出来るなんて」
「なんでも、やってみるものだなと思いました」

「それでは最後の曲」
「大切な、運命の、宝物のような曲で」
「そーっと大事にしていて、40年経っても、ずっとキラキラ輝いている曲です」
「この曲に出会ったことは、本当に幸運だったと思います」

「卒業」
あの、なんとも言えない、不思議で心地良いイントロの音は、手弾きじゃなく、同期で鳴らされた音だったのですが、由貴さんの曲紹介の後、大きな拍手が静まらないうちに始まってしまったので、よく聴こえませんでした。
スタッフ、もう少し間を置いてからイントロ鳴らしてほしかった。
あのイントロが一気にテンション上がる瞬間なんですから。
でも、武部さんのグリッサンドがダイナミックで興奮。
そして、歌が始まってしまえば、すぐに、天才・松本隆のあの詞の世界の中へ引きこまれます。
こんな青春送ってみたかったなと思いつつも、なんだか疑似体験してるようなリアリティある親近感。
ホント、名曲です。
「♪ 嬉しいくせして」の後の「♪ うぅ~ぅ」の由貴さんの歌い方がたまらないのです。
ここ、誰のアイデアなんだろう。
元から筒美先生が作ったのかなあ。
それとも、武部さんが考えたのかなあ。
まさか、由貴さんがレコーディングでアドリブ??
とにかく、この不朽の名曲を生で堪能できる幸せときたら!
間奏では、コーラスのアイハラさんが、ピアニカを吹いてました。
ああ、そうやってピアニカを使ってくるとは!
とても切なく哀愁のある響きで、心を持っていかれました。
終盤で、由貴さんが感極まってきて、「♪ 涙はとっておきたいの」のところで、声が詰まるというか、メロディが崩れた場面がありました。
歌詞の通り、涙こそ見せなかったですが、40年の思いが溢れたんだろうなと思います。

最大の見せ場が終わり、ここで本編終了。

アンコールの拍手に応え、2分ほどで再登場。
由貴さんは、ブルーのTシャツに、ハワイアン風のカラフルなスカートで現れました。

「やっぱり、アンコールといったら、こういうツアー・グッズを見せた方がいいんじゃないかなと思って、グッズのTシャツを着てきました」
「さっき、アクスタがあと10個でなくなるってお話をしましたけど、追加が出たようで、由貴さん、なくなるとか言わないでくださいって裏で言われちゃいました」
「今回のグッズは、すべて私が監修して作ったもので、せっかくみなさん来てくださったのに、売り切れで買えないっていうのは悲しいから、たくさん用意しました。この後、帰りに是非ご覧になっていってください」

「夢の中へ」
斉藤由貴最大のヒット曲。
当時、これ聴いた時は、なんで井上陽水??なんでディスコ・ビート??今までの由貴さんとイメージが違うなあと思ったものでした。
それでも、いちばんの売り上げになったんですからね。
ただ、この曲から武部さんが関わらなくなってたというのは皮肉な話なんですが。
しかし、ビートの強いこの曲を歌う由貴さんは活き活きしてる。
2番からはハンド・マイクで、振り付けもさらにオーバーヒート。
まるでミュージカルのような、夢の世界が広がっていきます。
サビの「♪ ウフッフー」はファルセットですし、当時よりも今の由貴さんの声に合ってる曲なんじゃないかなと感じました。
演奏しながら、メンバー紹介。
なんとも盛り上がったのですが、この曲ですら、客席のみんなは座ったままだったのでした。
「♪ 踊りませんか」って歌ってるんだからさ、せめて、この曲くらいは立って、会場全体で踊れば良かったのにと思いましたよ。

「次が本当に最後の曲です」
「これはひとつのさよならなんだけど、決してさよならじゃないです」

「さよなら」
ステージ上部のカーテンが上がっていって、背景に星空がいっぱいに広がってるような照明の演出が綺麗でした。
これも原坊が作った曲で、まさしく、このままライヴが終わってほしくない気持ちになる、さよならなんて言わないでという寂寥感に包まれます。
ちょっと寂しげながらも、芯の強さを感じさせる由貴さんのヴォーカル。
ラストは武部さんの美しいピアノの調べで締めました。

大きな拍手に包まれて、ライヴ終了。
20時57分でした。

さすが女優の表現力に目が離せない、神セトリのライヴ

大きな触れ込みだった、当時のアレンジでの演奏による、シングル・ベスト・コレクションのライヴ。
その期待に存分に応えるものでした。
僕なんか、とてもファンとは呼べない部類ですが、それでも大きな感動と満足感をもらいました。
それならば、40年間ずっとファンをやってきた方は、どれほどの思いになったでしょう。
こういうライヴを開催してくれて、本当に感謝ですね。

聴きたかった曲のオンパレードで、大袈裟でなく、全曲大好きな曲でした。
こういうライヴなら観てみたい、という思いにバッチリ応えてくれた神セトリでした。
女優さんだから、歌詞に合わせた身振り手振りの表現力が素晴らしかったです。
芝居しながら歌ってるようでもあり、ドラマのセリフのように、言葉ひとつひとつが心に刺さって入ってくる。
片時も目を離せないライヴでした。

今の由貴さん、高音はファルセット寄りのヴォーカルになっていて、昔の歌い方とちょっと違うんだけど、とても伸びやかで、素敵な歌声でした。
デビューの頃、強烈に感じた透明感は失ってないというか。
それでいて、酸いも甘いも嚙み分けた大人の女性にもなっていたというか。
そんなの最強じゃないですか。

プライベートなニュースを耳にするに付け、何を考えてるのかよくわからない、ちょっとエキセントリックな女性なのかなとも思ってましたが、そんなところは全然感じませんでした。
自分にとても素直で、チャーミングな女性でした。

とにかく最高の夜でした。
そして。
武部聡志さん、グッジョブ!
ですね。

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