宇多田ヒカル Live@日本武道館 2004.2.3 感想

『ヒカルの5』 初日

2004年2月3日@日本武道館

ライヴ当日。会場へ

なんだかんだで、武道館に到着したのが開演7時の5分前。
館外のグッズ売場では、Tシャツやポスター、ストラップ等が売られていたが、パンフレットの発売はナシ。その代わり、入り口で全員に無料パンフレットが配られていた。パンフを買わない僕にとっては、嬉しい限り。パンフといっても、そこはタダ、表紙を入れてもたった4ページ、文章はほとんどなく、リハーサルの様子を写した程度のものだったけれど。でもかなりの大型サイズで、いかにも「パンフだ~っ!」って感じだったね。大きくて持ち運びが不便なのが難点。

開場入りすると、すでに7時を回っていた。急いで自分の席を探す。
今日の僕の席は、2階北東スタンド・T列35番。
時間を過ぎているため、すでに満杯状態、人の間をかきわけて、自分の席に到着。
うーーーん、これは...。
なんと、ステージの左斜め後方。
フツーに考えたら、宇多田の後ろ姿しか見えない位置だ。ドラムセットなど、一部のバンドメンバーはまったく見えないだろう。
そりゃあ、一番悪席のB席だ、というのは納得済みで買ったわけだけど、そのB席の中でも最悪席の部類。だって、ほぼ左後ろのはじっこだもの。
しばし考えた。
かなりの悪角度。狭い両隣り。普段僕がよく行くような海外ベテランアーティストのライヴなら、観客年齢層の高い事もあって、こんな席だったら、みな座ったままだろう。でも、今日は若い客中心。きっと総立ちだろう。
「...だったら、立見席の方が良くないか?」

開演時刻10分をすぎても始まらない。
「今のうちだ!」
意を決して、その席から脱出した。
東北スタンドから東スタンドに移動、立見席の中に入る。
立見席もいっぱいかと思いきや、それほどでもなかった。悠々と場所を確保。
その気になれば、もっと中央に潜り込めたのかもしれないけれど、さっきの席の角度に比べたら充分。ほぼ真横から観る感じで、バンドのメンバーもすべて見渡せる位置に陣取った。
(ふと、前の手すりを見ると、立見席の番号もふってあったが、後で係員に確認したところ、立見席は一応番号はふってあるものの、それほど枚数を売らなかったため、余裕があるそうだ。そのため、皆ある程度好きな場所で観てたらしい。)
この角度からならとりあえずオッケー。隣りの人も気にならない。おお、ゆったり観れるぞ!
もし、これから観に行く方がいらっしゃいましたら、ヘタなB席よりも、立見席に移動してしまう事をオススメします。

それにしても、客席、女性が多いなあ。6:4で女性の方が多いかも。僕の周りは7:3くらいの割合だったよ。同性のファンが多い、っていうのはやはり人気の証拠だよなあ。

ライヴのスタート

予定時間より約15分遅れて暗転。いよいよだ!

01. 光
02. traveling
03. Letters
04. Another Chance
05. In My Room
06. Can You Keep A Secret?
07. Addicted To You
08. SAKURAドロップス
(サングラス)
09. 甘いワナ
10. Movin’ on without you
11. 蹴っ飛ばせ!
12. Wait & See
13. Colors
14. First Love
15. Deep River
16. DISTANCE
17. 嘘みたいな I Love You
18. Automatic
(Encore)
19. 幸せになろう
20. B & C

暗闇の中、バンド・メンバーと、宇多田が位置についてるのだろう、と思われる。
ざわめき、どよめき、歓声があがる。
その瞬間、パッとライトに照らされたと同時に、「光」を歌い始める宇多田。
イントロなしの曲なので、意表を突かれた感じのスタートだ。
中央で1番を歌い終えると、その後は、ステージ右、左と移動し、さっそく四方へ顔を向けるサービス。
青のワンピースに、背中の真ん中くらいまで伸びた髪が映えていて麗しい。

実は、このライヴを観るというので、久し振りに宇多田のライヴDVD『BOHEMIAN SUMMER 2000』を観直したたばかりだった。もう4年近くたつのか。
今まで「宇多田は歌が上手い」という印象が強かったのだが、久し振りにこのDVDを観て、それは僕の思い込みだった事が判明。思っていたよりも、ヴォーカルがやや不安定になるような所が多いのだ。そういえば、TVなんかでも、たまに危なっかしい日もあったっけ。その日の具合によって波があるタイプか。はたして今日はどうかな、生で聴いたらどうなのかな、と興味津々。

まず1曲目を聴いての第一印象は...音が悪い。武道館て、こんなに音悪かったっけ?
とにかく全体の音が小さい。当然、ヴォーカルも聴き取りにくい。うーむ。多少移動したとは言え、ここもB席のエリア。席が悪いと音も悪いのか??

次は「traveling」
テンポのいいこの曲が早くも登場、早速盛り上がりを見せる。「♪ 飛び乗る」「♪ 閉めます」という合いの手コーラスは観客が担当。
ステージの両サイドには階段が取り付けられていて、そこを上がると、かなり観客席の近くになる。ここで早速階段を上がって、東スタンド、西スタンドの順にサービスする宇多田。

そして3曲目。何かのリズムが流れ始めたと思ったら、
「ああ~っ、タンマ~っ!!」と演奏をストップさせる宇多田。
このハプニングに会場は大歓声。
「初日なんで色々あって...音が出ませんでした!」と明るくごまかす宇多田。
しかし、宇多田のミスというわけではなく、どうやら、ギターの音が出なかったらしい。ギタリストにも詫びを入れさせていた。
ハプニングによって、一瞬ほんわかとした空気が流れた後、始まったのは「Letters」だ。オリエンタルな雰囲気に包まれる。

さて、音が悪いながらも、ここまでのヴォーカルの調子に耳をすませると、決して悪くはないようだ。ピッチ自体は安定しているように思われる。
ただ、4曲目の「Another Chance」まで聴いてて思うのは、「おとなしめだなあ」という事。久し振りのライヴの初日で、どことなく不安があるのか、手探り状態なのか。全力は出し切れてない感じ。
この曲を歌い終わると、会場のどこかから「おかえりー!」の声が。それに即座に「ただいまぁ」と応える宇多田。

「In My Room」が終わって、やっと最初のMC。
先日のDVDを観ていると、やたらMCが面白くて、宇多田一人でテンション高くしてしゃべってる感じが面白くて。今回もそれを期待していったので、5曲歌い終わるまで、MCどころか、まともな挨拶もなし、というのには驚いた。
「とりあえず、こんばんは~っ!」
やっとここで会場全体へ挨拶だ。
「今日はMCあまりやらないつもりだったんだけど...ここに立つとやっぱりしゃべりたくなっちゃうんだよね...しゃべってもいいでしょーか??」
もちろん大歓声。でも、やっぱり今日はMC控えるつもりだったのか。
「あまりにも久し振りなんで、ライヴってどんな感じだったか忘れちゃって....。」
「そう!今日は節分なんだよね。みんな豆まきはしましたか?せっかくだから、ここで豆まきできないかなあ、と思ったんだけど、武道館の人にダメ、って言われちゃいました。いろいろ規制があるんだってさあ...。」
「豆はなくとも、心の中の鬼を追い出して、福を呼んじまえ~っ!!」

叫んで煽った後に、「Can You Keep A Secret?」
おお~っ、もうこの曲をやるかあ...続いて「Addicted To You」、そして「SAKURAドロップス」
予想していた事だけど、なんだかもうまさしくヒットパレード、といった流れ。
「SAKURAドロップス」の途中で、一瞬歌詞が詰まる宇多田。まあ、すぐに立て直したけれど。
そういえば、この辺りになると、やや音が聴き取りやすくなってきて、ヴォーカルもしっとり、艶やかに聴こえた。PAを調整したのか、宇多田に余裕が出てきたのか。

ステージ上が暗くなって、お次は...と思ったら、宇多田の声は聴こえるけれども、姿は見当らず。観客も次々と座りだす。
あれれ?...と思ってよく観てみたら、スクリーンにリハーサル映像が映し出されてて、その中で「サングラス」が歌われていた。つまり、休憩時間、ってわけだね...。

スクリーンの「サングラス」が終了すると、今度は薄手のピンクの上着にデニム系のスカート...いや、ハーフパンツ?(すまん、最後方からは細部まで見えんのよ)に着替えて再登場の宇多田。

前回のツアーのあと、アルバム2枚も出てるから、新しめの曲中心になるかなあ、と思いきや、またもや1stからの「甘いワナ」
跳ねるような感じでステージを行き来する宇多田。ここで、客席から花束が投げ込まれ、一瞬びっくりしながらも、しっかりと拾う。

でも、そうだなあ、ここまで聴いてても、まだ何か物足りない感じなのね。アップテンポの曲なのに、宇多田自身がノリきれてないのが伝わってくる。パワー全開、って感じじゃないね。これがいかにも初日、って事なのかなあ。

続く「Movin’ on without you」もビートの利いた、アップテンポの曲。
僕も特に大好きな曲の一つなのだが、この日のPAの状態だと、低音がまったくと言っていいほど聴き取れなかったというのが難点。高音やファルセットはよく聴こえてくるし、宇多田自身も安定して出せてたと思うんだけどね。結局この日はずっと低音が問題だった。
さらにこの曲では、間奏後に、またもや宇多田痛恨のミス!思わずへたりこんでしまったほど。持ち直した後でも、歌の合間に「ごめんなさーい」と謝ってた。

次に飛び出したのが「蹴っ飛ばせ!」
これは2nd『Distance』のアルバム曲の中で僕が一番大好きな曲。だからやってくれないかなあ...と願っていたものだったので、これは本当に嬉しかった。僕の気持ちの中では一番震えた瞬間。
でも、どうやらこの曲を願っていたのは僕だけではなかったらしく、観客の手拍子が一層大きくなっていた。かなり人気あったのね、この曲。

次は「Wait & See」
せつないメロのこの曲、宇多田自身うまく歌えたのか、歌い終わった後、「ヨッシャ~ッ!」てな感じで何度もガッツポーズをしながら走り回っていたのが可愛かった。

そしてここで、現在のところの最新曲(と言っても1年も前か)の「Colors」
そうだなあ、ここでちょっと気になったのは、サビに入る瞬間の間が、ちょい早めだった事。緊張のせいなのか、リズムが聴き取りにくいせいなのか(しきりに耳に手をやっていた)。
たしかに難しいっちゃあ難しい曲なんだけど。もう少し余裕を持たせて歌ってくれた方がグッときただろうなあ。

何曲か前から、どうやら「せつないモード」に入ってたようだ。次はバラード「First Love」
さすがにこの曲は歌い慣れた感があった。基本的には、僕はこの曲にはあまり思い入れはないのだけれど、今日の宇多田のヴォーカル・パフォーマンスとしては、これがベスト・トラックだったと思う。じっくりとしっとりと、心に染み込むように聴かせてくれた。

お次もバラードの「Deep River」
「♪ ho...ho...」が印象的なこの曲は、いい意味でずっしりと来る。重いのが心地良い。

ようやく爽やかな雰囲気に戻って「DISTANCE」
バラード・アレンジでシングルにもなった「FINAL DISTANCE」というのもあるけれど、今回は2ndアルバムのポップ・アレンジ・ヴァージョンで。ここでまた観客の手拍子が目立つように。

爽やかになった空気を断ち切るかのように、ギターのディストーション・サウンドで始まった「嘘みたいな I Love You」を歌い終えると、2度目のMC。
観客からの「かわいいー」「Hikki~」の声に応えるようにして、
「Hikkiでーす!」
「初日という事でいろいろあって...トチッちゃったりもしたけど、次が最後の曲です。」というと、場内は「ええ~っ!!」と悲鳴。
ブーイングの嵐を遮るようにして、
「えーい、うるさい!いくぞ!」と。

ここまで「ひっぱった」、という「Automatic」
やっぱりこれをやらなきゃね。実は僕は、この曲が出て一斉を風靡した時は、とりたててなんとも思わなかったのだが、何年かたってから、ようやくキたんだよね。やっと良さがわかった、って感じで、今はお気に入りの、このデビュー曲。14、5歳でこれを歌ってたんだもんね、たしかにすごいよね。
最後が近いとあってか、随分と砕けてきたというか...開き直ってきた感のある宇多田。
サビの「♪ It’s Automatic...」のところでは力強く跳ねながらヴォーカルを聴かせる。しかし、好事魔多し。油断したのか、ここでもまたトチってしまう宇多田...。

本編が終了、宇多田とメンバーが引っ込んだ後は拍手、手拍子が鳴り止まず、アンコール要請。
5分ほどたって、ようやく再登場。最後の衣装は上が緑で、下は白のスカート。いちいち衣装替えをしてるから、再登場までに時間かかるんだな。きっと、宇多田自身はひと息つく間もないのだろう。

アンコール1曲目は「幸せになろう」
本来は、恋人に対して「明日は今日よりも幸せになろう」と歌っている曲なんだけれど、このタイミングで歌われたここでは、会場に来ている観客全員に向けて「幸せになろう」と歌いかけているようだった。

歌いながら、東スタンド前の階段に上った宇多田。
曲終了後、階段に上ったままで、「あらためて、ここって近いよね~。みんなすぐそこだよ~。後ろからもずっと観られちゃってる感じだし~」と照れながらコメント。

そしてその後、バンド・メンバー紹介。
マニピュレーター、キーボード、ギター2人、ドラム、パーカーション、ベース。ステージ上には宇多田を入れて8人だ。
宇多田が「私も惚れちゃいそう」と紹介したベーシストは女性外国人。僕の位置からは一番遠くにいたので、ほとんど顔が認識できなかったのが残念だ。

そして、今度こそ本当に最後の曲。
名残惜しむ観客に向かって「えーい、きりがない!つきあってくれ!」と言い放ち、「B & C」
「♪ 何があっても後悔しない 行けるとこまでずっと」と歌われるこの曲をラストに選んだ宇多田。いろいろあったけど、とれあえず前向きな姿勢は変わらないんだな、と。
なんだか安心した気持ちになって大団円を迎えたのであった。

「気をつけて帰れよ~」
「来てくれてありがと~」
「おやすみなさーい」
そう言いながら、姿を消した宇多田であった。

久し振りのライヴ、初日、どこかおっかなびっくり

総評。
全20曲(スクリーン映像を入れれば21曲)で、終了したのが9時20分過ぎなので、約2時間5分。
まず僕的に意外だったのは、曲が1stから7曲、2ndから6曲、3rdから7曲、そして「Colors」と、全アルバムからまんべんなくセレクトされていた事(シングル曲では「For You」「タイム・リミット」をやらなかったのが残念)。
でも、考えてみれば、新アルバム発表後でもないし、今までの総括的なライヴになるのは当たり前、っちゃあ当たり前だね。セットリストとしては、まあ王道というか、正しかったのかな、と。
そして、うん、何度も書いた通り、やはり「久し振りのライヴ」「しかも初日」という印象が強かったライヴだったね。
僕はトチりとかはあまり気にならない方だし(むしろハプニングは楽しい)、全体を通して決して悪い出来ではなかったけれど、やはりどこかおっかなびっくりなのが顔に出ちゃってて、パワー全開じゃなかった。そういう意味では物足りなかった、かな。
まあ、何よりも宇多田自身が納得いってないと思うけどね。

とりあえずこれが初日。
あと4日あるわけだから、これがこの後どこまで修正されるか。
PAの調整なども含めて、もう一度観に行く、来週の「最終日」がどう変化しているか楽しみ。
そこでは、パワー全開で弾けまくっている宇多田が観たいな。

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