エリック・クラプトン Live@日本武道館 2025.4.21 感想

LIVE AT BUDOKAN 2025

2025年4月21日(月)@日本武道館

80歳を過ぎて

またクラプトンが来る。俄かに信じられませんでした。
だって、2年前の2023年に来たばかりですよ。
あの時も、これが最後かも、なんて言われてました。
そして、クラプトンも80歳。
さすがにもう...と思ってたら、年齢を逆手にとって、80歳なのにやって来る!海外アーティスト武道館公演回数を自ら塗り替える!とニュースになりました。

エレクトリックな「Layla」を生で聴いてみたいという思いは、前回公演で叶えることが出来たので、今回は今までと違って気楽な気持ちでした。
クラプトンが来るなら絶対観に行きたい!と興奮することもなく。
むしろ、チケット代が25000円まで値上がりしたこともあって、どうしようか迷ったくらいでした。
抽選だけで完売するほどとは思えないし、行けたら行こうかの気持ちでした。

なので、すぐに抽選申し込むということはなかったし、一般発売した後もしばらく静観してたのですが、まあ、心の中では決まってました。
せっかくクラプトン来るなら観に行きたいよね、と。
すぐにチケット獲らなかったのは、今回の公演日程が微妙だったのもあります。
僕が仕事が休みの火曜日に公演が組まれてれば良かったのですが、今回はそうじゃない。
行くとすればどの日かなあ、と。
いちばん好きなのは最終日なんですが、迷ってる間に、追加公演が土日に組まれて、最終日は日曜日となりました。
土日は流石にすぐに売り切れるだろうと思い、だったら、月曜日がいいんじゃないかなと思いました。次の日がオフですし。
3月に入って、本当に行くつもりなら、そろそろチケット確保した方がいいんじゃないか?と思ってチェックしてみたところ、残ってるのは、僕が行くつもりだった月曜日と、追加の土日だけだったんですね。
土日が残ってるのは意外で、だったら土日でもいいかなあとも思ったのですが、その土曜日にあるNegiccoのイベントに当選しまして。
そうなったら、やはりクラプトン観に行くのは月曜日がいいんだなと思い至りました。
全8公演中、5日目となる公演です。
一般発売なので、購入する時に、座席が表示されるので、良い席が出るまで何度かチャレンジし、納得できる場所が確保できたので、購入しました。
しかし、25000円かあ。
クラプトンに限らず、チケット代はどんどん高騰していきますね。
先が思いやられます。

ライヴ当日。会場へ

そして、あっという間に4月。
クラプトン来日。
最近のライヴでは「Layla」やらなくなっているので、今回の日本公演でも、たぶんやらないだろうなと。
もう、それでいいとも思ってはいましたが、出来れば聴きたい気持ちも失くすことは出来なくて。
公演初日のセットリストが判明した時は、なんだか少しホッとしましたね。
もう「Layla」でやきもきしたくない、それでいいんだ、と。
NEWアルバムをリリースしたばかりなので、それがどこまで反映されるのかも肝でしたが、初日公演にNEWアルバムの曲は1曲だけでした。
セットリストを見渡してみて、知らないという曲はほとんどなくて、これなら予習に苦労することもなかろう、と。

ライヴ当日は晴れ。
disk unionお茶の水店で買い物をして、そこから歩いていったのですが、思ったよりも時間がかかって少し焦りました。
開場時間は18時なんですが、18時30分の時点でまだ武道館にたどり着けてなくて。
たぶん間に合うはずだけど、大丈夫か?とハラハラしながら歩きました。

到着したのは18時40分。
今回は欲しいグッズがなかったのでスルーして、入口の看板を撮影して、トイレに行って、それから入場。
自分の席にたどり着いたのは開演時間の5分前くらいでしたかね。
僕の席は2階南西S列55番。
チケットを買うのが遅かったので、S席でも2階後方でしたが、ステージのほぼ正面でしたし、通路側から2番目の席なので、サッと通路に出られるし、終演後に混雑する前に帰りやすい西エリアというのも良いところでした。
この日は結局ソールドアウトにはならなかったみたいですが、ザッと見た限りでは、ほぼ満席と言ってもいいんじゃないですかね。
2階後方がガラガラだったなんてことになってなくて良かったです。

ライヴのスタート

開演時間の19時を2分過ぎ、客電が落ちました。
メンバーが次々に登場。
どれがクラプトンかわからない(笑)。

01. White Room
02. Key To The Highway
03. Hoochie Coochie Man
04. Sunshine Of Your Love
05. Driftin’ Blues
06. Kind Hearted Woman Blues
07. Nobody Knows You When You’re Down And Out
08. Can’t Find My Way Home
09. Tears In Heaven
10. Badge
11. Old Love
12. Crossroads
13. Little Queen Of Spades
14. Cocaine
(Encore)
15. Before You Accuse Me

クラプトン、「コンバンワ!」と第一声。
ダークブルーのジャケットに身を包み、下はデニムかスラックスか、よく見えず。
でも、ステージ上方には6つのスクリーンが並べられ、様々なショットが映し出されていました。
こうなると、親指ほどの大きさの実物よりも、ついスクリーンに目が行っちゃうよね。

指慣らしとばかりに、流暢なギターのフレーズを弾いてからなだれ込んだのが「White Room」
ビートが力強く、どこか怪しげな世界観のクリームの楽曲。
クラプトンは力み過ぎず、自然体のヴォーカルですが、よく声が出てます。
サビはケイティ・キッスーンとシャロン・ホワイトの女性2人のコーラスが雰囲気を盛り立てています。
クラプトンは早速ワウの効いたソロを弾き倒し、健在ぶりをアピール。

「Key To The Highway」
このブルースも長い間定番曲になってますね。
今まで様々なアレンジがなされてきましたが、近年はノリのいいブギ調に落ち着いてます。
聴いてて楽しくなる感じとでも言いましょうか。
1番を終えての間奏はクリス・ステイントンのピアノ・ソロ、続いてドイル・ブラムホールIIのギター・ソロと、軽いタッチに心が浮き立ちます。
2番を終えての間奏はティム・カーモンのキーボード・ソロ。音が空間を包み込むようです。
最後はクラプトンのソロで、メンバーも聴衆も温まってきました。
「ドーモアリガト!」とクラプトン。

「Hoochie Coochie Man」
この古典的なブルースでは、粘り気のあるメロディと、キレのあるリズムで演奏のメリハリが見事。
力んで歌うクラプトンに女性コーラスが花を添えます。
クリスのピアノ、ドイルのスライド・ギター、ティムのオルガン、最後のクラプトンまで一気にソロ・プレイのリレー。
メンバーそれぞれに見せ場があり、単調になりがちなブルースを飽きさせない工夫が凝らしてありました。

次は軽快なビートに乗ってソロを弾くクラプトン。
なんの曲が始まるんだろう?と思わせてから、
強力リフが炸裂して「Sunshine Of Your Love」
クラプトンが歌い始めましたが、やがてベースのネイザン・イーストとリード・ヴォーカルを分け合います。
と思ったら、2番ではコーラスのシャロンがリードを歌う場面もあって。
そして、やがてクラプトン、ネイザン、シャロン、ケイティの4人のヴォーカルが強力に交じり合っていく感じは、ジャック・ブルースが歌っていたクリーム時代とは違うヴォーカル・ワークの魅力を堪能しました。
間奏のギター・ソロはクラプトン。ドライヴ感あふれるプレイが唸りを上げます。
終盤も再びクラプトンがソロを弾いていく中で、ぐんぐん盛り上がっていくバンドの演奏が圧巻でした。
それほど好きな曲ではなかったのですが、これは凄い!と舌を巻きました。
前半のハイライトはやはりこの曲でしたね。

「サンキューベリーマッチ、ドモアリガト!」とクラプトンが観客の声援に応えます。

そして、ここからはアコースティック・コーナー。
椅子に座ってアコギを抱えるクラプトン、ネイザンのウッド・ベース、ソニー・エモリーのドラムと、3ピース編成。
女性コーラス2人はステージに残ってましたが、それ以外のメンバーはいなくなってました。

今までのセットリストからすると、アコースティック・コーナー1曲目は「Kind Hearted Woman Blues」のはずでしたが、クラプトンが爪弾きだした曲は、どうも雰囲気が違います。
ブルースは似たような曲調が多いし、弾き語りでアレンジ変えられたらわからないよなあ、と思ってると、クラプトンの歌い出しで判明。
「Driftin’ Blues」でした。
今回の武道館公演、5日目にして初披露の曲です。これはちょっとサプライズ。
クラプトンがボソボソと低音で歌い、とにかく渋く決めます。
ドラムやベースの音はあまり聴こえてこなくて、ほとんどクラプトンの弾き語りという感じ。
そんな中、観客が大きな手拍子で調子を取っていました。
大人しい日本人が、このアコースティックな曲でこういうノリを見せるとは意外でした。

「Kind Hearted Woman Blues」
ステージに戻ってきたドイルが演奏に加わっていましたが、あまりギターの音が聴こえて来ません。
やっぱりクラプトンのギターばかりが目立ち、弾き語り色が濃いです。
原曲はもっとはっきりと歌い上げて主張するイメージがありましたが、ここでは、あくまでもテンションを抑えた演奏とヴォーカルでしたね。

「Nobody Knows You When You’re Down And Out」
デレク&ドミノスの熱いヴァージョンが大好きでしたが、近年はすっかり、大らかなカントリー・ブルースのアレンジになってますね。
どこかのんびりとした空気に包まれます。
ステージにはクリスが戻ってきていて、優雅なピアノ・ソロを弾きました。
良い意味での脱力系。
リラックスしてブルースの魅力を感じてくれとのメッセージでしょうか。

いつの間にかティムも戻ってきていてフル・バンドになっていました。
「Can’t Find My Way Home」
ブラインド・フェイスの楽曲ですが、ネイザンがファルセットでリード・ヴォーカルを取ります。
女性コーラスも重なって、綺麗なハーモニーが印象的。
静かな海を漂うような、厳かな曲の世界観に惹きこまれます。
ウッド・ベースを効かせたラストがクールでしたね。

穏やかにクラプトンがギターをつま弾きます。
「Tears In Heaven」
近年はレゲエ風にアレンジされてる場合が多かったけれど、今回は原曲に忠実なアレンジになっていたのが嬉しい。
浮遊感あふれるサウンドで、夢の中の一場面のような雰囲気を作り上げていました。
早逝したコナー君が天国で笑顔で遊んでる姿が目に浮かぶようです。
ドイルのスライド・ギターが特にいい味を出していました。
この曲の持つ真の魅力に初めて触れたような気がしました。

アコースティック・コーナーはこれで終わり。
5曲でした。
このコーナーは、日替わりでセットリストが微妙に違いましたね。
4日目までの公演では、6曲やることが多かったので、今日は1曲減らした分、この後のエレクトリック・コーナーが1曲増えるのかも?と期待が高まりました。

「Badge」
イントロのリフの後のドラムの音がめちゃくちゃデカくて大迫力!
ジョージ・ハリスンの影響大な哀愁漂うメロディに泣けてきます。
しかし、ただ切ないだけではなくて、サウンドはあくまでも力強いんですよね。
そして、唸るクラプトンのギター・ソロ。
ブレイクして、一瞬の静寂。
ソロを弾く寸前に足でエフェクターをペダル操作するクラプトンに萌えます。
クラプトンのソロが思ってたよりも速弾きなので興奮しました。
終盤はティムのオルガン・ソロが音の壁を作って、演奏の厚みがありました。
ラストはドイルが硬質なギター・ソロを弾いて締め。

「Old Love」
今回のライヴでいちばん楽しみにしてた曲。
ジョージ・ハリスンとのライヴの時以来、約33年振りに生で聴くことになりました。
80年代の終わりにクラプトンが作った名曲です。
どこか諦観とか後悔混じりといったやるせなさが漂います。
歌い出す前のイントロ部、かなり長いソロを弾いたクラプトン。
これはただのバラードじゃない。
力強いアレンジの演奏に女性コーラスがソウルフルです。
静かに、徐々に熱くなっていきます。
そして、クラプトンのギター・ソロが凄かった。
縦横無尽に弾きまくり、どこにもぶつけることの出来ない辛さをギターで表現してるかのような。
これは一瞬たりとも聴き逃せないやつ!
これぞクラプトンのプレイでした。
ティムのボコーダー・ソロも圧巻で、曲に重みを加えてました。
ブラボー!

「Crossroads」
クリーム時代のような疾走感溢れるものでもないし、原曲のようなスロー・ブルースでもない。
程好いテンポのアレンジが妙に心地良かったです。
ロックと言うより、やはりこの曲の神髄はブルースですね。
間奏はクラプトンのソロ、そしてクリスのピアノ・ソロ。
シャロンとケイティのコーラスも大活躍で盛り上げます。
終盤のクラプトンのソロはなんとも妖艶で、今までにない新しいCrossroadsを聴いた気がしました。

「Little Queen Of Spades」
クラプトンの武道館公演を観るのはこれで4回目になる僕ですが、そのすべてで演奏されてきました。
代表曲ではないけれど、すっかり定番曲となった長尺ブルース。
こういうのは昔の僕は苦手でしたが、今は大好きになりました。
クラプトンの艶のあるソロ。
クリスの激しいピアノ・ソロ。
静かにオルガン・ソロを鳴らしていたと思っていたティムのプレイが徐々に盛り上がっていくのがわかります。
ドイルはサイケなギター・ソロ。
そしてラストのクラプトンは爆裂ソロ。
15分以上になることもあるこの曲だけど、10分もなかった?
長尺のイメージの曲だけど、それほどの長さを感じなくて、すっかり入りこめてしまうんですよね。

前回2023年の来日公演では、前半3日間「Layla」をやって、後半3日間は「Cocaine」に差し替えるというものでした。
なので、今回はその逆で、日程の後半となったこの日から「Cocaine」が「Layla」に差し替えになったりしないかなあと、ほのかな期待を寄せたのだけれど。

ネイザンが弾き始めたベース・ソロのフレーズが、もうあの曲に繋がるしかないなと感じさせて。
「Cocaine」
これまた強力なリフですが、ギターだけではなくて、すべての楽器がこのリフを弾いてるような厚み。
1番終えての間奏はクラプトンのソロ。
2番終えてはドイルのソロ。
ティムのスペイシーなオルガン・ソロとクリスの跳ねたピアノ・ソロと、クルクルと曲の表情が変わるソロの応酬です。
終盤になるにつれ、どんどん演奏が轟音になっていき、音が渦を巻いているようで、まさしくライヴのハイライトといった感じでした。
ラスト、観客が「コケーン!」と合唱した後は、少しだけソニーのドラム・ソロがあってから終了。

ここで本編終了。
あまり待たされることなく、すぐにアンコールです。

「Before You Accuse Me」
重低音で響くブルースのビートに、手拍子で応えるお客さんたち。
この曲で最後とばかりに気を入れて歌うクラプトンですが、やっぱりブルースは楽しいという気持ちが伝わってくるので、こちらも頬が緩むというか、リラックスして聴けます。
むしろ、踊った方が良かったかも?
間奏にはドイルのソロ、ティムのオルガン・ソロがあって、ラストはクラプトンのソロ。程好く力を抜いたプレイがいいですね。
過去3回観たライヴでは、アンコール曲はいつも、キーボードのポール・キャラックがリード・ヴォーカルをとる「High Time We Went」でした。
ライヴの締めを、他のメンバーに歌わせるクラプトンはどうなのかなと思っていたので、ポール・キャラックがいない今回は、しっかりクラプトンが歌って締めてくれたのが嬉しかったです。

最後はステージ前方にメンバーが並んで深くお辞儀をしてました。
ライヴ終了は20時46分でした。

衰え知らずの神様

黒のストラトを弾いてるクラプトンを生で観たのは久し振り...もしかしたら初めてかもしれません。
それはもうブラッキーではないけれど、やはりクラプトンは黒のストラトが似合うなあと思ったし、本当にクラプトンを観た感が強かったです。
アコギはもちろんマーティンのはず。

今日のセットリスト。
今回の公演が始まった当初は「Wonderful Tonight」をやってたのですが、3日目から何故かセトリから消えてしまって。
それでも今日はアコースティック・コーナーの曲数が少なかった分、「Wonderful Tonight」が復活するかなあと期待したのですが、それも叶わずで。
あれほどの人気曲を外す、何か大きな理由があったのでしょうか。
結果的には、全15曲で、今まででいちばん少ない曲数になってしまっていたのは残念でした。
それから、今回ここまでクリーム色が濃かったのが意外で。
ていうか、クリームとブルースで固めたと言ってもいいくらいのセットリストでしたよね。
ただ、「Layla」が聴けた前回ほどの感動ではなかったにせよ、メリハリがあって、いいライヴだったなあとは素直に感じました。

それにしてもクラプトン、80歳だというのに、背筋がシャンとしててビックリしました。
ギターを抱えた立ち姿もまったく変わらない。
声もよく出てました。
衰えはまったく感じなかったですね。
もうちょっとお爺ちゃん風情を感じるかなと思ってたのですが、全然でした。
相変わらず、流麗な稲妻ギター・ソロも弾きまくれるし、ホントにギターの神様はいまだ健在。
あんなに元気なら、また数年後に日本にやって来そうな可能性高いですね。
これで最後とは全然思えませんでしたよ。

当初は全6日間の武道館公演になる予定でしたが、追加公演が2日組まれました。
でも、せっかく土日開催をぶっこんだのだけど、僕が観た5日目公演の時点で、まだチケット余ってる状態なんですよね。
これからどこまで売れるか心配。
もしかしたら、ムリして追加公演なんて入れない方が良かった?と思ってしまいます。

この後の公演がどうなるかわかりませんが、無事に盛況で終わりますように。
でも、やっぱり、このまま今回は「Layla」やらないでほしい。
もし追加公演で「Layla」やったら、ちょっと悔しいからね。
前回公演で聴くことが出来たから、エレクトリック・レイラの呪縛は消えたとはいえ、大好きな曲は何回でも聴きたい気持ちは変わらないからね。
観に行った日によって当たりハズレを感じちゃうのは良くないです。
今回は「Layla」はなかったよ、でも盛り上がったよ、そんな日本公演であってほしいです。
そして数年後、またその日が来るのを期待しています。

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