来日公演に備えて エリック・クラプトン のDVD 『Slowhand At 70』をおすすめする理由

もうすぐクラプトンの来日公演。

楽しみにしてる方もいらっしゃいますよね。

もっとテンションを上げるべく、ライヴ映像が観たいわけですが、調べてみると、現在、新品で購入可能なクラプトンのDVDって、結構少なくてビックリです。

そんな中でも、僕が好きなDVDの紹介です。

このライヴは?

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70歳を記念して、ロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴを収録したDVD。
RAHは、クラプトンにとって大切な場所であり、節目節目にここで何度もライヴを行ってきました。
クラプトンが日本武道館が好きなのも、RAHに似ているからかもしれません。

これを機に、ツアーからの引退宣言が出ました。
まあ、正確には、大規模なツアーはやらないとの事で、気が向けば、単発的なライヴならやっていることは、今では周知の事実ですが、この時は、クラプトンはもうライヴはやらないのかと、ファンを心配させたりもしたようです。

そんな話も出た時のライヴだし、70歳を記念するものでもあるので、特別感があるライヴDVDです。
日本では、2DVD+2CDの限定盤も出ました。
限定盤はなかなか入手困難でしょうが、近年のクラプトンのライヴ(と言っても8年前ですが)の様子が観れるので、気になる人は、通常盤でも輸入盤でも、残り少ない在庫を手に入れるチャンスを逃さない方がいいでしょう。

セットリスト。みどころ、聴きどころ

01. Sombody’s Knockin’ On My Door
02. Key To The Highway
03. Tell The Truth
04. Pretending
05. Hoochie Coochie Man
06. You Are So Beautiful
07. Can’t Find My Way Home
08. I Shot The Sheriff
09. Driftin’ Blues
10. Nobody Knows You When You’re Down And Out
11. Tears In Heaven
12. Layla
13. Let It Rain
14. Wonderful Tonight
15. Crossroads
16. Cocaine
17. High Time We Went
(Bonus Track)
Little Queen Of Spades

「Sombody’s Knockin’ On My Door」
スロウ・ブルースでスタートです。
艶のあるソロを弾くクラプトン、これから徐々に会場を温めていきますぜ、といった心意気が伝わってきます。

「Key To The Highway」
ドミノス時代の演奏とは違って、ブギ調。
いい意味で軽いプレイです。

「Pretending」「Hoochie Coochie Man」あたりを聴いてると、2人の女性コーラスがパワフルで、バンドの演奏に活力を与えているなあと感じます。

「You Are So Beautiful」はキーボードのポール・キャラックに、「Can’t Find My Way Home」はベースのネイザン・イーストにリード・ヴォーカルを任せて、クラプトンは控えめにバックに徹します。

前半の締めくくり「I Shot The Sheriff」
レゲエの代表曲とも言えるこの曲ですが、当時よりもロック的なアレンジになっている気がします。
サビのリフレインは女性コーラスがメインですが、中盤以降はクラプトンもさりげなく歌います。
ルーズに始まって、時折声を張るクラプトン、そして終盤のソロは抑えた感じで弾き始めて、段々と熱が入っていく演奏。
メリハリがあって、ドラマチックな構成に魅了されます。

ライヴ中盤。
ここからはクラプトンは椅子に座ってアコギを抱えての数曲を組み込んだ、アコースティックセットです。

引き締まった「Driftin’ Blues」
リラックスした「Nobody Knows You When You’re Down And Out」
同じアコースティック・スタイルでも、ずいぶん雰囲気が違う表現が出来るなあと感心です。

「Tears In Heaven」は、原曲よりもレゲエ風味で、陽だまりのような温かさを感じます。

近年は、エレクトリックよりもアコースティックでの演奏がほとんどになっている「Layla」
若さゆえの情熱よりも、大人の渋みを表現する方が、今は自然なのかもしれません。
終始、気持ちを抑えて、枯れた味わいのある演奏です。

ここからまたエレクトリック演奏に戻ります。

「Let It Rain」
このライヴの中では、一番のアップ・テンポな曲ではないでしょうか。
とはいえ、原曲ほどの勢いはなく、終盤のクラプトンのソロの速弾きも含めて、どこか余裕を感じる演奏です。

「Crossroads」
この曲も、今までいろんなアレンジで演奏してきましたが、原曲のスロウな感じと、クリームでの高速タイプの、中間どころに着地した感があります。
このアレンジが、クラプトンの最終回答か。
コーラスの華やかなアレンジにつられて、ソロを活き活きと弾くクラプトンです。

本編最後の「Cocaine」は、ダイナミックな演奏です。
演奏が進むにつれて、客席の人たちが少しずつ立ち上がって、踊り始めてと、どんどん盛り上がっていく様子が観て取れます。
終盤のクリス・ステイントンのピアノ・ソロが好きですね。
そして、それが終わるのを合図に、最後に観客全員で「コケーン!」と叫んでフィニッシュするのが恒例です。

アンコールは「High Time We Went」
本編の方でも既に2曲、クラプトン以外のヴォーカル曲がありましたが、これもポール・キャラックが歌います。
せっかくのクラプトンのソロ・ライヴなのに、ラストの曲を他の人に歌わせるのってどうなのよ、と思ってしまうのですが、近年はこうやって、他のメンバーに花を持たせる場面が増えたように思います。
間奏で、今まで陰に隠れてたアンディ・フェアウェザー・ロウがソロを弾いたりして、まさかクラプトン、全部譲ってしまうのか?と思われましたが、次の間奏でちゃんとソロを弾いたクラプトンにホッとしました。
でも、全体的には、あまりクラプトン目立たない感じで、ライヴは幕を閉じるのです。

そして、ボーナス・トラック「Little Queen Of Spades」を忘れちゃいけません。
15分超えの大作です。
クラプトンのソロが1番堪能できるのがこの曲ではないでしょうか。ヴォーカルも気合入ってるし。
それから、クリス・ステイントン、ポール・キャラックの順番で、長めのキーボード・ソロを取るので、必然的に長尺になるのですが、決して飽きることのない、ライヴのハイライトの1つです。
どうしてこの曲を本編に入れないで、ボーナス・トラックなんかにしたのかは、今もって謎です。

枯れた味わい。今度の来日公演の予習にいいかも

このライヴのセットリストと、2016年・2019年の来日公演、そして昨年あたりのライヴのセットリストは似ています。
曲順こそ違えど、同じ曲が採り上げられている印象です。
この頃から、近年のライヴの基本パターンが形作られたのでしょう。
おそらく、今度の来日公演のセットリストも、似たような感じになるのではないでしょうか。
そういう意味では、予習としても適しているDVDだと思います。

2000年代くらいまでは精力的だったクラプトンも、2010年代以降、この頃になると、正直言って、枯れてきているなあという感じは受けます。
思わず唸ってしまうような炎のソロなどもなく、ライヴ全体が落ち着いた印象を持たせるものになっています。

しかし、それでもクラプトンはクラプトン。
しみじみと、良いなと思える、沁みる音色を聴かせるライヴを作り上げています。
近年のクラプトンも、いいんですよ。

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