あいみょん『猫にジェラシー』こんなに穏やかなのに凄い!と唸る最高傑作

前作『瞳へ落ちるよレコード』がなんだかイマイチで、その後NHK朝ドラ主題歌ともなった「愛の花」も僕の好みとはちょっと違い、最近のあいみょんはなあ...追いかけるのもしんどいなあ...ライヴももういいかなあ、と興味が薄れつつありました。

そこへ、2年振りのアルバム、リリースの報。
興味が薄れつつあったのは事実なのですが、何故か、コレは「買わなきゃな」と強く思ったんです。
この間に配信リリースされたシングルもまともに聴いてなくて、好きな曲が入ってるなどの理由もなかったのですが、このアルバムは買わなきゃならない、と。
まだあいみょんを見限ってはいけないぞ、という思いが湧いてきたのです。

もちろん、ライヴDVDの付いた初回盤を購入。
早速聴いてみると、初めて聴いてる途中からワクワクしてきました。
これはいいぞ、これは凄いぞ。
一聴してわかる名曲の連続に心踊りました。

今までも、あいみょんには大好きな曲はありましたが、アルバム全体にこんなに惹きつけられたのは初めてです。
これは最高傑作だ!
何度も何度もリピートです。

「私に見せてよ」
ラフなバンド・サウンドがいいですね。
左右から聴こえるあいみょんのダブル・ヴォーカルの広がる感じ、心地良いです。
好きな人のすべてが知りたい。
でも、知っても知っても、どんどん知らないところが増えていく。
教えてくれ、教えてくれ。
とどまることを知らない欲望に合わせて、ノッていくリズム。それが好きの証。
可愛くもありますね。

「会いに行くのに」
これは「マリーゴールド」や「ハルノヒ」に匹敵する、あいみょん得意の優しいミディアム・バラードです。
最初の2行の独特の表現からして、その世界観に引きずり込みます。
もう終わってしまった。始まりの日に戻りたい。
Cメロで本音を、遅きに失した願いをぶちまけるあいみょんが切ない。
アコギの音、ベースの音、ドラムの音、ストリングスの音。
すべてが柔らかく、包まれる感覚。
穏やかなサウンドで優しいメロディなのに、後悔の念いっぱいの歌詞。
胸をギューッと締め付けられて、どうしようもない涙が溢れる。
またここに、あいみょんの代表曲が誕生しました。

「ラッキーカラー」
ややカントリー・タッチで、ウキウキするリズム。
恋している自分に誇りを持ってる感じ。
でもその恋は報われなさそうだけど。
それでも!
自分の気持ちには嘘つけず、諦めの念は持ちつつも突っ走る。
ラッキーカラーで運命を変えてやる。
サビのメロディもキャッチーで、楽しそうだけど、いじらしい恋心にキュンと来ます。
恋してると「まつ毛」がどうなるかもキーワードですね。

「駅前喫茶ポプラ」
イントロのピアノからして美しくドリーミー。
イッチとにっちとさっちの言葉遊びがいいですね。
サビは恐ろしくキャッチーでほのぼのしてて。
手拍子しながら一緒に口ずさみたくります。
「ウッウー」とフックが効いてるし、耳から離れません。
喫茶店にいるカップル、彼氏はムラムラで、彼女はイライラで。
あいみょんの「イライラ」の歌い方が上手すぎる。
ラストは紳士的で粋な彼氏のセリフに、彼女のイライラも治まるかも。

「あのね」
スロー・バラード。
さよならとありがとうの考察。
すべては不安定の上に成り立ってることを承知で、大切なものを壊さないように、丁寧に歌うあいみょんと演奏です。

「ノット・オーケー」
中華風のサウンドで、浮遊感たっぷり。
サイケなギターもスパイスになってます。
ストリングスの耳障りが良く、なるようになるさ的な感覚で、ゆっくり人生を泳ぐような、すべて流れに身を任せる心地良さ。
そして、ラストは最初のフレーズに戻るのも粋。

「リズム64」
アカペラで始まる最初のフレーズが資生堂のCMで使われたのかな。既視感ありました。
CMでワンフレーズを聴いた時は、どうってことない曲と思ってたのですが、通して聴くと、これは沁みます。
人生は選択の繰り返しで、何かを選んで何かを捨てる。
その選択が正しいか、すべては自分を信じること。
そうわかってはいても、時折不安が顔を覗く。
Cメロの「なんだろうか」というメロディのやるせなさよ!
終始モコモコしたサウンドも心地良い。

「炎曜日」
これは「マシマロ」系統の、元気に弾けた曲ですね。
ライヴでは手拍子パンパンと合いの手を入れながら楽しみたいですね。
忘れられない日。
強烈に惹かれてた人がいたのに。
自分からもアプローチしたのに。
でも、スルリと肩透かしに合い。
結局「あんなん」に!?
僕の解釈が正しければ、これは残念女子のエピソードで、おこぼれを頂いちゃったあんなんを羨ましく思ったり。
そういう女子もいるんだなあ、と。

「偽者」
口笛のイントロとアコギからして寂しい。
これは酔った次の日のことでしょうか。
クズとまで言うその行動、姿。
あんなのは自分じゃない。
そう自分に言い聞かせてます。
サビの「あー」からがとてつもなく切ないメロディ。
後悔が滲むメロディ。
心を持ってかれます。

「朝が嫌い」
またアコギから始まりますが、ピアノが加わります。
勝手な風来坊の男。
いつやって来るのか、いついなくなるのか。
しかもこれは、ちゃんとした彼女ではない感満載。
都合良く遊ばれてる風。
それでも待ってしまう女。
朝が嫌いな理由。
サウンドはストリングスが加わり、意外とゴージャスに。
ラストは、願いのこもったあいみょんの絶唱に震えます。

「ざらめ」
イントロなしで歌い始める、緊張感ある弾き語り風。
それが重厚感たっぷりのバンド・サウンドに。
正しさとは?強さとは?
そんなことを問いかけながらも、弱さとズルさにも支配されていく。
これは壮大なブルースだ。
力強いサビのリフレインは心を揺さぶり、「整える」のフレーズで突き抜ける。
またやってくれたな、あいみょん!
そう感じる大名曲。

「愛の花」
優しいピアノのフレーズとアコギの響きで始まる、朝ドラの主題歌。
爽やかな朝に合うような、みんなで合唱でも出来そうな、丁寧なメロディの歌。
愛に囲まれて、希望に溢れているようなイメージがありましたが、歌詞をよく読んでみたら、これは悲しく切ない人の歌なのでは?
ちょっと奥が深そうなバラードです。

「猫にジェラシー」
素朴なサウンド。
愛らしいメロディで「うっふー」が耳に残ります。
彼女のことが大好きすぎて、彼女が好意を持つものすべてに嫉妬。
もちろん猫にも嫉妬。
だけど、猫のことも大好きで、この気持ちをどうしたらいいのか持て余してる。
そのもどかしさが伝わってくる、歌詞も愛らしいですね。

聴いてて、あいみょん、すごい! あいみょん、すごい!と何度も唸りました。
尖ったような曲はほとんどなく、激しいロックンロールも「炎曜日」1曲くらいで、全体的に穏やかな曲が支配してます。
丸く、モコモコしたサウンドが心地良く、優しさに溢れているアルバム。

男目線で書かれた歌詞も多いし、メロディも含め、吉田拓郎あたりが書きそうな、男気を感じる曲が目立ちました。
いろんな曲があり、いろんな人が登場しましたが、結局みんな猫のことを歌ってるのか?と問われたら、そうかもしれない、とも受け取れるのが面白いです。

どの曲にもキラー・ワードがあり、キャッチーなメロディが通底していて、飽きる暇を与えず、グイグイと惹きこまれました。
あいみょん、ここに来てこんな凄いアルバムを作ったか!
そう、驚くばかりです。
大きく世間に受ける「マリーゴールド」級の曲はないかもしれませんが、アルバム全体でジワジワと感動を浸透させる感じ。
捨て曲なしで、どの曲も大好きです。
これは間違いない。あいみょん最高傑作です。

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