『rockin’ on』80年代ロックアルバム (51位~100位) 300文字レビュー

雑誌『rockin’ on』での年代別ロックアルバム特集でランキングされた名盤を、実際に聴いてみて300文字レビュー。

★★★★★ 思い入れたっぷり超名盤!!
★★★★☆ かなりいい感じ!
★★★☆☆ 何度か聴いたらハマるかも
★★☆☆☆ 好きな人がいるのはわかる
★☆☆☆☆ お耳に合いませんでした

このジャケットの眼差しを見よ。いささか緊張気味ながらも真剣さ溢れる顔つき、まるで就職活動の履歴書みたいだ。ロックに対して本気なのが伝わってくる。
ランナウェイズ解散後、新しいバンドを得てのシングル「I Love Rock ‘n’ Roll」は僕でも聴いたことあるものだった。力強く、サビのシンガロングはインパクト大。あまりにも有名だろう。
オールド・ロックンロールな「Nag」や、一気に弾けてる「You’re Too Possessive」など、愚直にリフを刻み、爽快感あるギターを鳴らしているうちに、演奏が盛り上がっていく典型。
「Little Drummer Boy」の「♪ ラパパンパン」というフレーズも耳に残る。
オリジナル曲が少なくカヴァー曲中心ながらも、ギターと歌で即戦力採用、ロック界に再就職したジョーンは、見事大ヒットを飛ばした。

★★★ (2024.7.17)

ヘヴィメタは苦手だ。ギラギラとしてゴージャスなギター、ハードなリズム隊、キンキンにシャウトしまくるヴォーカル…..「Crying In The Rain」を聴いて、これもヘヴィメタか?と思いきや、よく聴いていくと曲調はブルースなのに気付く。
「Bad Boys」「Children Of The Night」の爆裂ビートでスリルあるメロディのロックンロール、当然ギター・ソロは超絶速弾きだ。
「Is This Love」など憂いあるバラードは、流麗にむせび泣くギター・ソロが沁みる。
リフを刻み、唸りを上げるギター・サウンドには蛇が体に絡みついてくるような畏怖を感じる。
しかし、どの曲もサビで曲名を連呼するようなわかりやすさが意外で、そこが大きな魅力。ヘヴィメタかハード・ロックかで悩んだが、歌謡曲の匂いすらする。
ここまでわかりやすいのは、その存在をすぐ認識できる「白い」蛇だからということか。

★★★★ (2024.7.8)

ネオアコとはアズテック・カメラそのものなのではないかとさえ思うようになりました。
ネオ・アコースティックというように、メロディ的な特徴よりも、それはアコースティックな肌触りのサウンドを差すわけで。「Oblivious」はアコギの粒立った鳴り方がまさにネオアコのイメージを具現化してます。
「The Boy Wonders」「Walk Out To Winter」「Pillar To Past」でのアコギだけでなくエレキ・ギターの転がるようなサウンドは瑞々しく、そのリズムにはウキウキと心が湧きたちます。困難なことがあってもかまわず進んでいくさという気概に満ちています。
時にスパニッシュ的、カントリー・タッチでもあり、ロディ・フレイムはそんなギターの名手で、Hard Rainというのはギターの粒がまるで激しい雨粒。
寒い冬には粒は雪になります。大雪が降った翌朝、誰も踏んでないまっさらな雪の上を歩いていくような清々しさと開拓精神がネオアコというジャンルになったのではないかと。

★★★★ (2024.7.6)

眠らない街には様々な誘惑がある。その中を生き抜いていくには。
「Love Is A Stranger」はロマンティックで血の通ったテクノという感じ。
「Sweet Dreams」は妖艶なサウンドで、アニー・レノックスが深い海の中を泳ぐようなヴォーカルを聴かせる。スキャットの反響からも、そこはとても深くて広いのがわかる。
「Wrap It Up」「This Is The House」は炸裂するベース、ダンサブルなビート・アタックが強烈なエレポップだ。
デカダン、ゴシックな世界観まで漂わせるけど、そのサウンドの感触は柔らかい。
アニーの風貌からも、女らしさを武器にしてないのは明白だけど、かと言って男には負けないと気負ってるわけでもなし。自分らしく、ありのままに進めば道は開けると教えてくれている。

★★★ (2024.6.30)

いったい何が始まるんだろう…..と思わせてからの明快なギターの刻み方に、夜明けのようなものを感じる。「Teen Age Riot」は、未来は俺たちのものだ!と宣言してるようだ。
しかし聴き進めていくと、ことは単純ではなかった。高速ビートの性急なロックンロールは、時にプログレ的な展開も見せ、パンクにしてはノイジーすぎる。これがグランジへと繋がっていくのか?
「Total Trash」は鎖で首を締めあげられていくような圧迫感。
男女のヴォーカリストがいて、ダウナーなサウンドはヴェルヴェッツを彷彿とさせたが、明るかったはずの80年代はそこにはなく、ギターは緊急のサイレンを鳴らし、混沌とした90年代を先取りしている。
希望か絶望か、どちらに転ぶかわからないまま走らなければならない責務を訴えている。

★★★ (2024.6.27)

クールで仕事ができる女性の別の面を発見すると嬉しい。
クリッシー・ハインドは低音で攻める女性ヴォーカリストだ。
「Back On The Chain Gang」はウッ!アッ!とユーモラスなコーラス、ギターはサイケ色がありながらも青春の響き。愛くるしいメロディにワクワクするサウンド。
「Show Me」はネオアコのごとく爽やかなサウンドで仄かな色気がある。中盤ギターをかき鳴らしてスピードアップするところはゾクゾクする。
色彩豊かに踊るようなギター、跳ねるビートのロックンロール。情念こめて歌うバラードもあり聴きやすい。
カッコいい女性が時に見せる清々しさ、茶目っ気、ありあまる熱意、はらむ狂気。つくづく女性は色んな顔を持ってるなと。

★★★★ (2024.1.23)

イキがよく勢いのあるパワー・ロック。80年代中盤、年間全米チャート2位ということで、活気あるアメリカはこういう音を求めた。
「Somebody」は大きく包み込むような懐の深さ、ギター、ベースが派手に躍動し、サビのコーラスと絡むシャウトが静かに燃えたぎる。
「Kids Wanna Rock」「Ain’t Gonna Cry」はストレートなロックンロールでパワーとスピードに溢れ、キャッチーなサビは一緒に歌いたくなる。
「It’s Only Love」はティナ・ターナーとの熱き夜の狂おしいデュエット。
何か特別なことをしてるわけではないのだけど、少ししわがれた声が粋な、みんなに慕われている兄貴。
元気出していこうぜ、悩みなんて吹き飛ばせと言われてるようだ。

★★★ (2024.1.22)

なんかドロドロと不穏な気配漂ってそうと思うと、予想外に画一的なビート。しかしエフェクターでヴォーカルを潰しまくったりして、一筋縄ではいかない。
「Tomorrow’s World」のスペイシーなSEに負けじと切り裂きまくるギター、「Bloodsport」のテクノ的なビートの中でのハードなギター。
インダストリアルの金属音的なサウンドにも思える瞬間があるが、不快感はない。
思わず縦ノリな「The Wait」、キャッチーなサビの「Complications」など、メロディやビートは光るものがあり、ポップに仕上げたらブレイクしそうに思うも、そうはしない。
主役を張れるポテンシャルはあっても、あえてダークでニヒルな悪役に徹する。わかる人にわかればいいと。

★★★ (2024.1.21)

変幻自在のギターを中心にしたサウンドで、決してポップにならず、日陰を歩いている感じ。80年代インディーズ・バンドの匂いがプンプンするなあ。
イアン・マッカロクのナヨナヨして鼻にかかったスノッブなヴォーカルがクネクネしながら昇りつめていく。デヴィッド・ボウイみたいにデカダンな面も。
「Porcupine」の繊細なギターのストローク、中盤からガラッと雰囲気が変わり、険しい山の悪天候のようだ。
「Ripeness」はかき鳴らすギターがシャープなロックで、手拍子とダブル・ヴォーカルもカッコいい。
虚弱体質は、意志の強さでカヴァーする。圧倒的な才能はないと自覚すれば、ストレート勝負はしない。弱者の戦い方があると教えてくれる。

★★★ (2024.1.20)

Spotify未配信のため、視聴できませんでした。

テレンス・トレント・ダービーって名前は知ってたけど、検索しても出てこなくて困惑。今はサナンダ・マイトレイアって名前になってた。
「If You Let Me Stay」はキャッチーなダンサブル・ポップ、「Dance Little Sister」は強烈ビートのダンス・ファンク。
「I’ll Never Turn My Back On You」はベース・ラインとギターのカッティングのリズムの刻み方が快感で、ビターなメロディも良い。
アカペラでの祈りやコーラス・グループのような声の重ね方などは、クールなサウンドに生身の熱を注いでいる。
端正な顔立ちとは裏腹に、ソウルフルでも意外としわがれた声なのも魅力。
演奏、制作はすべて自分自身なので、自由に音作りしているのがわかる。

★★★ (2024.1.8)

ダンス、ラップ、オリエンタルも内包した雑多なインダストリアル。
「Head Like A Hole」の高音のドラム、サビで一気にギターがノイジーになるなど、敏感な耳には刺激が強いが、不思議とメロディアスで不快感はない。
「Sanctified」はチョッパー・ベースを軸に、妖艶なヴォーカル、パーカッションと効果的なギターでグルーヴしていく。
「Something I Can Never Have」は深い霧の中で光を求めてもがくような、アンビエントなサウンド。
「Sin」はカッコ良く万人受けしそうなビートだ。
工事現場のような金属音&爆裂音など、時に耳障りでありながらも、なるべく良いメロディを配置しようという意思がギリギリを保ち、心は90年代に向かっている。

★★ (2024.1.7)

スラッシュメタルとはよく言ったもんで、聴いたことがなくても、どういう音楽なのかが想像が付く。
「Angel Of Death」からして、とにかくギターが高速リフを刻みまくる。
その後もスピードを上げ、ツーバス踏みまくりのドラム、力みまくるヴォーカル。
「Altar Of Sacrifice」「Jesus Saves」など、どの曲も轟音でうなりを上げるギター・ソロにざわめく。
そのあまりのスピードは、危機感に追い立てられてるのか、攻撃的に煽ってるのか。
曲自体はどれもコンパクトで、パンクとの共通性あり。メタルの重厚感はありながらも、潔いんだ。
ドドドドドと、重機でゴミをあっという間に押し出し片付けていくかのごとく駆け抜けた跡には何が残るのか。

★★ (2024.1.5)

うおっ。いきなり苦しみにもがくようなヴォーカル。
「Cabin Fever!」は、何かを建設しているような、もしくは逆に何かを壊しているかのようなサウンド。人々が右往左往しているようにも感じるし、規律正しく行動しているようにも思える。
「Well Of Misery」は、お母ちゃんのためならエンヤコーラ的な、やはり何か力作業の匂いを感じる。
しかし、アルバム冒頭からずっと、聴く者に恐怖を与え、不安を煽るサウンドが延々と続く。
こういう音を構築できるのは、ある意味、奇才なのだろうし、一部の人を魅了するのだろう。
だけど、正月から重たいニュースが続いた現在の日本では、聴いてて非常に辛くてたまらない。最後まで聴き通せなかった。

★ (2024.1.4)

ジョン・ウェットン(B)、スティーヴ・ハウ(G)、カール・パーマー(Ds)、ジェフ・ダウンズ(Key)というプログレの雄が集まって、どんなものを作るのかと思ったら、拳を突き上げノリたくなる、力強く勇ましいポップ・ロック。
難解な展開で組曲も当たり前だったプログレから3分間ポップへ。停滞しつつあったプログレから脱却、新しい夜明けを感じる。
「Heat Of The Moment」など、キラキラしたサウンドで、清々しいハーモニーで誰でも口ずさめるキャッチーなサビのリフレインが強調された曲が主体。
大成功を収めたが、この親しみやすさは手放しで喜んでいいのか。まるで別世界へ行ってしまった彼らに、プログレ好きとしては不思議な寂しさも感じる。

★★★ (2024.1.3)

デヴィッド・ボウイのアルバムに参加したギタリストと聞いては注目せざるを得ない。
「Couldn’t Stand The Weather」はブルース調のインストかと思ってたら、突然歌い出した瞬間のカッコ良さ!躍動するベース・ラインにも耳を奪われる。
ジミヘンぽいギターを弾くんだなと思ってたら「Voodoo Child」のカヴァーが登場。地鳴りのようなうごめきと、大地の裂け目からマグマが噴き出るようなギター・ソロだ。
物憂げに染み入る「Tin Pan Alley」はがっつりブルースだし、渋くお洒落な「Stang’s Swang」はジャズとブルースの融合。
聴き終わってみれば、ボウイの音楽とは全然関連性を感じなかった。でも最高!なブルース・ギタリストをここに発見。

★★★★ (2023.12.8)

80年代。僕はあまりに子供過ぎて、流行に敏感になるということすら知らなかった。
「The Word Girl」はレゲエ風味で、涼し気に歌うグリーン・ガートサイドの声と美しいコーラスが耳に残る。
しかし、アルバムの核を成すのは「Absolute」「Wood Beez」などのダンサブルなエレポップ。リヴァーブの効いたドラム、脈打つベース、弾けるギター、胸踊るシンセ。これぞ80年代の音!
マイケル・ジャクソンほどクセは強くなく、ブラック風味だけどあっさりとした歌声に、体をひねって踊りたくなるサウンド。しかし、決して熱くはならず、お洒落感が漂ってるのがミソ。
ただ流行を追うだけではない、通の音楽ファンが見つけて愛されたのであろうアルバム。

★★★ (2023.12.7)

ファルセットも駆使した高低差のある声、ダブル・メロ、裏メロと、エリザベス・フレイザーの優雅で甘美なヴォーカル・ワークを料理しまくっている。
「Ivo」はシャラシャラと鳴るアコギの音が心地良く、ネオアコ系?と思わせる。ヒッヒッホーというコーラスが印象的。
「Persephone」で甲高くかき鳴らすギターはインディー・ロック風。ギターのリフに合わせ、オウオウオウとヴォーカルが絡み合う。
声だけを聴いているとフワフワしそうだが、何かシューッという音がずっと鳴り響くサウンドが足に絡みついて、地から足が離れない。
一聴すると清らかだが、ギリシャ神話の神々のごとく様々な裏の顔の存在があることに気付く。
テーマは「疑う」だ。

★★★ (2023.12.6)

パンクのノリにヘヴィメタの重厚さ。これがハードコアというやつか。
とにかく激しすぎるドラムのアタック。かき鳴らされる分厚いギターのシャワー。
演奏の合間に歌っている感じで、メロディはどこ?とも思う叫びのヴォーカル。
不満が渦巻き、なにか急かされているような感触を受ける。
どの曲もとても短く、そして唐突に終わる潔さ。
マシンガンの集中砲火のように、派手に畳み掛ける様はカッコいいとは思う。
ライヴは盛り上がりそうなのは想像できるけど、なんか怖そうだな。
それに、僕がこのジャンルのサウンドに不慣れなのもあるけど、どの曲も同じように聴こえる。どうすれば違いがわかるようになるのだろうか。それを克服できれば。

★★ (2023.12.5)

パンクからニューウェイヴを経て、ポップ・サイドとダーク・サイドとに分かれた80年代。このバンドは後者だ。
「Spellbound」のサビのアコギの音が特段に気持ちいい。
「Sin In My Heart」は遠くから何かがやって来てガラスが割れる音。徐々にスピード・アップしていく切迫感。
不安感が覆う空気を作り出す陰鬱な低音を弾いていたかと思えば、突然刺さってくるような高音を紡ぎ出すギター・サウンドが核。
スージーの決してハッピーではないヴォーカル。シャウトしててもどこか淡々としている。その姿は闇の世界へ誘う魔女か、孤独と戦うヒロインか。
本作の邦題が『呪々』と当て字になっているのは素晴らしいアイデア。すべてを物語っている。

★★★ (2023.12.4)

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