ポール・ウェラー おすすめアルバム・ランキング

大好きなアーティストのアルバムをランク付けするシリーズ企画。
今回は、ポール・ウェラー。

好きなアーティストのアルバムをランク付けするのって、非常に難しい。楽しいけど。
その日の気分によっても違ってくると思うし、はっきり優劣があるものもあるけれど、そもそも好きなアーティストの作品なんだから、どれも好きで、順位なんて紙一重のものが多いでしょう。
それでもやっぱり、ランク付けしてみたくなります。楽しいから。

好きなアルバムの定義ってなんだろう?と思います。
大好きな曲が入ってる、全体の流れや空気感が好き、ジャケットが好き、リアルの生活における思い出とリンクしている...など、いろいろあると思うんですが、僕が重要視するのは「ワクワク度」ですね。
そのアルバムを聴いている時はもちろんなのですが、「それを聴いてない時でも、そのアルバムの事を考えると、ワクワクしてしまう」ものが自分にとって上位なんだと思うんです。
個人的に思い入れの深い順ではありますが、それこそがみなさんへのおすすめ順。
好きなものをおすすめしたいです!

コメントの次には、各アルバムの中で1番好きな曲を、No.1 Songとして表記しました。
ジャケット写真をクリックするとTOWER RECORDSへのリンクになってます。

アコースティック・ライヴやカヴァー・アルバムを通して、自分のキャリアや原点を再確認し、ここからまた新たなスタートを切る、という感じで制作されたアルバム。
この『As Is Now』は2005年発売直後に買ったものの、1度も聴かずに何年も経ってしまって、ようやく聴いたのが2012年。いい加減聴かなくちゃ、くらいの軽い気持ちで聴いてみたんだけど。
これが、予想以上に良かった。すごい良かった。
ファンクでソリッド。
アコースティックでメロディアス。
スピード感溢れるロック。
そんなバラエティに富んだ楽曲は、どれもメロディが良く心に突き刺さり、全体的にアレンジも良く、ノリも良く、馴染みやすく、聴きやすかった。
ジャム、スタカン、ソロの全キャリアの匂いを漂わせる、どこを切り取ってもポール・ウェラーの魅力のすべてが詰まっていて、捨て曲一切なし!
ソロの最高到達点。
僕が興味を失いかけてる間にも、ポール・ウェラーは傑作を作り続けていた。
これをちゃんとリアル・タイムで聴いてたら、ポール・ウェラーに対する思いも、また違ったものになってたかと思えます。

No.1 Song 「The Pebble And The Boy」

ポール・ウェラーから心が離れていた事もあってか、リリース当時は全然ピンと来ませんでした。1、2回聴いて、もういいや、と。
ガッカリしたアルバムでした。
しかし、その数年後、ポール・ウェラー・ソロを見直す事となり、このアルバムも聴き直してみてビックリ。
以前の印象とはまったく違ったのです。
なんだコレ、いいじゃないか!
これをどうして駄盤だと思ってしまったのでしょう。まったくもってわかりません。
どの曲も2~3分とコンパクトな小品。それが次から次へと息つく暇なく繰り出されます。そんな17曲、44分。
曲数が多いのに、時間は短い。
まるで、混沌としたおもちゃ箱。
全体的に煌びやかな感じなのも好印象。
何度も聴き返したくなります。
一気に聴かせる感じで、バラードがないのも意味があるように思えます。
ポール・ウェラーは決して立ち止まらない、そんな決意が感じ取れます。
前々作『As Is Now』のロック性、前作『22 Dreams』のドリーミーなサウンドを引き継いだうえ、次に進む方向性をも示している新機軸。
初めは駄盤だと思い、次回作は買わない、もう見限ろうとまで思ってしまった本作。
それなのに、今では2番目に好きなアルバムになったのだから、わからないものです。
でも、何故かこのアルバムだけSpotifyに無いのが大きな不満なんだよなあ。

No.1 Song 「Aim High」

正直、前作『Stanley Road』でポール・ウェラーから少し心が離れてしまっていた僕でしたので、あまり期待しないで聴いてみよう、という軽い気持ちで臨んだのですが、良い意味で裏切られました。
とにかく、冒頭からカッコいいんです。
そして、その勢いは衰えないままアルバムのラストまで貫かれます。
ジャムともスタカンとも違う、骨太のロックがここにありました。
とにかく、これは素晴らしい!と思いましたね。
離れかけていた心を繋ぎとめるには充分すぎるアルバムでした。
それまでは、ポール・ウェラーって、スリムでお洒落な印象だったのに、すっかり筋肉がついて、たくましくなったという感じです。
物凄い熱気を感じるんですよね。
ポール・ウェラー・ソロ、まだまだ行ける!これからもついていく!
改めてそう思ったのを憶えています。

No.1 Song 「Brushed」

ポール・ウェラー初のコンセプト・アルバムは、ソロ・アルバムの中では1番長い約70分、様々なタイプの夢を見させてくれます。
穏やかになったり、力が湧いてきたり、物悲しくなったり、美しさに見惚れたり、不安になったり楽しくなったりもする、全21曲。それで22番目の夢は聴く者に委ねるというメッセージ。
ドリーミーなソウルが多く、その名の通り夢見心地。
ただ、ときどき不穏な空気も漂い、「悪夢なのか?」と疑う瞬間もあるし、インストは夢のないうたた寝を感じさせるし。
様々なタイプの曲が入り替わり立ち代わりで飽きません。ただ、これといった核になる曲はあまりなく、いずれも小品が並んでいるといった風のアルバムですね。
様々なものが並んでいる割には一本筋が通っているというのがコンセプト・アルバムならではで、他のポール・ウェラーのアルバムとはやはりどこか違う。1曲1曲を取り上げるのではなく、アルバム全体を通して、この流れを楽しむというのが正解かと。
ただ、難を言えば、ヴォーカル面などは終盤のポール・ウェラーの不在感がハンパなく、「誰のアルバムを聴いてるんだっけ?」状態になっちゃうので、後半が弱いなあと思ってしまうのが正直な所です。

No.1 Song 「Why Walk When You Can Run」

前年リリースしたレア曲集『Fly On The Wall』に、カヴァー曲を集めたDiscがありましたが、そこから間を置かずに、今度はガッツリと1枚のカヴァー・アルバムを作りました。
いつも言ってるように、基本的にカヴァー・アルバムにはあまり興味がない僕ですので、「なんだ、今度のアルバムはオリジナル曲じゃないのか」と落胆もしたのですが、先行で公開されたシングル「The Bottle」がすごいカッコ良くて、これならばと、一気に期待が高まったのでした。
ほとんどの曲が、オリジナルを知らない曲だったので、元曲との違いなど比較は出来ないのですが、だいぶ変わってるのではないかと思われます。すっかりウェラー色に染まってる、と。
とにかく、どの曲もメロディが良かった。
サウンドも、良い意味でクラシカルで、いい曲ばかりだなあ、という印象でした。
カヴァー・アルバムにはあまり賛成できない僕でも、こんな素晴らしいアルバムなら文句は言えません。
単なる企画盤ではなく、立派なオリジナル・アルバムだと断言できますね。

No.1 Song 「The Bottle」

僕がポール・ウェラーの音楽を聴き始めたのは、たしか1990年頃だったと思います。
が、丁度その頃のポール・ウェラーといえば、スタカンを失意のうちに解散させての冬の時代。
ソロとして活動を始めても、小さなライヴハウスでドサまわり。レコード会社との契約も取れず、世間からソッポを向かれてしまったような状況なのが伝わってきていました。
大好きになったアーティストがどん底にあえいでいる、というのは辛かったですね。
で、やはりというべきか、ポール・ウェラーに冷たい本国イギリスでは契約が取れずに、アルバムは日本先行販売(独占販売?)という事になりました。
ジャム、スタカンと、大きな実績を作ったポール・ウェラーに対し、どうしてイギリス人は冷たいのか、理解に苦しみましたが、それならばせめて日本では熱く応援してやろうじゃないか、そんな気持ちだったのを強く憶えています。
ポール・ウェラーを取り巻く環境が厳しかった、そんな空気の中の1stアルバムです。
ファンになったばかりの僕でしたが、それまでのポール・ウェラーの音楽を聴いて確信していました。ポール・ウェラーがつまらない音楽を作るはずがない、と。
それはきっと素晴らしいものであろうという信頼感を持っていました。
そして実際に初めて聴いた時から、良いと思ってたけど、不遇の時代を経てイギリスでも再ブレイクし、その後、個人的に興味が薄れつつあったりもして、また今ふたたび聴いてみると、昔よりも好きになってますね。
ポール・ウェラー・ソロ、1stからして名盤ですよ。
これが評価されなかった時代はなんだったんだ、と思ってしまいます。
ポール・ウェラー自身も、取り巻く環境の悪さから、不安を抱えてのアルバム制作だったと思います。
けれど、自分の才能を信じて、持てる力をひねり出した。
そこにポール・ウェラーの意地と底力を感じますね。カッコいいです。
スタカンのお洒落さの名残りも充分あるし、不遇の時代を共に過ごした愛しさも感じます。
あえて言うなら、「セクシーな1枚」ですね。

No.1 Song 「Into Tomorrow」

『As Is Now』リリース後のライヴを収録したもので、日本でも06年にリリースされましたが、僕は、ポール・ウェラーのソロ活動からは少し興味を失っていた時期でして。NEWアルバムすら聴いてないのにライヴ盤を買うのもどうかなあ、という感じでスルーしたんですね。
で、それから長い年月が過ぎ、このライヴ盤の存在もすっかり忘れていました。
ところが、ポール・ウェラー・ソロの素晴らしさに気付き、『As Is Now』もちゃんと聴いて、ソロの最高傑作ではないかと思うようになってから、こんなライヴ盤が出ていた事を知りました(思い出した、と言うよりも)。
新作『As Is Now』の曲を軸に、ソロの代表曲はもちろん、ジャムやスタカンの曲も惜しげもなく披露されていて、この時期としては完璧なセットリストだと思います。
最初から最後まで熱いロックで一貫。
僕にはたまらないセットリストだし、スティーヴ・クラドックやスティーヴ・ホワイト等お馴染みのバンド・メンバーによる演奏も脂が乗っていて、まさに絶頂期だったのでは?と思えるライヴ盤でした。
この時の日本公演行きたかったなあ。
当時、もっと真面目にポール・ウェラー聴いておくべきだったよなあ。激しく後悔。
でも、そんな後悔を少しだけ解消させてくれる(とりあえず音源は楽しめるので)、素晴らしいライヴ盤。ポール・ウェラー初心者にもおススメです。

2002年から2021年の間にリリースしたシングルのカップリング曲や、リミックス曲、ライヴ曲など、オリジナル・アルバムには入らなかったレア音源をまとめた3枚組。
力を入れて実験してみましたという曲もあり、力を抜いてサラッと作りました(手を抜いてるわけではない)という曲もある、ポール・ウェラー挑戦の記録。
20年に渡る裏街道の歴史は、表を走っててもおかしくなかった音源がズラリ。
僕的にはオリジナル・アルバムのボートラで聴いた曲もいくつかあったけど、その他にこんなに掘り出し物があったのかと自然とテンションが上がりました。
ポール・ウェラー祭りと言ってもいいくらいで、圧巻、充実、聴いてて非常に面白かった。
同じコンセプトで1991年から2001年の音源をまとめた『Fly On The Wall』が期待したほどではなかったので、それと比べて今作品の期待値をはるかに超えた仕上がりにはビックリ。
裏街道がこんなに充実しているなら、表のオリジナル・アルバムはもっと充実してるのは当たり前だよなあと、近年の作品の出来の良さを改めて実感します。
このサウンドは、あのアルバムの時期のものかなと想像しながら聴くのが良いです。

No.1 Song 「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」

アコースティックな楽器編成に、オーケストレーションを施した、サウンド・コンセプトのある作品。
アルバムの中に数曲アコースティックなものがあるのは全然いいけど、アルバム全体がアコースティックなのは、個人的には苦手でして。
あんまり期待できないなあと思って1、2回聴いて、やっぱり退屈、これは駄盤だと放置してました。
ところがところが。
NEWアルバム(『On Sunset』)がリリースとなった事で、再びポール・ウェラーに注目する事となり、とりあえずもう1回聴いてみようか、と聴き直してみたのです。
そしたら、以前とは全然印象が違って。
とても落ち着いた中で、メロディの良さ、美しさ、寂しさが浮き彫りになって迫ってきたのです。
こんなに素晴らしかったのか!何故気付かなかったのだろう、と驚愕しました。
ポール・ウェラーが、メロディの大切さに重きを置いて作ったアルバムと聞き及びます。
近年の作品は、メロディよりもサウンドの面白さを追求してた面があったと思いますが、ここで再びメロディ重視になりました。
この心地良いメロディには心奪われ、陶酔し、最後には穏やかな気持ちになります。
そういうコンセプト故、熱いロック曲は無いのだけれど、今となってはそれも良し、です。
第一印象から一転、大好きになったアルバムです。

No.1 Song 「Old Castles」

不安だらけで、世間の評価も冷たかったソロ・デビューから、ジワジワと支持を回復させていって、とうとう英国でチャート1位を獲得するに至った、大復活アルバム。
ロング・セラーにもなり、コレを最高傑作とする人も少なくないです。
だけど、世間での盛り上がりとは裏腹に、僕はそれほど熱くなれなかった。
もちろん、大ヒットして、ポール・ウェラーが再評価された事はものすごく嬉しかったんだけど、僕がポール・ウェラーに求めているメロディやサウンドとはかけ離れてしまったような気がして。
決して悪くはないんだけど、僕の好きなのとはちょっと違う。
ああ、そっちの方向へ行くのね、と。
そんなわけで、世間の盛り上がりとは裏腹に、僕的には少しポール・ウェラーから心が離れてしまった思い出があります。
当時はあまりのめりこめなかったアルバムなのですが、一連のポール・ウェラー・ソロが好きになった今、改めて聴いてみると、決して悪くはないんです。
自信を取り戻し、地に足がついた、たしかな流れがあって、一本筋の通っているアルバム。そこは高く評価できます。
ああ、やっぱりすごいアルバムだったんだなあ、というのが感じ取れて、だいぶ見直しました。
聴くタイミング、順番が違っていたら、もっと素直に好きになれてたアルバムかもしれません。
もちろん、今では大好きになりましたし、これからも繰り返し聴いていけば、さらにハマっていきそうな気配は感じます。

No.1 Song 「Out Of The Sinking」

タイトルも年齢に合わせ、誕生日の前日にリリースされた『66』。
弟分のスティーヴ・クラドック、ザ・ストライプスのジョシュ・マクローリー、ストリングスのハンナ・ピールなど、ポール・ウェラー・ファミリーのようなものも出来つつあり、そんな仲間たちと共に、飽くなき創造力の探求のもと、作り上げたアルバムです。
全体像はちょっと掴みどころが難しく、スタカンの『Cafe Bleu』の様に、とっ散らかって感じるくらいが傑作になりうるかもと感じましたが、聴いていくうちに、全体的には落ち着いた味わいに支配されているんだなと気付きました。
肩の力を抜いて、クールでもありポップでもあり。このさじ加減が、今のポール・ウェラーの特徴です。
一撃必殺のアッパー・チューンは少なくなってきていて、インパクトよりも、さりげなく心の中に侵入してきて、ジワジワと沁み入るタイプです。
優しく穏やかに。肌触りの心地良さ優先。
落ち着いた味わいは、枯れた、というのとも違う気がしますね。
積み重ねてきた音楽人生、これっぽっちも後悔してないポール・ウェラーの余裕、懐の大きさを感じます。
この殺伐とした世の中、いろいろなことがあるけれど、諦めず、心の安寧に向かって生き抜こうじゃないかと言っているかのようです。
そのために、ポール・ウェラーは変わり続けていくんだという信念はブレてなくて、またもや嬉しくなるし、勇気ももらいました。
その先にはきっと希望があると思えるアルバムでした。

No.1 Song 「My Best Friend’s Coat」

その名の通り、BBCのオーケストラをバックに従えたライヴ音源。
オーケストラとのライヴは、その2年前にも『Other Aspects』という作品がリリースされていて、またオーケストラか、似たようなものだろと思ってたんだけど、聴いてみたらまるで違う。
今作品のオーケストラは、弦楽器・管楽器とが束になって煽りまくって、曲に表情を付けている。
とてもダイナミックで映画音楽のような感動を味わえました。
オーケストラの音は分厚いけれど、アコギの繊細な音も目立っていて、とにかく音の良さに痺れます。
ジャム、スタカン、ソロとオール・キャリアからの選曲は相変わらずだけれど、例えばスタカンの『Confessions Of A Pop Group』からの曲。あの時期、ポール・ウェラーはこういうライヴをやりたかったんだろうなあというのがわかります。
ボーイ・ジョージなど、他のヴォーカリストも参加した曲がいくつかあったり。
一応ライヴということなのですが、演奏後の拍手はパラパラだし、歓声のようなものは聴こえず。
時期的に言ってコロナ禍で、どうやら無観客ライヴ。それの配信音源がフィジカル化されたようです。

これは、ライヴ音源やデモ音源を収録したボーナス・ディスクが付いた初回限定盤を、リリースの何ヶ月も前に予約を入れました。
でも、発売日が近くなったら「ちょっと発送が遅れそうです」とメールが来て、発売日を過ぎたら「もうちょっと待ってね」の連絡が何度も来て、我慢して待った挙句、半年後に「ごめんね、用意できなかった。キャンセルさせてね、てへっ」という対応をされたという、苦い思い出のあるアルバムです。
仕方ないので、その後、通常盤を買いましたが、リリースから半年も経ってるし、テンションはかなり下がっちゃって。
なので、聴いた印象としてもあまり良くなかったですね。
でも、あれから少し時が経ち、フラットな気持ちで聴くと、このアルバムの良さがわかりました。
タイトル通り、ジャケットもポップで好き。
ポール・ウェラーにとってのポップとは、どんなものでしょう。
得意技となったクラウト・ロックあり、ボードヴィル調ありで、ファンが喜びそうな攻めた曲や、静かに闘志を燃やす曲など、貫禄ある曲が並びました。
メロディの良さも衰え知らずで、多少弱い曲でもアレンジで名曲然とさせるあたりはさすがベテラン。
スピード・ナンバーが無かったのはちょっと残念でしたが、聴き進むにつれてジワジワと来るアルバムでした。
普通にイメージするポップとはちょっと違いますね。
だからここは「Fat」という言葉に注目。
「Fat」には、「太った」という他に「マヌケな」とか「儲かる」という意味がありました。どちらにしてもなかなか意味深かも。

No.1 Song 「Shades Of Blue」

この30年、ポール・ウェラーにはハマったり離れたり、色々とありましたが、やっとフラットな気持ちで新作に向き合えるようになりました。
リリースに素直に期待して、それに応える内容に満足して。
全英1位になったというのも嬉しいニュース。今でも多くの人に支持されてるのが凄い。モッド・ファーザーは健在だと。なんでも、80年代以降、5つの年代にて1位を記録したとの事。もしジャム初期の70年代にも1位を獲れてたら...と思うと惜しいですけどね。
さて、このアルバム。サウンドの方向性は前々作『A Kind Revolution』を引き継いでいるけど、前作『True Meanings』で通ったメロディの大切さを肝に銘じて、丁寧に作られた感があります。
バラエティもコンセプトも感じる、一通りのストーリーを見たような聴後感。
もう何が来ても怖くない、達観したポール・ウェラーの余裕を感じます。
これまでポール・ウェラーと苦楽を共にしてきたファンにとってはたまらない1枚となったのではないでしょうか。
ただ、ジャケットが手抜き感満載なのが唯一のマイナスという事で。

No.1 Song 「Village」

『Stanley Road』でのポール・ウェラー大復活。完全にファンの心を掴み取り、これでもう何をやっても安泰。
そんな空気が漂い始めました。
ポール・ウェラーも安心して、自分の音楽に邁進する余裕ができたと思われます。
ベスト盤を出して一区切りを付けた後、僕たちファンも余裕が生まれ、静かな気持ちでこのアルバムを迎えていたような憶えがあります。
ジャケットの佇まいからも、いろんなプレッシャーから解放されて、リラックスした雰囲気が感じ取れました。
前半は、かなりフォーク・ロック的なサウンドが目立ち、今までのような骨太の熱いロックは陰をひそめていて、「地味だなあ」という印象なのですが、後半から段々とエンジンがかかってくる感じです。
とは言っても、ガツーンとくるタイプの曲はあまりないのですが、最後まで聴けば、どこか不思議と味わいがあるというか、これはこれで悪くないな、と思えます。
気合いを入れて、勢いをつけた曲作りではなく、肩の力を抜いて、自然に任せて出来上がった曲を並べたら、こんなアルバムになった、という感じです。
リリース当時に聴いた時は、前作『Heavy Soul』にあった熱量が一気に下がった気がして、そんな力の抜け具合が僕には物足りなく映ったものです。ポール・ウェラーにはもっと刺激あるものを求めていたんですね。
今ではもう全然そんな事はなくて、全アルバムをフラットな状態で見渡すと、これはこれで充分熱いロックなんだよね。
当時はわからなかったものだけど、これもなかなか良いアルバムではないか、と思える様になりました。

No.1 Song 「Love-Less」

鮮やかな真紅のジャケットが印象的。
タイトルに引っ張られてるからなのか、全英1位を獲ったからなのかわかりませんが、このアルバムにはキラキラ、煌びやかというイメージがあります。
ここでまた骨太のイメージからお洒落なイメージに、さらにポール・ウェラーが生まれ変わったような印象を持ったのを憶えています。
このアルバムのポイントとなるのは、前年アコギでの弾き語りライヴ・ツアーをやった事。
アコギという単純な楽器構成で浮き彫りにされるのは、各曲の持つメロディの良さ。
そして、今までほとんど封印していたジャムやスタカン時代の楽曲も採り上げる事で、自分の作ってきた曲の良さを再認識。
それが出来たのも、すべてはアコギという楽器のお蔭...。
ポール・ウェラーがそんな風に思ったのも不思議ではありません。
そして、そんなアコギという楽器の魅力に憑りつかれ、アコギで色々と曲を作ってみた。
このアルバムは、そんなアルバムのような気がしてならないのです。
結果的には、様々な楽器を使ってのロック・サウンドになってますけど、どの曲も、アコギでの弾き語りが成立してしまうだろうと思いますもの。
これぞ!というキラー・チューンはないんだけど、全体的にレベルの高い曲が揃ってますね。
アコギ中心で作曲したような雰囲気の曲が多いんだけど、決してアコギ主体のアコースティック・アルバムというわけではないんですよね。だから、アコギ弾き語りが苦手な僕でも大丈夫です。
キラー・チューンがないという事は、一度聴いただけですぐ好きになれるタイプのアルバムではないという事なので、僕自身、このアルバムを好きになるまでかなり時間がかかりましたが、もはや、雰囲気ですよ(笑)。ポール・ウェラーの作り出す雰囲気を味わう。ファンとなると、そんな聴き方になってしまいますね。
ポール・ウェラー自身、もうキラー・チューンは必要ない、と思い始めたフシがあります。

No.1 Song 「One X One」

非常に満足した1stに引き続き、あまり間を置かずにリリースの運びとなり、コレにも期待して飛びつきました。
これも1stアルバムと同じように、日本盤とイギリス盤では、収録曲や曲順が違いました。
しかし、1stの場合は、日本盤で良かったと思いましたが、今作はイギリス盤の方が2曲も多いし、ちょっと悔しいです。
曲順も違うという事は、聴いた印象もきっと違うんでしょうね。
全体的な印象は、地味で素朴ですね。ストレートなロック曲は「Sunflower」くらいしかない。
いや、他にもロックっぽいものはあるんですけど、アコギを多用したサウンドが印象に残るからかなあ、派手さはないんですよね。
個人的には、1stに比べたら、ややトーン・ダウンした感じがしました。そしてなんだか土臭い。お洒落な都会から田舎へ引っ越した感じ(笑)。
イケイケなポール・ウェラーが好きだったからね、アコースティックで地味なトーンには満足できない面もありました。
ただ、コンセプト・アルバム的な味わいもあってか、本国イギリスでの人気がジワジワと復活してきたのです。
くすぶってたポール・ウェラーが再び英国で認められた、売れたんだという意味でも、とても感慨深い、思い入れのある作品です。

No.1 Song 「Sunflower」

タイトルに『Revolution』とあります。この言葉には重みがありますね。この歳になって、さらにRevolution。期待するな、という方がムリでしょう。
しかし、『Revolution』という言葉のイメージほど、攻撃的ではないです。若かりし頃のポール・ウェラーの、イケイケなRevolutionを期待したらいけません。これはむしろ、『Revolution』よりも『Kind』に注目すべきなのではないかなあと思うのです。
特にコンセプトのない、姿勢としては『Stanley Road』の頃のような原点回帰で、肩の力の抜けた、アーシーなサウンドが楽しめます。全10曲42分というのも、潔くまとまっていて聴きやすいです。
この曲はイマイチかな?と一瞬思っても、聴き進めると、どの曲もサビのメロディが良くて、「あ、この曲もはずせないな」と思ってしまうのです。
今までソロでやってきた事、「この曲はあの時代の感じだな」と、長いキャリアを心地良く思い出させる、渋みのある作品でした。
すでにどこかで何度も耳にした事があるような気がするのも、いい意味で安心感に繋がりました。
となると、やはりどこがRevolutionなんじゃい!という事になるのですが(笑)、まあ、そんな事はどうでも良かったりします。
ジワジワとくるアルバムだと思います。

No.1 Song 「One Tear」

前作『Wake Up The Nation』にガッカリしたクチなので(この時点では前作の良さに気付いてなかった)、NEWアルバムを発売日に買うのを躊躇うようになっていましたが、Amazonにて輸入盤が970円。この値段で買えるなら...と衝動買いするに至りました。
切れそうで切れなかったポール・ウェラーとの縁。
ホント、ピコピコしてます、このアルバム(笑)。
一発で心惹かれるキラー・チューンに乏しいため、初めはイマイチなアルバムと思ってしまうんだけど、繰り返し聴いてると、各曲の違いもわかってくるし、それほど悪いアルバムではないのかも、と思えてきます。
全体的に、実験的なサウンドと言えそうで、肌触りとしては、ジャムの『Sound Affects』や『The Gift』の頃に似てます。かと思いきや、女性ヴォーカルが出てくる曲もあって、スタカンを髣髴とさせたりもします。
ピコピコしたクラウト・ロックへの傾倒など、新しい側面が前面ではありながらも、過去のキャリアも垣間見えますね。
ヘッドホンで聴くと、より面白いサウンド。
クールな曲もあるけれど、ハッピーな印象が強い1枚。
ただ、クラウト・ロックって、なんか笑えるんだよね(笑)。

No.1 Song 「Kling I Klang」

ジャケットのイメージから、静かなアルバムを予想してましたが、全然そんな事なくて。
全体を通して、とにかく印象に残るのが、野太いベース。
この骨太のサウンドが一本筋が通ってて、さすがポール・ウェラーだなと。
曲の構成としては、Aメロ→Bメロ→サビみたいな、普通の曲の形態にはなってないものが多くて、メロディは、サビと、それからほんの少しの断片があるだけで、それを演奏力で1曲にしてしまってるものがほとんど。
となると、とらえどころがない様な、物足りないような印象が、最初はあって、「イマイチかな?」との感想が第一印象なんだけれど、何度も聴いてるうちに、これはこれで良しで、シンプルなようでいて意外と凝ってる音作りが耳に馴染んでくると、ジワジワと染みてきます。
ヴォーカルのメロディを重視してた昔の僕だったらかなり不満に思ったろうけど、全体のサウンドに耳を向けられるようになった今となっては、不思議と、もっと聴いてみたいと思えるアルバムなんですよね。
ポール・ウェラーの飽くなき挑戦、野望が垣間見えて面白い。
聴きこめば聴きこむ程、味が染みてくるのがわかる。
ただ、サウンドの方向性は前作『Sonik Kicks』を引き継いでいるものの、全体のトーンとしては、ジャケットのカラーと同じ様に、青く陰鬱なイメージが残るし、肌触りは前作と異なります。
他のアルバムと比べたら、評価としては下の方になっちゃうかな。

No.1 Song 「Going My Way」

その名の通り、BBC所蔵の音源をまとめたアルバム。
リリース当初は初回盤として4枚組が売り出されていましたが、当時の僕はそれほどポール・ウェラー・ソロに熱心ではなく、このアルバムはスルーしてしまいました。
なので、このアルバムを買い逃した事は後悔しましたね。仕方なく、抜粋の通常盤として出されていた2枚組を買いました。
Disc 1は、BBCでのスタジオ・セッションの音源。
観客もいないので、ライヴ盤とも言い難く、スタジオ音源の別ヴァージョン集みたいな感じだし、アコースティック・タイプの曲が多いので、ちょっと退屈。
しかし、Disc 2は、BBCで放送された、ホールなどでのライヴ音源が主となるので、一転して面白くなります。
もともと4枚組だった作品の凝縮版の2枚組なので、聴きやすくはあったけれど、結果的に有名曲が多くなってたし、こういうレア音源盤のキモは、ここから漏れた曲の方にこそあるのではないかと思ったり。
だからやっぱり4枚組が聴きたかったなあ。

91年から01年までにリリースされたシングルのカップリング曲や、他のオムニバス盤に収録されてた曲などのレアな曲を3枚組のCDにまとめたものです。
僕はシングルは買わないし、そもそも海外アーティストのシングルは入手し辛いですから、こういう形でアルバムにまとめてくれるのはありがたいですよね。
特に目当てはDisc 3にまとめられたカヴァー集でしたね。
基本、僕はカヴァーものは好きじゃないんですけど、ここではビートルズとかニール・ヤングとか、僕の好きな曲をたくさん採り上げているという事で、ポール・ウェラーがやるとどんな感じになるのか興味があったのでした。
そんなわけで、この3枚組レア曲集を買おうと思ったものの、日本盤はリリースされなかったんですよね。当時は日本盤にこだわっていたので、輸入盤を買わなくてはならない事になってしまって、悔しい思いをしたのを憶えてます。
インストが多いので、割と飽き気味になっちゃうのが難点。
いかにもB面的な、実験もの、別ヴァージョンも多く、箸休めみたいな感覚の曲ばかり。渋いっちゃ渋いけど。
とっ散らかったDisc 1・2とは違って、カヴァー曲を集めたDisc 3はコンセプトを感じます。この後作る事になる『Studio 150』と比べると、オリジナルに割と忠実な、イメージを変えてないものが多いと思えますね。
ただ、期待して購入した割には、なんだかいまいちガッカリした印象だったのを憶えてます。
そんなに何度も聴いてはいません。
この3枚のDiscの中から、好きな曲だけを選んで1枚分のアルバムにしたプレイリストを作れば、何度も聴きたいと思えるものが出来そうな気がします。

No.1 Song 「Here’s A New Thing」

初めは、駄盤と思っていた『True Meanings』と同じコンセプトのライヴ盤だから、全く興味が持てなかったんですよね。
でも、『True Meanings』が好きになってからは、俄然興味が沸きました。あの世界観がライヴでどう表現されるのか、と。
でも、うーん、やっぱりライヴは熱いロックがあった方がいいかな、と思っちゃいました。
決して悪くはないけれど、オーケストラ中心の厳かで一本調子のライヴはなんとなくダレてきちゃう。これは僕の好みの問題ですかね。
ただ、まだ聴いた回数も少ないので、聴き慣れてきたら化けるかもしれません。

1st、2nd共に、アルバムのリリース後は来日公演もやってくれました。
もちろん、僕は2回とも観に行きましたが、あんまり内容憶えてないんですよね。
で、その翌年の94年にリリースされたライヴ盤です。
つまりは、僕が観に行ったツアーと同じ様な内容の演奏と思われるわけで。
なので、当然買ったのですが、うーん、あんまり好んで聴いた記憶がないなあ。
大好きな曲もあるけれど、なんとなく面白くないんですよね。
特に欠点は、ひとつのライヴの流れに沿ったものではなく、曲と曲の間にブランクがあって、ブツ切れのような編集になっている事です。中には演奏途中でフェイド・アウトしてしまってる曲もあります。こういう編集の仕方はとても残念で、せっかくのライヴ盤をどうしてこういう風にしてしまうのか疑問です。
そんな事もあって、何度も聴きたいとは思えないのですが、これはポール・ウェラーが復活の兆しをステージ上でも肌で感じ始めたであろう時期の記録。
どん底の冬の時代を抜け、再び自信を取り戻して己の道を行き始めるポール・ウェラーが聴けます。

ライヴ盤と言っても、普通のライヴではなく、ポール・ウェラーがギター1本で行ったアコースティック・ライヴ。
ほとんどがアコギによる弾き語り。
僕はバンド演奏が好きなので、ずっと弾き語りのライヴは苦手。飽きちゃうんだよね。
ただ、それでもこのアルバムを買わざるを得なかったのは、それまでほとんど封印していたジャムやスタカン時代の曲を採り上げているから。
それまで、現役感にこだわって、ジャムやスタカンの曲はライヴではほとんどやらなかったのに、ここにきて積極的に採り上げる事となりました。
これはどういう心境の変化でしょうか。
きっと、ソロでも成功を収め、「過去の曲に頼ってる」と批判される恐れもなくなったからだろうし、自分の作った曲に改めて自信を持ったからでしょうね。
ポール・ウェラーのソロに慣れないうちは、「どの曲も同じに聴こえる」という欠点があるのですが、それが、ギター1本の弾き語りになると、ますます顕著になってしまうという。
なので、初心者の方にはおススメできないアルバムですね。
あくまでも、原曲を知り尽くしているファンが、あの曲をギター1本でどう表現するの?という興味の元に聴くアルバムかと。

さて、いかがでしたでしょうか。
みなさんの好きなポール・ウェラーと僕の好きなポール・ウェラーには、どれだけ違いがあったでしょうか。
同じアーティストを好きでも、同じアルバムが好きとは限らないのが面白い所だったりします。
いろんなファンの方の意見があると思います。
僕は、そういうファンの意見の違いを面白がったりしたいので、まずは自分の好みを披露してみました。
もちろん、これは現時点でのランキングで、今後ポール・ウェラーを聴きこむ事によって、順位が変動してくる事はあるかもしれません。
駄盤だと思ってたものが突然魅力的に思えるようになった事もあったように、タイミングひとつでどう変化するかわかりませんから。

ポール・ウェラーは好きでも、ほとんどはジャムやスタカン重視で、ソロは...と疎んじているファンには、ちゃんとソロを聴いてもらいたいです。
ポール・ウェラーのじっくり深まっていく年輪を感じてほしいのです。
実際、最近のポール・ウェラーの顔の年輪はすごい事になってますし(笑)。
少しでも多くのポール・ウェラー・ファンのみなさんに、ソロの良さをわかってもらいたいと思っています。

他のアーティストのおすすめアルバム・ランキングはこちら

コメント