2016年10月11日(火)@オーチャードホール
一度は生で聴いてみたかった陽水
陽水のあの、直接脳に届いて全身に響き渡るような声を、生で聴いてみたいとずっと思ってたんだけど、何故か今まで機会がなくてね。
去年、ツアーが始まると聞いた時にも、「United Cover 2 Tour」というタイトルからして、カヴァー・アルバム『United Cover 2』中心のライヴになる事が予想されたので、カヴァーにはほとんど興味のない僕からしてみたら、あまり観たいと思わなかった。
陽水も高齢だから、早く観れるうちに観ておかないととは思ってたんだけど、僕が観たいのはオリジナル曲のライヴ。
カヴァー中心じゃ、また次の機会だな、と思ってた。
でも、ツアーが始まり、セットリストをチェックしてみると、中心になると思われた『United Cover 2』からは5曲、しかもうち2曲はオリジナル曲だから、カヴァー曲はたった3曲。
なんだ、オリジナル曲中心のライヴじゃん!
こんな事なら、チケット獲れば良かった...と後悔してたのだった。
それが、ライヴ好評につき、この秋、追加ツアーが行われる事が決定。
しかも、東京公演の日程は、僕が仕事休みの火曜日。
これは、観に行かねば。
なんとか申し込んだ先行抽選が当選し、初の生陽水が決定したのだった。
ライヴ当日。会場へ
会場のオーチャードホールは渋谷。
もともと渋谷はあまり好きではなくて、長いこと縁がなかった事もあり、大学時代以来ずっと行ってなかったのだが、去年20年以上振りに行ったと思ったら、それから1年の間に5回も行く機会に恵まれる事となって、最近では、馴染みの深い場所という印象になっているから不思議。
で、渋谷には長いこと行ってなかった訳だから、オーチャードホールは初めての場所。
18時開場、18時30分開演なので、HMVやBOOK OFFで買い物をして過ごしてたら、あっという間に18時過ぎ。慌てて会場へ。初めて行く場所なので、時間までに無事にたどり着けるのかヒヤヒヤしながら。
東急デパートの裏手にあるという認識で向かっていったんだけど、渋谷にしては、ずいぶん暗くて寂しげな、裏通りに面した所にオーチャードホールの入り口があったのでビックリ。もっと華やかな所にあると思ってた。
開場時間を15分も過ぎていたというのに、入り口は人で一杯で行列ができていて、たった今開場されたという感じ。こんな調子で開演時間に間に合うのか?と不安にもなったけど。
周りを見渡すと、さすがに中高年の集まり(笑)。僕より年上の人がほとんどで、若い人はチラホラとしか。
綺麗なホールだったけど、1階席なのに階段を上る必要があったり、て事は2階席の僕は3つ階段を上らなきゃならなかったりと、ちょっとわかりにくかった。
僕の席は、2階6列25番。
先行抽選で当たって買ったチケットだから、席は選べず、まるっきり運任せ。
2階の後方だったけど、ほぼ真ん中だったし、通路にも近かったから、まあまあ良かったとは言えるかな。
ただ、僕の前の席のおじさんが、背が高いのかなんなのか、隣の席の人よりも頭ひとつ飛び抜けて高くて(でも、あとで立った姿を見たら、女の人よりも背が低い感じだったので、座高の高い人だったのかな)。
椅子に深く腰掛けて、背もたれに寄りかかってくれてたらそうでもなかったんだろうけど、この人がまた姿勢が良くてピンとしてるからさあ。この人の頭がすごく邪魔で観にくかった。
僕が背もたれに寄りかかっちゃうと、まるっきり陽水が見えなくなっちゃうので、必然的に、僕も前のめりで観る事となった。
それでも、視界におじさんの頭がドカンとあって、見え辛いし、気になって仕方なかった。
これは運が悪いと思ったのだけど、そういう窮屈な思いで観てたせいでか、眠くならずには済んだ。背もたれに寄りかかってゆったり観てたら、眠くなってしまったかも、だもんなあ。
そういう意味では良かった、とポジティヴに捉えよう。
心配なのはセットリスト。
陽水くらいのベテランになると、セットリストを固定してツアー周るのかと思ってたけど、調べてみたら、日によって、かなり曲目が変わる、日替わりメニュー。
はたして、僕の好きな曲はやってくれるのか。
ライヴのスタート
開演時間を7分ほど過ぎ、陽水登場。
バンド・メンバーは、ギター2人、ベース、ドラム、キーボード、女性コーラス2人。
01. ラブレターの気分で
02. カナリア
03. Make-up Shadow
04. 娘がねじれる時
05. 移動電話
06. 有楽町で逢いましょう
07. リンゴ
08. 女神
09. 瞬き
10. あの素晴らしい愛をもう一度
(休憩)
11. Here, There And Everywhere
12. Just Fit
13. 映画に行こう
14. 愛されてばかりいると
15. バレリーナ
16. My House
17. 氷の世界
18. 海へ来なさい
(Encore)
19. 渚にまつわるエトセトラ
20. 夢の中へ
21. 夏の終わりのハーモニー
1曲目「ラブレターの気分で」が、ラフな演奏で始まる。
このオーチャードホール、とても音が良いかもしれないと期待してたんだけど、そうでもなかった。バンドの演奏は割れて聴こえたし、その影響で、陽水のヴォーカルが小さくて聴こえにくかったし。まあ、これは演奏が進むにつれて、どんどん改善されていったけど。
でも、オープニングが、期待してた「ミス コンテスト」じゃなかった。これは、今日のセットリストはなんだかとても不安な予感がした。
「カナリア」を一語一語はっきりと強調するように発音する陽水の歌い方が印象的。
「Make-up Shadow」は、僕が陽水にハマッて間もなく大ヒットした曲。
陽水なら、このヒットは当然、と思ったものだった。そんな思い入れのある曲が、初のライヴで聴けて感慨深い。カッコいい。
最初、なんの曲だかわからなかった「娘がねじれる時」。
大きくアレンジを変え、ジャズっぽく演奏されてたけど、これは大好きな曲だから、オリジナルのようなロックなヴァージョンで聴きたかったな。
前半のハイライトだったのが、「移動電話」。
このロッカ・バラード、前はそれほど好きじゃなかったけど、このドリーミーな雰囲気がとても良かった。
ここから『United Cover 2』のコーナー。
1曲1曲、丁寧に解説MCをしながら。
吉田拓郎を「宿敵」とか言ったりして。仲が良いとはどういう事かの話が面白かったな。
正直、やっぱりカヴァーには興味が持てないし、オリジナルの2曲も、好きなタイプではないので、ちょっと退屈な時間。
ここで、さすが中高年向けライヴという事で、15分の休憩。
僕なんか、休憩なんていらないと思っちゃうのだけど、陽水曰く、この歳になると、観る側にとっても休憩が欲しくなるのだそうだ。
休憩が終わって現れたのは、陽水の他、ギター2人。
3人によるアコースティック・コーナー。
まずは、ビートルズの「Here, There And Everywhere」。
最近になって、ビートルズをセットリストに組み入れたのは知ってたけど、『United Cover 2』には入ってない曲だから、意外な選曲にビックリ。
アコースティックでもう1曲、「Just Fit」。
この編成でなんの曲をやろうか徹夜で考えたとの事だけど(たぶん冗談)、これがなかなか良かった。
僕が知ってる『ガイドのいない夜』のヴァージョンは、なかなか派手なロックでシャウトするカッコ良い曲なので、アコースティックでやるのは合わない気がしたんだけど、これがアコギならではの、静かな激しさがあって、印象に残った。
映画や映画館の話をして、「映画に関係する曲をやります」と披露されたのが「映画に行こう」。
これは、唯一僕の知らない曲だった。
後で調べたところ、シングルB面のみ収録の、古い曲。
ブルース・ロックっぽい感じだった。
安定感と貫禄さえ漂うロック「愛されてばかりいると」。
キーボードは小島良喜。元KUWATA BANDの人だ。
30年前にKUWATA BANDのライヴで観て以来、こんな所で再見とは。
その小島良喜の重厚なピアノに導かれた「バレリーナ」。
それから「My House」。
この辺りの2曲の流れは、マニアックな選曲だなあ、と。
いよいよ真打ち登場、といった感じの「氷の世界」。
本編ラストは、「海へ来なさい」。
僕は、ラストは「勝者としてのペガサス」を期待してたので、この曲が始まった時はガッカリしたのだけれど、まあ、そんな個人的な事情を度外視すれば、素晴らしいパフォーマンスだった。
浮遊感漂うサウンドに、透き通る様な陽水のヴォーカル。
終演後の雑踏の中で、前を歩いていた女性客が「海へ行きましょうとかなんとか言ってた曲が良かった。泣きそうになった」とか言ってたのが聞こえてきて、さらに印象に残った。
アンコールは、Puffyに提供した「渚にまつわるエトセトラ」。
Puffyの中で1番好きな曲だけど、陽水がガッツリ歌うのを聴くのは初めてかも?井上陽水奥田民生でも、「アジアの純真」の方はよく聴いたけど...。
この曲から、1階席のお客さんは総立ち。2階席でも立つ人がチラホラ。
いよいよフィナーレへ向かっている感じで盛り上がる。
僕の前方にいた女性客が、Puffyの振り付けで踊っていたのが見えた。
「夢の中へ」。
この曲が始まった時の歓声が、1番大きかったように思う。みんな好きなんだね。僕はそうでもないんだけど(笑)。
ラストは、安全地帯とのコラボ曲「夏の終わりのハーモニー」。
これも、それほど好きな曲ではなかったけど、玉置浩二と歌ってるオリジナル版と違い、陽水が一人で切々と歌ってるのを聴いたら、ああ、いい曲だなあ、と思った。
しみじみと心に響く。いい締めとなった。
MCも面白く、パフォーマンスとしては素晴らしかったが、セットリストが
その他、なんの曲だったか忘れちゃったけど、陽水が指パッチンでリズムを取る曲があったり(パッチンの音がやたらデカい!)、陽水の弾くアコギの音がはっきりと聴こえてきたのが意外だったり(エレキの音に負けてなかった)、印象に残る場面はいくつもあったけど、詳しい事は忘れちゃった。やっぱ、その場でメモらないとダメだな。
それから、噂通り、MCが面白かった。
陽水、何言ってもドッカンドッカンウケてた。
別になんて事のない、とりとめのない話なんだけどね。きっと、同じ事を他の人が言ってもたいしてウケないと思う。でも、陽水が言うとウケるんだよね。そのとりとめのなさがいいのかもしれない。
陽水は、身を隠す様にしてても、しゃべると(一般人に)バレる、という話になって。
タクシーでも、「五反田」とか言っただけで気付かれる、とか。
この話、20年くらい前も『HEY!HEY!HEY!』で話してたよね。
その時も、たしか五反田だったはず。よっぽど五反田に何かあるのだろう(笑)。
その他、「デトックス」とか「だすから」とか、面白かったよ。
でも、このツアーで、高い確率で披露されてた、大好きな「ミス コンテスト」「ジェニー My Love」「勝者としてのペガサス」を楽しみにしてたのに、それらがすべて削られてて大ショックだった。今回最も聴きたかった曲トップ3すべてがなくなるなんて。
その代わりに披露された曲は、決して嫌いではないけれど、各アルバムで優先度の低い、まあ、どちらかと言えばどうでもいい曲ばかりだったのでガックリ。
セットリスト全曲を見渡してみても、是非とも生で聴きたかった大好きな曲、というのがほとんどなくて...。
初めて観る陽水は、ヴォーカルも演奏も良かったし、MCも面白く、パフォーマンスとしては素晴らしいものだったと思うけど、セットリスト的にはハズレだね、はっきり言って。それがとても残念。
陽水には、是非とも生で聴きたい、大好きな曲はたくさんあるから、次のツアーに期待だな。また次の機会があったら絶対観に行く。大好きな曲を聴きたい。なんとかリベンジを。
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