イエス Live@TOKYO DOME CITY HALL 2014.11.25 感想

2014年11月25日(火)TOKYO DOME CITY HALL

『こわれもの』『危機』の完全再現ライヴ

今回の来日メンバーは
ジョン・デイヴィソン(ヴォーカル)
クリス・スクワイア(ベース)
アラン・ホワイト(ドラム)
スティーヴ・ハウ(ギター)
ジェフ・ダウンズ(キーボード)
全盛期のメンバーと比べたら、魅力半減という感じで、何よりヴォーカルがジョン・アンダーソンじゃないというのが不安ではあるけれど、やっぱり今回のライヴでは名盤『こわれもの』『危機』の完全再現という事が大きな魅力で、それならばやっぱり生で味わいたいという事でチケットを獲ってしまった。

ライヴ当日。会場へ

9月の相対性理論に続いて、2回目のTOKYO DOME CITY HALL。
小雨の降る中、東京ドーム周辺で時間を潰した後、6時半頃会場入り。

グッズ売り場で目を引いたのが、ライヴ音源ダウンロード販売。
なんと、今日のライヴの音源が、翌日の昼にはダウンロードできる権利を販売していた。
体験したライヴの音源が、翌日には自宅でまた楽しめるという。これはいい企画だなあ。
欲しいかなと思ったのだけれど、3500円。
うーん、ちょっと高い。
ダウンロードに失敗しないかどうか不安もあったし、まだこの段階ではライヴがいいものかどうかわからないので、即座に3500円も払う勇気はなかった。2000円以下だったら即決で買ってただろうけどね。
まあ、実際ライヴを聴いてみて、すごく良かったら、帰りに買えばいいか、と。

僕の席はステージサイドA席・第1バルコニー・1列111番。
アリーナ席の上に第1バルコニーから第3バルコニーまであるので、いわば4階建ての2階部分にあたる。
ステージの真横から観る形。
先日はオールスタンディングのアリーナで観た時は広く感じたけれど、バルコニーから俯瞰で会場を見渡すと、すごく狭く感じた。狭いという事は、ステージとの距離が近いという事だ。
僕のは安い席だけど、アリーナ席の後方よりはずっといい席だと思った。
しかも1列目。前の手摺りが意外と低く、ちょっと身を乗り出すと落ちてしまいそう。高所恐怖症の僕にはちと怖い。ここで立ってライヴを観るのはヤバい(初日のライヴ・レポをチェックした限りでは、アンコールまではみんな座ったままだったとの話なのでひと安心)。
まあ、でも僕にとっては好都合の通路側だし、周りの人を気にする必要のない、素晴らしい席で満足。

ライヴのスタート

7時開演で、はたして何分遅れでスタートするかと思ったけど、5分で早くもメンバー登場。

01. Close to the Edge
02. And You and I
03. Siberian Khatru
04. Believe Again
05. The Game
06. Roundabout
07. Cans and Brahms
08. We Have Heaven
09. South Side of the Sky
10. Five Per Cent for Nothing
11. Long Distance Runaround
12. The Fish (Schindleria Praematurus)
13. Mood for a Day
14. Heart of the Sunrise
(Encore)
15. I’ve Seen All Good People
16. Owner of a Lonely Heart

1曲目「Close to the Edge」
『こわれもの』『危機』の再現という事だけれど、披露されたのは『危機』の方から。
1曲目からいきなり20分の大作だ。オープニングからメンバーも観客も集中力が試される。
だけど、僕も『危機』は何度も聴きこんだ。ドラマチックに展開する流れは憶えている。

しかし、だ。
早くも不安は的中してしまった。
やっぱり、ヴォーカリストが違う、というのは致命的だった。
ジョン・デイヴィソンは、ジョン・アンダーソンと似たタイプの声で、イエスの世界観を壊すものではなかった。
だけど、どうしても違和感があるんだ。CDで聴きこんだあの声じゃない。「ニセモノ感」が滲み出てしまう。
イエスはヴォーカルだけに頼らない、インストに近い演奏力が売りでもあるので、楽器の音だけ聴いてれば大丈夫なのだけれど、ヴォーカルを中心に聴いてしまうと、本物のイエスじゃないような、コピーバンドを聴いてるかのような気がしてしまう。
ちょっと萎えてしまった。
この時点で、今日のライヴ音源のダウンロードは買わなくていいな、と思ってしまった。

しかも、20分に及ぶこの曲を聴き終わった時、感じたのが、
やべ、眠くなりそうだ...という事。
昨年、ポール・マッカートニーを観た時は、寝不足だったのに、座ったままの観戦でもちっとも眠くならなかったのに、この日は6時間以上寝て体調も万全と思ったのに、1曲目から睡魔が忍び寄ってきた。
こういう時、座ったままの観戦は辛いな。

と、ここまでこのようにして書くと、文句ばっかり言ってるようだけど、演奏そのものに関しては、まあ、満足はした。20分近くあるはずのこの曲もあっという間だったし。
中盤でほんわかムードになるパートでのスティーヴ・ハウとクリス・スクワイアのコーラスが印象的だったし、めまぐるしい展開には少なからず興奮した。

3曲目「Siberian Khatru」
イエスの中で一番好きと言っていいのがこの曲。
なんと言ってもイントロのスティーヴ・ハウのギターが恐ろしくカッコいい。
ライヴ盤『Yessongs』では演ってなかったスクラッチもスタジオ盤同様に入れてくれたし。
だけど、幾分ギターのテンポが緩かったかなあ。

『危機』の再現が終わり、次は今年リリースされたアルバム『Heaven&Earth』から2曲。
このアルバムは新メンバーのジョン・デイヴィソンの好みがかなり入ってるようで。リラックスした、穏やかな世界観。
今回のライヴの予習に、買おうかどうしようか悩んだのだけれど、試聴してみて、ちょっと僕が求めているイエスとはちょっと違うという事で買わなかった。
僕がイエスに求めてるのは、緊張感、スリルといったもので、穏やかすぎるイエスは物足りない。
まあ、5曲目「The Game」はメロディ的にも悪くはないかなと思ったけれど...。

次は『こわれもの』再現。

6曲目「Roundabout」
おそらく一番のイエスの代表曲であろうこの曲ももちろん僕は大好きで。
ただ、イントロのギターのフレーズは、ハンマリングオンやプリングオフで弾いてたはずなのに、この日は普通にピッキングしてるから、ちょっと印象が違って聴こえて不満。完全再現じゃないぞ、これじゃ。

7曲目「Cans and Brahms」
元はリック・ウェイクマンの見せ場だったこの曲も、今回はジェフ・ダウンズという事で。
僕はジェフ・ダウンズの事はほとんど知らないけど...リック・ウェイクマンに比べたら、全体的に繊細さに欠ける気はしたかな。

9曲目「South Side of the Sky」
嵐の中で演奏しているような曲だが...振り返ってみるとあまり憶えてないなあ。

10曲目「Five Per Cent for Nothing」
元はビル・ブラッフォードの見せ場とも言える、リズム主体の曲だけど、今回はドラムはアラン・ホワイト。
ベース、ギター、キーボードがどれだけ一体にリズムを刻めるかという所だけど、微妙にズレてる感触が。
それでも短いこの曲が終わった瞬間、観客から大きな拍手が起こったのが印象的。

11曲目「Long Distance Runaround」
12曲目「The Fish (Schindleria Praematurus)」
メドレー形式で繋がってるこの2曲。
後半、クリス・スクワイアが前に出てきてベース・ソロのような見せ場があったのが良かった。
クリス・スクワイアのベース、CDではすごくゴリゴリ弾いてるのが印象深いのだけれど、実際のプレイを観てみると、あまり力は入ってなくて、非常にあっさりとさりげない感じの弾き方だったなあと思った。

13曲目「Mood for a Day」
スティーヴ・ハウの独壇場。
椅子に座って、フラメンコ・ギターで弾きまくる。これは素晴らしかった。
CD通り。完全再現。衰え知らずのスティーヴ・ハウ。

14曲目「Heart of the Sunrise」
本編最後のお楽しみのこの曲。
これまたスリルに溢れて、バンドの一体感が求められるので、緊張感もたっぷり。
演奏が終わった瞬間に、スティーヴ・ハウが客席を指差した決めポーズがカッコ良かった。

アンコール。
ここでアリーナのお客さんが立ち上がる。
『危機』と『こわれもの』が終わってしまったので、僕にとってはここからはおまけ。

15曲目「I’ve Seen All Good People」
イントロのハーモニーでお客さんがすごく湧いてた。ノリの良いブギ調。
人気ある曲なのだろうか?僕的にはイマイチなんだけど...。

16曲目「Owner of a Lonely Heart」
アラン・ホワイトが威勢よくカウントをし始めたと思ったら、誰かが何やら叫んでカウントが中断。
おやおや?トラブル発生か?と思ったら間髪入れず、ハードなギターのイントロを弾くスティーヴ・ハウ。これはハプニングだったのか演出だったのか。
クリス・スクワイアは、これまでずっとクリーム色のリッケンバッカーを弾いてたのに、この曲だけ緑色の変な形をしたベースに持ち替えてた。
この曲は、今のメンバー構成からすると、あまり関連性のない曲だと思うのだけれど、イエスとしては最後のヒット曲というか代表曲になってると思うので、やらざるをえないのか。
ちなみに僕は、まだこの曲の入ったアルバム聴いてないので思い入れはなし。もちろん、サビくらいは知ってる曲だったけど。

イエスの名に恥じない演奏力も、ヴォーカリストが違うというのは痛かった

こうして、9時10分、約2時間のライヴは終了した。
あっという間だったな。
正直言うと、ずっと眠気との戦いでもあったので辛かった。意識が飛ぶまでは至らなかったけど、ああ眠いなあとずっと感じてたので、集中して楽しめなかったのが残念。
もっと耳をすまして楽しみたかった。

さっきも書いたけど、やっぱり僕は音楽はヴォーカル中心に聴いちゃうので、ヴォーカリストが違うというのは痛かった。
ジョン・デイヴィソンが悪いんじゃない。ハッピーでピースフルでいい人そうだし、立ち振る舞いもジョン・アンダーソンを髣髴とさせる...んだけど、いかんせんオリジナルではない。この事実はどうしようもない。

一番良かったのはスティーヴ・ハウ。
もう見た目は骸骨みたいなお爺ちゃんだけど、ギターの腕前は衰え知らずで、エレキ、アコギ、スティールと、いろいろ持ち替えて弾きまくってた。

まあ、スタジオ盤や名ライヴ盤『Yessongs』の頃のような絶頂期と比べちゃうと、メンバーも違うし、年も取ってるしという事で、若干、あの頃のようなギラギラした感覚やスリルや緊張感、緻密さという所はなくなってるし、テンポはおおむね同じだったけれど、部分的に少しゆっくりで瞬発力に欠ける場所があったりするのは仕方ないのかなあと思った。
でも、完璧ではないけれど許容範囲。
イエスの名に恥じない演奏力だったと思う。
なにより、『こわれもの』と『危機』を生で体験できた。
それだけで充分満足だ。

コメント